第 4 学年社会科学習指導案

第 4 学年社会科学習指導案
日時:平成 27 年 11 月 20 日
4 年松組 37 名(男子 19 名
女子 18 名)
授業者:加藤 朋生
研究テーマ
児童が主体的・協働的取り組む社会科の学習活動づくり
本時の主張
本校の平成 27 年度の研究主題は「主体的・協働的な学びの実現‐ICT 機器の活用を通して‐」
である。それを受け、社会科部では「児童が主体的・協働的に取り組む社会科の学習活動づくり」
をテーマとして掲げ、今年度、研究を進めてきた。
学習指導要領によれば小学校における社会科の最大の目的は、「公民的資質の基礎を養う」こと
にある。「公民的資質」とは、「みんなの幸せ考える力」だと私は解釈している。
今、社会にはたくさんの価値観が存在している。何が正解で何が間違っているのか。正確に先を
見通すことのできない時代に生きている。だからこそ、今まさに「自分も含め、みんなが幸せにな
れる方法を考える力」が必要なのである。
テレビや新聞などで取り上げられるニュース。社会には解決すべき数多くの問題がある。しかし、
一体どれほどの人が、自分の関心事として捉えているだろうか。解決するのは、紛れもなく、私た
ち自身であるというのに。
問題を主体的に解決する力。これこそが、今の時代にはなくてはならないものである。そして、
一人では解決できない問題は、みんなで協働的に解決していく姿勢も大切であると考えている。
今回は、東日本大震災について扱う。まだ4年しか経っておらず、課題は山積している現代的課
題の 1 つといえる。しかし、答えが見つかっていない話題であるからこそ、子どもたちと挑戦して
いく価値があるのだと考えている。いかに被災地石巻のことを自分のことに引き寄せて考えること
ができるか。いかに自分の切実な問題として考えを深めることができるか。
大変難しい取り組みではあるが、このクラスの子たちと考えていきたいと思う。
1. 単元
「情報とわたしたちのくらし」
2. 単元目標
我が国の情報産業や発達した社会の様子について、調査したり資料を活用したりして調べ、情報
化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼしていることや情報の有効な活用が大切であることを
考えようとすることができる。
3. 小単元名
「情報と東日本大震災」
1
4. 教材観
いつ起きても不思議はないと言われる首都直下型地震や南海トラフ巨大地震。子どもたちが
大人になり社会に出るころには、巨大地震に遭遇する確率は低いとは言い難い。
本校では、避難訓練が度々行われる。しかしながら、どれだけの子どもたちが危機感を持っ
て、巨大地震について考えているだろうか。被害について調べ、実際に被災したときにどのよ
うに行動していけばよいのかについて考える機会はほとんどないように思う。命にかかわるこ
の問題ついて理解を深めることは急務である。
先日、私は被災地・石巻を訪れる機会を得た。そこで、被災地の今を目の当たりにし、地元
の人たちからは多くの体験談をうかがうことができた。テレビなどのメディアでは、ほとんど
報道されることのなくなってしまった被災地。しかし、今もなお、被災者たちの苦労は続いて
いる。生計をたてることは難しく、住居すらままならぬ状況にある人もいる。
だが、石巻の人々は前を向いている。今回の震災を教訓にし、多くの人に伝えようと、町を
挙げて活動をしているのだ。「伝えなければ、この状況を。子どもたちに。」と、私も切に感じ
た。
さて、本実践では、東日本大震災で被災した石巻を事例として取り上げ、
「情報」について考
える学習を行う。
突然の巨大地震、津波。闇雲に右往左往するしかなかった石巻の被災者たち。彼らが探して
いたのは情報だった。家族・知人の安否、自分の住居の状況、食料や飲料を確保する術、安全
な避難場所。どんなに小さい情報であっても、それがたとえ受け止め難い事実であっても、今
どんな状況下にあるのか知るためには、貴重な手がかりであったはずだ。
にもかかわらず、被災地を襲ったのは停電や通信機能などのライフラインの停止。知りたく
ても知ることのできない状況。メディアの多くが、その役割を果たせなかった。
しかし、一方で、被災地以外の場所では、様々な情報メディアが活躍した。自衛隊など公的
機関はもちろんのこと、全国から多くのボランティアが救援に駆けつけた。連日報道される被
