豪州準備銀行による金融政策と豪ドル相場への言及

2016年4月5日
豪州準備銀行による金融政策と豪ドル相場への言及

豪州準備銀行(RBA)は10会合連続で政策金利据え置きを決定。RBA総裁は現行の金融政策が適切と判断。

豪州経済は資源投資ブーム後のリバランスが継続中。非資源州では個人消費など経済活動に底堅さがみられる。

RBAは必要があれば追加利下げの余地があるとの方針示す。市場では年内は政策金利据え置きとの見方が大勢。

足元の豪ドル高に対してRBAは明確なけん制避ける。国内景気の底堅さや資源価格上昇が背景となっている可能性。
RBAは10会合連続で政策金利の据え置きを決定
図1:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率
豪州準備銀行(RBA)は4月5日の金融政策理事会にお
いて、市場予想通り、政策金利を2.00%で据え置く決定
5.0
を下しました(図1)。RBAによる政策金利の据え置きは、
4.5
2015年6月以降、10会合連続となります。スティーブンス
4.0
RBA総裁の声明文では、安定した経済成長やインフレ率
の目標への収れんに対する合理的な見通しを背景に、現
行の金融政策が適切と判断したとの言及がなされました。
非資源州が個人消費のけん引役に
今回の理事会で示されたRBAの景気判断は、「豪州経
済は資源投資ブーム後のリバランスが継続中である」との
概ね従来通りの見方が示されました。足元の豪州の経済
指標では、西オーストラリア州などの資源州が低迷する一
(%)
豪州準備銀行の政策金利
(キャッシュ・レート)
2015年10-12月期
2.0%
3.5
3.0
2.5
2.0
インフレ目標
レンジ(2~3%)
1.5
2.00%
基調インフレ率
(前年比)
1.0
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS)
方、ニュー・サウス・ウェールズ州やビクトリア州など非資源 (期間)基調インフレ率:2009年1-3月期~2015年10-12月期
政策金利:2009年1月1日~2016年4月5日
州の経済活動の底堅さが示される傾向がみられます。
2016年2月の小売売上高は資源州では前年比-0.1%
(注)基調インフレ率は消費者物価指数(CPI)のトリム平均値と加重中央
値の平均により算出。
へ落ち込んだものの、非資源州では前年比+3.8%と堅調
図2:豪州の小売売上高(資源州と非資源州)
な消費が継続していることが示されました(図2)。個人消
費の面でも、2011~2012年頃の資源投資ブームの局面
では資源州の消費が大きく伸びましたが、2013年後半以
降は資源州の消費の伸びが鈍化する中、非資源州が個
12
10
人消費のけん引役となっています。
8
市場では年内の金利据え置きの見方がなお大勢
6
先行きの金融政策に関しては、スティーブンス総裁はイ
4
ンフレ動向や労働市場の回復度合いを見守る姿勢を示し
ながら、景気下支えの必要があれば追加利下げの余地が
あるとの見方を維持しています。ブルームバーグ集計の市
場コンセンサスでは、RBAの政策金利は2016年内は据え
置きの見方が依然として大勢となっています(26機関中、
2016年末までの政策金利据え置き予想が13機関、利下
げ予想が11機関、利上げ予想が2機関)。
(前年比、%)
非資源州
+3.8%
全体
+3.3%
2
資源州
-0.1%
0
-2
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(出所)ABS (期間)2010年1月~2016年2月
(注)資源州は西オーストラリア州と北部準州。非資源州はニュー・サ
ウス・ウェールズ州やビクトリア州などその他の州。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種
データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、
将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予
告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に
よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作
成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
1
2016年4月5日
図3:豪ドル相場の推移(対円、対米ドル)
豪ドル相場は対米ドル・対円で緩やかに上昇傾向
(米ドル)
(円)
2016年3月以降の豪ドル相場は、米ドルや円に対して緩 105
1.05
対円レート(左軸)
やかに上昇する傾向が続いています。豪ドルの対米ドル相 100
場は足元で0.75米ドル近辺まで豪ドル高・米ドル安が進行 95
し、豪ドルの対円相場も1豪ドル=85円近辺まで回復して
います(図3)。
足元での豪ドル相場の底堅さの背景として、①中国向け
の鉄鉱石価格が2015年末の1トン=43.57米ドルから足
元では同55米ドル近辺へ約25%上昇していること(図4)、
②日欧のマイナス金利政策や米国での利上げ観測後退
により豪ドルなどの高金利通貨への投資家の関心が向い
ているとみられること、③豪州景気が内需中心に比較的
0.95
90
0.90
85
0.85
80
0.80
豪ドル高
75
0.75
対米ドルレート(右軸)
70
0.70
豪ドル安
65
14年1月
0.65
14年7月
15年1月
15年7月
16年1月
(出所)ブルームバーグ (期間)2014年1月1日~2016年4月5日
底堅さを維持していること、などが挙げられます。
RBAは豪ドル高に対する明確なけん制は避ける
1.00
図4:中国向け鉄鉱石価格と豪ドル相場
(米ドル)
(米ドル/トン)
75
0.90
今回のRBA理事会では、1豪ドル=0.75米ドル近辺まで
中国向け鉄鉱石価格(左軸)
65
0.85
55
0.80
45
0.75
られる結果となりました。
35
0.70
RBAによる過去の豪ドル相場への言及の変遷
25
2015年1月
豪ドル高が進んだことを受けて、RBAが豪ドル高への警戒
姿勢を再び強めるかに注目が集まりました。結果、今回の
RBAの声明文では、「豪ドル高は経済の調整を複雑にする
可能性がある」と豪ドル高が及ぼす悪影響について言及
がなされたものの、豪ドル高に対する明確なけん制は避け
豪ドルの対米ドル相場(右軸)
2014年以降のRBA理事会での豪ドル相場に関する言
及の変遷(図5)を見ると、過去は1豪ドル=0.75~0.80米
推定値を上回っている」などの言及を声明文に盛り込み、
豪ドル高への警戒姿勢を明確に示す傾向がみられました。
しかし、今回、1豪ドル=0.75米ドル近辺の為替水準でも
RBAが豪ドル高に対する緩やかなけん制を示すに留めた
ことは、景気回復や資源価格上昇などによって豪州経済
が豪ドル高への耐性を増しているとの認識が背後にある可
2016年1月
(出所)ブルームバーグ、メタルブレティン
(期間)2015年1月1日~2016年4月5日(鉄鉱石価格は4月4日)
図5:RBA理事会での豪ドル相場への言及の変遷
ドルの為替水準では、RBAは「豪ドル相場は一段と下落す
る公算」や「豪ドル相場はファンダメンタルズ価格の多くの
0.65
2015年7月
1.00
(米ドル)
「豪ドル相場は歴史的基準からみて依然として高い」
0.95
「豪ドル相場はファンダメンタルズ価格の
多くの推定値を上回っている」
0.90
「豪ドル高は経済の調整を
複雑にする可能性」
0.85
0.80
0.75
「豪ドル相場は一段と下落する公算
(下落の必要性ある)」
能性があります。今後、RBAによる豪ドル相場への見方が
0.70
変化するかどうかは、豪州景気の先行きや資源価格の動
0.65
向などが注目材料となりそうです。
0.60
2014年1月
「豪ドルは資源価格の大幅下落に適応している)」
豪ドル相場 (対米ドル)
2014年7月
「豪ドルは経済見通しの変化に適応している」
2015年1月
2015年7月
2016年1月
(出所)ブルームバーグ、RBA (期間)2014年1月1日~2016年4月5日
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種
データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、
将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予
告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に
よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作
成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
2