予想外の「EU 離脱」! 英国は利下げ時期を模索

【2016年7月6日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『予想外の「EU 離脱」!
英国は利下げ時期を模索』
執 筆 者 : ( ロ ン ド ン 在 住 /元 為 替 デ ィ ー ラ ー )
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英国の国民投票から 2 週間が過ぎた。予想外の「EU 離脱(Brexit)」という結果を受け、ロンドン
では若年層を中心に数千人規模の EU 残留を求める抗議デモが毎日行われているが、この週末
はとうとう約 5 万人に膨れ上がったと報道されている。
それとは別に、EU 離脱の際に必要な EU 基本条約(リスボン条約)50 条を巡る見解や、Brexit に
対する法的解釈などについて、数々の意見が聞こえてくる。そして、前例のない離脱国の出現に、
英国だけでなく EU 自身も動揺を隠せない様子だ。
●投票翌日から現在までの流れ
まず最初に、投票後から現在までに起きた出来事を紹介しよう。
・EU から離脱するためには、EU 基本条約(リスボン条約)50 条を行使しなければならない。これは、
キャメロン首相ではなく、次期首相の仕事となる。
・50 条を行使する時期は、次期首相次第であるが、早ければ今年 9 月。遅ければ、来年に入って
からという意見が多い。
・50 条が行使されるまで、EU と英国との交渉はスタートしない。
・2 回目の国民投票実施を呼びかける抗議デモがエスカレートしている。
・議会では、解散総選挙の実施を求める議員が出てきた。
・残留票が多かったスコットランドと北アイルランドは、英国連合王国議会の決定に対する拒否権
を発動する可能性を探っている。特にスコットランド自治政府は法律の専門家の意見を調整して
いる最中。
・保守党の次期党首(新首相)決定の投票(リーダーシップ・チャレンジ)が今週からスタートする。
・労働党は党首に対する不信任決議を行い、大多数の議員がコービン党首の辞任を要求したが、
同党首は絶対に辞めないと主張し、混沌とした状態が続いている。
・英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は、自身の政治使命であった「Brexit を勝ち取った」ため、
7 月 4 日に辞任を発表。UKIP も保守党同様、党首選を始める。
●新首相選出スタート
国民が EU 離脱を選択したことを受け、キャメロン首相は辞意を表明した。この決断を受け、保
守党では EU 離脱交渉の責任者となる次期党首(新首相)を選ぶリーダーシップ・チャレンジ(党首
選)を開始した。候補者は保守党議員に限られるが、6 月 30 日(木)の候補者締め切り直前に大
波乱が起きた。それは、次期首相間違いなし!と言われていたボリス・ジョンソン前ロンドン市長
が締め切り時間の 30 分前に「党首選立候補を断念する」と発表したからである。
この決定を受け、保守党内部の離脱派グループが大きく揺れた。そして、最終的にジョンソン氏と
共に離脱キャンペーンを繰り広げた 2 名の保守党議員が立候補に動いたのである。
主な候補者の賭け屋のオッズは以下の通りである。圧倒的にメイ内務相有利である。
しかし、実際に党首を決めるのは、保守党の議員である。党首選は毎週 2 回のペースで行われ、
今週火曜日に第一回目の投票が、木曜日に 2 回目が実施される。そして最後に残った 2 人の中
から新党首(新首相)が誕生すると言う具合いだ。
果たして保守党の議員の間でも、メイ内務相支持が高いのだろうか?
次は最近の世論調査結果をチェックしてみよう。
しかにメイ氏を支持する議員数は圧倒的に多いが、160 人近くの議員は未だに自分の気持ちを固
めていないのである。大きな番狂わせが生じない保証はどこにもない。
●英中銀からの発表
カーニー総裁は 6 月 30 日(木)、突然記者会見を行った。そこで同総裁は、夏の間に金融政策の
緩和に動く必要があると語った。その発言を受け、マーケットでは「英ポンド売り」が炸裂したが、
「いつ、どのようなタイミングで緩和が実施されるのか」については意見が分かれている。
英国に住み、英中銀を身近でみる機会に恵まれている私自身の考えは、
・英中銀は政策金利のマイナス化には消極的である
・もっと言えば、本音ベースでは、現在の政策金利 0.5%より下げたくない
・ただし、今回のような異常事態となっては、利下げに動かざるを得ない
・政策金利は 0.25%カットだけになる可能性も出てくる
・政策金利カット以外では、過去に実施していた量的緩和策〔資産購入プログラム)の再開が濃厚
このような感じである。繰り返しになるが、欧州中銀(ECB)や日銀とは違い、英中銀は金融機関
の経営に支障をきたす危険性があるマイナス金利の導入には非常に消極的である。そして、英中
銀の決定は 9 人の理事による多数決制であり総裁の権限で特別な決定は許されないため、他の
理事の発言には要注意である。
具体的な利下げの時期や下げ幅に関しては、一部の米系銀行は、7 月と 8 月に 0.25%ずつカット
して、政策金利が 0%になるという予想を出しているが、大手英系銀行は 7 月に 0.25%カットした後、
QE 策の再開を予想している。
●ここからのマーケット
カーニー総裁の発言を受け、英国は「アメリカの次の利上げ国」から一転し、「利下げ国」となっ
た。そして、利下げだけではなく、QE 策を再開する可能性も出てきており、英ポンド安に動きやす
い地合いとなっている。
今週の「ユーロ/英ポンド」は 0.84 ポンド台に近づくレベルにまで英ポンド安が進行している。英国
の両替商では英ポンド/ユーロでの表示が一般的だが、週末買い物に行った時に前を通った両替
商の表示が 1.1700 ユーロとなっているのを見て、「とうとう 1.20 ユーロを割れて本格的な英ポンド
安の領域に入ってきたなぁ…」と感じた。
「英ポンド/ユーロ」の 1.2000 ユーロは、「ユーロ/英ポンド」では 0.8333 ポンドである。英国の輸出
入業者は、「英ポンド/ユーロ」のキリの良い数字で予約を入れて くることが多い。念のためにチャ
ートに 1.25 ユーロ=0.8000 ポンド、1.20 ユーロ=0.8333 ポンド、1.15 ユーロ=0.8595 ポンドを入れ
てみたが、特にこのレベルで プライスがピタッと止まる訳ではないが、それまでの動きの速度が落
ちるレベルであることは確かだ。
今後『「英ポンド/ユーロ」の 1.2000 ユーロ=「ユーロ/英ポンド」の 0.8333 ポンド』がサポートになる
ようであれば、次のターゲットは、『「英ポンド/ユーロ」の 1.1500 ユーロ=「ユーロ/英ポンド」 の
0.8695 ポンド』を目指す動きになるだろう。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏( ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
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