Q

友の会広場 ● ガーデニングフォーラム
㈶京都市
都市緑化協会
太田 周作 Q1・Q2・Q3
高知県生まれ。京都大学付属古曽部園芸場にて研修後、大
阪市立天王寺公園植物温室に勤務。自営などの後、平成6
年大阪テクノ・ホルティ園芸専門学校教授となる。現在は
緑化協会にて花と緑の普及員、みどりの相談員に就任。
園芸研究家
9月
園 芸 な ん で も Q&A
臣 康雄 Q4・Q5・Q6
愛知県生まれ。三重大学農学部農学科を卒業後、タキイ種
苗㈱に入社、タキイ研究農場で野菜育種に従事。退職後、
宮崎大学農学部フィールドセンター客員教授を経て、現在
ニチレイ農業コンサルタント(海外での野菜栽培指導)。
このコーナーでは、園芸作業中によく感じる疑問点、
難しい点、つまずきやすい点などを中心に、
Q&A方式でやさしく解説します。
Q
A
3
秋植え球根は掘り上げ
ないといけないが、
春植え球根はその必要
はないと聞きました。
本当でしょうか?
植物の特性をよく知り、ワンランク上の園芸を目指しましょう。
Q
秋植え球根のほとんどは温帯域でし
かも地中海型気候帯を原産とします。
1
通常、果樹類が収穫できるまで植え付けてから
数年かかりますが、鉢植えで育てると
早くに収穫できると聞きました。本当でしょうか。
鉢植えで育てると地植えよりも開
この気候帯の特徴は、夏の高温時に雨が降
A
らないことです。そのため、秋から翌年の
当然収穫は早くできます。
春まで生育して花をつけ、夏の高温乾燥期
果樹に限らず樹木類を鉢で栽培すると
には休眠するように適応したのです。そん
開花、結実が早まります。日本の誇る伝
な環境とは正反対の雨の多い日本の夏に、
統園芸の盆栽もこの習性を技法として利
球根を掘り上げないままでおくと、高温と
用しているのです。
多湿が重なり、デンプン質でできた球根は
樹木を限られた用土しかない鉢で栽培
腐るものが多くなります。
すると、太根は出ずに、根は鉢に当たっ
一方、春植え球根は、熱帯や亜熱帯に自
て分かれ、細根が多くなります。また、
生するものや、冬に乾燥する地域のものが
肥料分も限られているため、株を生長さ
多く、春に植えると早々に芽を出し、夏ま
せる栄養生長が衰えて老化していきます。
で生育して、気温が下がる秋から冬にかけ
そのため、子孫を残そうとして生殖活動
て地上部を枯らし休眠します。当然寒さに
が高まり、花をつけ、実を結ぶようにな
くなってしまうことがよくあります。こ
弱いので、寒さの厳しい地方では、休眠し
るのです。
れは、元々が若木であったため、庭植え
始めたら堀り上げ、凍らないよう暖かくし
なお、これと反対の現象ですが、実が
すると、根を伸ばして肥料分を十分に吸
て冬越しをしなければなりません。しかし、
ついている鉢植えの果樹を買って、庭に
収し、再び栄養生長を始め、花も実もつ
一般的に春植え球根の代表種である、カラ
植えたところ、翌年から花も実もつけな
けなくなるのです。
花、結実年齢が早くなりますので
樹高80㎝で果実をつける鉢植えのナシの木。
ーやカンナ、グラジオラス、ダリア、アマ
リリスなどは、東海地方以西などの暖地で
は掘り上げなくても屋外で十分冬を越し、
春には芽を出します。ただし、地域にもよ
りますが、巨大輪系アマリリスや、グロリ
Q
2
ツツジの新芽が耳たぶ
みたいになって膨れてきます。
何が原因でしょうか。
これはツツジ類もち病による症状
ですし、純熱帯性のカラジュームやユーチ
A です。この病気は3種の菌によっ
ャリスなどは、屋内に入れて最低5∼8℃
て起こりますが、それぞれ宿主と病徴に
を保たなければなりません。
違いがあります。Ⅰ型はヤマツツジ類と
オサ、クルクマなどは防寒するほうが無難
巨大輪系アマリリスの発芽(4月)
。冬は簡単な防
巨
巨大輪
巨大
大輪系アマ
系アマリリス
ア リリス
アマ
リス
スの発芽
の発芽
芽(4月
(4
4 )
4月)
。
。冬
冬は簡
は簡単
簡 な防
防
寒が必要。
寒が必
寒が
寒
が必要。
が必
要。
袋状の菌こぶ(サツキ)。
サツキ類やアザレアを宿主とするもので、
∼9月の雨の多い時期の日当たりの悪い
新葉や葉柄、蕾などが著しく肥大して、
場所にある株に発生します。また、鉢植
耳たぶ状や袋状の菌こぶを作ります。Ⅱ
えの場合は、葉の上からいつも水をかけ
型はサキシマツツジを宿主とし、新葉に
ていると発生することがあります。もち
大きな菌こぶができます。Ⅲ型はモチツ
病のせいで、ツツジ類の株が枯れてしま
ツジ類に寄生し、仲間のヒラドツツジも
うことはありませんが、そのままにして
侵されます。若い葉に2∼10㎜くらいの
おくと見苦しいだけでなく、毎年発生す
病斑ができ、葉は膨れて健全部の葉の厚
るようになり、花つきが悪くなります。
さの3∼5倍になりますが、大きな菌こ
病気の枝葉は発見次第切り取り、焼却す
ぶは作りません。
るなどして処分します。白い粉状の胞子
ツツジ類のもち病は5∼6月および8
が出る前に行うことが大切です。
2010.
