経済性工学 第10回 前 回 の 復 習 「金利計算に関する応用と補足」 慶應大学 稲田周平 2015年度H 現価,年価,終価の関係と時間換算係数 2 時間換算係数の計算式 i% 資本の利率: P S in S P in : 終価係数 : 現価係数 M P n i M P n i 期間: P S n 1 i i P M in S M n 資本回収係数 減債基金係数 i M S n i M S n i 年金終価係数 年金現価係数 1 i 1 i 1 n i 1 i n n 1 i 1 i n S P n n 1 i P M n i S M n n i 1 i n 1 i 1 n i i n 1 i 1 互いに逆数の関係が成り立っている。 3 演習1:投資案の現価,年価,終価 4 複雑な時間換算 問 ある設備に投資をすると,初期投資額が3,000万円で,年々の 操業費用が期末換算すると400万円ずつかかる。この設備の使用 期間は10年で,資本の利率は10%である。 例題 ある人が現在40歳で500万円の預金をもっている。60歳で定年 この設備投資から生じる総費用を,現価,年価,終価の形で求めな さい。 積立預金をして,この目標を達成するためには,いくらずつ預金をしてい になるが,そのときに5,000万円の現金資産をもちたいと思っている。退 職金には1,000万円が支給されることになっている。毎年末に均等額の けばよいだろうか。預け入れ先の年利率は7%とする。 5 2015, Inada Laboratory, Keio University 7 1 演習問題4:複雑な時間換算 期と時点(期首,期末)の考え方を明確にする 1,000万円 500万円 問1 Sさんが子供の誕生日を記念してX万円信託銀行に預けておいて,10 回目から20回目までの誕生日に100万円ずつ引き出せるようにしたいと考え ている。Xを求めよ。銀行の年利は10%とする。 M万円/年 40 41 60 5,000万円 イ)この道路を建設し,43年後までの40年間維持するのに必要な総投資 額の現価を求めよ(43年後にもメンテナンス費用の支払いがある) 。 500 P S 20 M M S 20 1,000 5,000 7% 問2 K道路公団では,ある地区を有料道路を作ることを計画している。必要 な投資は現時点で100億円,1,2,3年後に建設費用として,それぞれ50億 円ずつかかる。そして,それ以降は5年間隔でメンテナンス費用が5億円ずつ かかる。資本の利率は8%とする。 7% ロ)この道路を永続的に維持するとすれば,4年後からの毎年末の料金 純収益がいくら以上ならペイするか? M 50.4万円 9 例題1:単位期間の異なる資本利率の取り扱い Aさんは,3,000万円の住宅ローンを組んで,20年間に渡って月額 返済(月末払い)をする予定である。借入金利が年利率3%のとき,月 額の返済額はいくらになるか? 単位期間の異なる資本の利率の取り扱い 但し,期間あたりの利率がi, 期間がnのもとでの資本回収係数は,次 式で与えられる。 P M n i i 1 i 1 i n n 1 13 演習2:単位期間の異なる資本コストの取り扱い まず,年利6%は月利として何%かを計算する。 1 j 12 j:月利 1 0.03 問1 Bさんは,年利15%のクレジットカード会社から,当座の資金と して5万円を借り入れた。1ヶ月後の元利合計の返済額はいくらになる か。 1 j 1 0.0312 1 0.002466 0.2466% M 3,000万円 P M 240 0.2466% 14 問2 ある投資案件に1,000万円投資をすると,2年ごとに450万円 ずつの報収を10年間(5回)にわたってあげることができる。この投資 案件の現価としての価値はいくらか。資本の利率は年8%とする。 16.57万円 問3 上記の問2において,報収が永続的に受けられる場合の投資案 件の現価としての価値はいくらになるか。 簡便法として, 年利3%は,月利0.25%(=3%÷12)と計算することもある。 P M n i M 3,000万円 P M 240 16.64万円 0.25% ※この授業の中では,この計算法をダメです。 