機能診断の視点2015 平成27年度 農業水利施設機能総合診断士講習会 カジマ・リノベイト株式会社 鮫島 信行 2015.9.30 構造機能の診断 2 (1) 共通事項 性能低下状況 維持管理状況 点検歴、事故歴、補修歴 周辺環境条件の変化 リスク評価(農業面、社会面) 重要度を設定し効率的な診断を実施 3 (2) 開水路の機能診断 ① 既存資料調査(事故歴、点検歴、補修歴) 問診(維持管理状況、環境変化等) ② 現地踏査(遠隔目視) ③ 簡易診断(近接目視、簡易機器調査) ④ 精密診断(コア抜取試験、弾性波試験等) は厳に必要な場合に限定 4 (3)パイプラインの機能診断 管内調査は事故歴やリスクに応じて重点的に 破裂事故多発の場合には水撃圧を確認 可撓性管は、許容たわみ率(5%)をチェック 鋼管は構造物貫通部での電食に留意 付帯施設(特に空気弁)の作動確認もポイント 5 水理及び水利機能診断のポイント 6 (1)機能診断の時期 ①構造機能:非灌漑期に落水して調査 ②水理・水利機能:灌漑時期に流況確認 シール高不足によるパイプラインへの 空気混入のような好ましくない水理現象 は低流量時に起きる可能性があるため、 計画流量時以外の時期にも調査を行う ことが望ましい。 7 (2)パイプラインの水理現象 ① クローズドタイプ: 急速なバルブ操作による水撃圧 呑口での空気混入 ② セミクローズドタイプ: ディスクバルブの開閉による水撃圧 ③ オープンタイプ: 越流水槽下流部での空気混入 末端での無効放流 8 (3) 管水路への空気混入 ① 症状: 通水障害、脈流、ブローアップ ② 診断: 小流量通水時の呑口流況調査 通気口、空気弁の機能確認 ③ 対策: 呑口シール高の確保 呑口への調整容量の付加 空気弁の補修・交換 通気口の付け替え 9 (4) 分水量不足 ① 症状: バルブ全開でも分水量不足(管水路) ② 診断: 低位分水工での過剰取水の調査 管内圧力調査 通水障害調査 ③ 対策: TM、TCによる水管理水準の向上 空気混入・空気滞留防止対策 定流量弁の採用 10 (5) 管理用水の増大 ① 症状: 余水・無効放流の発生 ② 診断: 供給・需要のミスマッチ調査 流量計、水位計の精度確認 ③ 対策: 調整容量のアップ TM、TCによる水管理水準の向上 流量計のキャリブレーション・交換 11 診断業務報告のポイント 12 (1)管理者が抱える問題点の的確な把握 ① 診断のスタートは管理者からのヒアリング ② 構造、水理、水利用の問題点を詳細に記述 ③ 開発状況、交通状況、地盤沈下等の周辺 環境変化についても記述 ④ 費用負担、労力負担、ごみ投棄、事故、苦情 等の関連情報も出来るだけ記録 13 (2) 健全度評価と対策 ① 原則:S-4・・・継続監視 S-3・・・予防保全・補修 S-2・・・補強 S-1・・・更新 重要度、リスクに応じた対策が必要 ② 重要度・リスク度が高い場合 ex. S-3~4が維持できるよう予防保全 ③ 重要度・リスク度が低い場合 ex. S-1(事後保全)での更新も選択肢 14 (3) 劣化予測 ① 数値で検証できるものに限定 ex.1: 電子機器の絶縁抵抗値、積算温度 ex.2: 水路壁の摩耗深度、ひび割れ幅 ex.3: パイプライン事故の発生率 ② 標準劣化曲線を用いた劣化予測は行わない (鉄筋コンクリート水路の劣化データを用いて 導き出したグラフであり、マクロな議論には使 用できても個々のケースには適用できない。 