反応経路自動探索法によるオレフィンメタセシス反応経路の配位子依存性

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反応経路自動探索法によるオレフィンメタセシス反応経路の配位子依存性の検討
○小池 千明 1,前田 理 2, 武次 徹也 2
1
北大院総合化学,2 北大院理
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【序】有機金属触媒の反応性は、用いる配位子に依存することが知られている。そのため、
より良い配位子の設計を目指して、様々な触媒反応のメカニズムが理論的に解明され、反応
性に及ぼす配位子の影響について検討が行われてきた。しかしながら、従来行われている化
学反応の理論計算では、遷移状態(TS)の構造を推定する必要がある。このため、反応機構が
未知の反応を解析する場合、TS 構造の推定が難しく、重要な経路を見落としてしまう恐れが
ある。もし理論計算によって、機構が未解明な触媒反応の反応経路を系統的に明らかにする
ことが出来れば、反応性の配位子依存性を理論予測し、計算化学から触媒開発の効率を向上
させることができると期待される。
【結果】本研究では、近年開発された人工力誘起反応法[1]を用いる配位子依存性の理論予測
を提案する。配位子依存性が顕著な例として知られるオレフィンメタセシス反応[2]を対象と
し、配位子の個数三種類 a)配位子 L×2、b) L×1、c) L
×0、配位子三種類(-PH3, -PPh3, -PCy3)、計七種類の触
媒(図 1)について、反応機構を仮定せず反応経路自動
探索を実施し、反応性の配位子依存性の解明を試みた。
各触媒とエチレンの間の反応経路探索を行った結果、
得られた構造を図 2 に示した。自動探索で見つかった
様々な経路について遷移状態のエネルギーを比較す
ると、メタラサイクルへの経路の反応障壁が最も低く、
生成物の安定性も比較的高いことが分かった。つまり、
全ての系において、実験において観測されるメタセシ
ス反応を自動的に予測することができた。さらに、得
られた経路を比較することで、配位子依存性について
議論する。本研究で検討した計算手順は、反応機構が
L = -PH3, -PPh3, -PCy3
未知である様々な有機金属触媒に対しても同様に適
図 1 計算対象
用可能であり、反応性の理論予測に有用であると期待
できる。
図2
生成物として得られた構造
[1] Maeda, S.;Ohno, K.; Morokuma, K. Phys. Chem. Chem. Phys. 2013, 15, 3683
[2] Dias, E. L.; Nguyen, S.-B. T.; Grubbs, R. H. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 3887-3897