Economic Monitor

Mar 24, 2016
No.2016-014
Economic Monitor
伊藤忠経済研究所
主任研究員 鈴木裕明 03-3497-3656 [email protected]
米国経済 UPDATE:3 月 FOMC で利上げペースがスローダウン
3 月 15~16 日に開催された FOMC では、海外経済や金融市場の状況に懸念が示され、利上げは見送りと
なった。年内の利上げ回数も、2 回と考える FOMC メンバーが過半数を占めた。国内経済については、
小売売上の鈍化や輸出の減少がみられるものの、良好な雇用・所得環境に支えられて緩やかな拡大が続い
ている。持ち家率や労働参加率については、リーマンショック後の底打ちが認められるようになった。た
だし、潜在成長率の低下が徐々に進んできており、生産性向上など成長率を引き上げる方策の必要性が高
まっている。
利上げは年 2 回とする FOMC メンバーが過半数に
米国で FOMC(連邦公開市場委員会)が 3 月 15~16 日に開催され、政策金利(FF 金利誘導目標水準)
は現状(0.25~0.50%)維持となり、利上げは見送られた。声明文や記者会見でも言及されたように、海
外経済や金融市場の動向が引き続きリスクとなっており、企業投資や輸出が軟調となる中では、利上げ見
送りが適切と判断した。
FOMCメンバーの政策金利予測(2016年末時点)の人数分布(人)
10
市場は政策金利の現状維持を織り込んでおり、注目は、
FOMC メンバーによる今後の利上げや経済見通しにあ
った。利上げ見通しについては、前回見通し発表のあっ
9
8
7
6
た 12 月 FOMC では、17 人のメンバーが提示する 2016
5
年末時点の FF 金利の中央値が 1.375%(利上げ 4 回)
4
であったが、今回はそれが 0.875%(利上げ 2 回)に低
3
12月FOMC
3月FOMC
2
下した。右図を参考により正確に言えば、12 月 FOMC
1
ではメンバーは(1 人を除き)利上げ回数を年 2~5 回と
0
する中で 4 回が最有力であったものが、今回の FOMC
では、年 1~4 回とする中で 2 回が過半数を占め最有力
となった。市場の利上げに対する見通しは、2016 年は年
1~2 回であり、FOMC メンバーの見通しが市場の見通
しに大きく歩み寄った形である。2 月 23 日付 Economic
Monitor でも記したように、今年は、年後半に 2 回の利
上げというのが、最も可能性の高いシナリオであろう。
2017 年については、中央値が 2.375%から 1.875%に
(出所)FRB
FOMCメンバーの政策金利予測(2017年末時点)の人数分布(人)
6
5
4
3
12月FOMC
3月FOMC
2
0.5%Pt 低下、分布全体でみても 0.5%Pt 程度、下方シ
フトした。長期的な FF 金利水準(中央値)については、
12 月 FOMC の 3.5%から今回は 3.3%へと 0.2%Pt 下が
1
0
った。
(出所)FRB
こうした金利見通しの低下は、FOMC が見る目先の短期均衡利子率の低下を示している。短期均衡利
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研
究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告
なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。
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子率は、政策金利をこの水準と一致させれば、景気は刺激もされず、また抑制もされない、したがって景
気に中立的(neutral)な金利と定義される。昨年 10 月の FOMC において、FRB スタッフは、この利子
