ファンドマネジャーの視点-セミナー編 - 東京海上アセットマネジメント

Tokio Marine Asset Management|東京海上アセットマネジメント株式会社
<ファンドマネジャーの視点 –セミナー編– >
2015年9月
Vol. 57
TMAMセミナー
「年金財政の改善に伴い検討可能となる運用手法の選択肢について」
<要旨>
我が国の企業年金基金の平均的な財政状況は100%台まで回復し、足下での積立比
率は130%前後まで改善することが見込まれています。
そのような環境下、今後の年金基金の資産運用の方向性としてリスク抑制スタンス
や投資効率の改善が挙げられます。本セミナーでは特に後者の投資効率の改善の事
例として非流動性資産の取組みについてご紹介します。
大和ファンド・コンサルティン
グの大藤取締役よりお話しい
ただきました。
今後の資産運用の方向性について
■企業年金における積立比率の回復と今後の資産運用の方向性
・企業年金基金の平均的な財政状況は、2010年度には継続・非継続基準とも100%台
に回復しました。
・尚、世界的な金融緩和傾向の下、良好な運用環境の継続が相俟って、2014年度に
は130%程度まで回復することが見込まれています。
・しかし低金利環境の継続による運用難の中、現行アセットミックスの期待収益率は低
下しており、目標収益率に未達となる可能性があります。
大藤 康博氏
株式会社大和ファンド・コン
サルティング
取締役 年金運用コンサル
ティング本部担当
制度面の対応には、予定利
率や給付利率の見直し、過
去勤務債務の前倒しでの償
却などがあります。
・そのような中、積立超過の現状も踏まえると、以下の選択肢が想定されます。
①期待収益率の低下の容認
積立超過の下では、年金債務に対応する年金資産にて目標収益率を達成す
れば現状の積立超過は維持されるため、剰余金部分に対応する年金資産も
含めれば、期待収益率が目標収益率を下回ることも容認し得ます。
②投資効率の改善に伴う期待収益率の底上げ
目標収益率並みの期待収益率を望むのであれば、過度にリスクテイクをす
るのではなく、投資効率の改善によって期待収益率の底上げを実現するこ
とが望まれます。
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投資効率の改善を企図した主たる運用手法
・積立超過である現在、年金の長期運用のメリットを享受できる非流動性資産の組入
れの検討は時宜に適っているものと思われます。
■非流動性資産の取組み
・非流動性資産は任意の時点で売却することが困難であるがゆえ、積立比率に依ら
ず年金制度における資金繰りが最も重要な事項となります。この際に、保守的な見
積もりをしておくことが望ましいと考えられます。
年金資産額からネッキャッ
シュフローの累計額(運用収
益をゼロと仮定した場合の現
在価値)を控除した金額が、
理論上の非流動性資産の
投資枠における上限値とな
る。
尚、上限値まで投資するか
否かは非流動性資産の魅
力度(流動性プレミアムの有
無)に応じて判断することが
望ましい。
・非流動性資産を組入れる際の留意点は以下のとおりです。
①流動性に対するスタンス
②長期投資として継続的な運用プロセス
③投資対象の魅力度
④投資枠における上限値
⑤個別の投資対象としての精査
られる。
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2015年8月
2015年9月
Tokio Marine Asset Management|東京海上アセットマネジメント株式会社
ここからは、弊社マルチマ
ネージャー運用部の久村が
講演を行いました。
リスクの取り方についての具体例
・流動性の低い投資戦略に共通する特性として、上場株式のように投資対象を取引す
る公開取引市場がある訳ではなく、未上場株式、PEファンド持ち分、インフラ資産など
流動性の低い資産の売り手と投資条件を相対で決定し、投資後は投資先に能動的に
関与することでリスクをコントロールしつつ、長期で保有することによってインカムゲイ
ンとキャピタルゲインの獲得を目指すという点が挙げられます。これらの点は流動性を
犠牲にすることで得られる重要なメリットとなります。
久村 俊幸
マルチマネージャー運用部
部長
例えば上場企業と未上場
企業では投資ユニバース
の広さが圧倒的に異なりま
す。 Capital IQ Database
2012によると売上高 10百
万ドル以上の企業のうち上
場しているのは3%弱とされ
ています。
・流動性の低い投資戦略として代表的なものとして以下の4つを取り上げます。
PE(プライマリー)
あらゆる発展段階(創業期、成長期、成熟期および衰退期)における未上場企業の株
式を投資対象にするもの
PE(セカンダリー)
既存PEファンドの投資家出資持分を何らかの事情で売却を考える投資家から相対で
買取ることを戦略とするもの
メザニン
中堅企業の発行する優先株式や劣後債といった、銀行融資と株式投資の中間が投資
の対象。相対的に高いクーポン収入とエグジット時の元加利息部分が主たる収益源泉
であり、ミドルリスク・ミドルリターンの特徴を持つ
上場株式に対する運用管
理として、投資家は市場で
付けられている時価を受け
入れるしかないため、銘柄
選択、株式の保有比率が
重要となります。
一方でPE投資やエンゲー
ジメント運用においては、
投資案件ごとの詳細な分
析や投資後の経営モニタリ
ングによる企業価値の向
上が重要になります。
インフラ(エクイティ)
