放射能計算の基礎とDCHAIN-SPの応用実習

PHITS
Multi-Purpose Particle and Heavy Ion Transport code System
放射能計算の基礎と
DCHAIN-SPの応用実習
2015年8月改訂
Title
1
本実習の目的
 放射能計算の基礎に対する理解を深め、計算結果
出力時間の設定方法を学習します。
 放射線を取り扱う施設で実験を実施する際の課題申
請に求められるターゲット物質の放射能評価や、実
施計画書の策定において考慮すべき実験中の作業
者の被ばく線量の概算方法など、応用事例の実習を
通じて、放射能等の評価方法を学習します。
Purpose
2
用語の解説
 放射能:
・ 放射性物質が壊変して放射線を放出する性質
・ 放射能の強さ (単位:Bq = 崩壊/秒)
※ベクレルは、ウランの塩類から放射線が出ていることを発見(1896)
 放射性物質(放射性核種、放射性同位元素とも言われる):
・ 放射能を持つ物質(核種、同位元素)
 放射線:
・ エネルギーを持って媒質中を伝搬している粒子
(PHITSで挙動解析が可能な陽子・中性子・光子など)
⇒ 放射線・放射性物質ともに規制の対象になる。
Glossary
3
実習内容
1. 放射能計算の基礎
2. 応用演習
3. まとめ
Table of Contents
4
放射性壊変
 放射性核種Aが核種Bに放射性壊変する場合、
λ
:崩壊定数
放射性核種A → 核種B
核種A
100%
T1/2:半減期
核種B
このとき、
放射性核種Aを親核種、核種Bを娘核種と言う。
これを、それぞれの核種について見てみると、
放射性核種A:放射性核種Aの個数は、崩壊定数λ
により時間とともに減少(放射能の減衰)
核種B:核種Bの個数は、時間とともに増加(生成)
※ ここでは、壊変の分岐比は100% とする。
Radioactive decay
5
放射性壊変による放射能の減衰
 放射性壊変による放射能(放射性核種A)の減衰
t/T1/2
N = N 0 exp(-λt ) = N 0 (1/2)
※崩壊定数λ、半減期 T1/2
放射性核種A
放射性核種A
減衰曲線
減衰曲線
半減期 T1/2
0
2T1/2
4T1/2
6T1/2
崩壊定数 λ
8T1/2
10T1/2
0
2T1/2
4T1/2
6T1/2
8T1/2
10T1/2
放射性壊変による放射能の減衰曲線(左:線形、右:片対数)
Decay curve
6
放射性壊変による核種の生成
 放射性壊変による核種Bの生成(純増)
N = N 0 (1 - exp(-λt )) = N 0 (1 - (1/2)
t/T1/2
)
※崩壊定数λ、半減期 T1/2
分岐比は100%
核種B
生成曲線
半減期 T1/2
0
2T1/2
4T1/2
6T1/2
8T1/2
10T1/2
放射性壊変による核種の生成曲線(線形)
Growth curve
7
生成曲線と飽和係数
 生成・崩壊方程式の一般解は、
飽和係数
N x(t ) = C x /λx (1 - exp(-λxt ))
※崩壊定数λx、半減期 Tx
放射性核種X
C xTx
生成曲線
(= 飽和曲線)
半減期 T x
0
2Tx
4Tx
6Tx
8Tx
← C x/λx : 生成量の上限値
(最大想定:飽和放射能)
10Tx
中性子照射による生成曲線(線形)
197Au
(n,γ)198Au のとき、
C x = φσxN Au-197
ここで、
φ (cm-2 s-1):中性子束
σx (cm2):反応断面積
Growth curve and saturation coefficient
8
指数関数的な放射能の時間進展
 放射能は、放射性核種の崩壊定数λ(または、半減
期 T1/2)により、時間とともに指数関数的に増減する。
⇒ 計算結果出力時間の設定の際は注意してください。
出力時間の間隔を粗くとって直線で結んでしまうと
間違った解釈をしてしまう可能性があります。
粗くとった結果
細かくとった結果
Output time
9
実習内容
1. 放射能計算の基礎
2. 応用演習
3. まとめ
Table of Contents
10
計算体系の確認
track_yz_dump.eps
拡大図
ターゲット
アルミニウムのターゲットと、
鉄製のビームダンプで構成
される体系
ビームダンプ
10 MeV中性子
2m
Calculation geometry
11
課題1:放射能の時間減衰を調査
手順
1. PHITS(beamdump.inp), DCHAIN(tdchain.out)と続けて実行しよう
2. ターゲットの放射能,及び主要な放射性核種の半減期を確認しよう
3. 主要な核種の放射能が全て1/2以下になるまでの時間減衰を出力しよう
(tdchain.outを変更しDCHAINのみを再実行する)
beamdump.inp
ヒント