率(実質ベース)についての推計結果を紹介した。この推計によると、短期均衡利子率は金融危機によっ
て一旦はマイナス領域に入った可能性があり、その後も部分的にしか回復はしておらず、昨年 10 月時点
でもまだゼロ近傍にあるとしている。短期均衡利子率が上昇して初めて、FRB は、景気を冷やすことな
く利上げをすることが可能となるが、10 月時点では未だゼロ近傍であったため、たとえ 0.25%Pt であっ
ても利上げが景気を冷やす恐れがあったということになる。
短期均衡利子率が、FF 金利の長期トレンド(長期的な FF 金利水準)から離れてこのように大きく低
下している原因について、
昨年 12 月の FOMC 後の記者会見においてイエレン議長は、融資基準の厳格化、
家計の債務削減、財政引き締め、海外経済不振、ドル高、経済の先行き不透明感などを列挙し、これらが
需要を圧迫していることが部分的に影響しているかもしれないと述べている。今回の記者会見では、海外
の状況に加えて、世帯形成ペースの抑制、生産性上昇率の弱さと、中長期的課題とも考えられる要因を挙
げている。イエレン議長は、これらの懸念が解消されるにしたがい、短期均衡利子率は徐々に上昇してい
くだろうと述べており、それに伴い、FF 金利も引き上げが可能となる。イエレン議長の説明に則れば、
今回提示された利上げ見通しのペースダウンは、これらの懸念の解消に思ったよりも時間がかかるとする
FOMC の見方を示したものと言える。
さらには、短期均衡
FOMCメンバーによる経済見通し(中央値)
2016
2017
2018
長期
2016
2017
2018
長期
実質GDP成長率2
2.2
2.1
2.0
2.0
2.1~2.3
2.0~2.3
1.8~2.1
1.8~2.1
利子率を引き下げて
いる要因のうち、生産
FOMCメンバーによる経済見通し(中心レンジ1)
(12月FOMCでの見通し)
2.4
2.2
2.0
2.0
2.3~2.5
2.0~2.3
1.8~2.2
1.8~2.2
性上昇率の鈍化や世
失業率3
4.7
4.6
4.5
4.8
4.6~4.8
4.5~4.7
4.5~5.0
4.7~5.0
帯形成ペースの抑制
(12月FOMCでの見通し)
4.7
4.7
4.7
4.9
4.6~4.8
4.6~4.8
4.6~5.0
4.8~5.0
個人消費デフレータ
1.2
1.9
2.0
2.0
1.0~1.6
1.7~2.0
1.9~2.0
2.0
(12月FOMCでの見通し)
1.6
1.9
2.0
2.0
1.2~1.7
1.8~2.0
1.9~2.0
2.0
1.6
1.8
2.0
1.4~1.7
1.7~2.0
1.9~2.0
-
1.5~1.7
1.7~2.0
1.9~2.0
-
などが一過性のもの
2
ではなく構造的なも
個人消費デフレータ(コア)
のであるとすれば、こ
(12月FOMCでの見通し)
1.6
1.9
2.0
FF金利誘導目標水準
0.9
1.9
3.0
3.3
0.9~1.4
1.6~2.4
2.5~3.3
3.0~3.5
(12月FOMCでの見通し)
1.4
2.4
3.3
3.5
0.9~1.4
1.9~3.0
2.9~3.5
3.3~3.5
れらの要因が大きな
影響を及ぼす潜在成
2
注1:FOMCメンバーの予測のうち、上位3つ、下位3つの予測値を除外したもの。
長率、さらには FF 金
注2:第4四半期の前年第4四半期との比較。
利の長期トレンドも
出所:FRB
注3:第4四半期の数値。
低下することになる。実際、今回の FOMC での長期的な FF 金利水準(中央値)
(3.3%)を 2014 年 3 月
の FOMC の予測水準(4.0%)と比較すると 0.7%Pt 低下しており、また、長期成長率見通しの中心レン
ジも、今回の見通し(1.8~2.1%)は、2014 年 3 月の見通し(2.2~2.3%)から 0.2~0.4%Pt 程度低下
している。
米国では緩やかな経済成長が継続し、後述するように、住宅部門や雇用市場においても、金融危機のダ