道路、空港、港、発送電、上下水道等のインフラに投資することで使用料収入(インカ
ムゲイン)と施設の拡張や利用率の改善、料金見直し等によるバリューアップ (キャピ
タルゲイン)による収益を狙うもの。
■PE(プライマリー)
・ 伝統的な株式投資と比べて場合、PE(プライマリー)に投資するメリットとしては投資
ユニバースが広いことが挙げられますが、加えて多様な収益源泉があることが挙げら
れます。
・例えば、ベンチャーの分野ではテクノロジーやヘルスケアなど高成長産業の創業期
から投資を行えます。また、バイアウトの分野では経営に参加することで事業キャッ
シュフローの向上を目指し、買収時の負債を返済することで株式価値を上げていくこと
ができます。また、上場株式ほどには効率的なマーケットではないので交渉力によって
割安な投資機会やリスクを抑えた投資機会を得ることもできます。
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Tokio Marine Asset Management|東京海上アセットマネジメント株式会社
・このようにPE投資には多様な収益源泉がありますので、個別のマネジャーのスキル
によって獲得できるリターンに格差がでます。弊社では、優秀なPEマネジャーを的確に
選択することに最も注力しており、それにより上場株式を上回るリターンが期待できる
ものと考えています。
・PEファンドによる投資は投資先の企業
の変化が必要となりますので、個々の投
資案件に対する平均的な保有期間は通
常5年程度となります。そのためPEファン
ドへの投資にあたり当初はマネジャーへ
の報酬が先行し、損益はマイナスになる
傾向があります。これが投資開始3年程
度たちますと徐々に収益があがりはじめ
ます。
・PE投資から安定的に収益を獲得するた
めには幾つかのPEファンドに継続的に投
資する必要があると考えられています。
■PE(セカンダリー)
セカンダリーのファンドでは、
通常、複数の機関投資家
から少なくとも数十件、大
型の案件の場合は、300件
~500件のPEファンドの持
分を購入します。
現在の米国のメザニンマー
ケットにおいては、平均的
なクーポン収入部分が10%、
元加利息部分は毎年2%と
なっています。
また、LBO案件のファイナ
ンス組成に、普通株式、劣
後株式を配分されることも
あります。
・PE(セカンダリー)とは、既存PEファンド
の投資家出資持分を何らかの事情で売
却を考える機関投資家から相対で買い
取ることを戦略とするものになります。右
図の損益イメージでご説明しますと、プ
ライマリーのPEファンドが設定から5年
程度たった時点でその持分を購入し、投
資を開始することになります。
・PE(セカンダリー)に投資するメリットと
しては、投資期初の損益のマイナス幅を
限定的にすることができ、比較的早期に
分配金があがり始めることが挙げられま
す。買い取るプライマリーのPEファンド
の状況にもよりますが、投資1年目の後
半から分配金が入ることもあります。た
だし、全体として得られるリターンはPE
(プライマリー)よりも低くなります。
・また、PE(セカンダリー)は、プライマリーのPEファンドの投資先や投資の進捗状況な
どポートフォリオの中身を精査したうえで買い取ることを検討しますのでプライマリーに
比べリスクを見極めやすい手法と考えられます。また、組成された時期や投資スタイル
も十分に分散されているため、投資家はセカンダリーのファンドを利用することで分散
されたPE投資を行うことができるとされています。
■メザニン
・メザニンとは、中堅企業の発行する優先株式や劣後債といった、銀行融資と株式投
資の中間に位置する資金調達手段の総称です。大手企業は、公募市場を通じたHYボ
ンドでの資金調達も可能ではありますが、HYボンドは市場環境によって影響を受けや
すく、今後、米国の金利が上昇するとHYボンドでの調達が相対的に難しくなると考えら
れています。そのような環境下において相対的に安定的な調達が可能となるメザニン
を利用したLBO案件は継続的に出てくると考えています。
・メザニンの収益源泉は、デフォルトによる期待損失よりも高いクーポン収入であり、総
じてミドルリスク・ミドルリターンの特徴を持ちます。
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2015年9月
Tokio Marine Asset Management|東京海上アセットマネジメント株式会社
・メザニンのリスクは、投資先企業の信
用力が悪化した場合、引当や償却が生
じる可能性があることです。また、通常
は5年~10年の貸付契約になりますが、
投資先企業の業績が著しく改善した場
合、借り手から見た際にコストの高い
ファイナンスであるので期限前償還され
る可能性があります。
■インフラ(エクイティ)
・インフラファンドとは、道路、空港、港、発送電、上下水道等の経済インフラ等に投資す
ることで使用料収入(インカムゲイン)と施設の拡張や利用率の改善、料金見直し等によ
るバリューアップ(キャピタルゲイン)による収益を狙うものです。
・ファンドによって成長案件の組入れスタンスが異なりますが、インカムゲイン部分のター
ゲットは概ね5%程度になり、安定した配当収入が期待できるといった特徴があります。
・インフラ投資の最大のメリットは事業から得られるキャッシュフローが政府による規制や
長期契約に裏付けされているため、景気の影響を受けにくい点です。規制が適用されな
い場合であっても建設費用の大きさ、地理的な優位性などがあれば独占的に近いポジ
