位相的データ解析の機械学習的方法とその物質科学への応用
福水健次（統計数理研究所）
要旨
近年，位相的データ解析と呼ばれる新しいデータ解析の方法が注目を浴びている．位相
的データ解析は，今世紀に提案された比較的新しい数学的概念であるパーシステントホ
モロジーを用いて，複雑な幾何形状を持つデータの位相的情報を効果的に表現してデー
タ解析を行う方法論であり，脳科学・生物学・コンピュータグラフィクス・物質科学を
はじめ多くの分野に応用されている．本講演では，位相幾何の基本的な考え方と，パー
システントホモロジーに関して簡単に解説を行い，パーシステントホモロジーの視覚的
表現であるパーシステント図によるデータの表現とその解析に関して，物質科学への応
用例を通して解説する．また，パーシステント図を用いた系統的な統計的データ解析へ
のアプローチとして，機械学習分野の主要な方法のひとつであるカーネル法の適用につ
いて説明し，物質科学とたんぱく質のデータ解析への適用例を紹介する．