メージが着実に払拭されてきていることが認められる。しかしながら、潜在成長率の低下もまた並行して
続いており、これをいかに止めるかは、米国の経済構造を再考し新産業をいかに育みその恩恵を全米に広
げていくかと言う、金融政策では対処できない困難かつ重要な、次期大統領に課せられた課題であろう。
以下、米国経済の現況を、需要項目別に概観する。
2
Economic Monitor
伊藤忠経済研究所
個人消費は足元鈍化だが過度の悲観は不要
まず個人消費について、小売売上から振れ幅の大き
いガソリンを除いた財消費のトレンドをみると、2 月は
前月比 0.1%増の微増にとどまった。また、1 月につい
ても、速報値の同 0.6%増が改定値では横這いとなり、
小売売上高(ガソリンスタンドを除く。季節調整値)(百万ドル)
370,000
360,000
350,000
0.6%Pt も下方改定された。この結果、1~2 月平均で
はほぼゼロ成長となる。1 月速報値が発表された 2 月
340,000
の時点では、米国の消費が堅調に拡大していることが
330,000
確認されたものと考えられたが、今回、2 月速報値の停
320,000
滞、1 月改定値の大幅下方修正により、一度は後退して
いた消費失速懸念が再び蘇ってきたといえる。小売売
上を項目別にみると、これまで小売を牽引してきた自
310,000
(出所)米国商務省
動車・同部品販売店の伸びが止まっている(1 月は前月比 0.2%減、2 月も同 0.2%減)ほか、家具・家電
(1 月が 0.4%減、2 月も 0.3%減)も不振となっている。
消費者マインドも、足元の方向性は下向きになって
消費者マインドの推移
いる。直近の消費者マインドは、コンファレンス・ボ
120
ード集計(2 月)が前月比 5.6 ポイント、ミシガン大学
110
140
集計(3 月速報値)が同 1.7 ポイント、それぞれ低下し
100
120
た。直近のピークからでは、コンファレンス・ボード
90
100
集計が 10.4 ポイント、ミシガン大学集計が 6.1 ポイン
80
80
ト、それぞれ低下している。
70
60
(1966年=100)
(1985年=100)
160
60
40
ただし、失速懸念が実現するかといえば、依然とし
50
20
てその可能性は小さい。後述するように雇用は順調に
40
拡大を続けており、雇用・所得環境は良好である。消
費者マインドも向きは下向きとはいえ、水準的には高
0
2000
05
景気後退期
10
ミシガン大学調査
15
コンファレンスボード調査(右軸)
(出所)ミシガン大学、CEIC(コンファレンスボード)
いまま維持されており、さらには、原油価格は足元上昇してきているとはいえ依然として低水準にあり消
費を妨げる状況にはない。
経済全体でみれば消費が拡大する環境が整っているにもかかわらず、実際に小売売上が伸びない理由と
しては、①自動車などはリーマンショック時に買い控えられていた反動での需要増(ペントアップ・ディ
マンド)の出尽くし、②年初の株価急落、③財消費からサービス消費へのシフト、④住宅投資の伸び悩み
による家具など関連消費の低迷などが考えられる。このうち、①については(所得が十分であれば)自動
車販売が伸び悩んでも、消費者はそれ以外に欲しいものを買うと考えられ、②については足元では急回復
しており、③については、サービス消費は急増はしていないが着実に伸びている。④についても、後述の
通り、もたつきの中にも明るい兆しはある。また、現状、雇用・所得環境の改善に消費が追い付いていな
い結果として貯蓄率は 5.0%を超えて上昇傾向となっており、その分、家計の財務状況がさらに改善して
いけば消費拡大のための余裕が広がることになる。現時点での過度の悲観は不要であろう。
3
Economic Monitor
伊藤忠経済研究所
住宅着工・許可件数(建物種類別年率、百万戸)
住宅投資は伸びの中心が賃貸から持家へ
0.9
住宅部門も、ここ数か月は成長が鈍化している。2 月
