2012 年度数学 I 演習第 1 回 理 II・III 21 ∼ 24 組 4 月 26 日 清野和彦 問題 1. (an )n∈N を実数列、a を実数とする。 (1) (an )n∈N が a に収束することの定義を書け。 (2) (an )n∈N が a に収束しないことを収束の定義に従って書け。すなわち、(1) の 答の否定命題を書け。 問題 2. 数列 (an )n∈N に対し、数列 (bn )n∈N を bn = an+1 で定義する。(an )n∈N が a に収束しているならば (bn )n∈N も同じ a に収束することを示せ。 問題 3. 数列 (an )n∈N と 数列 (bn )n∈N から新しい数列 (cn )n∈N を { c2m−1 = am c2m = bm によって定義する。(an )n∈N と (bn )n∈N がどちらも同じ値 c に収束しているとする と、(cn )n∈N もこの c に収束していることを証明せよ。 問題 4. 次で定義される数列 (an )n∈N はどちらも 0 に収束することを証明せよ。た だし、r は |r| < 1 を満たす実数とする。 (1) an = 1 n (2) an = rn 問題 5. 数列 (an )n∈N から新しい数列 (bn )n∈N を bn = a1 + a2 + · · · + an n によって定義する。(an )n∈N が a に収束しているなら (bn )n∈N も同じ a に収束し ていることを示せ。 問題 6. 数列 (an )n∈N から新しい数列 (bn )n∈N を bn = a1 + 2a2 + · · · + nan 1 + 2 + ··· + n によって定義する。(an )n∈N が a に収束しているなら (bn )n∈N も同じ a に収束し ていることを示せ。 問題 7. 数列 (an )n∈N と数列 (bn )n∈N から新しい数列 (cn )n∈N を cn = a1 bn + a2 bn−1 + · · · + an b1 n によって定義する。(an )n∈N が a に収束し (bn )n∈N が b に収束しているなら、(cn )n∈N は ab に収束することを示せ。 問題 8. 3 つの数列 (an )n∈N , (bn )n∈N , (cn )n∈N が任意の n について an ≤ bn ≤ cn を満たし、さらに (an )n∈N と (cn )n∈N がどちらも b に収束しているとき、(bn )n∈N も同じ b に収束していることを証明せよ。 (いわゆる「はさみうちの原理」が成り 立つことを示せということです。) 問題 9. a > 1 とする。次の数列の極限を求めよ。 (1) n an (2) an n! (3) n! nn 問題 10. (1) 0 以上の任意の実数 a に対し、b2 = a を満たす 0 以上の実数 b がた だ一つ存在することを示せ。 √ (2) (1) の b を a と書くことにする。すべての項が 0 以上である数列 (an )n∈N √ √ が a に収束しているとき、bn = an で定義される数列 (bn )n∈N は a に収束す ることを証明せよ。 問題 11. 0 < a1 < 1 とし、数列 (an )n∈N を an+1 = an (3 − an ) 2 によって定義する。(an )n∈N は収束することを示し、極限値を求めよ。 問題 12. 0 < a1 < b1 とし、数列 (an )n∈N と数列 (bn )n∈N を an = √ an−1 bn−1 , bn = an−1 + bn−1 2 によって定義する。このとき、(an )n∈N と (bn )n∈N は収束し、しかもその極限値は 等しいことを証明せよ。 問題 13. 実数列 (an )n∈N を an = n ∑ sin k k=1 2k によって定義する。(an )n∈N は収束することを示せ。 問題 14. 漸化式 a1 = 1, an+1 = 1 + 1 an で定義される数列 (an )n∈N が収束することを示し、極限値を求めよ。 2012 年度数学 I 演習第 1 回解答 理 II・III 21 ∼ 24 組 4 月 26 日 清野和彦 問題 1 の解答 (1) 数列 (an )n∈N が数 a に収束することの定義は、言葉で書くと、 任意の正実数 ε に対して、それに応じて自然数 N を選んで N より大きいすべての自 然数 n に対して |an − a| < ε を成り立たせられることである。 となります。論理記号で書くなら ∀ε > 0 ∃N ∈ N ∀n ∈ N [n > N =⇒ |an − a| < ε] となります。(N は自然数全体の集合です。) □ なお、数列が収束することを上のように定義した上で、 数列 (an )n∈N が数 a に収束しているとき、a を数列 (an )n∈N の極限と言い、 lim an = a n→∞ や an → a (n → ∞) と書く。 と定義することはいうまでもないでしょう。 