10 10.1 6 月 23 日 授業のまとめ 定義 10.1 可換な整域 R が一意分解整域 (UFD:Unique Factorization Domain) であるとは, 零でも可逆元でもな い元 x ∈ R に対し, x = p1 · · · pn なる既約元 p1 · · · pn が存在して,これらの既約元は, 並べ替えと可逆元倍を除いて一意的であることをいう. 補題 10.2 1. R が整域のとき, 素元は既約元である. 2. R が UFD のとき, 既約元は素元である. 既にみたように, Z, 体 K 上の多項式環 K[X], Q[X], Z[X] は UFD である. 10.2 宿題 定理 9.1 の内容は, 本質的には以下を述べている. R が UFD なら R[X] も UFD である. この定理を証明しよう.証明の方針は, 以下の 2 点である. 1. R の商体 Q(R) 上の多項式環 Q(R)[X] は UFD である. (体上の多項式環 UFD だから) 2. R は UFD である. (仮定より) 宿題 10.3 R は UFD, Q(R) を R の商体とする. 8.1- 9.1 の主張および証明において, Z を R, Q を Q(R) に置き換え, 対 応する主張を書け.置き換えた証明が正しいこともチェックすること. 1. (補題 8.1 ) p ∈ Z は素数とする. f, g ∈ Z[X] について f g ∈ (p) なら f ∈ (p) または g ∈ (p) である. 2. (既約多項式)f が Z 上既約多項式であるとは,すなわち f = gh ⇒ g または f が Z[X] の可逆元 が成立つことを いう. 3. (原始多項式) Z[X] の元 f = an X n + · · · + a1 X + a0 が原始多項式とは, gcd(a0 , a1 , · · · , an ) = 1 であることをいう. Z[X] の既約元は, 必ず原始多項式であることに注意. (逆はもちろん成り立たない. ) 4. (補題 8.4)f, g ∈ Z[X], g は原始多項式とする. f = gh なる h ∈ Q[X] が存在すれば, h ∈ Z[X] である. 5. (宿題 8.5)f ∈ Z[X] が Z 上既約なら, f は Q 上既約である. 6. (定理 9.1) (Z[X] における素因数分解) f ∈ Z[X] に対し, Z[X] の既約元(=素数,既約な原始多項式) p1 , · · · , pn ∈ Z[X] (Z 上既約多項式) が存在して, f = p1 · · · pn 41 となる. 既約元 q1 , · · · , qm ∈ Z[X] が p1 · · · pn = q1 · · · qm をみたせば, n = m かつ, 適切に並べ替えれば, 各 i = 1, · · · , n に対して ci pi = qi なる Z[X] の可逆元 ci が存在 する. √ √ √ √ 宿題 10.4 環 Z[ −5] = {a + b −5 | a, b ∈ Z} から環 Z への写像 ν : Z[ −5] → Z を ν(a + b −5) = a2 + 5b2 と定義 する. √ 1. x, y ∈ Z[ −5] に対して, ν(xy) = ν(x)ν(y) が成り立つことを示せ. 2. 写像 ν は全射ではないことを示せ. √ 3. x ∈ Z[ −5] が可逆元 ⇔ ν(x) =?. 4. ν(2), ν(1 + √ −5) を計算せよ. √ 5. 2 は Z[ −5] の既約元であることを示せ. 6. (1 + √ √ √ √ −5)(1 − −5) ∈ ⟨2⟩ かつ 1 + −5, 1 + −5 ̸∈ ⟨2⟩ であることを示せ. √ 7. 前問の結果から環 Z[ −5] について何がわかるか. 42
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