口腔機能向上サービスを行って

口腔機能向上サービスを行って
~高齢者の口腔機能を向上し、楽しく安全な食生活を送るために~
施設名
在宅介護複合施設ほづみ・通所介護
発表者名・職名
進藤 久美(介護福祉士)
共同研究者
ほづみ通所介護事業所・口腔委員会
練、発音・発声に関する訓練等を行っている。
1.《はじめに》
口腔機能向上サービスとは、高齢者において口腔機能の低下
4.<サービス提供後の結果>
している者又はそのおそれのある者を対象にして行われ、予
RSST とオーラルディアドコキネシスの結果
[事前]
防給付の場合は要介護状態への悪化防止や要支援状態からの
RSST
[事後]
(パ) (タ) (カ)
RSST
[評価]
(パ) (タ)
(カ)
RSST
(パ) (タ)
(カ)
改善をめざし、介護給付においては要介護度の重度化の予防、
1
2
1.6
1.5
1.6
3
2.8
3.2
2.9
↗
↗
↗
また現在の機能維持さらには改善を目指して実施されるもの
2
1
2.0
2.1
2.0
2
2.0
2.4
2.2
↗
→
↗
↗
3
1
1.2
1.6
1.5
1
2.1
1.8
1.5
→
↗
↗
→
4
5
1
1
3.4
4.0
1.9
2.5
1.8
2.1
1
2
2.1
4.5
2.2
2.6
2.1
2.6
→
↗
↘
↗
↗
↗
↗
↗
6
1
2.0
2.2
2.1
1
1.9
2.1
2.1
→
↘
↘
→
7
2
1.4
1.3
1.5
3
2.8
2.3
2.6
↗
↗
↗
↗
平均 1.3
2.2
1.9
1.8
1.9
2.6
2.4
2.3
↗
↗
↗
↗
とされている。また、口腔機能向上サービスを実施すること
により以下が科学的に論証されている。
1.食べる楽しみを得ることから、生活意欲の高揚がはかれる
2.会話、笑顔がはずみ、社会参加が継続する
↗
3.自立した生活と日常生活動作の維持、向上がはかれる
RSST、
オーラルディアドコキネシスともに上向きの結果であ
4.低栄養、脱水が予防できる
るが正常値(RSST は 30 秒に 3 回以上、オーラルディアドコ
5.誤嚥、肺炎、窒息の予防ができる
キネシスはそれぞれ 4 回以上)には満たないため、誤嚥や摂
6.口腔内の崩壊(虫歯、歯周病、義歯不適合)が止まる
食不良のリスクは勘案すべきである。
7.経口摂取の質と量が高まる
5.<考察・課題>
(口腔機能向上マニュアルより)
実施期間が短いために効果が得られるような結果は出ていな
私たちはこの 4 月より口腔機能向上サービスを開始している
いが、RSST やオーラルディアドコキネシスは数値を見る限
が、現在提供しているサービスの内容やサービスを開始して
り改善してきている。このことから摂食・嚥下機能の維持と
からの利用者の変化、今後の課題を報告する。
向上がみてとられる。今後、正常値への到達を目標に機能向
2.<取り組み>
上に期待したい。しかし、利用者がこのサービスを受けるに
(1)期間:平成 25 年 4 月 ~
あたり、受動的に行っている場合が多くこのサービスの利点
(2)対象者:当施設を利用される要介護 1~5 までの高齢者
についての認知度も低い。よって、利用者本人が「やってみ
(3)職種の主な役割
たらよかった、もっとサービスを受けたい」とモチベーショ
○専門職種(看護師):月2回の専門的サービスの提供や事前、
ンが高まるようなサービスを提供することが必要である。今
事後アセスメント、サービス途中のモニタリング、概ね3
後の課題として、サービス提供内容をわかりやすく興味の持
ヶ月ごとの総合評価を行う。
てる内容にしたり、機能向上が実感できるプログラムを実施
○関連職種(介護職):毎日の基本的サービスの提供。
したり改善をすること、また利用者が元気でいられるために、
○生活相談員:本人や家族、ケアマネージャーに対しサービ
おいしく食事をして健康でいられる時間を長くするために行
スの開始や継続の同意を伺う。口腔機能改善管理指導計画
っているサービスであることを家族にも情報提供し、家庭で
の作成への助言を行う。
も継続できるようなセルフケアの指導をすることが課題であ
3.<サービスの内容>
る。また、重度の認知症高齢者は咬筋の観察や RSST などの
●基本的サービスとして介護職が利用者に対し、毎回の口腔
テストが難しいため、指標を明確にして正しく評価・アセス
体操や口腔ケアの実施確認、声かけ、介助を行っている。
メントするには歯科医との連携も必要と考えている。これか
●セルフケアプログラムとして本人が自宅で行う口腔清掃や、
らも委員会を中心に検討を重ね、より良い口腔機能向上サー
その自立、口腔機能向上のための訓練を実施・指導する。
●専門的サービスとして唾液腺マッサージ、呼吸に関する訓
ビスとして実施していくことを目指したい。