http://utomir.lib.u-toyama.ac.jp/dspace/ Title 分子の反転を制御する

 分子の反転を制御する新規機能性分子の創製に関する
研究(環境調和型生体・化学物質の創製と応用,プロジェ
クト研究成果報告)
Title
Author(s)
森田, 弘之
富山大学ベンチャービジネスラボラトリー年報 = Univers
ity of Toyama, Venture Business Laboratory VBL a
nnual report, 19: 27-29
Citation
Issue Date
2007
Type
Article
Text version
URL
publisher
http://hdl.handle.net/10110/13780
Rights
http://utomir.lib.u-toyama.ac.jp/dspace/
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研究代表者理工学研究部(工学)森田
弘之
(
1)プロジェクトの背景・目的
含硫黄複素環化合物の一つで、あるチアントレンは
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s軸を中心に折れ曲がったボート型の
興味ある構造をしており、 FlipFlap反転するエネルギーバリアが小さいため室温で 2つの
コンブオマーが平衡状態で、存在しています。これまでに、当研究室ではチアントレンスルフ
ィルイミン誘導体を合成し、酸加水分解反応及び熱反応による cis t
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s異性化等の詳細を
報告してきました(S
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その結果、反応性はペリ位の水素原子や他の硫黄原子上
の官能基の影響を強く受けることが示唆された。
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これらの結果から、この Flip-Flap反転を制御できれば、新規な機能物質への応用が可能で
あると考え、その基礎研究として、 1
,9位を架橋し自由に Flip-Flap反転が出来ない誘導体
を合成しそれらの光及び熱反応性の検討についてまず研究を開始した。
(
2)研究成果
化合物の合成は、チアントレン− 5−オキシドをリチオ化し硫黄を加え、メチレン鎖長を 2- 5
と変えたジブロモアルカンを反応させることで、 1
,9位が架橋された誘導体を良好な収率で
得た。このとき、得られたスルホキシドの立体はすべてチアントレン環に対して a
x
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l位で
あることが X線構造解析によって明らかにされた。 equatorial位の異性体が生成しない理由
2
7
として、環構造を形成する段階で、のスルホキシドグループ。による立体的・電子的影響等の効
果が考えられる( Table 1
)。
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また、スルホキシドは光反応によってもピラミダル反転しラセミ化することが報告されてい
るので、 n =3- 4の場合に高圧水銀灯を用いた異性化反応の検討を行なった。光反応にお
ける異性化反応はスムーズに進行し、スルホキシドが equatorial位に異性化した生成物を得
ました。逆に得られた equatorial体を同条件で光照射しでも axial体への異性化は起こらな
かった。異性化が起こらなかった理由としては、 UV吸収スペクトルを測定したところ、 axial
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立のとき
350nm付近にあった吸収ピークが equatorial位では観測されないために、不可逆的
に光による異性化反応が起ったと考えることができる。
n =3- 4の場合、熱によるこの異性化反応を検討したところ、 150°C 以上では複雑な分解
0
° C程度の低温では axial体から equatorial体への異性化反応は起こ
生生物を与えるが、 8
らず、逆に equatorial体から axial体への異性化は高収率で進行することを明らかになった
(Scheme 2
。
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この結果、 n ニ 3- 4の場合、光照射反応で選択的に equatoria体へ、熱反応(一 80 °C)
で
axial 体へと可逆的に変化させることが明らかになり、
2つの分子の状態を光と熱の反応で
制御できる機能分子を初めて作りだすことに成功した。これらの化合物類は新規な材料とし
ても応用が可能と考えられる。
n = 2の場合の光反応は、以下の様に n = 3
4の場合と異なり、
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o とエチレンが脱離し
1,9-dithiadibenzothiopheneがえらるとしづ興味有る反応性を示した。この反応の反応機構
の詳細については現在検討中である( Schem 3
。
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また、チアントレンを新規機能性分子として応用する目的で、チアントレン環を有するポリ
エーテル誘導体を設計し合成・反応性を検討しています。これまでチアントレンを用いたポ
リエーテノレへの応用はされておらず、金属カチオンを捕捉することにより Flip-Flap反転を
制御できるような新規化合物の合成を試み、いくらかの誘導体で金属を補足できる可能性を
見出だした。
(
3)プロジェクト成果(特許,起業,技術移転等)
(
4)プロジェクト成果の応用・効果・構想(起業計画,市場での応用・効果,特許化構想)
基礎実験により新規機能性材料として応用が可能と考えられる興味ある実験結果が見出され
た。しかし、実際に機能性材料として応用するためにはさらなる基礎研究が必要である。従
って、特許申請等のプロジェクトの成果やその応用については今後の課題である。
(
5)利用施設
以下の設備を高頻度で利用した。
6 0 0MHz核磁気共鳴吸収装置、
高分解能質量分析装置
0研究員報告
.内容
国際学会、国内学会で報告し、現在論文を国際誌に投稿中である。
2
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