[T–Dchain]
…
file = tdchain.out
timeevo = 2
1.0 h 1.0
23.0 h 0.0
outtime = 1
1.0 h
tdchain.act には、照射直後の放射能が出力されます
領域1(ターゲット)の主要な核種(TOP10)は,85行目以降に出力されています
各放射性核種の半減期は,27行目付近に出力されています
上位4核種の中で最も半減期が長い核種の半減期近くまで時間減衰を出力す
るよう tdchain.out の itout ([T-Dchain]の outtime に相当)を変更する
Exercise 1
12
課題1:解答
tdchain.act の85行目以降
← 60分後(照射直後)の結果

27Mg、24mNa、24Na、28Alの半減期は?(27行目付近に記載)
27Mg:
570秒 ≒ 約10分
24mNa: 0.02秒
24Na: 54,000秒 ≒ 約15時間
28Al: 130秒 ≒ 約2分
⇒ 約16時間後までの時間減衰を出力する
Exercise 1
13
課題1:解答(つづき)
結果の例
tdchain.eps
tdchain.out
35行目付近…
! --- output time --itout =
6
0.5 h
1.0 h
2.0 h
4.0 h
8.0 h
16.0 h
※ itout は、[T-Dchain]の
outtime に相当します。
 照射直後の1時間で全放射能が急激に減衰(28Mg,24mNaの寄与)
 その後は,ほぼ24Naの半減期に従って減衰
Exercise 1
14
課題2:ターゲットの放射化量を制限する
ターゲットの放射能が106Bq/cc以下となるビーム強度・冷却時間は?
tdchain.act
beamdump.inp
[T–Dchain]
…
timeevo = 2
1.0 h 1.0
23.0 h 0.0
outtime = 1
70.0 m
$ beam current (nA)
set:c21[100.0]
amp = c21*1.0e-9/1.602e-19
99行目:total activity 6.24690E+09 [Bq/cc]
100nAで1時間照射した直後の放射能は
6.25x109(Bq/cc)
3桁以上下げる必要がある
手順
1. まずは,ビーム強度を1/10にしてみる(c21もしくはampを変更)
amp:timeevo で強度1.0と指定した場合のフラックス(個/s)
c21:ビーム電流(nA) → ただし電荷を1と仮定
2. 出力時間を変更し,106(Bq/cc)以下となる冷却時間を探す
Exercise 2
15
beamdump.inp
課題2(解答)
[T–Dchain]
…
timeevo = 2
1.0 h 1.0
59.0 h 0.0
outtime = 8
0.5 h
1.0 h
2.0 h
4.0 h
8.0 h
16.0 h
32.0 h
59.0 h
$ beam current (nA)
set:c21[10.0]
amp = c21*1.0e-9/1.602e-19
tdchain.eps
 放射能はビーム強度に比例
 ある程度冷却時間をおけば,放射能は24Naの半減期のみに従って減衰
 100nA・1時間照射直後の24Naの放射能は1.47x108(Bq/cc)であった
1
 
