海外だより[D.C.通信]57 アメリカの農産物チェックオフ制度

D.C.通信
海外だより
連載 57
中村岳志(JA全中農政部WTO・EPA対策課<在ワシントン>)
February, 2016
アメリカの農産物チェックオフ制度
■チェックオフ制度とは
を基盤に、教育機関と連携した
アメリカでは、特定の農畜産
子どもに対する乳製品の栄養に
物の出荷に当たり、生産者から
関する教育や、企業と連携した
一定額を徴収(チェックオフ)
消費拡大、海外市場の開拓など
し、州・全国レベルで集まった
が実施されている。
予算を活用して農畜産物の販売
企業との連携では、近年大手
促進や調査研究を振興する
ピザチェーンと共同開発した
「チェックオフ制度」が存在する。
チーズを増量した商品がヒット
現在では、22の品目(牛・豚
し、他のチェーンも追随して消
肉、乳製品・飲用乳、大豆、鶏
費拡大につながっている模様だ。
卵、ジャガイモ、綿花など)で
②牛肉
同制度が導入されており、予算
近年では、消費者の一番の関
は品目によっては100億円を超
心事である安全性確保のための
えるほどの規模となっている。
研究に特に注力している。同時
同制度による取り組みは、個
に、牛肉の販売拡大のための市
では、拠出金の徴収は法律で義
別のブランドや産品ではなく、
場調査や海外での販促イベント
務付けられているものの、制度
その品目全体が対象となってい
の開催、レストランシェフへの
を導入するかどうかはあくまで
る。従って、国産品のみならず
情報提供のほか、
「夕食には牛肉
も品目ごとの生産者側が決定す
輸入品も恩恵を受けることから、
を(Beef. It’s What’s For Dinner)
」
るものであり、生産者自らが、
輸入品からも一定額が徴収され、
をキャッチフレーズとしたテレ
導入の是非や、導入する場合の
国産品からの資金とともに活用
ビ広告等を実施している。
徴収率や徴収範囲などを決めて
されている。
大学の研究では、こうした取
運用している。
り組みにより、農業者に対し、
つまり、制度の骨組みや取り
■具体的な取り組み
拠 出 金 1 ド ル 当 た り11.2ド ル
組み内容を、生産者が自ら柔軟
品目ごとにさまざまだが、本
の利益がもたらされたと試算さ
に定められることが本制度の特
稿では例として乳製品および牛
れている。
徴といえ、わが国においても生
子どもに対する教育・消費拡大活動で
はプロアメフト選手とも協力(上)
/牛
肉に関する情報をウェブサイトや CM
などさまざまな媒体で提供(下)
産者主導による販売・理解促進
肉における取り組みを紹介する。
①乳製品
■おわりに
の取り組みの一例として参考に
乳製品の栄養面等の研究活動
アメリカのチェックオフ制度
なるのではないだろうか。
2016/02
月刊 JA
37