窪田 真菜さんの場合 Part3 - 中国経済産業局

脱・都会! 地方に移住した若者たち
京都→島根県大田市
窪田 真菜さんの場合
Part3
総務企画部 広報・情報システム室
TEL 082-224-5618
このコーナーでは、東京や大阪などの都会から、地方に移住し、充実した生活を送って
おられる方をご紹介します。
連載第3回は、京都から島根県大田市温泉津町に移住し、大田市立温泉津公民館の主事
を務める、窪田真菜さんにお話を伺いました。
窪田さんは、生まれも育ちも東京都練馬区。小学校4年生
のときから、ヒップホップダンスのスクールに通っていた
ダンス好き。大学ではステージに立つ側から、ステージを
支える側を専攻し照明担当などを目指していました。
ところが、
「縁」あって神楽に魅せられ、大学卒業後、直ぐ
に移住。NPO法人石見ものづくり工房の運営する温泉津
やきものの里やきもの館に勤められたあと、今は大田市立
温泉津公民館の主事をされながら、神楽が中心の日々を過
ごされています。
Part1 では、そんな窪田さんの生い立ちや移住の経緯、
Part2 では、やきもの館や公民館で勤められるきっかけ、神楽の奥深さについてお聴き
しました。
今回は、毎週開催されている夜神楽、地域への思い、そしてこれからU・Iターンされ
る方へアドバイスなどをご紹介します。
Part1 を読んでいない方は「窪田 真菜さんの場合 Part1」を、Part2 を読んでいない方
は「窪田 真菜さんの場合 Part2」ごらんください。
『ゆのつ温泉 夜神楽』
--温泉津温泉では、毎週土曜日に公演をされているとお聴きしました。
公演しているのは、私の所属している温泉津舞子連中だけではありません。他の地域の社中さんに
入れ替わりで出演をお願いし来てもらっています。
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最初は、地元である温泉津舞子連中が、月
に1回、自分たちの発表の場として無料で公
演をしていましたが、観光客の人たちに喜んで
いただけるので、週によって見られなかった方
が出ないよう、毎週公演してもらいたいという
話になりました。そして旅館組合も協力してい
ただき、大田市からの助成をいただいて今の
形となりました。
『ゆのつ温泉 夜神楽』の会場となる
龍御前神社(タツノゴゼンジンジャ)
--神社で公演を?
そうです。本来の形を見せることができるというので、好評です。ホールなどで照明が光っている舞台だ
と、観客との間に壁ができてしまいます。しかも地元の子どもたちは神楽が大好きで毎週見に来る、そ
んな日常的な雰囲気も、地域の外から来たお客さんが感じることができます。
--どなたが運営を。毎週の開催は大変では?
温泉津舞子連中の有志と地元の方と旅館組合とが協力して進めており、主導されているのは小林
工房の小林泰三さんです。後になりましたが、実は、小林さんは、私が石見神楽に出会うきっかけを
作ってくださった方でもあり、今も支えてくださっている恩師です。
小林さんは、高校時代に、同級生とともに温泉津舞子連中を発足されました。京都造形芸術大学
を卒業後、同大学の職員として働きながら、地元の温泉津に、若い大学生や仲間たちを呼ぶことで
地域の活性化につながると考えられ、『海神楽』を始められました。その活動が 11 年目を迎え、温泉
津町へ訪れた学生は 200 人を超え、私のように移住す
るようになった卒業生も 3 名います。
『ゆのつ温泉 夜神楽公演』のスケジュール調整などは、
小林さんがされています。石見神楽を愛するその謙虚な
人柄が認められてこそ、これだけの社中さんをお呼びす
ることができるのだと思います。
子どもたちの将来のために
--ダンス教室を開かれているとお聞きしました
温泉津町では子どもたち対象に水曜日、大田町では
木曜日に教室を開いています。木曜日は子どもクラスと
大人クラスと分けていて、それは公民館の主事としてで
はなく、私個人として教えています。
『ゆのつ温泉 夜神楽』27 年度チラシ
(ゆのつ温泉 夜神楽 HP より)
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--お忙しいですね。生徒は集まりますか?
本業ではないので、あまり大々的に公表していませんが、今は毎週子ども 40 人、大人10人前後
にレッスンしています。
私が神楽に行き着いたのもダンスをしていたからだと思っていて、将来への扉を開くには、何がきっかけ
になるか分からないと思います。ダンスをすることによって、異年齢と一緒にがんばったり、ステージに立
ったりすることで、子どもたちの視野が広がるきっかけになると思って続けています。
--神楽では、どんな感じですか?