0.8
の住宅着工件数は前月比 5.2%増、着工許可件数は同
0.7
3.1%減とまちまちの結果となった。昨年後半以降を均し
0.6
てみると、着工件数、許可件数ともにほぼ横這いとなっ
0.5
てきている。
0.4
一戸建・着工
一戸建・許可
共同・着工
共同・許可
0.3
内訳を一戸建て(持家中心)と共同住宅(賃貸中心)
に分けてみると、一戸建てが堅調に伸び始めているのに
0.2
0.1
対して、共同住宅は逆に減少傾向が顕著になりつつある。 0.0
共同住宅は現時点の着工件数(年率約 40 万件)が 90 年
2009
10
11
12
13
14
15
16
(出所)米国商務省
代以降のピークにほぼ達しているのに対して、一戸建て(現時点での着工件数が年率約 80 万件)は 90 年
代以降の平均的な水準である 120 万件まで、まだまだ伸びしろがある(ピークは 2006 年 1 月の年率 182
万件)。
米国の持ち家率は、2004 年 4~6 月期にピーク(69.4%)を付けた。しかし、その後はリーマンショッ
クを機に所得・雇用環境が急速に悪化、また、住宅バブル崩壊を受けて住宅ローンの審査基準が厳格化し
たため、持ち家率は低下を続けていた。それが、2015 年 4~6 月期に 63.5%で底打ちし、以降は 10~12
月期まで 2 四半期連続で上昇に転じている。
一戸建ての着工が伸びて、持ち家率が上昇に転じたことには、様々な波及効果が考えられる。具体的に
は、広い持家一戸建てに住むようになれば、Do-it-yourself で家や庭に手を入れ、大型の家具家電を揃え
るようになる。そうなれば、共同住宅での賃貸住まいに比べて消費意欲が高まり、経済浮揚にも貢献する
であろう。さらには、雇用とともに住居が固まることにより安定志向が増し、政治面においても現状を否
定する過激な主張から、現状を肯定的に捉えて改善を加えていこうとする現実的な選択をするようになる
ことが考えられる。
しかし、現時点では、持ち家率は底打ちしたばかりであり、リーマンショック前の水準とは大きな差が
ある。また、雇用面でも、パートなど不安定な雇用の割合は高止まりしている。今回の大統領選挙におい
て、極端な政策を掲げるトランプ候補やサンダース候補が人気を集める背景として、所得格差が指摘され
ることが多いが、それに伴い、生活が不安定化しているという面も大きな要因であろう。
輸出は昨年 9 月から減少が加速
輸出・入推移(実質ベース、季節調整値、百万ドル)
190,000
126,000
ストライキ
輸出入動向については、1 月の輸出は、実質ベースで
前月比 2.2%減少した。輸出は昨年のピークだった 9 月
から減少が加速しており、9 月との対比では 5.3%の減少
となった。
名目ベースでは、1 月の輸出は、前月比 3.2%減。9 月
との対比では 7.9%減。品目別に昨年 9 月以降で輸出減
少に大きく寄与した項目をみると、民間航空機が 25.8%
減(寄与度では▲1.17%Pt)、燃料油が 42.7%減(寄与
185,000
124,000
輸出
180,000
122,000
175,000
120,000
170,000
118,000
輸入(右軸)
165,000
116,000
160,000
114,000
14
(出所)米国商務省
4
15
16
Economic Monitor
伊藤忠経済研究所
度▲1.11%Pt)、大豆が 33.3%減(寄与度▲0.52%Pt)、その他、携帯電話機器類が 15.7%減(寄与度▲
0.28%Pt)
、掘削・油井機器が 36.4%減(寄与度▲0.22%Pt)など、IT 機器や産業機械類の減少も目立っ
ている。これらの項目のうち、燃料油は、この間に価格が 2~3 割低下しているが、それ以外については、
概ね名目ベースの減少に沿って実質ベースも減少しているものとみられる。掘削機器などは資源開発需要
減の影響を強く受けており、また、その他の品目については、ドル高による競争力低下、海外経済不振、