「∞」という記号は数を表しているのではなく、 「限り なく大きくする/なる」ということを手短に示す記号にすぎないということに注意してください。 (2) (1) の定義の否定は次のようになります。まず、言葉で書くと、 ある正実数 ε が存在して、任意の自然数 N に対して N より大きい自然数 n で |an −a| ≥ ε を満たすものが存在する です。かなり分かりにくいですが、論理記号で書けばはっきりします。 ∃ε > 0 ∀N ∈ N ∃n ∈ N [n > N and |an − a| ≥ ε] です。 □ この先「対偶」を考えたり「背理法」を使ったりする機会が多くありますので、与えられた命題 の否定命題を作ることに慣れるようにしておくとよいと思います。なお、論理および論理記号につ いては、別に配布する「論理記号について」という冊子を参照してください。 収束の定義の「気持ち」 ところで、このような回りくどい言い方で数列が収束することの定義をするのは、 「限りなく続い てゆく数たちのたどり着く到達点」というどうにも数学になりそうもないものを何とか数学で扱え 2 第 1 回解答 るようにするための、つまり、有限の範囲内で表現するための苦肉の策です。もっと平たく言いま しょう。例えば、0.999 · · · と表現される「数」は、この表記だけ見ていると 0.9 + 0.09 + 0.009 + · · · という「無限回の足し算を足しきった結果」と思いがちですが、「無限回の足し算を足しきる」と いうことを数学でそのまま扱うことはできそうもないので、 0. の後ろに 9 を(有限個だが)沢山付けることで 1 − 0.999 · · · 9 を好きなだけ小さく できる という他愛もない意味にしてしまうということです。日常的には「0.999 · · · = 1」という式はどこ か神秘的で割り切れない(あるいはやりきれない)雰囲気を漂わせていますが、数学では左辺の 0.999 · · · という記号には 数列 0.9, 0.99, 0.999, · · · の(上で定義した意味での)極限 という(数学に慣れ親しんでいない人に 0.999 · · · という表記が与える印象に比べたら)無味乾燥 な意味しか与えていないということです。 このような説明ではまだ極限の定義がしっくり自分のものにならない人がほとんどでしょう。そ のような場合には視覚に訴えるのが良い方法だと思います。 数列を視覚化しようとする場合、関数のグラフを書くのと同じように xy 平面に点をプロットす るのが良さそうです。そのとき使われる一般的な方法は、(1, a1 ), (2, a2 ), (3, a3 ), · · · とプロットし て行く方法でしょう(図 1)。 しかし、これだと n → ∞ の様子がそれこそ「無限遠」の彼方に霞 an の値 a2 a3 a4 a1 1 5 10 図 1: 数列の普通のグラフ。 15 20 n んでしまって収束している感じが掴みにくくなってしまいます。 そこで、例えば (−1, a1 ), (−1/2, a2 ), (−1/3, a3 ), . . . とプロットしてみましょう(図 2)。すると、 プロットした点たちが y 軸のどこか 1 点に集まっているとき数列は収束していてその点の y 座標 が極限です。収束の定義にでてくる N は、例えば紙か何かでこのグラフの x = −1/N から左側を 隠してしまうと、残った点の上下方向の散らばりが極限の値から上下に ±ε しかないということ です。 3 第 1 回解答 1 極限値 0 1 5 10 20 図 2: n → ∞ が視野にはいるようにしたグラフ。 問題 2 の解答 (an )n∈N が a に収束しているということは、正実数 ε を任意に決めたときに ∀n [n ≥ N =⇒ |an − a| < ε] (1) を満たす正整数 N が存在するということです。数列 (bn )n∈N は bn = an+1 で定義されているの で、式(1) は ∀n [n ≥ N =⇒ |bn−1 − a| < ε] となります。ここで m = n − 1 と書き換えれば ∀m [m ≥ N − 1 =⇒ |bm − a| < ε] となります。これは (bn )n∈N が a に収束することを意味します。 □ これは、高校のときに漸化式で定義された数列の極限値を求めるときなどでよく使った事実で しょう。数列の収束を定義してしまった以上、このようなことも数列の収束の定義に照らして証明 しなければならないことです。このような、高校では当たり前にやっていたことも、数列の収束を 定義してしまった以上その定義に基づいて証明しなければならなくなります。もちろん高校で学ん だことにウソはないわけですから、高校で学んだ内容で不安なことや疑問があったら是非自分で証 明してみて下さい。 なお、「数列の収束のイメージ」で考えてみれば、第 1 項などあろうがなかろうが収束に影響の あるはずもありません。実は、第 1 項目に限らずもっと沢山の項を捨てても収束することと極限値 は変わらないことが証明できます。