27年度版に推定式なし) 15 (健全度) S-5 鉄筋コンクリート開水路の 診断結果から導かれた 標準劣化曲線 S-4 S-3 19年度版手引きP59 S-2 S-1 0 10 20 30 40 50 (供用年数) Y=bX2+a 係数b -0.00216 係数a 5 標準劣化曲線 機能診断での評価 劣化曲線の補正の概念 27年度版手引きP24 S-5 補正後の劣化曲線 健 全 度 S-4 S-3 S-2 S-1 管理水準 → 時間経過 機能診断 16 数年延びた標準劣化曲線、消えた回帰式 平成27年度版手引き p65 17 (4) 保全計画 ① 原則 複数のシナリオからLCCの最小化を図れる シナリオを選択するのが原則だが ② 重要度、リスク度に応じた保全計画の提案 社会的割引率を用いたLCCの計算結果は、 非現実的な結果となる場合がある ③ 仮設を伴う保全対策 同期化によるコストダウンが重要 18 (5) 維持管理提案 ① ストックマネジメント…日常点検が最重要 施設監視が必要な箇所は管理者に 確実に引き継ぐ ② 重要度の高い施設機械…予防保全が原則 S-3~4 を管理水準に TBMが無理なら、せめてCBM あるいは臨時点検を管理者に提案 19 論文試験のポイント 20 1.問われていること以外は解答しない 減点はしないが、原則として採点対象と しないので文字数が惜しい ex.頭首工について解答を求めていないのに 解答している例など 2.問題文の一部を書き写さない 減点はしないが、解答文字数が減るので、 高得点は期待できない 21 3.解答に見出しを付ける場合は最小限度に 見出しがあった方が読みやすいが、 得点にはつながらないので解答を妨げない 範囲で表示 4.文字数オーバーは減点なし、400字の 余裕を活用しよう 得点アップはあり得る 22 平成26年度 23 何を解答するのか ●水利用機能では 公平な水配分が出来ることが主眼となる ●水理機能では 水が支障なく流れることが主眼となる これらの問題は管理者よりの聞き取りの中 に表れているので、よく読んで、問題の所 在をくみ取る 24 25 事業地区の概要から何を読み取るか 非寒冷地:凍害の可能性はない 水田地帯:ポンプは低揚程 クローズドパイプライン: 需要主導型で供給が不足すると空気混入が発生 急激なバルブ操作で水撃圧の発生の可能性 支線水路600mm以下の塩ビ管、約25年経過: 入坑調査は出来ない。疲労破壊が起きやすい 水管理システム、約15年経過:次の更新時期 主要分水工にはTM:流況の時系列把握は可能 26 27 聞き取り結果から読み取れること 水路余裕高の不足: 地盤沈下、粗度係数、過剰取水、地区外排水流入 ひび割れや錆ダレ:部分的 or 全体的 目地部からの漏水:水路周辺への影響の有無 下流部における時間的用水不足: (水理)余裕高不足の影響 or (水利)上流部の過剰分水 ポンプの頻繁な起動停止:圧力センサーの不具合、 吸水槽への流入量不足による水位低下 塩ビ管の漏水事故多発:管の劣化 、水撃圧 センサー類の故障:耐用年数 28 29 30 得点のポイント(その1) リスク評価に応じて優先度を付けて診断 余裕高不足⇒地盤沈下の可能性⇒縦断測量 過剰取水の場合には流況調査(TMデータ) 用水不足⇒流況調査⇒水管理システムの改善 時間的不足の場合には調整容量の付加を検討 需要主導型(パイプライン)⇒呑口での空気 混入をチェック⇒空気混入防止策 ポンプの頻繁な起動停止⇒用水不足、吸水槽 への流入障害、給水槽水位計、圧力センサー の点検 31 得点のポイント(その2) 管水路⇒800mm以上は管内調査が可能だが、 費用が掛かるため、リスクに応じて実施 漏水個所が特定できる場合は、部分的に管内 調査を行い、止水対策後に水張試験 塩ビ管⇒上載荷重や水撃圧による破断が多い ⇒水圧調査⇒事故率増加傾向なら更新を検討 水管理システム・電気設備⇒経年設備につい ては絶縁抵抗値を計測⇒交換部品の在庫を確 認した上でTBM管理又は更新 32
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