気象庁 です! 4月号 平成28年 (2016年) 日本最東端の観測地点~南鳥島気象観測所 図1 南鳥島 南鳥島(東京都小笠原村)は、東京から南東約1,860kmの太平洋上に位置しています。 標高は最高で約9m、周囲約5.5kmの、隆起サンゴ礁でできた日本最東端の小さな島で す(図1)。 この南鳥島での気象観測は、昭和10(1935)年10月に海軍水路部気象班により開始さ れました。戦後は米軍の占領下でしたが、昭和43(1968)年の小笠原諸島日本返還以降 は、気象庁が南鳥島気象観測所を設置し、防衛省の支援のもと気象観測を行っていま す。南鳥島には、現在、気象庁のほか、海上自衛隊及び関東地方整備局の職員が駐在 していますが、一般の住民はいません。気象庁は常時10名ほどの職員が3か月交替で 派遣されています。 南鳥島気象観測所では、気温や降水量などの地上気象観測や高層気象観測を実施 するとともに、南米チリ沖等の日本から遠く離れた太平洋で発生した地震に伴う津波(遠 地津波)を、我が国沿岸に到達する前に捉えるために、平成8(1996)年から遠地津波観 測を行っています。これら観測されたデータは、衛星等を経由し気象庁へ伝送され、気 象警報・注意報、津波警報・注意報などの防災情報に活用されています。 また、太平洋上の孤島であるため大都市域から遠く、人間活動の影響を直接受けない という利点を生かして、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス、大気中に浮遊する微 粒子(エーロゾル)、酸性雨、日射や赤外放射の強さ、上空のオゾン量等の様々な地球 環境観測を実施しています。世界でもこれだけ多様な観測を行っている観測所は稀とい えます。南鳥島における観測は世界的に高く評価されており、平成5(1993)年に国連専 門機関である世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)が構築する全球 大気監視(GAW:Global Atmosphere Watch)計画において、地球規模の環境を観測する のに最も適していると認められた、国内で唯一、世界でもわずか30観測点(図2)しかな い全球観測所の内のひとつです。このような環境で得られた貴重な観測データは、気象 庁が運営するWMO温室効果ガス世界資料センター(WDCGG:World Data Centre for Greenhouse Gases)等を通じて公開しており、地球温暖化、酸性雨、オゾン層などの監 視や、それらに関連する各種の施策立案の基礎データとして役立てられています。 図2:全球大気監視(GAW)計画の観測網 の地点は全球観測所(WMOホームページより) さらに、気象庁では平成23(2011)年か ら防衛省の協力を得て、職員が南鳥島 に渡る際に乗る航空機を利用し、同島 までの飛行経路上(高さ約6kmの対流 圏中層)で大気試料を採取する温室効 果ガス観測(図3)を実施しています。上 空で採取した大気は気象庁に持ち帰っ て分析し、その結果を国内外に公表して います。この様な航空機による北西太 平洋域での定常的な観測は、世界的に 見ても希少な取り組みです。観測を継続 しデータが蓄積されれば、これまで知ら れていなかった対流圏中層の温室効果 ガスの分布や循環、ひいては地球温暖 化のメカニズム解明につながることが大 いに期待されています。 図3:航空自衛隊C-130H輸送機を 利用しての温室効果ガス観測
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