どを背景として、日本人の働き方や生活意識、価値観が大きく変化した時期に あたる。 産業の情報化やサービス化など、第2次産業(製造業)にも高付加価値化が 求められる時代を迎え、男女の別なく活躍できる社会とすることが重要になっ てきた。しかし、日本の企業社会は、女性の能力を活かすという組織体制を持っ ておらず、女性の就労継続(定着)や活躍できる組織づくりへの取り組みが大 きな経営課題として浮上した。 また、高齢化の進行によって、男女ともに介護負担の問題も指摘される。さら に退職後の第2の人生をイキイキと過ごすために、早い時期から地域や趣味の コミュニティに参加することの重要性が社会的に共有されるようになる。こち らは職場や仕事のコミュニティしか持たない男性にとっても大きな課題である。 こうした社会動向を捉えて、平成19(2007)年に関係閣僚、経済界・労働界・ 地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」において、「仕事と生活の 調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための 行動指針」が策定された。 この憲章では、「仕事と生活が調和した社会」を目指すとして、次のような 社会像を目標として掲げている。 「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を 果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期と いった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」 (具体的な社会イメージ) ①就労による経済的自立が可能な社会 ②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会 ③多様な働き方・生き方が選択できる社会 こうした取り組みによって、官民あげてワーク・ライフ・バランスの実現に 向けての取り組みが進んでいる。 ワーク・ライフ・バランスとは、男女を問わず誰もが自分の希望する人生や ライフスタイルを実現していくための考え方である。とりわけ仕事と家庭の二 者択一を迫られることの多い女性にとって、選択肢が広がる効果が期待できる。 つまり、女性の人生やライフスタイルを多様にするものである。 しかし、育児休業制度などの制度は充実したのに、女性が活躍できる社会に はまだまだなっていないし、さほど進んでいるという実感も少ない。実はここ に日本のWLBに関する問題点あるいは課題が潜んでいる。 WLBの実現には 制度とともに働き方の変革が必要 日本の場合、 「ワーク・ライフ・バランス」を子育て支援の制度問題と考え てしまう傾向がある。そうすると「ワーク・ライフ・バランス」は女性の問題 17
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