原油価格下落の米国経済・株式市場への影響(第二弾)(レッグメイソン)

<マーケット・レター>
2015年1月21日
レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
原油価格下落の米国経済・株式市場への影響(第二弾)

1月の米消費者信頼感指数は11年振りの高水準に上昇。消費マインドの大幅改善は今後の個人消費の加速を示唆。

全米ガソリン価格は足元で1リットル=約67円まで下落。米家計への「ガソリン減税効果」は約1,300億米ドルに拡大。

鉱業部門の探査・開発投資は米GDPの1%未満の規模。石油産業の投資抑制・人員削減の影響は限定的の見通し。

原油価格下落は原料コスト低下を通じて企業収益を押し上げ。消費関連業種では消費回復が企業収益をけん引へ。
消費者心理の改善は米個人消費の加速を示唆
図1:米国の消費者信頼感指数と実質個人消費
ミシガン大学が集計した2015年1月の米消費者信頼感
指数(速報値)は98.2と2014年12月の93.6から急上昇し、
11年ぶりの高水準に達しました。原油価格下落を受けた
ガソリン価格の下落が米家計の消費マインドの大幅な改
善に寄与したと考えられます。個人消費の先行指標であ
る消費マインドの改善は、2015年に個人消費の回復が加
速する可能性を示唆しています(図1)。
全米ガソリン価格は1リットル=約67円へ下落
6
(1966年1Q=100)
120
消費者信頼感指数(ミシガン大学調査、右軸)
110
5
100
(前年比、%)
7
2 015年1月 98.2
4
90
3
80
2
70
実質個人消費
(左軸)
1
60
WTI原油価格が足元で1バレル=40米ドル台まで下落
0
する中、米国ではガソリン小売価格の下落が一段と進行し
-1
40
-2
30
ています。全米のレギュラー・ガソリン平均小売価格は、
2014年12月の1ガロン=2.54米ドル(1リットル=約79円
*)から、直近では1ガロン=2.14米ドル(1リットル=約67
円*、2015年1月12日時点)まで下落しています。
ガソリン減税効果の拡大は米景気回復の追い風
また、足元の原油・ガソリン価格の下落を受け、米エネル
ギー情報局(EIA)は1月13日公表の月例エネルギー見通
しの中で、2015年の全米平均ガソリン価格予想を1ガロン
=2.59米ドル(1リットル=約81円*)から1ガロン=2.33米
ドル(1リットル=約73円*)へ下方修正しました(図2)。
EIAによるガソリン価格予想引き下げを考慮すると、ガソリ
ン・燃料関連消費の負担軽減により米家計が享受する恩
恵(ガソリン減税効果)は、従来推計の約1,000億米ドル
(約12兆円*)から約1,300億億米ドル(約15兆円*、GDP
比0.8%相当)へ拡大するものと推計されます。ガソリン価
格下落による米家計への恩恵拡大は、2015年の米国景
気回復の追い風要因となると期待されます。
(参照)2014年12月12日付マーケット・レター
「原油価格下落の米国経済・株式市場への影響」
(*)1米ドル=118円換算。1ガロン=3.785リットル。
50
-3
20
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(年)
(出所)米商務省、ミシガン大学
(期間)1990年1月~2015年1月(個人消費は2014年11月まで)
図2:米国のレギュラー・ガソリン価格(全米平均)
(米ドル/ガロン)
4.0
EIA予測
3.8
2014年平均
3.36米ドル
3.6
3.4
3.2
2016年平均
2.71米ドル
3.0
2.8
30.8%下落
2.6
2.4
2.2
2015年平均
2.33米ドル
2.0
1.8
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(出所)米エネルギー情報局(EIA)(期間)2010年1月~2016年12月
(注)予測は2015年1月時点。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
<マーケット・レター>
レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
石油産業の投資・雇用削減の悪影響は限定的
一方、原油価格の下落が加速する中で、米石油産業
図3:米エネルギー産業の投資・雇用の規模
≪エネルギー・セクターによる投資≫
2014年7-9月期(年率)
(主に上流セクター)では、新規油田の探査・開発投資の
抑制や人員削減の動きが広がりつつあります。
もっとも、米国の鉱業セクターの探査・開発投資は2014
年7-9月に1,570億米ドル(年率、約18.5兆円*)と過去
最高規模に拡大したものの、米国のGDP全体に占める比
率は0.89%と小規模に留まっています(図3上段)。また、
10億米ドル
鉱業セクターの探査・開発投資
民間設備投資(全産業)
名目GDP
0.89%
2,244
12.8%
17,600
100.0%
2014年11月
千人
月時点で92.2万人と、非農業部門の雇用者数全体の
このように、石油産業の投資や雇用の規模は米国経済
157.0
≪エネルギー・セクターの雇用≫
米国の石油・天然ガス関連産業の雇用者数も2014年11
0.66%を占めるに過ぎません(図3下段)。
GDP比
石油・天然ガス関連産業 雇用者数
構成比
922
0.66%
石油・ガス採掘業
216
0.15%
採掘支援産業
445
0.32%
パイプライン輸送業
46
0.03%
に伴う同産業の投資や雇用削減の米国経済への悪影響
パイプライン建設業
140
0.10%
は限定的に留まる公算が高いとみられます。
石油精製
75
0.05%
140,095
100.0%
全体と比較すると依然として小規模であり、原油価格下落
石油価格下落は米企業収益の押し上げに寄与
一方、石油・ガス産業を除いた米国企業にとっては、石
油価格の下落は原材料コストの低下を通じて企業収益の
押し上げに寄与すると考えられます。
図4は2013年の国民経済計算を用いて、石油関連コス
トが下落した際の米企業収益への影響を集計したもので
す。前述のEIA予想によれば、2015年には米国の石油製
品価格は約3割程度の下落が見込まれています。石油関
非農業部門雇用者数
(出所)米商務省、米労働省 (注)雇用者数は季節調整済。
図4:石油関連コストが30%下落した場合の
米企業収益の押し上げインパクト
25.1%
輸送業
10.0%
公益
6.4%
建設業
農林漁業
3.7%
連コストが30%下落した場合、石油・ガス産業を除く全産
鉱業(除く石油・ガス)
3.3%
業では企業収益は1.9%押し上げられると推定されます。
教育・ヘルスケア
特に、石油価格下落によるコスト低下の恩恵が大きい産
業として、石油関連製品の消費量が大きい輸送業(航空
2.2%
1.9%
全産業(除く石油・ガス産業)
製造業(除く石油製品)
1.7%
その他サービス
1.5%
建設業などの業種が挙げられます。一方、サービス・セク
芸術・娯楽・宿泊・飲食業
1.3%
ターは全般的に石油価格下落によるコスト削減効果は必
専門・ビジネス・サービス業
0.8%
ずしも大きくはないものの、消費関連業種では個人消費の
小売業
0.6%
回復が企業収益をけん引すると期待されます。
卸売業
0.4%
当面の米国株式市場では、2014年10-12月期の米企
情報通信業
0.1%
業決算や経済指標(消費関連指標や雇用統計)などで、
金融・不動産業
0.1%
会社や陸上・鉄道輸送企業等)や、公益(電力会社等)、
原油価格下落によるプラスとマイナスの影響が具体的に
どのように現れるかが注目材料となりそうです。
(*)1米ドル=118円換算。
0%
消費関連業種では
個人消費回復が
企業収益をけん引
10%
20%
30%
(出所)米商務省よりレッグ・メイソン・アセット・マネジメント作成
(注)2013年の国民経済計算(産業連関表)に基づく推定値。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。