規格化条件と直交条件

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規格化条件と直交条件
電子の波動関数では、全空間に分布する電子を(あるいは、電子の存在確率
を)加え合わせば 1 となる必要がある。従って、波動関数の絶対値を二乗した
2
電子の存在確率 y n ( x, y , z ) を全空間にわたって足し合わせると 1 になる。
¥
¥
ò ò ò
¥
2
- ¥ -¥ -¥
y n ( x, y , z ) dxdydz = 1
(2.20)
この条件は「規格化条件」と呼ばれる。
簡単な例として、長さ a の 1 次元の井戸の中の粒子の波動関数
æ np ö
(A は規格化定数)
(2.16)
y = A sinç
x÷
è a ø
は、存在する範囲が 0~a であるので、その全範囲にわたって積分すると、
a
a 1 - cos( 2 npx / a )
a
ö
2
2 æ np
2
(2.21)
dx = A 2 = 1
ò0 A sin çè a x ÷ødx = A ò0
2
2
でなければならない。従って、規格化定数は A=(2/a)1/2 となる。
Schrödinger 方程式の解の波動関数は、上記のように規格化されているが、
もう一つの条件として、解の波動関数が複数ある時は、どの 2 つの波動関数も
互いに直交していなければならない。式で表すと直交座標では
¥
¥
ò ò ò
¥
-¥ -¥ -¥
y n* ( x , y , z )y m ( x, y , z )dxdydz = 0
(2.22)
極座標では
¥
p
2p
0
0
0
ò òò
y n* (r , q , f )y m (r , q , f )r 2 sin q drdqdf = 0
(2.23)
と書ける。電子の波動関数で考えると、2 つの電子間の静電反発がゼロになっ
ていることを表していることになる。
例として、水素原子の波動関数のうち、1s と 2px の波動関数が互いに直交して
いることを示して見よう。2 章の補足説明「水素原子の波動関数」にある 1s と
2px の波動関数について、規格化定数を外して、積分してみると
¥
p
2p
0
0
0
ò òò
exp(-r / a0 ) × r exp( -r / 2a0 ) sin q cos fr 2 sin q drdqdf
2p
p
0
0
¥
(2.24)
= ò cos fdf ò sin qdq ò r exp(-r / a0 ) exp(-r / 2a0 )dr = 0
2
3
0
となる。ここで、qと r に関する積分は被積分関数が常に正であるのでゼロにな
ることはないが、0~2pにわたるfに関する積分は明らかにゼロとなる。このよ
うに直交に関わっているのは(s 軌道同士の場合以外は)主に角度部分の積分
である。