【2017年1月11日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~ 「松崎美子」が注目テーマを一刀両断! 『2017 年の英・欧・米は 究極の「政治相場」へ』 執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ マーケット動向を予想する際に、私が頼りにしているファンダメンタルズは主に 4 つある。ひとつ は、金融政策。次は、財政政策、その次に経済(マクロ)政策、最後が政治だ。そして、今年は【究 極の政治相場の一年】となる予感がする。 昨年の Brexit(英国の EU 離脱)やトランプ氏勝利が確定するまで、政治への注目度はさほど高く はなかった。しかし、今年は欧州主要国で国政/大統領選を控えていることもあり、俄然【政治】に 関心が集まっている。 ポジションを持つ立場として、政治相場は、非常にやりにくい。というのは、政治は個人の主観が 入りやすいため、同じ情報が出ても、受け止め方に差が出るからだ。特にトランプ次期大統領の 場合、わずか 140 字の Twitter で重要な発言をするため、マーケットを取り巻く情勢が 1 秒で大き く激変する危険性がつきまとう。その点を頭にしっかり叩き込んで、今年の相場と対峙するつもり である。 ●Unhappy New Year、メイ首相 英国のメイ首相にとって、2017 年はスタートから Unhappy な出来事が続いた。元旦に国民に向 けて新春メッセージを流した同首相は、「国民みなが納得する Brexit 案を検討している。」と、やや ソフト Brexit 寄りの発言をした。しかし、そのわずか 2 日後、駐 EU 大使のアイバン・ロジャーズ氏 が突然の辞任を発表。この人は、ヨーロッパ通であり、Brexit 交渉団のキーパーソンとして活躍す るはずであった。BBC テレビが公開した同氏の辞表には、「EU 離脱交渉が予定通りに今年 3 月末 からスタートした場合、そのわずか半年後に自分の任期が切れる。それを避けるために、交渉の スタート時点から新任の EU 大使を任命し、その人が最初から最後まで交渉団の一員となるのが 最良だと思い、辞任することに決めた。」 という出だしで始まっていた。しかし、読み進むと本音は かなり違っている。「駐 EU 大使として、EU 各国との調整をしてきたが、英国政府の Brexit シナリオ が全く形を成していないだけでなく、シナリオ自体が混乱を極めていて、非常に動きづらかった。」 と暴露した。そして、同氏とメイ首相との関係があまり良くなく、時には対立関係となっていたこと や、メイ政権で新設された Brexit 担当省では、EU との交渉に必要な人材が徹底的に不足してい ることも嘆いていた。その中でも特に私が気になったのは、「EU との離脱交渉には 10 年くらいか かる。特に貿易交渉にはどれほどの時間がかかるか、英政府はあまりにも軽く考えている。」と警 鐘を鳴らしていた点である。 この重量級の前触れなしの辞任を受け、メイ首相のリーダーとしての素質に疑問符が生じたこと は想像に難くない。この翌日、エコノミスト誌は、【メイ首相、たぶん最も優柔不断な首相】というセ ンセーショナルなタイトルで特集記事を載せた。 (参照) http://www.economist.com/news/leaders/21713837-after-six-months-what-new-prime-minister-stands-still-u nclearperhaps-even 年初から、アンチ・メイ首相の動きが高まるなか、同首相は 1 月 8 日(日)のテレビ・インタビューに 応じた。当然ながら、インタビュー内容はほとんど Brexit に関する質問となり、そこで同首相は「移 民制限と英国の法律を適用することを優先する」という趣旨の発言をしたため、私を含む視聴者 たちは、ハード Brexit は避けられないと腹をくくったのである。 翌日、月曜日のマーケットでは、このハード Brexit の可能性を織り込むように、「英ポンド/米ドル」 は昨年 10 月以来の安値をつけた。 ●Brexit とシングル・マーケット 昨年 6 月に実施された国民投票では、【EU からの離脱】について問われたが、シングル・マーケ ット(EU 単一市場)については全く触れていない。そして、いざ離脱に向かって動き始めると、実は この部分が一番大事であることが判明した。国民の 52%が離脱に票を入れたが、シングル・マーケ ットに対する解釈はそれぞれで、あらたな不透明感が生じている。 メイ政権が Brexit 条件を決める際には、シングル・マーケットの扱いをどうするのか?これが最大 の難問となることは間違いない。ちなみにマーケットのコンセンサスでは、ハード Brexit=英ポンド 売り、ソフト Brexit=英ポンド買いとなっている。 ●2017 年政治相場 文頭でも書いたが、今年は政治色が濃い相場展開が予想される。やはり、その中でもトランプ 新大統領の政策運営のタイミングと規模、そして欧州主要国の国政/大統領選がメインとなるだろ う。参考のために、過去の政治相場をいくつか挙げてみた。 この 8 つの政治相場での共通点は、【当該国の通貨が売られた】ことである。今までのところ、アメ リカの米ドルは一人勝ち状態であるが、トランプ大統領就任後、このトレンドに変化が生じるの か?そして、選挙年となる欧州のユーロも例外なく売られるのか?非常に気になるところだ。 ●今年の主なイベント・スケジュール 政治相場なだけに、今後の政治イベントを見ない限り、予想が立てづらい。これが今年 9 月まで の主なイベント・スケジュールとなる。 まずは、今週水曜日のトランプ次期大統領の記者会見で、何か新しい発表があれば、マーケット が動き始めるだろう。 ●ここからのマーケット 何度もくどくて恐縮だが、トランプ次期大統領の記者会見での発言次第であるが、執筆時点で は、英ポンド関連ペアの動きが気になっている。 ここでは「ユーロ/英ポンド」と「英ポンド/円」、それぞれの日足に一目均衡表を載せてみた。 最初は「ユーロ/英ポンド」であるが、既に日足は雲の中に突入しており、遅行線(黄緑の線)が基 準線(青い線)を上に抜けると、0.89 ポンド台くらいまでのユーロ高/ポンド安となる可能性が出てく る。 同様に「英ポンド/円」の日足を見ると、こちらは遅行線(黄緑の線)が転換線(赤い線)の手前まで 降りてきている。日足は既に下落を示唆しているが、ひとまずは遅行線の動きを注視してみたいと 考えている。ここを綺麗に下抜ければ、138 円ミドル~139 円台が視野に入る。 -------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】 東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決 定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。 その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、 証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。 -------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として おります。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明 示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属 しております。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく ださい。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子 氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。
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