2 平成27年度下期における住宅市場動向について 住宅金融支援機構 業務推進部 営業計画グループ 1.調査の概要 はじめに 本調査は、住宅金融支援機構が住宅事業者、一般 消費者及びファイナンシャルプランナーの三者に対し、 (1)平成27年度下期の受注・販売等の見込み (調査対象:住宅事業者) 平成27年度下期(平成27年10月~平成28年3月)の住 住宅事業者に対し、平成27年度上期(平成27年4月 宅市場に関する事項についてアンケート調査を実施し、 ~9月)と比較した平成27年度下期(平成27年10月~平 その結果を取りまとめたものである。 成28年3月:以下同じ。)の受注・販売等の見込みを聞 2.調査方法等 はじめに いたところ、 「平成27年度上期と比べて増加」との回答 が47.4%と最も多かった。また、 「平成27年度上期と比 ■調査時期 べて同程度」との回答も39.3%あり、 「平成27年度上期 ◦住宅事業者及びファイナンシャルプランナー:平成27 と比べて減少」との回答は13.3%だった【図表1】 。 年7月~8月 増加する要因を詳しくみると、 「住宅ローン金利の低 ◦一般消費者:平成27年8月 水準」 (49.5%)、 「消費税引上げ前の駆込み効果」 (49.2 ■調査方法 %)、 「経済対策によるフラット35Sの金利引下げの効 ◦住宅事業者 果」 (26.5%) 、 「省エネ住宅ポイントなど経済対策(フラ ヒアリング・郵送等によるアンケート調査(【フラット ット35Sを除く)の効果」 (20.8%)などが上位となった。 35】の利用があった住宅事業者(回答数672) ) 足もとの低金利環境や経済対策の追い風により顧客の ◦ファイナンシャルプランナー 住宅取得意欲が高まる中、平成29年4月に予定されてい ヒアリング・郵送等によるアンケート調査(セミナー等 る消費税率10%への引上げを見越して、駆込み需要を 機構業務にご協力いただいた方(回答数53) ) 取り込もうとする動きが徐々に現れつつあると見受けら ◦一般消費者 れる【図表1】 。 インターネット調査(平成27年10月から平成28年3月 一方、今年度下期の受注・販売等が減少するとの見 までに住宅取得を検討中の25歳~59歳の方(回答数 込みを寄せた住宅事業者の中では、 「消費税率引上げ 1,100) ) 先送りによるエンドユーザーの様子見傾向」 (39.8%)、 ■主な調査項目 32 3.調査結果 はじめに 「景気先行き不透明感」 (31.8%)、 「建築資材価額の上 平成27年度下期の住宅市場の見通し、住宅事業者の 昇等の影響」 (26.1%)を主要な要因として指摘しており、 重点的取組事項、一般消費者のニーズ等 住宅事業者の一部で将来的な消費税率の引上げや建築 [レポート2]平成27年度下期における住宅市場動向について 【図表1】平成27年度下期の受注・販売等の見込み(調査対象:住宅事業者) 資材価格の動向の影響に加え、景気の先行きに関する 懸念などが認識され始めていると考えられる【図表1】 。 (48.5%)、 「住宅価額等の先高観」 (27.3%)などが上位 に挙げられている【図表2】 。 (2)平成27年度下期の住宅買い時感(調査対 これらの結果を、前述の住宅事業者の認識と比較す 象:一般消費者、ファイナンシャルプラン ると、住宅ローン金利が低いことが最も多く指摘されて ナー) いる点で類似点があるものの、金利の先高観や住宅価 一般消費者に対して平成27年度下期は住宅の買い時 額の先高観等などに対する懸念などの認識において、 と思うか尋ねると、 「買い時」との回答が49.2%となり、 「ど 若干の差異があることが分かる。 ちらとも言えない」が40.4%、 「買い時ではない」が10.5% また、前回よりも一般消費者で「買い時ではない」と となった【図表2】 。 する回答割合がやや増加し、ファイナンシャルプランナ また、ファイナンシャルプランナーに対しては、平成 ーで「どちらともいえない」とする回答割合が3割を超え 27年度上期との比較により今年度下期の住宅の買い時 るなど、回答者の一部では、将来の見通しについてやや 感を尋ねたが、その結果、 「買い時」との回答が62.3%、 慎重な見方も広がっている【図表2】 。 