6 月 17 日 定義 7.15 可換環 R の零でも可逆元でもない元 x が 性質 B:x

6 月 17 日
定義 7.15 可換環 R の零でも可逆元でもない元 x が
性質 B:x = yz なら y または z は R の可逆元
をみたすとき, x は既約元であるという.
定義 7.16 可換な整域 R が一意分解整域 (UFD:Unique Factorization Domain) であるとは, 零でも可逆元でもな
い元 x ∈ R に対し,
x = p1 · · · pn
なる既約元 p1 · · · pn が存在して,これらの既約元は, 並べ替えと可逆元倍を除いて一意的であることをいう.
定理 7.17 原始多項式 f (X) が Q 上既約なら, Z 上既約である.
注意 7.18 Z, 体 K 上の多項式環 K[X] は既にみたように UFD である.
1. Z の既約元= 素数
2. Q[X] の既約元= Q 上既約な多項式= 既約な原始多項式の定数倍
3. Z[X] の既約元=素数および既約な原始多項式
定理 7.19 Z[X] は UFD である. すなわち, 各元は, 既約な原始多項式と素数の積として一意的に書ける.
本日の授業では, 既約元分解の存在のみを示した.
宿題は裏にあります.
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1. 次の多項式は既約か.
(1) X 3 − X + 2 ∈ Z3 [X] (ヒント:可約だとすれば?)
(2) X 3 − X + 2 ∈ Z5 [X]
(3) X 3 − X + 2 ∈ Z[X] (ヒント:
(1), (2) との関連を考えてみよう.
)
(4) X 3 − X + 2 ∈ Q[X]
2. 素数 p1 , · · · , pm , q1 · · · , qs と Z 上既約な原始多項式 f1 , · · · , fn , g1 , · · · , gs が p1 · · · pm f1 · · · fn = q1 · · · qs g1 · · · gs を
みたすとする. 以下を示せ.
(1) f1 , · · · , fn , g1 , · · · , gs は Q[X] の既約元である.
(2) n = s. また,適当に並べ替えて fi = ci gi なる ci ∈ Q − {0} が存在する.
(3) ci = ±1 である. (ヒント:6 月 11 日の宿題 2)
(4) p1 · · · pm = ±q1 · · · qr .
(5) m = r, 並べ替えて pj = ±qj .
3. 整域 R に対して, 以下の集合 Q(R) を考える.
Q(R) = {
但し
a
s
=
a′
s′
a
| a, s ∈ R, s ̸= 0}
s
⇔ as′ = a′ s と定義する. Q(R) に以下のように演算を定義する.
a b
at + bs
+ =
,
s
t
st
以下の問いに答えよ.
(1) Q(R) は体であることを示せ.
(2) R = Z のとき, Q(R) は何か.
(3) R = Q[X] のとき, Q(R) は何か.
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ab
ab
=
st
st