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一寸一息
一寸一息
深海の水は流れている!の巻
深海底の水が流れている?どうも本当のようです。世界の海の平均深度は約6千 m です。海洋科学技
術センター(現海洋研究開発機構)が「しんかい 6500」を造ったのは、これで世界の海の 90%が潜水で
きるからです。でもどうしても最深部位まで潜りたいということで、1万 m まで潜れる「かいこう」を
造り、潜水のできない海はなくなりました。でも、海洋研究が進むにつれて表層水から海底までの海水の
分析をしますと不思議な現象に出会いました。水温は表層からだんだん下がっていってある深さで4℃と
海底まで一定になります。しかし、元々地球になかったフロンガスや放射性人工核種は表層で最も高く、
深いほど濃度は下がりますが、何と海底付近で再び濃度が上昇するのです。そして海底のフロン等の人工
生産物は赤道の海底より北大西洋の緯度が高いほど濃度が高いのです。どうしてでしょうか?
科学者はこう考えました。北太平洋と北大西洋、どちらの水が辛いでしょうか?北大西洋です。北大西
洋の方が大河川の影響が少ないので塩分濃度が高いのです。冬、寒くなると海水は冷え、密度が高くなり
ます。グリーンランド付近で表層水は重くなって沈みます。大気に含まれるフロンや人工性核種も一緒に
沈みます。海底に着くとこの重い海水は次から次へと上から重い海水が押すので南へと流れ、赤道を越え
て南極にぶつかります。西は南アメリカ大陸にぶつかりますから東へ流れ、オーストラリアを超えてもっ
と行くと再び南アメリカ大陸にぶつかるので左折して、太平洋の海底を北上します。しかしアリューシャ
ン列島があるのでここでやっと浮上して表層水になり、インド洋から喜望峰を回って大西洋、そしてメキ
シコ湾海流になるという壮大な「海洋大循環」です。計算では大西洋のグリーンランドから沈み込んでア
リューシャン列島で浮上するまで 1200 年かかるそうです。距離は約3万マイル(海里)くらいあるで
しょうから、ここで単純に速度を計算すると1年で 46.3Km、1日で 126.8m。1時間で 5.3m、毎分 8.8cm
とじわっと動いていることになります。スケールの大きな話ですが、地球温暖化はこの流れにも影響する
と言う科学者がいるそうです。なお、日本海の深層水は供給も流出もない固有水と言われています。
(I)
ブロッカー博士の
コンベア・ベルト説
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