害情報を見て、
「何かできることは」と被災地に思いを馳せた人も少なくなかったにちがいない。
まだ、復興したとはとてもいえない石巻。しかし、ここまでの道のりを歩んでくる間には、
たくさんの情報の力が働いていた。現場に届けられた物資、駆け付けたボランティア。その全
てが、何らかのメディアから得た情報を便りに被災地へ集まったものである。
ただ、情報によってもたらされるデメリットは、被災地でもよく考えなくてはならない問題
だった。徐々に明らかになっていく被災情報。これは、現地の人々にとって、自分たちの置か
れた状況を知る手がかりであった反面、未曽有の被害状況は住民の不安を煽る原因ともなった
という。
本小単元では、石巻に住む人々から得たインタビュー資料を核として、情報の役割と有効な
活用方法について考えていく。
そして、この学習をきっかけとして、将来、震災に出遭ったときの身の安全も含め、震災が
起こった地への支援などについても考えていくことを期待している。
2
5. 児童観
4 年生が始まってからは、子どもたちから発せられる「ん?」「なんで?」という疑問を大事にし
て授業を行ってきた。
当初は「先生が何かをしてくれるのだろう。」という他人任せの態度を見せる子が非常に多かっ
た。問いかけても、授業で扱っている事柄は、どこか自分たちとは無関係のような気がしていたの
だろう。自ら考えようとする子は一握りだった。子どもたちのとる、いわば「お客さん」のような
状態。これは、他の誰でもない授業を行っている私自身がつくってしまったものだと感じた。
社会科は、子どもたちが、毎時間の学習問題を、自分の切実な問題として捉えることから始まる。
「ほうっておけない問題だ」と感じるからこそ、子どもたちに興味や関心が芽生えるのである。
今年度は、子どもたちに寄り添って、学習問題をつくり、みんなで考えていく社会科の授業を目
指してきた。すると、クラスの中にいくつかの変化があらわれた。授業時間外でも、子どもたちが
社会科で扱っているテーマについて話し合っているのである。とくに、授業の直前と直後には、友
だちと「ぼくはこう思う」
「でも、私の考えでは…」と。さらに、塾などの習い事で忙しい中でも、
自宅で進んで資料を集めてくるなど、授業に対する前向きさも育ってきたと感じている。
授業には、子どもたちが主体性を持って活動できる時間を必ず設けた。クラス全体での話し合い
活動、ホワイトボードに調べたことや考えたことをまとめていくグループワークなど。子どもたち
同士がコミュニケーションを取り合い、学び合う時間もまた、クラスの変化を生み出す要因となっ
た。
これまで挙手の少なかった子たちが、活発に授業に参加するようになった。反対に、塾などに通
っており、「学校の勉強はもう分かってるよ」という子。確かに知識は豊富ではあるが、すぐに周
りの子とお喋りを始め、授業に集中することが難しい子が私の悩みであった。しかし、グループワ
ークを取り入れてからは、このような様子の子が減った。それだけではなく、誰よりも生き生きと
授業に取り組むようなオピニオンリーダー的存在となったのである。グループの中での話し合いを
引っ張り、円滑に進めようと努力する姿には、しばしば頼もしさすら感じる。
4 松の子たちが入学する年に、東日本大震災は起こった。子どもたちにとって震災は、記憶に新
しい出来事である。しかし、そのころは未就学児だったということもあり、当時の状況を詳しく知
る子は少ない。まさに、「どこか遠くで起こっている出来事」というくらいの意識の子が多いと感
じている。本実践を通して、子どもたちに期待することは自分事のように震災のことを捉えるとい
うことである。明日は我が身かもしれない現状にある今、震災のことについて少しでも関心を高め
ておくことは大切なことであると信じている。
3
6.単元計画(全 6 時間)
過程
児童の活動
(●学習課題 ○主な学習活動 ・学習内容)
○教師の活動・教材
☆研究テーマとのかかわり
●「石巻はどんな特色を生かして人をよぼうとした
のだろう?」
〇地図帳や観光パンフレットなどの資料を調べ、石
巻の特色を調べる。
・石巻の特徴…農業・水産業・観光「萬画の国」
○津波に襲われたキャラクターをもとに、震災への
関心を高める。
○石巻の航空写真や、町の様子
から、児童に石巻へのイメージ
を持たせる。
・グーグルアース
