米景気回復に自信が持てない 藤代 宏一

Market Flash
米景気回復に自信が持てない
2016年4月8日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】~失業保険:企業収益圧迫にもかかわらず堅調~
・新規失業保険申請件数は26.7万件と市場予想(27.0万件)より良好な結果。前週の27.6万件から減少して
4週移動平均も同じく26.7万件と景気後退後の最低付近に位置した。目下の失業保険申請件数は、水準・
減少ペースともに雇用統計NFPの20万人増と整合的な数値。現段階では、企業収益の圧迫が雇用削減に
繋がるとの懸念は杞憂に終わっている。
(前年比、%)
新規失業保険申請件数
(千件)
100
400
80
370
60
新規失業保険申請件数
40
340
20
310
0
280
-20
-40
250
12
13
14
15
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
16
(備考)Thomson Reutersにより作成。52週前比(≒前年比)
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。欧州株が総じて軟調な展開となるなか、原油価格下落も嫌気され、米国株は売り優
勢。S&P500、NYダウはともに1%程度下落。WTI原油は37.26㌦(▲0.49㌦)で引けた。
・前日のG10 通貨はJPYが最強で反対にAUDの弱さが目立った。USD/JPYはオセアニア時間から米国時間午前
までほぼ一貫して下落。一日を通してみるとJPYは1.5%上昇した。日本政府による介入観測も浮上せず、
ロングポジションの構築が進んだとみられる。
・前日の米10年金利は1.689%(▲6.6bp)で引け。ブンズ債ラリーに追随して欧州時間から堅調に推移した
米債市場は、軟調な米株現物を横目にほぼ一貫して買い優勢。質への逃避がみられた。欧州債市場はコア
堅調、周縁国軟調。ドイツ10年金利が0.089%(▲3.0bp)で引けたほか、イタリア(1.389%、+10.4bp)、
スペイン(1.604%、+9.0bp)、ポルトガル(3.419%、+23.5bp)が大幅に金利上昇。3ヶ国加重平均の
対独スプレッドは大きくワイドニング。
【国内株式市場・経済指標・注目点】
・日本株は海外時間のUSD/JPY下落を受けて安寄り後、もみ合い。
・USD/JPYが一時107円台に突入。日銀の追加緩和期待が盛り上がらないことに加えて政府の為替介入も難し
いなど理由は様々だが、本質的には米国の期待実質金利が低下していることが大きい。米国の期待実質金
利は7年ゾーンまでマイナス圏に突入、10年ですら辛うじてプラス圏を維持している状態だ(名目10年金
利から10年BEIを差し引いて算出)。昨年12月頃との比較では、FEDの4回利上げシナリオが崩れる
下で名目金利が急激に低下するなか、原油価格安定と現実のコアインフレ率上昇等を背景に期待インフレ
率(10年BEI)が横ばい推移となっているため、その結果として期待実質金利が低下している。これが
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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最近のUSD/JPY下落の主因と考えられる。実際、日米期待実質金利差(米-日)は2016年入り後から急激に
縮小しており、USD/JPYの変動を綺麗に説明している。FEDの利上げ観測復活にもかかわらず、米実質金
利は上昇しないどころか低下しており、このことは市場参加者が追加利上げとその後の米景気減速を同時
に織り込んでいることを映し出しているのだろう。つまり、米経済が利上げに耐えられるかについて投資
家は自信を持っていないということだ。こうした状況下でFEDがタカ派姿勢を強めた場合、セオリーに
反して期待実質金利が低下、USD/JPY下落を助長する可能性がある。
米
(%)
期待インフレ率・実質金利(10年)
実質金利差・USD/JPY
3.5
3
(%)
1.3
125
名目金利
2.5
1.1
2
120
USD/JPY
1.5
0.9
期待インフレ率
1
115
0.7
0.5
実質金利
110
0
0.5
実質金利差(右)
-0.5
105
15/01
-1
13/01
13/07
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
<主要株価指数>
終値
15538.03
17,541.96
9,530.62
6,136.89
4,245.91
(円)
15800
前日比
-211.81
-174.09
-93.89
-24.74
-38.73
108.69
1.1369
-0.071
1.689
1.328
0.089
0.437
1.389
1.604
15/07
15/10
16/01
16/04
(備考)Bloombergにより作成
(備考)Thomson Reutersにより作成
日経平均※
NYダウ
DAX(独)
FTSE100(英)
CAC40(仏)
<外国為替>※
USD/JPY
EUR/USD
<長期金利>※
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
<商品>
NY原油
NY金
0.3
15/04
37.26 ㌦
1236.20 ㌦
-0.019
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
9:49 現在
15700
15600
15500
15400
(㌦)
17800
17750
17700
17650
17600
17550
17500
17450
17400
0.48
-0.00
%
%
%
%
%
%
%
日経平均株価
%
%
%
%
%
%
%
-0.49 ㌦
13.70 ㌦
※は右上記載時刻における直近値。図中の点線は前日終値。
111.0
110.5
110.0
109.5
109.0
108.5
108.0
107.5
107.0
NYダウ平均株価
USD/JPY
(出所)Bloomberg
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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