ションで事業を行うことができます。
・一方でインフラ投資のリスクとしては、
規制の変更などにより想定していた
キャッシュフローが得られなくなるリスク
がございます。また、既に稼働している
インフラ資産ではなく、建設段階から投
資を行う際は、建設が想定通り進行す
るか、また建設後に想定していた需要
があるかもリスクとなります。また、安定
したCFを前提にレバレッジを高めすぎる
こともリスクにつながると考えています。
■TMAMのご提供ラインナップ
「プライベートエクイティ LPS助言型」
●PE/ Pathway Capital Management, LP
・経験豊富、かつ、安定したチーム
・健全かつ一貫した投資哲学
・継続的に超過リターンを獲得
「プライベートエクイティ シングルストラテジー一任型」(*)
【候補ファンド】
●メザニン/ Crescent Capital Group
・低格付クレジット投資における豊富な経験と高い専門性を有する
・優れた案件開拓能力 (バイアウトファンドからの案件紹介)
・相対的にリスクを抑えた運用戦略で10-15%程度のリターンを確保
●インフラ/ Hastings Fund Management
・優れたポートフォリオ構築戦略を実践
・新ポートフォリオ構築戦略導入後、良好なリスクリターンを達成
・魅力的なストラクチャー:オープンエンド型
(*)弊社はPathway Capital Management, LPと、プライベートエクイティファンドの運用において包括的業務提携
を行っているため、一部選定が出来ないファンドがあります。
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Tokio Marine Asset Management|東京海上アセットマネジメント株式会社
当資料は、東京海上アセットマネジメント株式会社が情報提供を目的として作成したも
のであり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料は信頼できると考
2015年1月
えられる情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではあ
りません。当資料には一定の見解が含まれていますが、その内容は予告なく変更され
Vol. 54
ることがあります。当資料の全部もしくは一部を第三者へ交付することはご遠慮ください。
◆プライベートエクイティに係るリスク
プライベートエクイティ運用は、主にプライベートエクイティに投資する複数の投資証券
を投資対象としますので、実質的に組入れている株式等の価格下落、発行会社の倒産
や財務状況の悪化等の影響により、資産価額が下落し、損失を被ることがあります。ま
た、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被ることがあります。し
たがって、お客様の投資元本は保証されているものではなく、資産価額の下落により損
失を被り、投資元本を割り込むことがあります。当運用プロダクトの資産価額の変動要
因としては、主に「株価変動リスク」「為替変動リスク」「カントリーリスク」「流動性リスク」
等があります。
◆プライベートエクイティプロダクトの運用報酬
「プライベートエクイティLPS助言型」についてはコミットメント残高に1.200%を乗じたも
のが年間運用報酬の上限となります。また、「プライベートエクイティシングルストラテ
ジー一任型」のうち、クローズドエンド型についてはコミットメント残高に0.864%(税抜き
0.800%)を乗じたものが、オープンエンド型については0.756% (税抜き0.700%)を乗じ
たものが、年間運用報酬の上限となります。
上記料率に関し、資産の性質・サービス内容等によりお客様と協議の上、別途取り決
めることができます。
「プライベートエクイティLPS助言型」については、マスターファンド及びフィーダーファン
ドの設立費用、会計・法務・税務関連費用、公租公課、投資家説明会費用、投資にか
かる費用、その他運営費用等の他、マスターファンドの組入有価証券においてかかる
費用、有価証券売買、デリバティブ取引時の売買委託手数料等、その他の費用につ
いては実費として間接的にご負担いただきます。その他の費用は、実際の取引等に応
じて決まる費用であるためその金額を事前に表示することはできません。同じくそれら
を含む手数料等の合計金額についても、同様に事前に表示することはできません。
「プライベートエクイティシングルストラテジー一任型」については、組入有価証券にお
いてかかる費用(設立費用、会計・法務・税務関連費用、公租公課、投資にかかる費
用、その他運営費用等)、有価証券売買、デリバティブ取引時の売買委託手数料等、
その他の費用については実費として間接的にご負担いただきます。 その他の費用は、
実際の取引等に応じて決まる費用であるためその金額を事前に表示することはできま
せん。 同じくそれらを含む手数料等の合計金額についても、同様に事前に表示する
ことはできません。
詳細については、契約締結前書面にてご確認ください。
◆会社概要
会社名:東京海上アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第361号
加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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