2015, Inada Laboratory, Keio University 15 i 1 i 1 i n n 1 M P n i 1 i 1 n i 1 i n 16 2 P t t P t 補足:連続時間系における金利計算 t 瞬間利率:i ← 微小単位時間あたりの利率 t P t P t P t t P t P t it O t P0 O t t 上式において、Δt→0なる極限を求めると、 時刻t+Δtにおける元利合計(終価)は, P t P t i log P t it C t t P t C eit P t i t O t ここで、 P t P0 この微分方程式を解く為に、両辺を積分すると、 式変形すると, P t t P t P t i t t t 離散時間系における 終価係数[P→S]に 相当するもの t 0 P0 より、 P t P0 eit 20 換算係数名 離散時間系の換算式 連続時間系の換算式 終価係数 [P→S] 1 i eit n 1 現価係数 [S→P] 1 i n 1 e it eit 資本回収係数 [P→M] i 1 i n 1 i 1 i eit i eit 1 1 e it 年金現価係数 [M→P] 1 i 1 n i 1 i eit 1 1 e it i eit i 減債基金係数 [S→M] 1 i n 1 年金終価係数 [M→S] n n i 21 物価変動を考慮したもとでの時間換算 i eit 1 eit 1 i 1 i n 1 i 22 23 例題2:人件費の上昇が見込まれる問題 「名目価値、名目利率」と「実質価値、実質利率」 甲社の営業部門では,物流倉庫の自動化によって,3人の作業員の削 減を図ることを計画している。この物流倉庫の初期投資額は5,000万円 である。投資の計画期間は7年,資本の利率は10%とする。ここで,作 業員の人件費は,現在の給与ベースでは1人当たり300万円/年だが, 年々7%の割合で上昇していくことが予想されている。経済的にみて,こ の物流倉庫の導入はペイするだろうか。 ◆名目価値と実質価値 問 この投資案の現価の形での正味利益(正味現価)を計算し,案の採 否を判断しなさい。 名目価値: →資源(例.物財、人)の実質価値を、物価変動率を考慮して、各 時点での価値に調整したもの。 ◆名目利率と実質利率 名目利率 →物価変動を考慮していない資本の利率。 P 5000万円 900万円 M P 7 10% 618万円 実質利率: →名目利率を,物価の変動率を考慮して調整した資本の利率。 物流倉庫の導入はペイしない??? 24 2015, Inada Laboratory, Keio University 実質価値: →物価変動を考慮していない資源(例.物財、人)の実質的な価値。 一般的に現時点での価値として評価する。 25 3 投資案の経済性を正しく評価する為の2つの考え方 900 1 0.07 t 1)名目法による評価 キャッシュ・フローを名目価値(各時点での実際の収入額,支出額) で捉える。 5,000 資本の利率は,名目利率i(物価変動を考慮していない金利)を使う。 900 1 0.07 P 5000万円 t 7 1 0.07 1 0.07 2 1 0.07 900万円 2 7 1 0.1 1 0.1 1 0.1 650万円 i 10% 人件費の上昇(年7%)が見込まれる時には, 物流倉庫の導入はペイする。 5,000 26 27 900 1 0.07 2)実質法による評価 t キャッシュ・フローを実質価値のもとで評価する。 この部分を,1つの利率(実質利率k) として取り扱う。 資本の利率は,実質利率k(物価変動を考慮した金利)を使う。 5,000 900 5,000 P 5000万円 i:資本の利率 (名目利子率) 1 i k 1 1 h 1 0.1 1 2.8% 1 0.07 1 1 k 7 1 0.07 1 0.07 2 1 0.07 900万円 2 7 1 0.1 1 0.1 1 0.1 k:実質利率 h:物価上昇率 5000万円 900万円 M P 7 2.8% 650万円 k:実質利率 P 5000万円 900万円 M P 7 2.8% 650万円 28 物価変動が含まれる投資を分析する際の留意点 1 i 1 より, k 1 h h:物価上昇率 29 丙工場では,現在,生産工程の自動化に取り組んでいる。この自動化 案では,2,000万円の設備投資をすると,人件費を,現在の給与水準 で毎年600万円ほど節減することができる。人件費は年々12%ずつ上 昇することが予想されている。 一方で,設備投資を行うと,年々の維持・修理費が,現在の物価水準 で毎年100万円ほど,自動化の実施前に比べて増加する。この維持・ 修理費は,修理部品等の物価上昇に伴って,年々3.7%ずつ上昇する ことが予想されている。 資本の利率(名目利率)は12%,設備の寿命は6年とする。 10% 名目利率 実質価値 名目値と実質値を混ぜて使ってはいけない! (問1) 名目法を使って,この自動化案の正味現価を計算し,案の採否 を決定しなさい。 (問2) 実質法を使って,この自動化案の正味現価を計算し,案の採否 を決定しなさい。 正しく経済性評価を行うためには、名目値か実質値か、いずれか 一方に基準に揃えて、評価を行う必要がある。 30 2015, Inada Laboratory, Keio University 1 h 1 1 i 1 k 演習3:正味利益による採否判断(名目法と実質法) P 5000万円 900万円 M P 7 実質価値 (名目価値) i:資本の利率 (名目利子率) 31 4
© Copyright 2024 ExpyDoc