9.
はなとやさい
59
Q
6
ミズナの葉が縮れた
ようになっています。
どうしてでしょうか。
Q
4
A
ゴボウの根が
分かれます。
どうしてでしょうか。
ゴボウの根は土中に障害がなけれ
ば1mくらいまでまっすぐ伸びま
さらにネグサレセンチュウの被害を最
すが、途中に小石や肥料のかたまり、未
もよく受ける作物で、主根の先端が根腐
熟堆肥等が多くある時や、作土が浅く下
れをおこし岐根となり、連作により年々
の層が固い場合等障害があると分岐しや
ひどくなります。
すくなります。
栽培に当たっては、他の作物との輪作
そのほか岐根になる理由として、生育
に努め、有効土層1m以上の畑を選び、
葉が縮れたようになっているミズナ
初期の過湿による根傷みが考えられます。
十分深く耕して土のかたまりを砕いてお
にアリが行列を作っていませんか。
またネコブセンチュウが根の先端部から
き、畝立てをして排水をよくします。ま
アリはアブラムシのお尻から出る蜜をなめ
侵入し、根部が分岐して直根にならなか
た、なるべく前作に、1坪当たり完熟堆
に集まってくるのです。このアブラムシが
ったり、根の表面の所々に黒斑状のえそ
肥10㎏、炭酸苦土石灰 3 0 0gを施用し、
大発生して葉の汁液を吸うと葉が縮れます
部を生じたりします。
よく混和しておきます。
A
が、それだけでなくウイルス病を伝染させ
ます。ウイルス病は葉が縮れ、株が奇形化
したり株全体が黄化萎縮 、 葉の色がモザイ
Q
ク状になるなどの症状が出ます。
この病気はアブラナ科の野菜や雑草等の
ウィルス被害株を加害したアブラムシの飛
5
レタスの発芽が
悪いのですが、
どうしてですか?
野菜は普通にタネまきしただけで
来によって伝染されます。しかもアブラム
A
シは8∼9月にかけて高温乾燥すると発生
これをタネの「休眠」といいます。休眠
が多くなります。
には、タネが成熟するのに伴って、自然
そこでこのウィルス病を防ぐために次の
に起きる「一次休眠」と、タネがある不
6点を行いましょう。
利な条件に置かれた時、それに耐えるた
❶病気になった株はできるだけ早く抜き取
め休眠する「二次休眠」があります。
をまきます。
レタスの発芽適温は 15 ∼ 20℃で、25
芽出しの方法は、数時間水につけたタ
℃以上と高温になると強制的に休眠に入
ネを湿った布にくるみビニール袋に入れ
り、発芽しにくくなります。この場合は、
て冷蔵庫で数日保管し、芽が出たものを
発芽に不利な条件のせいで「二次休眠」
まきます。
が起こったといえます。二次休眠は、レ
またレタスは、タネが発芽する時光が
❹寒冷紗を播種時から被覆する。
タス、ゴボウ、ホウレンソウなどの野菜
あった方が、発芽が促進される好光性種
❺周辺の雑草を除去する。
で見られますので、目覚めるのを待って
子のため、覆土は厚くなりすぎないよう
❻連作を避ける。
タネまきするか、芽出しをしてからタネ
薄く行い、ごく軽く鎮圧します。
る。
❷ウイルスを伝搬するアブラムシを防除す
る。
❸モザイク病防止マルチや銀紙等でアブラ
ムシの飛来を忌避する。
は、発芽しない現象が見られます。
頼れるみどりの相談所だより 第9 回
「青森県弘前市緑の相談所・弘前城植物園」の巻
弘前公園内にある弘前市緑の相談所・弘前城植物園は、昭和54年
からの都市緑化植物園事業により整備され、弘前市の緑化拠点施設
となっています。
当相談所では、常時専門の相談員が花と緑に関するさまざまなご
相談をお受けしています。また、園芸教室や講習会、展示会も開催
しています。
自治体などが運営する花と緑の相談所が全国にあります。多岐に
わたる花や野菜の園芸相談に答えてくれる、園芸好きにとって非
常に頼もしく欠かせない存在です。
弘前城植物園は、地域のみなさまと共に緑を守り、増やし、育て
るために役立つよう、樹木や草花を用途別に植栽しており、白神山
地のブナ林を中心とした自然の生態系を再現している「白神山地生
態園」や、津軽9代藩主が江戸から庭師を招き策庭したといわれる
「三の丸庭園」などがあります。園内の季節の花情報等をホームペ
ージで紹介していますので、ぜひご覧ください。
青森県弘前市緑の相談所・弘前城植物園
〒036-8356 青森県弘前市下白銀町1-1 弘前公園内
■ 園芸相談 0172- 33- 8737(相談所)
4/1∼11/23まで無休
■ 休館日 上記以外の月曜日(祝日の場合はその翌日)
年末年始(12/29∼翌年1/3)
■ 相談時間 9:00 ∼ 17:00
■ 相談方法 来館または電話
■ 入園料 大人300円、小人100円(植物園)
■ ホームページ http://www.hirosakipark.or.jp
60
2010.
9.
はなとやさい
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緑の相談所