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『数学のかんどころ⑮
―第 5 章
素数と 2 次体の整数論』
2 次体における素因数分解―(補足資料)
東京都立北豊島工業高等学校
数学科 向井 崇人
【はじめに】
『素数と 2 次体の整数論』を第 5 章まで読み進めることができた。本章の 5 節「UFD に
おける有理素数の素因数分解において」が難解で理解するために取り組んだことを以下に
まとめた。本テキストを読まれている方や整数論を学ばれている方に少しでも役に立てて
くれれば幸いである。
定義(2 次体の判別式)
m を平方因子を含まない有理整数とする。   Q(m) の判別式 d  を次のように定義す
る。
 m

d  
4m
m  1(mod 4)  1(mod 4)
m  2,3(mod 4)  0(mod 4)
具体的な例
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
m
2
3
5
6
7
10
11
13
14
15
17
19
21
22
23
26
29
d
8
12
5
24
28
40
44
13
56
60
17
76
21
88
92
104
29
m
d
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
-1
-2
-3
-5
-6
-7
-10
-11
-13
-14
-15
-17
-19
-21
-22
-23
-26
-8
-3
-20
-24
-7
-40
-11
-52
-56
-15
-68
-19
-84
-88
-23
-104
-4
コメント
この時点で、 m と d  と意味は見出せない。なぜこのような定義がされたのか、 d  の値
の意味は何か、何を判別しているのかは分からないが、各 2 次体の整数環の世界に対応す
る数があることは決して不都合なことではない。言い換えれば、有理数にどのような数(無
理数)を添加したかによって定まる数があることにより、その整数環の世界を知る為の指針
ができるともいえる。
この定義の威力を実感できるのは次の定理である。この定理から、フェルマーの 2 平方
和の定理や素数定理などの応用ができ、素数の性質をより正確に知ることが出来る。
定理 5.45
整数環  が UFD であるとし、 d を  の判別式とする。このとき、  における有理素
数 p の素因数分解は次で与えられる。但し、  は  の素数であり、(1)と(2)において、
共役   は  と同伴ではない。
(1)
 p,2d   1のとき
d 
   1 ならば、 p    と分解する。
 p
d 
(ii)    1 ならば、 p は  の素数である。
 p
(i)
p  2  2, d   1 のとき
(i) d  1mod 8 ならば、 2    と分解する。
(ii) d  5mod 8 ならば、 2 は  の素数である。
(3)  p, d   0 のとき、 p は  において、 p   2 と分解する。ここで、  は  の単
(2)
数である。
具体的な例
(1)
 
p  5, d  24 →これは言い換えれば、   Z 6 において、有理素数の 5 は素因数
分解可能かどうかを判別することである。
 p,2d   5,48  1 なので、
 
 24   4 
      1 であるので、5 は Z 6 の素数  ,   で分解できる。
 5  5
コメント
この定理は分解できるということを保証する定理であり、素因数を決定するものではな
い。任意の素数の素因数を決定することができるかはわからないが、特定の素因数を決定
するものはこの後の節で学ぶヤコブスタール和である。
(2)
p  7, d  40 :
 p,2d   7,80  1 なので、
 
 40   5 
      1であるので、7 は Z 10 において、素数である。
 7  7
(3)
p  2, d  7 :
2, d   2,7  1
1   7 
 の素数  ,   で分解できる。
 7  1mod 8 であるので、2 は Z 

2


コメント
定理 5.45(2)は有理素数を 2 に限定した主張である。この場合、考えうる整数環は
m  1mod 4 である.判別式 d  m であるので,その意味においては扱いやすい数である
無限に存在する有理素数の中で 2 を特別視していることは面白い。2 は素数の中で唯一偶
数であるが、その有用性や特異な点においては、最も奇なる数である。
(4)
p  5, d  5 :
 
 p, d   5,5  0 なので
5 は Z 5 において、 p   2 と分解する  が存在する。
【所見】
具体例を出して、分類し比較することは数学(に限らないが)を理解するうえで大切な
ことである。例に始まり例に終わるという気構えで学んでいけば、次第に理解できるもの
だと改めて実感した。
正直最初にこの節を読んだとき、
「なんだこれは?」という思いであった。何度読んでも
わからず、証明を追ってみても、そもそも定理が何を言っているのかや定義の意味と意図
を理解できていなかったので、迷路に迷い込んだ状態であった。そのうちにやることもな
くなったので、具体的な数を入れてみて表を作り、定理の主張に沿って例を書き出してみ
るとこれまで引っかかっていたものが徐々にすっきりしてきて、定理の証明も追えるよう
になった。
本書の難所は 3 章の平方剰余の相互法則とこの 5 章の判別式である。5 章以降はまだ読ん
でいないが、今後も整数の世界を存分に楽しんでいきたい。