ダンス教室の中にも、神楽をやっている子が来ていますが、やはり“回る”のが得意ですね。ダンスは楽
しむことだけ一所懸命になってほしいなと思いますが、神楽では我慢することもたくさんあるので、子ど
ものころから神楽団に入るには、親御さんの支えや本気で神楽をやりたいという気持ちがないとなかな
か難しいのではないかなと思います。温泉津舞子連中にも小学生が 2 人居ますが、ご両親がかなり
神楽好きですね。
--若年層が減っているということですか。
減っているわけではないと思いますが、少ない
ですね。10 年後にはその小学生たちが中心
となって舞わなくてはいけないので、これからも
っと増やさなくてはいけません。
公民館でも、神楽体験教室などを毎年開
いて、神楽をやりたい子に間口を拡げた取り
組みをしています。その体験だけでなく、その
後も神楽団に入りたいと積極的になる子が
増えればと思っています。
温泉津町について
石見神楽ラッピング列車
(JR 西日本 山陰本線)
--住んでみての印象はいかがですか?
東京と格段に確実に違うのは四季を感じることでしょうか。空気や動物の鳴き声、目に映る景色すべ
てから春夏秋冬を感じます。そんな日本らしい環境で生活ができて本当にうれしいです。
東京に居たときは、田んぼや畑を見ることが無く、食べ物に関しては旬の時期を全く知らなかったです。
口にしても、ここでは目や肌でもその時期を感じます。そうやって自然と体感して知っているここの子ど
もたちは幸せだなと思いますし、その感覚を大事にしてもらいたいです。
--町を歩くと寂れている感じがします。
昔から寂れていると思います。その雰囲気が温泉津町の良さであるので、このままを残したいと思いま
す。ただ、これ以上寂れていくと、ここに住みたい人でも住めなくなってくるかもしれません。
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--どうすればいいのでしょうか?
この町の人が理想をもつことではないでしょ
うか。遠い先のビジョンを描いて、少しづつ
それに近づいていくように活動していくことが
できれば、この町に住む人には生きがいが
生まれ、暮らしたい町になるのではないかな
と思います。
他人任せでは、何かを始めることも、継続
することもできません。住んでいる人たちが
自分でやりきる力が必要なのかなと思いま
温泉津温泉の街並み
す。
日々感謝
--最後にU・Iターンをする方へアドバイスを。
車がないと移動できないとか、都会と比べて不便な事はたくさんあります。でも、その不便さを楽しんだ
り、自分に必要なものだけを選択するというシンプルな考えに変わると思います。必要だと思うものが
無ければ、自分で作ろう!という気になってきます。ダンス教室にしても私がプロのダンサーでは無くて
も、ダンス楽しいよって、言ってあげるだけで、たくさんの仲間ができました。
何を始めても、思いを大事にしていれば、評価してくれると思います。田舎の人は、底力がある人ばか
りです。学ばせてもらうことがたくさんあります。知らずに支えてくれていることもたくさんあります。日々勉
強、そして日々感謝を忘れずに、と恩師の小林さんが教えてくれました。いつもこの言葉に突き当たり
ます。
だから「やっぱり東京へ帰ります」なんて安易に言って帰ることはできませんね。
--窪田さんご自身は?
居られる限りは居たいと持っています。でも先の事は分かりません。「定住する」と言い切ってほしいか
もしれませんが、それは言い切ったからといって何があるわけではありませんし、ここに住んでいる人も同
じだと思います。東京に居る家族のこともありますし。
ただ、神楽から離れることは、何物にも変えがたく、すごく寂しいですね。
--移住で気をつけることはありますか。
挨拶は大事だなと思います。こちらの子どもたちは知らない人にも下校時に挨拶します。礼に始まり
礼に終わる、そういうまじめさを挨拶で見られていると思います。都会の人は挨拶に慣れていません。
知らない人とは目を合わせないようにと、教育されてきましたから。でも、田舎では、私が知らなくても、
相手は私のことを知っていたりします。私も未だに挨拶が足りなかったなと反省するときがあります。
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私は、神楽という本物に出会え、神楽がある町に暮らしたいと思って、この島根を選びました。地域に
愛着がもてる人なら地元の方と一緒に楽しい暮らしができると思います。
お忙しい中、長時間お付き合いいただいた、窪田さん、本当にありがとうございました。
実は、コミュニティ放送局「FMいずも」にて、大田市を紹介する番組のパーソナリテ
ィーもされているなど、多方面にわたって活動されています。
残念ながら、窪田さんが舞う姿を観ることができませんでしたが、毎週土曜日の夜は、
『ゆのつ温泉 夜神楽』
、そして、毎年夏には『海神楽』、が開催されています。
皆様も、窪田さんが魅了された「本物」に是非触れてみてください。
◆小林工房HP
http://www.kobayashi-kobo.jp/
◆ゆのつ温泉 夜神楽HP
http://iwami-kagura.jimdo.com/
『ゆのつ温泉 夜神楽』「鍾馗」の一場面
3回にわたってお届けした窪田真菜さんの温泉津町へのIターンはいかがでしたでし
ょうか。次回は、平成28年1月号「新春座談会」として、地域創生に取り組む若手経
営者の方々を取り上げます。U・Iターンし、地域活性化のため活躍されている方々に、
畑野中国経済産業局長が地方創生への思いをインタービューします。ご期待ください。
なお、シリーズ「脱・都会!地方に移住した若者たち」は2月号から再開します。
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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