このことは「収束数列の任意の部分列は同じ値に収束する」と いう一般的な定理として示しておくべきことですが、時間の都合上ここではやめておきます。(講 義では説明があったかも知れません。) 問題 3 の解答 証明したいことは、 4 第 1 回解答 任意の正実数 ε に対して自然数 N で、N より大きい任意の n に対して |cn − c| < ε が成り立つ こと、すなわち、ε からこのような N を作ることです。 ε を一つとって固定します。(an )n∈N も (bn )n∈N も c に収束しているので、自然数 Na で、 Na より大きい任意の自然数 n に対して |an − c| < ε が成り立つ ものと、自然数 Nb で、 Nb より大きい任意の自然数 n に対して |bn − c| < ε が成り立つ ものが存在します。そこで、Na と Nb のうち大きい方を N ′ とし N = 2N ′ とすれば、N より大 きい任意の n に対して n が奇数なら |cn − c| = |a n+1 − c| < ε、 2 n が偶数なら |cn − c| = |b n2 − c| < ε ˙ となるので、どっちにしろ |cn − c| < ε となります。 これで lim cn = c が示せました。 □ n→∞ いきなり証明を完成させようとせずに、まずイメージをつかむことが大切です。二つの数列のグ ラフを互い違いにかみ合わせて一つの数列のグラフにするわけです(図 3)。 (an )n∈N のグラフ ε c ε 1 2 3 4 (bn )n∈N のグラフ ε c ε 1 2 34 (cn )n∈N のグラフ ε c ε 1 2 3 4 56 図 3: (an )n∈N と (bn )n∈N を互い違いにかみ合わせる。 なお、同じようなイメージを持てる例として lim an = a かつ lim bn = b =⇒ lim (an + bn ) = a + b n→∞ n→∞ n→∞ 5 第 1 回解答 を証明してみましょう。(ご存知のように、足し算だけでなく四則演算はすべて数列の収束とこの ような関係にあります。) イメージをつかむために、まず二つの収束数列のグラフを書いてみましょう。 次にその二つの (an )n∈N のグラフ ε a ε 1 2 3 4 Na ε b (bn )n∈N のグラフ 1 2 3 4 Nb ε 図 4: (an )n∈N と (bn )n∈N の収束の様子。 グラフを足します。関数のグラフを足すように足せばよいわけです。 2ε a+b a1 + b1 1 2ε 2 3 4 図 5: (an + bn )n∈N の収束の様子。 これで、任意の ε に対し an と a の差も bn と b の差も ε より小さくなっているなら、an + bn と a + b の差は 2ε より小さくなっていることがよくわかりました。なお、収束の定義の見た目に ピッタリ合わせるためには an + bn と a + b の差を ε より小さくしなければならないので、an と a、および bn と b の差は ε/2 より小さくしておかなければなりません。しかし、このようなこと は見た目だけのことであって、結論の式が an + bn と a + b の差が 2ε より小さいという不等式に なっていても、ε は任意なのですから何の問題もありません。 それではキチンと書き下してみましょう。 証明. 証明したいことを定義に戻って書くと、 どんなに小さな正実数 ε に対しても十分大きな自然数 N をうまくとれば n > N を満たす任意の n が |(an + bn ) − (a + b)| < ε を満たすようにできる 6 第 1 回解答 ことです。つまり、正実数 ε が勝手に与えられたとして、上に書いた性質を持つ N が存在するこ とを示せばよいわけです。それでは、正実数 ε が任意に与えられたとしましょう。今、 lim an = a n→∞ と lim bn = b が仮定なので、極限の定義から、この ε に対して自然数 Na と Nb で n→∞ n > Na を満たす任意の n は |an − a| < ε/2 を満たす および、 n > Nb を満たす任意の n は |bn − b| < ε/2 を満たす というものがあります。そこで、Na と Nb の大きい方を N とすれば、 n > N を満たす任意の n は |an − a| < ε/2 と |bn − b| < ε/2 の両方を満たす ことになります。結論の 2 式を足すと、三角不等式から |(an − a) + (bn − b)| ≤ |an − a| + |bn − b| < ε ε + =ε 2 2 となるので、これで n > N を満たす任意の n は |(an + bn ) − (a + b)| < ε を満たす という示したかったことが示せました。 □ 問題 4 の解答 (1) ε を任意の正実数とします。自然数 N を N> 1 ε を満たすようにとりましょう。(アルキメデスの原理により、このような N は存在します。)する と、N より大きい任意の n に対して 1 1 1 < < =ε n N 1/ε が成り立ちます。 