米国製携帯電話の販売不振などが背景にあるものと考えられる。こうした個別品目の状況をみると、増加
トレンドへの転換は、当面は期待できそうにない。
1 月の輸入は、実質ベースで前月比 0.4%減となった。名目ベースでは同 1.6%減。財の種類別では、原
油価格下落を受けて投入財が同 5.7%減となったほか、資本財が同 2.4%減で 3 か月連続のマイナスとなっ
た。品目別では、原油のほか、民間航空機や通信機器、コンピュータ、産業機械類などの輸入が減少した。
企業景況感では輸出受注悪化の波及には歯止め
上述の輸出の弱さは、ISM 製造業景況感指数の輸出
ISM指数の推移(製造業・内訳)
65
受注にも顕著に表れている。輸出受注指数は、昨年 12
月に 1 か月だけ、景況感の改善・悪化の境界となる 50
60
を上回ったが、これを除くと 6 月から 9 カ月連続で 50
を下回っており、46~48 付近で停滞している。
製造業
55
ただし、新規受注をみると、11、12 月に 50 を割り込
輸出受注
んだ後は、1、2 月と 50 超を維持。また、製造業総合に
50
ついても、12 月の 48.0 を底にして徐々に持ち直しがみ
られる。輸出部門の不振が製造業全体にどの程度広がっ
45
ていくのかは、米国の景気を占う上で重要な論点となる
が、ISM 指数をみる限りは、現状、歯止めがかかって
新規受注
13
14
15
16
(出所)Institute for Supply Management
いるものとみられる。堅調な内需からもたらされる製造業への需要により、米国の製造業は支えられてい
る。
さらには、輸出部門を起点とした景気の下押し圧力が、製造業を経由して非製造業に及ぼす影響にも、
歯止めがかかっている。2 月の ISM 非製造業景況感指数は 53.4 となり、1 月の 53.5 からは微減となった
が、50 超は維持している。非製造業では、景気が急拡大していく状況ではないが、緩やかな拡大ペース
が維持されている。
労働参加率の推移(%)
雇用では労働参加率の底打ち・反転が明らかに
68.0
最後に雇用状況をみると、2 月の非農業部門雇用者数は
前月比 24.2 万人増となった。1 月の増加数が上方改定さ
れた結果、12~2 月の平均も 22.8 万人増となり、2015 年
67.0
66.0
65.0
平均(22.9 万人)並みの増加ペースを維持している。
64.0
失業率は 2 カ月連続で 4.9%。雇用者数が順調に伸び続
けていながら失業率が下がらないのは、労働市場への参加
者が増えているためであり、労働参加率は 1 月から
63.0
62.0
2000
02
(出所)米国労働省
5
04
06
08
10
12
14
16
Economic Monitor
伊藤忠経済研究所
0.2%Pt 上昇して 62.9%となった。昨年 9 月に 62.4%で底打ちした後は微増・横這いが続いていたが、次
第に上昇ペースが加速してきており、2 月は昨年 1 月以来の高水準に達した。
FRB イエレン議長は、表面的な失業率には表れてこない労働市場の緩み(slack)を示すものとして、
広義失業率、長期失業率など複数の指標を挙げている。その中では、労働参加率のみが底打ちせずにずる
ずると悪化を続けていたが、ついに底打ち反転してきた。
ただし、労働市場の参加者増は短期的には労働需給を緩和する方向に働く。2 月の民間部門の時給は前
月比 0.1%の下落となった。前年同月比では 2.2%の上昇となり、ここ数か月の 2.4~2.6%のレンジから下
に振れた。2 月の実績は 1 月に前月比 0.5%上昇とハイペースで伸びた反動もあったものと考えられ、ま
た、上述のように労働参加率の上昇というより構造的な部分での労働市場の緩みの解消が進んでいること
を考慮すれば、悲観視する必要はない。むしろ、最後までもたついていた労働参加率の底打ちにより、つ
いに、リーマンショック後の調整が最終段階に入ったとみるべきであろう。
6