「どちらとも言えない」が30.2%、 「買い時ではない」が ちなみに、今回の調査において、ファイナンシャルプ 7.5%となった【図表2】 。 ランナーに対し、 「これから半年(平成27年10月~平成 その要因を見ると、一般消費者では、 「住宅ローン金 28年3月)に住宅取得を検討されているお客さまへのア 利が低いから」 (68.8%)、 「今後消費税率が引き上げら ドバイスのポイント」について具体的に回答を求めると、 れるから」 (36.2%) 、 「今後住宅ローン金利が上がると思 「住宅取得の環境としては、とてもよい時期。ただし、 うから」 (28.3%) 、 「今後住宅価額が上がるから」 (17.2%) 将来の教育資金や老後資金も十分念頭に置いて堅実な などが上位を占め、ファイナンシャルプランナーでは、 「住 資金計画を立ててほしい」などの意見が寄せられている。 宅ローン金利の低水準」 (84.8%) 、 「経済対策によるフラ ット35Sの金利引下げの効果」 (66.7%) 、 「金利先高観」 33 2 【図表2】受注・販売等の増加要因と住宅の買い時感の要因 (3)住宅事業者の重点的取組事項と一般消費 者が重視するポイント(調査対象:住宅事業者、 が「デザイン」と入れ替わって2位に、前回6位の「住宅 一般消費者) の価額や手数料」が「設備の性能」と入れ替わって4位 住宅事業者に対して、今後重点的に取り組む事項を にランクアップしており、住宅価額の先高観が出始めて 聞いたところ、 「建物の性能」との回答が55.4%と最も多 いる状況下において、立地と価格面をより重視する見方 く、次いで「土地の仕入れ」 (41.3%) 、 「住宅プランの提 も現れていると考えられる。 案力」 (30.5%) 、 「デザイン」 (28.8%) 、 「設備の性能」 (27.5 なお、一般消費者が重視する「立地」は、住宅事業 %) 、 「アフターサービス」 (18.5%)などの順となった【図 者が重視する「土地の仕入れ」と表裏一体の関係にある 表3】 。 ものと見ることができる。ただし、その一方で、顧客の 他方、一般消費者に対して、住宅事業者選びで重視 人気の高い地域では、土地価額の上昇から土地仕入れ するポイントを聞いたところ、 「建物の性能」との回答が が難しくなる傾向もあり、今回の調査では、一部の住宅 54.9%と最も多く、次いで「立地」 (45.5%) 、 「デザイン」 事業者から、建設用地の不足、土地仕入難を一種のボ (32.9%) 、 「住宅の価額や手数料」 (28.7%) 、 「設備の性 能」 (25.1%)などの順となった【図表4】 。 この結果、前回と同様、住宅事業者、一般消費者と トルネックとして指摘する声もある。 (4)住宅の性能で重視する事項(調査対象:住 宅事業者、一般消費者) もに「建物の性能」との回答が最も多いほか、 「デザイン」 前述の今後の重点的取組事項で「建物の性能」を選 や「設備の性能」などハード面を重視する傾向が示され 択した住宅事業者に対して、住宅の性能に関し具体的 ている。 に重視する事項について尋ねると、「省エネルギー性」 ただし、やや詳しく見ると、住宅事業者の認識は前 34 回と変化がないが、一般消費者では、前回3位の「立地」 (90.4%)が最も多く、その後に「耐震性・耐火性」 (53.7 [レポート2]平成27年度下期における住宅市場動向について 【図表3】住宅事業者の重点的取組事項 【図表4】一般消費者が住宅事業者選びで重視するポイント 【図表5】住宅事業者の重点的取組事項と一般消費者が重視するポイント %) 、 「高耐久性」 (46.3%)が続いた【図表5】 。 このように、 「建物の性能」で重視するポイントに関し これに対して、 「業者選びで重視するポイント」で「住 ては、住宅事業者が「省エネルギー性」を最も重視して 宅の性能」を選択した一般消費者が、建物の性能で重 いるのに対して、一般消費者では「高耐久性」を最も重 視するポイントについて尋ねると、 「高耐久性」 (66.1%) 視していることが明らかとなった。 が最も多く、その次に「耐震性・耐火性」 (54.6%) 、 「省 エネルギー性」 (40.6%)となった【図表5】 。 35
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