2
 TC 
 15.0 


1.0 106

1.47 108  0.1
→ 冷却時間Tc = 58.16(h) → ほぼ一致
Exercise 2
16
課題3:照射室の空間線量率評価
計算条件
1. ターゲットから1m,ビームダンプから2m離れた位置に設置したエリア
モニタの線量率を計算します
2. 照射完了から10分後(照射開始から70分後)に入室すると仮定します
1m
エリアモニタ(ここの線量率)
2m
ターゲット
ビームダンプ
手順
1. tdchain.out で”itout”を変更し,70分後の放射能を計算する
2. tdchain.act の領域毎に出力される空間線量率”total g-ray doserate”を,各領域からの距離を考慮して手計算で加算する
ある点にその領域の全ての放射能が集中したと仮定し,
その点から1m離れた地点における空間線量率(μSv/h・m2 )
Exercise 3
17
課題3(解答)
tdchain.out
…
! --- output time --itout =
1
70 m
tdchain.act
cell 1
cell 2
 Cell 1からの寄与:4.43246x103/1.02 = 4.43x103 (μSv/h)
 Cell 2からの寄与:1.04863x104/2.02 = 2.62x103 (μSv/h)
合計 7.05 (μSv/h)
 実際は,自己遮へいがあるのでもう少し低くなる
 より詳細に計算するには,DCHIANの結果を線源としたPHITSの再計算が必要
どのような核種が寄与しているかは,TOP 10リストの右側に表示
今回の場合,ターゲットは27Mg,ビームダンプは56Mnが支配的な寄与を持つ
Exercise 3
18
微量元素の取り扱い
 鉄には、原子番号が近いCoなどが不純物としてppm
オーダーで混入しています。
※ 長期間稼働予定の施設の誘導放射能の評価には、
CoやEuなどの不純物を含めた評価が必須です。
 微量のため、PHITSを再計算することなく評価が可能です
 ただし,微量でない場合や,20MeV以下の中性子以外が
支配的な場合は,PHITSの再計算が必要となります
Parameters for [T-Dchain]
19
課題4:長期間の減衰を調べる
微量元素を足して,~50年の線量率の推移を調べよう
tdchain.out
!1)HRGCMM 2)IREGS 3)ITGNCLS 4)FLUXS 5)HNFLUXS 6)VOLUMES
DUMMY02
2 4 2.8862E+07 n.flux_02 9.8175E+04
Fe-54
4.8796E-03
Fe-56
7.7233E-02
Fe-57
1.7668E-03
Fe-58
2.5239E-04
※ itgnucls(3つ目のパラメータ)で含まれる元素数を指定します
手順(tchain.outを変更します):
1.
2.
3.
ビームダンプの構成物質にコバルト(59Co、5.0x10-7)を足します
“irradiation time”, “output time”を変更し,50年後まで10年毎に結
果を出力するようにします
DCHAINを実行します
Exercise 4
20
tdchain.out
! --- irradiation time --itstep =
2
1.0000E+00 h 1.0000E+00
50 y
0.0000E+00
! --- output time --itout =
6
70 m
10 y
20 y
30 y
40 y
50 y
...
iregon =
2
!1)HRGCMM 2)IREGS 3)ITGNCLS..
DUMMY001
1 1
Al-27
6.0278E-02
!1)HRGCMM 2)IREGS 3)ITGNCLS..
DUMMY002
2 5
Fe-54
4.8796E-03
Fe-56
7.7233E-02
Fe-57
1.7668E-03
Fe-58
2.5239E-04
Co-59
5.0e-7
課題4(解答)
tdchain.act
dominant nuclides (top 10)(最後の出力)
.... nuclide [uSv/h*m^2] [%]
.... Co 60 5.5573E-09 99.76
.... Fe 55 1.3441E-11 0.24
.... Mn 53 1.0948E-13 0.00
.... Mn 54 2.7457E-19 0.00
.... H 3 0.0000E+00 0.00
線量の99%
以上が60Co
による寄与
56Mnが支配的
54Mnが支配的
60Coが支配的
tdchain.eps(最後のページ)
Exercise 4
21
実習内容
1. 放射能計算の基礎
2. 応用演習
3. まとめ
Table of Contents
22
まとめ
 放射能は、崩壊定数λ(または、半減期 T1/2)により、
時間とともに指数関数的に増減するため、計算結果
出力時間の設定には注意が必要です。
 応用実習を通じて、
ターゲット物質の放射能評価とその放射能を減少
させる方法(ビーム強度、冷却時間)、
作業者の被ばく線量の概算方法を学習しました。
 また、長期間にわたる放射能評価において必須とな
る微量元素の取り扱いおよび微量元素の設定方法に
ついて学習しました。
Summary
23