素形材メーカー 事例①

特集
金型づくりの匠の技を伝える人材育成・技能伝承
素形材メーカー 事例 1
KIMURA グループの
人材育成
㈱木村鋳造所 木 村
当社は、1966 年(昭和 41 年)にフルモールド鋳
造法を導入した。フルモールド鋳造法は、複雑な中・
大物鋳物の製作に最適であり、特に複雑なプレス金型
鋳物の製作に向く技術である。しかし、導入初期は技
術が確立していなかったために、不具合品の多発と生
産性の低下に見舞われ、大変な苦境に陥ってしまった。
博 彦*
分割は、加工不可能部をなくすための水平分割や
部品の取外しを考慮して行う必要がある。
② このデータにより発泡スチロール材の NC 加工
を行い、組付け部品を製作する。
③ 組付け部品を組み立てた後、3 次元レーザー測
定機により寸法確認を行い、模型が完成する。
そのため、当社はこの技術の向上に全社で取り組んで
2.鋳造工場では、すべて手作業で鋳型を製作する
きた。
① 溶湯の注入のための湯口、湯道、堰(インゲー
技術開発は、必要性の把握と優秀な人材が必要であ
る。フルモールド鋳造法の技術開発のポイントは、い
かに人材の育成を行うかであった。技術の進歩は IT
ト)を決定し、堰を模型に設置する。
② 溶湯と鋳型砂の離型のための塗型剤を模型の表
面に塗布し、それを乾燥させる。
技術を生み出し、めざましい発展を遂げた。フルモー
③ 砂型造型による砂の圧力により模型の変形を防
ルド鋳造法は、IT 技術との相性がよいことから IT
ぐため、模型の金型面裏側の構造部を補強する。
技術の活用を進め、フルモールド鋳造法によるプレス
これで造型前の工程が終了する。
金型鋳物製作の技術を確立した。この展開をベースと
④ 鋳型をつくる造型作業は、鉄の鋳枠の中に塗型
して支えた、KIMURA グループの人材育成について
され補強の完了した模型を置き、レジンと硬化剤
説明する。
を混練した自硬性の砂を手作業で突き固める。
フルモールド鋳造法による
プレス金型鋳物づくり
1.鋳物づくりに必要な模型を、IT 技術を活用し製
作する
① 顧客から 3 次元データによる金型データの提供
を受けた後、3 軸の NC 加工機で模型製作の部品
を加工するためのデータの分割を行う。データの
⑤ その工程で堰の部分より、紙でできたパイプの
湯道を、突き固める砂の中に設置していく。その
パイプを 1 カ所に集め、側面の底に溶湯の入り口
をセットする。
⑥ 30 分ほどで砂が自動硬化した後、鋳枠を反転し
模型の構造部にある補強を取り去り、その補強部
に自硬性の砂を手作業で突き固める。
⑦ さらに、上に格子状の金枠をセットして、そこ
にも自硬性の砂を手作業で突き固める。
*Hiroyoshi Kimura:名誉会長
〒411−0905 静岡県駿東郡清水町長沢 1157
TEL(055)975−7051
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⑧ 湯道の集合部より湯道を金枠の上まで伸ばし、
それを囲んで別の小さな鋳枠で溶湯を注入するた