ですから、この不等式 1 − 0 = 1 n n 1 n <εは lim n→∞ 1 =0 n であることを示しています。 □ (2) ε を任意の正実数とします。 r = 0 のときはすべての n に対して an = 0 なので、任意の n で |an − 0| = 0 < ε が成り立ち ます。よってこの場合は lim an = 0 です。 n→∞ r ̸= 0 のとき、正実数 s を 1 =1+s |r| 7 第 1 回解答 によって定義し、自然数 N を N> 1 sε を満たすもののうちの一つとします。(アルキメデスの原理によって、このような N は存在しま す。)s が正であることと二項定理によって、 (1 + s)n = 1 + ns + n(n − 1) 2 s + · · · + nsn−1 + sn > ns 2 が成り立つので、n が N より大きいとき、 |an − 0| = |r|n = 1 1 1 < 1 =ε < (1 + s)n ns sε s となります。これは lim an = 0 であることを意味しています。 □ n→∞ 問題 5 の解答 数列 (an )n∈N は a に収束するのですから、どんな正実数 ε に対してもそれに応じて正整数 M をとれば [ ε] ∀n ∈ N n > M =⇒ |an − a| < 2 を満たすようにできます。また、収束する数列は有界なので、実数 R を任意の n に対して |an −a| < R を満たすように取れます。よって、n > M のとき a1 + a2 + · · · + an |a1 − a| + · · · + |aM − a| |aM +1 − a| + · · · + |an − a| − a ≤ + n n n M R (n − M )ε ≤ + n 2n となります. そこで N を MR ε ≤ N 2 を満たすようにとれば、任意の自然数 n に対して a1 + a2 + · · · + an ε ε n > N =⇒ − a < + = ε n 2 2 となって示せました。 □ 問題 5 の場合は問題 3 と違ってグラフは想像しにくいかも知れませんが、要するに、 はじめの方の an は a とずいぶん違うかも知れないけど、遠くの方の an はほとんど a と同じなのだから、充分沢山の an を平均してしまえば、やっぱりほとんど a と同じ ということがポイントです。 8 第 1 回解答 問題 6 の解答 正実数 ε を任意に固定します。数列 (an )n∈N は a に収束しているので、 [ ε] ∀n n > N =⇒ |an − a| ≤ 3 の成り立つ自然数 N が存在します。そのような N を一つ選んでおきます。 n が N より大きいとき、bn を bn = a1 + 2a2 + · · · + N aN (N + 1)(aN +1 − a) + · · · + n(an − a) (N + 1)a + · · · + na + + 1 + 2 + ··· + n 1 + 2 + ··· + n 1 + 2 + ··· + n というように三つの部分 cn , dn , en に分けます。 N は固定された値なので、問題 4(1) より、 [ ε] ∀n n > N1 =⇒ |cn | < 3 を成り立たせる自然数 N1 が存在します。 また、三角不等式より、 |dn | ≤ (N + 1)|an+1 − a| + · · · + n|an − a| 1 + 2 + ··· + n であり、これに N + 1, . . . , n がすべて N より大きいことを使うと、 |dn | < (N + 1) 3ε + · · · + n 3ε ε < 1 + 2 + ··· + n 3 が得られます。 最後に |en − a| = 1 + 2 + ··· + N a 1 + 2 + ··· + n であって、N と a が定数であることから、 [ ε] ∀n n > N2 =⇒ |en − a| < 3 となる N2 が存在します。 以上より、N , N1 , N2 のうち最も大きいものを M とすれば、任意の自然数 n に対して n > M =⇒ |bn − a| ≤ |cn | + |dn | + |en − a| < ε ε ε + + =ε 3 3 3 が成り立ちます。これで示せました。 □ 問題 7 の解答 dn = bn − b とおくと、 a1 bn + · · · + an b1 a1 dn + · · · + an d1 a1 + · · · + an = + b n n n と分解できます。 9 第 1 回解答 (an )n∈N は収束するのですから、n によらずに |an | < M となる実数 M が存在します。よって、 a1 dn + · · · + an d1 |a1 ||dn | + · · · + |an ||d1 | |d1 | + · · · + |dn | ≤ ≤M n n n となります。 また、数列 (dn )n∈N は 0 に収束します。