【研究者プロフィール №157】 公立大学法人 大分県立芸術文化短期大学 美術科 デザイン専攻 准教授 松坂 洋三(マツザカ ヨウゾウ) 専門・キーワード プロダクトデザイン,インダスト リアルデザイナー,デザイン専門 性,適性評価,発想法,デザイン 思考 1.私はこのような学生でした。 学生時代は、毎日毎日、自分が成長していく実感がありました。 「創造する学問」である デザインは、知らないことばかりで、それまでの知識、経験が通用しませんでした。また、 優秀な友人に出会い、多くのことを学びました。彼らは大半が浪人を経験していましたの で、その年頃の人生経験の1-3年の差は大きく、専門分野の技量と知識において随分差 があることを実感しました。将来の目標として、インダストリアルデザイナーになること を決めたのも友人の影響でした。卒業後、30数年間デザインのプロとして現場に従事出 来た理由は、この時に先生や友人から学んだ「工夫する知恵」や「実際に手で創ること」 などもベースとなっています。現在は、学生を指導する立場になっていますが、これから 60年以上も生きていかなければならない彼らのために大切なことを伝えていきたいと思 います。 2.このような研究をしています。 デザイン専門性の「適性評価」を視覚化し、プロダクトデザインの教育を行う上でのキ ャリア別の達成目標を分析し体系化しました。短大1年生では「理論」よりも「スキル」 向上を充実させたプログラム、一方、専攻科では、それらに加え柔軟な発想力の向上とコ ミュニケーションスキルなども合わせた総合的な専門性向上目指し、自立へ向けた評価項 目となっています。 「プロダクトデザインの発想法」では、地元の環境素材をデザイナー視 点で創造する「パブリックのデザイン」で探求します。本学が推進する地域貢献という活 動を学生に啓蒙する意味でも地域の産業との関係を重視し、現在、県内部品メーカーへ地 域企業の製品デザインによる価値向上支援などを推進しています。 「竹・素材の研究」では 素材を研究し竹素材の美しさを引き出すための研究を行っています。昨年度は異素材との 組み合わせによる素材感の研究、本年度は、光の透過をテーマに構想を練っています。 3.このような授業をしています。 短大1年生は、基礎力の修養を中心としたプログラムです。 「デザイン基礎」では、手で 描く、粘土を盛る、削ることで、かたちを立体に起こして検証します。 「デザイン概論」で は、デザインの定義からプロダクトデザインのプロセス、デザインの発想法、デザイン思 -地域連携研究コンソーシアム大分 2014- 【研究者プロフィール №157】 考など事例を見ながら理論を学びます。「デザイン構成(選択科目)」では担当する7週を 「紙でつくる立体構成」と「自由な素材に適したかたちのユニットで構成」で構成力の向 上を狙って課題を作っています。また、デザインⅠでは,「機能」をかたちに表現するスキ ル重視の課題をします。2年生以降では、デザインⅡ-Ⅲ,造形研究Ⅰ-Ⅲ、では社会に出 て専門職として求められるような柔軟な発想力とそれを視覚的に表現できるスキルの修養 を目指します。木の玩具、計るもの、雨を楽しくする、街のデザインなど徐々に、デザイ ン思考を養うような課題に比重を置いていきます。 4.学生に学んでほしいこと。 学生の時間は皆同じに与えられていますから、在学中に、真面目に、人よりも高い質の 作品を、多く制作した方が勝ちです。人が求める柔軟な思考を展開できる学生、視覚化で きるスキルを養う事が肝要です。昨今、3Dプリンターやレーザーカッターなどコンスー マーの手の届く低価格のモノまで出現していますが、学生にはプロダクトデザインの勉強 を通し、専門職として社会に貢献できるようになること、すなわち「なぜそれを作るのか」 という上流のクリエーターになってほしいと思います。プリンターや工作機械などがPC と直結し、データやプロトタイプの制作にかかる工数は減っていきますが、それらはあく までも効率化のための道具に他なりません。それらの工作の技術は数十年先には廃れてい るのではないでしょうか。大切なことは、頭で考え手で表現できるという事、クリエータ ーが創作するデータの質なのです。 -地域連携研究コンソーシアム大分 2014-
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