・石巻の写真(タブレット)
つかむ
1
(11/12
5 校時)
調べる
2
●「がれきに埋もれたキャラクターたちの運命はい ○現在の修復されたキャラクタ
(11/13
4 校時)
かに?」
○ボランティアの活躍について調べる。
・地元民のボランティアへの感謝の気持ち
ーたちの資料から、ボランティ
アの存在について関心を持たせ
る。
〇東日本大震災が石巻に及ぼした影響について調 ・石巻市復興まちづくり情報交
べる。
流館でのインタビュー記事
・石巻被災状況と復興状況の写
真資料
3
(11/16
6 校時)
●「被災地のために、私たちができることはなんだ ○現地でできること、東京から
ろう?」
できることに分けて被災地支援
4
(11/19
5 校時)
●「震災直後の停電状態。石巻ではどのように情報 ○号外かべ新聞(1 日目、2 日目)
を入手していたのだろう?」
を提示し、地元民や石巻日日新
○グループで、被災地支援について考える。
●なぜ、こんなにも早く助けにかけつけることがで
きたのだろう。
〇どのように情報を入手し、救援に駆け付けたのか
を調べる。
・インターネットなどのメディアの活躍
〇電気が使えない状況下における、情報の伝達方法
について考える。
・石巻日日新聞の存在
・号外かべ新聞
4
について考えさせる。
・ホワイトボード
○被災地にかけつけたボランテ
ィアなどの資料から、情報の大
切さについて感じ取らせる。
聞社の人々がどのように情報を
入手していたのか考えさせる。
○読者にとって役立った情報は
何か、考えさせる。
・石巻ニューゼ館長のインタビ
ュー記事
まとめる
5(本時)
(11/20
5 校時)
●「石巻日日新聞社~3 日目以降も被災情報を伝え ○かべ新聞を提示し、石巻日日
続けたのだろうか?~」
新聞社の葛藤について考えさせ
〇号外かべ新聞 3 日目以降を読む。
る。
○なぜ、被災情報を伝えなかったのか考える。
・情報を発信する人の役割と責任
・石巻ニューゼ館長のインタビ
ュー記事
・3 日目以降のかべ新聞
深める
6
(11/26
5 校時)
●「これまでの学習をふりかえろう!」
5.本時の目標
・「石巻日日新聞社は被災情報を伝え続けたのだろうか」という学習問題を、理由をもって話し
合うことができる。
・石巻日日新聞社の活動を事例として、情報を発信するのに求められる役割と責任の大きさにつ
いて考えることができる。
6.準備するもの
・IWB
・教師用タブレット
・石巻日日新聞号外(かべ新聞)の資料
・石巻ニューゼ館長のインタビュー資料
5
7.展開(5/6 時間)
学習活動
・指導上の留意点
☆評価
つ
か
む
石巻日日新聞社
~3 日目以降も被災情報を伝え続けたのだろうか?~
・石巻日日新聞社のかべ新聞 1 日目
と 2 日目を提示
調 1.石巻日日新聞社によるかべ新聞(1 日目、2 日目)を参照 (本時までに、被災情報掲載の是非
べ しながら、「3 日目以降も被災情報を伝え続けたかどう について考えさせ、立場をとらせて
る か」について理由を持って考える。
おく。)
・児童に意見を板書させる。
・コの字型の机配置。
Yes
・状況を知るには正確な情報が必要なため。
☆石巻日日新聞社が被災情報を
・安全に行動できるから。
・命を守ることができるから。
など。
伝え続けたかどうかについて話し
合うことができたか。
No
・町を明るくしたいから。元気づけたいから。
・安心してほしいから。希望を持ってほしいから。
・読者を不安にさせないため。
など。
2.
3 日目以降のかべ新聞を読み、
・机を前向きに配置。
「なぜ、3 日目以降、被災情報は少なくなったのか」に ☆情報を発信するのに求められる
ついて考えをまとめる。
役割と責任の大きさについて考え
ることができたか。
ま 3.石巻日日新聞社の方のインタビュー資料を読み、大切 ・インタビュー資料配布
と だと感じたところ、共感を覚えたところを伝え合う。
・IWBにも提示
め
☆資料から石巻日日新聞社の方の
る
インタビュー記事から、自分の考え
をまとめ、伝え合うことができた
か。
8.評価
・「石巻日日新聞社は被災情報を伝え続けたのだろうか」という学習問題を、理由をもって話し
合うことができたか。
・石巻日日新聞社の活動を事例として、情報を発信するのに求められる役割と責任の大きさにつ
いて考えることができたか。
6