なぜなら、数列 (bn )n∈N が b に収束していることは、 任意の正実数 ε に対してある自然数 N で ∀n > N =⇒ |bn − b| < ε を1 満たすものが存在するということですが、dn = bn − b なのですから |bn − b| = |dn − 0| であり、 ∀n > N =⇒ |dn − 0| < ε と書き換えられます。これはまさに数列 (dn )n∈N が 0 に収束していることの定義です。 (dn )n∈N が 0 に収束しているということは (|dn |)n∈N も 0 に収束しています。|dn − 0| = |dn | = ||dn | − 0| だからです。よって、問題 5 より lim n→∞ |d1 | + · · · + |dn | =0 n となっています。このことから、正実数 ε に対し自然数 Nc で ∀n > Nd =⇒ ε |d1 | + · · · + |dn | < n 2M を満たすものが存在します。 一方、数列 (an )n∈N は a に収束しているのですから、問題 5 により a1 + · · · + an =a n→∞ n lim となっています。だから、正実数 ε に対し自然数 Na で a1 + · · · + an ε ∀n > Na =⇒ − a < n 2|b| + 1 を満たすものが存在します。 (b ̸= 0 なら右辺の分母は 2|b| で十分なのですが、b = 0 でも分母が 0 にならないように 1 を足しておきました。) N を Nd と Na の大きい方とすると、n が N より大きいとき a1 bn + · · · + an b1 a1 dn + · · · + an d1 a1 + · · · + an + |cn − ab| = − ab ≤ b − ab n n n |d1 | + · · · + |dn | a1 + · · · + an ε ε ≤M + − a |b| ≤ M + |b| < ε n n 2M 2|b| + 1 が成り立ちます。これで数列 (cn )n∈N が ab に収束していることが示せました。 □ 1 この論理式は ∀n [n > N ⇒ |b − b| < ε] という意味です。∀n と n > N で二回 n を書くのが煩わしいので、 「N n より大きいすべての n」という気持ちで ∀n > N と書いてしまうことがよくあります。 10 第 1 回解答 問題 8 の解答 正実数 ε を一つ固定します。(an )n∈N は b に収束しているのですから、 n > Na =⇒ |an − b| < ε を満たす正整数 Na が存在します。 (右辺の ε は一つ選んで固定した ε です。)同様に、(cn )n∈N も b に収束していることから n > Nb =⇒ |cn − b| < ε を満たす正整数 Nb も存在します。よって、Na と Nb の大きい方を N とすれば、 n > N =⇒ |an − b| < ε かつ |cn − b| < ε が成り立ちます。 ここで、ふたつの不等式から絶対値をはずしてみましょう。すると、 |an − b| < ε かつ |cn − b| < ε ⇐⇒ b − ε < an < b + ε かつ b − ε < cn < b + ε となります。今、任意の n に対して an ≤ bn ≤ cn が成り立つと仮定しているので、n > N ならば b − ε < an ≤ bn ≤ cn < b + ε が成り立ちます。この不等式から an と cn の部分を省き、絶対値記号を使って書き直すと、 n > N =⇒ |bn − b| < ε となります。これは (bn )n∈N が b に収束することを意味します。 □ 数列の収束を定義してしまった以上「はさみうちの原理」も証明しなければならない定理となり ます。というわけで、問題として出題しておきました。 問題 9 の解答 (1) a > 1 なので a = 1 + h とすると h > 0 です。よって、 an = (1 + h)n = 1 + nh + n(n − 1) 2 n(n − 1) 2 n(n − 1)(n − 2) 3 h + h + · · · + hn > h 2 3! 2 となります。なぜなら右から二つ目の式の項はすべて正だからです。この不等式から、 n < an n n(n−1) 2 h 2 = 2 (n − 1)h2 が得られます。n → ∞ とすると問題 4(1) により右辺は 0 に収束します。一方、左辺は常に正で す。よって、問題 8(はさみうちの原理)により、 lim n→∞ が得られます。 □ n =0 an 11 第 1 回解答 (2) n0 > a となる正整数 n0 をひとつ選びます。すると、n0 より大きい n に対して an aa a a a aa a a a = ··· ··· < ··· ··· n! 12 n0 n0 + 1 n 12 n0 n0 n0 という不等式が得られます。見やすくするために実数 R を R= aa a ··· 12 n0 と置くと、得られた不等式は an <R n! ( a n0 )n−n0 となります。