いんちんこうとう 茵蔯蒿湯

中医方剤解説 366
中医方剤薬効分類
方剤名
効能
書籍
主治および証
病機
生薬組成
方意
祛湿剤 清熱祛湿剤 14
いんちんこうとう
茵蔯蒿 湯
傷寒論
いんちんごれいさん
茵蔯五苓散
金匱要略
いんちんしぎゃくとう
茵蔯四 逆 湯
張氏医通
清熱利湿・退黄
茵蔯 30g・山梔子 15g・大黄 9g
水煎し服用する。
<主治>
湿熱黄疸(陽黄)
全身の鮮明な黄疸、軽度の腹満、口渇、頭汗、尿量が少ない、尿色が濃い、舌苔が黄膩、脈は沈実あるいは滑
数などを呈す。
<病機>
「瘀熱裏に在り」で、中焦(陽明胃土)の熱邪が三焦の湿と結びついて蘊積し、三焦の気機を阻滞するため
に、熱が外越できず湿は下泄できなくなり、邪熱が裏で欝蒸している状態である。
湿熱が中焦に蘊結し肌膚を燻蒸するので、陽明土色である黄色が肌膚に溢れて黄疸が生じる(少陽胆気が欝
阻されて胆汁が溢れるとの説もある)
。湿熱陽邪の発黄であるために鮮明な橘子色状の黄疸を呈し、
「陽黄」と
称する。湿熱が中焦の気機を阻滞するので軽度の腹満があり、熱邪が津液を消耗すると同時に湿邪が津液の上
承を阻むために口渇がある。三焦枢機が阻滞されて水道が通調しないので尿量が少なく(小便不利)
、湿熱のた
めに尿色は濃い。三焦が湿熱で遏阻されて津液や熱の外達ができないので、全身は無汗であるが、湿熱の燻蒸
が甚だしいと、諸陽の会である頭面部にのみに発汗がみられることがある。舌苔が黄膩、脈が滑数は湿熱を示
し、裏での欝遏が強いときには脈は沈実になる。
<方意>
本方(茵蔯蒿湯)は湿熱黄疸に対する第一の要方であり、清熱と利湿によって退黄する。
主薬は茵蔯で大量を使用し、苦寒により湿熱を清利し、芳香軽揚で気機を宣透し、黄疸を消除する。山梔子
は三焦の湿熱を清泄下降させ、茵蔯と共に湿熱を小便として排泄する。大黄は大便を通利して中焦瘀熱を下泄
する。湿熱を清利降泄して二便から去り、邪に出路を与えることにより黄疸を除く。
<参考>
「無汗、小便不利」が黄疸を発生する条件である。
陽明病では裏熱が三焦を通じて透表外泄し、熱迫による津液の外泄もあって汗が出る。しかし、三焦に湿
滞があると、熱の透表外泄が阻害され、水湿の下泄も傷害されるので「無汗、小便不利」を呈し、邪熱
が裏に欝遏されて瘀熱になり、湿熱が蘊蒸することによって黄を発するのである。
茵蔯蒿湯で三焦を通利して小便を利し、湿熱を除くと黄疸は消退する。
本方(茵蔯蒿湯)は脾胃湿熱による慢性の経過をとる黄疸にも適応できる。
本方(茵蔯蒿湯)は黄疸のみに使用するのではなく、熱が湿より重い脾胃湿熱に適用する。
加減法
肝胆湿熱による往来寒熱、口苦、胸脇脹痛などを伴うときは、柴胡・黄芩などを配合する。
気滞の腹満、脇痛には、欝金・枳実などを配合する。
胃気上逆の悪心、嘔吐、少食を呈するときは、竹茹・神麹など配合する。
日本での保険適応効能、効果
尿量減少や、便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症;黄疸、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、
口内炎
利湿清熱
茵蔯 12g+五苓散 6g
粉末にし分 3 で服用する。水煎し服用してもよい。
主治は、湿熱黄疸で湿が熱よりも重いもの。
黄疸だけでなく、湿が熱より重い湿熱に広く用いてもよい。
本方(茵蔯五苓散)は、清熱利湿、退黄の茵蔯と利水滲湿、通陽の五苓散の配合で、利水滲湿に主体があり、
清熱は補佐である。
日本での保険適応効能、効果
咽が渇いて、尿が少ないものの次の諸症;嘔吐、じんましん、二日酔のむかつき、むくみ
温裏助陽・利湿退黄
茵蔯・炮姜各 9g・附子・炙甘草各 6g
水煎し服用する。
主治は、陰黄による暗黄色の黄疸、元気がない、食欲不振、肢体の冷え、脈が沈細で無力などの症候。
寒湿困脾で脾暢が虚し、土壅木欝(脾暢不振で湿邪が肝胆を阻滞する)で胆液が肌膚に溢れて発黄する。寒
湿は陰邪であり陽気を阻滞するために、黄色ではあるが暗滞を呈し「陰黄」と称する。
辛温の附子・炮姜は、温中散寒して寒湿を除き陽気を振奮する。茵蔯は利湿退黄し、甘草は諸薬を調和する。
<参考>
寒湿の黄疸は「陰黄」とも呼ばれ、湿熱の黄疸である「陽黄」と区別されている。
寒湿の黄疸である「陰黄」とは、肝炎、胆のう炎などが慢性化し、全身の機能やエネルギー代謝、あるい
は循環機能が低下した状態(陽虚)でみられる黄疸で黒ずんでくすんだような黄疸を呈する。