0 < a/n0 < 1 なので、問題 4(2) よりこの不等式の右辺は n → ∞ のとき 0 に収束 し、左辺は常に正なので、問題 8(はさみうちの原理)により、 an =0 n→∞ n! lim となります。 □ (3) n 以下の任意の正整数 k に対して k/n ≤ 1 が成り立つので、 nn−1 21 1 n! = ··· ≤ nn n n nn n となります。n → ∞ のとき右辺は 0 に収束し、左辺は常に正です。よって、問題 8(はさみうち の原理)により、 lim n→∞ n! =0 nn です。 □ この問題の分子や分母はすべて単独では発散する数列です。だから、この問題は、いわば、それ らの発散の間の「速さ比べ」をしているということです。(1) の分子は n そのものとしましたが、 証明を見てもらえば分かるように nk (k は任意の正整数)としてもやはり極限値は 0 です。つま り、この問題の結論を標語的に言うと、 an は nk より速く発散し、n! は an より速く発散し、nn は n! より速く発散する となります。特に、最初の二つは 指数は多項式より発散が速く、階乗は指数より発散が速い という(かなり省略された)言い方でよく耳にします。 問題 10 の解答 (1) 小数点以下 n + 1 位以下が全て 0 である 10 進有限小数のうち二乗が a を超えない最大のもの を bn とします。そのような小数で二乗が a を超えないものは有限個しかないので、最大のものが 必ず決まります。また、cn = bn + 1 10n とします。すると、cn は小数点以下 n + 1 位以下が全て 0 である 10 進有限小数のうち二乗が a を超える最小のものとなります。 12 第 1 回解答 (bn )n∈N は上に有界な単調増加数列で、(cn )n∈N は下に有界な単調増加数列ですのでどちらも収 束します。しかも lim (cn − bn ) = lim 1 n n→∞ 10 n→∞ = 0 ですので、それらの極限値は一致しています。そ の値を c と書くことにしましょう。以下、この c が求める b であることを証明します。 ( ) 任意の n に対して bn 2 ≤ c2 であり、しかも bn 2 ≤ bn+1 2 です。このことは数列 bn 2 n∈N が c2 以下の値に収束することを意味しています。一方、任意の n に対して bn 2 ≤ a でもあるので、こ の極限値は a 以下でもあります。 ( ) 同様に、任意の n に対して cn 2 ≥ c であり、しかも cn 2 ≥ cn+1 2 です。このことは数列 cn 2 n∈N が c2 以上の値に収束することを意味しています。一方、任意の n に対して cn 2 > a でもあるの で、この極限値は a 以上でもあります。 さらに、 cn 2 − bn 2 = (cn + bn )(cn − bn ) = cn + bn 10n に、0 < bn < cn < c1 であることを考え合わせると、 0 < cn 2 − bn 2 < 2c1 n→∞ −−−→ 0 10n ( ) ( ) ( ) となって、 bn 2 n∈N の極限値と cn 2 n∈N の極限値は一致していることがわかります。 bn 2 n∈N ( ) の極限値は c2 以下でありかつ a 以下です。また、 cn 2 n∈N の極限値は c2 以上でありかつ a 以 上です。よって、この二つの極限値が一致しているということは、その値は c2 以下かつ以上、お よび a 以下かつ以上です。ということはこの極限値は c2 でありかつ a です。数列の極限値はある としてもただひとつですので、c2 = a でなければなりません。これで示せました。 □ (2) 正実数 ε を一つ固定します。示したいことは、この ε に対して、 √ √ n > N =⇒ an − a < ε を成り立たせる正整数 N が存在することです。 まず a = 0 の場合で示します。この場合、 √ √ √ an − a = an ですので、 n > N =⇒ |an − a| < ε2 を満たす N を取れば条件(2) が成り立ちます。 次に a > 0 の場合を示しましょう。この場合は、 √ √ |a − a| an − a = √|an − a| √ ≤ n√ | an + a| a ですので、 ε n > N =⇒ |an − a| < √ a を満たす N を取れば条件(2) が成り立ちます。 以上で示せました。 □ (2) 13 第 1 回解答 問題 11 の解答 まず、(an )n∈N は上に有界であることを示しましょう。漸化式は ( )2 1 3 9 an+1 = − an − + 2 2 8 と変形できます。よって、 0 < an < 1 なら an+1 も同じ不等式 0 < an+1 < 1 を満たします。a1 はこの条件を満たすことが仮定でしたので、すべての an がこの不等式を満たすことになります。 よって、特に数列 (an )n∈N は有界です。 次に (an )n∈N が単調増加であることを示しましょう。 an+1 − an = an (3 − an ) an (1 − an ) − an = 2 2 なので、|an | ≤ 1 ならば an+1 − an ≥ 0 となり、an+1 ≥ an が成り立ちます。すべての an が 0 < an < 1 を満たすことを上で示してありますので、(an )n∈N は単調増加です。(図 6。) y O x 1 a1 a2 a3 a4 a5 図 6: 問題 11 の数列の様子。 以上 (an )n∈N は上に有界な単調増加関数なので、実数の連続性により収束します。 lim an = a とおくと lim an+1 = a であり(問題 2)、また収束する数列の和や積はそれぞれ n→∞ n→∞ の極限値の和や積に収束するので、 ( a = lim an+1 = lim n→∞ n→∞ an (3 − an ) 2 ) = 3 1 a − a2 2 2 すなわち a2 − a = 0 が得られます。これを満たす a の値は 0 と 1 です。すべての an が 0 < an < 1 を満たすことと (an )n∈N が単調増加であることから 0 < a ≤ 1 でなければなりません。よって a = 1 です。 □ この問題は実数の連続性の応用例です。実数の連続性はある種の数列が収束することは保証して くれますが、極限値については何も教えてくれません。だから、「収束すること」と「極限値」は 別に議論しなければならないのです。 (an )n∈N の収束を示す前に漸化式の両辺の極限を取って、 14 第 1 回解答 (an )n∈N は収束するとすれば極限値は 0 か 1 である。 とするのは正しいですが、たとえ極限値は 1 だと正しく予想できたとしても、実数の連続性を使わ ずに直接 |an − 1| がいくらでも小さくなりうることを (an )n∈N の定義式から示すのは結構面倒な のではないかと思います。(興味のある人は是非考えてみてください。) また、漸化式の両辺の極限を取って「a = 0 または 1」が得られるからといって、初項がどのよ うな値でも (an )n∈N は必ず 0 か 1 に収束する、と考えるのは間違いです。実際、例えば a1 = −1 としてみると、 a2 = −2, a3 = −5, a4 = −20, a5 = −230, . . . と負の無限大に発散してしまいます。「収束することを証明する」というステップは省くことが出 来ないわけです。 問題 12 の解答 相加相乗平均の関係から、0 < an < bn ならば 0 < an < が成り立ちます。an+1 = √ an bn , bn+1 = √ an + bn < bn an bn < 2 an + bn ですので、 2 0 < an < an+1 < bn+1 < bn が成り立つことになります。初項について 0 < a1 < b1 と仮定していましたので、帰納的にこの 不等式はすべての n で成り立ちます。よって、数列 (an )n∈N は単調増加、数列 (bn )n∈N は単調減 少です。さらに、任意の n について an < b1 と a1 < bn が成り立つので、(an )n∈N は上に有界、 (bn )n∈N は下に有界でもあります。以上により、実数の連続性からどちらも収束することが分かり ました。 収束先をそれぞれ a, b とすると、 b = lim bn = lim bn+1 = lim n→∞ n→∞ n→∞ a+b an + bn = 2 2 となりなますので、a = b です。 □ この問題も、問題 11 と同様に、二つの数列が収束することを実数の連続性で示し、極限値が一 致することは数列と極限の足し算を利用して示します。ですので、問題 11 と同じ注意が必要です。 すなわち、漸化式の両辺で極限をとることで極限値が一致することが分かっても、本当に収束する ということは別に示さなければならないのです。 問題 13 の解答 n > m とすると、 an − am = n ∑ sin k 2k k=m+1 15 第 1 回解答 です。三角不等式 |x + y| ≤ |x| + |y| を繰り返し使うことにより、 n n n ∑ ∑ ∑ sin k sin k | sin k| = ≤ 2k 2k 2k k=m+1 k=m+1 k=m+1 が得られます。さらに | sin k| ≤ 1 であることから、 n n ∑ ∑ | sin k| 1 ≤ 2k 2k k=m+1 k=m+1 となります。この右辺は n ∑ k=m+1 1 1 = m+1 k 2 2 n−m−1 ∑ l=0 1 1 1 1 − 2n−m 1 1 1 = < m+1 1 = m 1 l m+1 2 2 2 2 1− 2 2 という不等式を満たします。以上の不等式をつなげると、n > m のとき、 |an − am | < 1 2m の成り立つことがわかりました。 よって、正実数 ε が任意に与えられたとき、 1 <ε 2N を満たす自然数 N を一つ選べば、N より大きい任意の二つの自然数 n, m について、 |an − am | < 1 <ε 2N が成り立ちます。これは、(an )n∈N がコーシー列であることを意味しているので、(an )n∈N は収束 します。 □ 問題 14 の解答 初項 a1 が正なので、漸化式から帰納的にすべての an が正です。このことをもう一度漸化式に 入れると、すべての an = 1 + 1 an−1 は 1 以上であることがわかります。一方、漸化式の両辺に an をかけて分母を払うと、 an an+1 = an + 1 となります。よって、任意の n について an an+1 ≥ 2 です。このことから、 ( ) ( ) |an−1 − an | 1 1 |an − an−1 | = |an+1 − an | = 1 + − 1+ ≤ an an−1 an−1 an 2 が得られます。この不等式を繰り返し使うと |an+1 − an | ≤ |a2 − a1 | 1 = n−1 n−1 2 2 16 第 1 回解答 となります。従って、n > m > N を満たす三つの自然数に対し、三角不等式を繰り返し使うこと により |an − am | = |an − an−1 + an−1 − an−2 + · · · + am+1 − am | ≤ |an − an−1 | + |an−1 − an−2 | + · · · + |am+1 − am | ≤ = 1 2m−1 n−m−1 ∑ k=0 1 2n−2 + 1 2n−3 + ··· + 1 2m−1 1 1 1 1 − 2n−m 1 1 = m−1 < m−2 ≤ N −1 k 2 2 2 2 1 − 12 の成り立つことがわかります。よって、任意の正実数 ε に対し、 2N1−1 < ε が成り立つ自然数 N を選べば、 ∀n, ∀m [n, m > N =⇒ |an − am | < ε] が成り立ちます。これは数列 (an )n∈N がコーシー列であることを意味していますので、(an )n∈N は 収束します。 (an )n∈N の極限値を a としましょう。すると、漸化式の両辺で n → ∞ とすることにより、 a=1+ 1 a という等式が得られます。分母を払って整理すると、これは a2 − a − 1 = 0 となりますので、 a= √ 1+ 5 2 または a= √ 1− 5 2 です。一方、すべての n について an ≥ 1 が成り立っているので、極限値 a も 1 以上です。よって、 √ 1+ 5 lim an = n→∞ 2 です。 □ お気づきのように、問題 13 は無限級数が収束することを示す問題でした。また、問題 14 の方 は、漸化式 b1 = b2 = 1, bn+2 = bn+1 + bn で定義される数列(フィボナッチ数列という名前が付いています)の隣り合う項の比 an = bn+1 bn で す。これの極限が黄金比と呼ばれる値であることをご存じの人もいるかもしれません。やはり漸化 式で与えられている問題 11 の数列の振る舞いとどう違うかを、y = 1 + 1 x と y = x のグラフを書 いて考えてみてください。 さて、この二つの問題を通じて、コーシー列という概念がいかに有用であるがよくわかったよう に感じるかも知れません。が、実はコーシー列であることを示すことで収束を証明できる具体的な 実数列はあまりありません。コーシー列という概念は収束する実数列と同値な概念なのでいかに も役に立ってくれそうなのですが、実用上はおろか、1 年生の学ぶ範囲の数学では理論上もほとん ど出番がありません。(もっと専門的な数学においてはコーシー列は大変重要な役割を果たします 17 第 1 回解答 が。)だから、具体的な実数列の収束を示そうとするとき、無理にコーシー列に持ち込もうとする のはやめた方がよいと思います。問題 13 も問題 14 もコーシー列という考え方を使わずに、実数の 連続性で解くことができます。しかも、問題 13 の場合はその証明の方が無限級数を理解するのに 役に立ってくれます。しかし、それについては無限級数の一般論を学ぶときに説明した方が混乱が 少ないと思うので、ここで紹介するのはやめておきます。 コーシー列について 収束の定義の問題点(使いにくいところ)は、定義自体に極限の値が入ってしまっていることで す。実数列 (an )n∈N が具体的に与えられたとき、それが収束することを定義に従って示すには、 n > N =⇒ |an − a| < ε を満たすような N を ε に応じて見つけようとする前にまず極限値 a を見つけなければなりませ ん。これは、a が見つかるように工夫されている問題は別として、普通は望み薄です。しかし、実 数の連続性は単調な数列に限ってではあるものの「極限値は分からないがともかく収束する」とい うことを保証してくれています。これを、単調な数列に限らずすべての数列に通用する形に変えら れないだろうか、と考えてみたくなるでしょう。 例えば「単調増加で上に有界な数列」はどんどん増えて行くのにいくらでも大きくなるわけでは ない数列です。すると、収束する以外に道はない、いかにも収束しそうに思えます。そして、実数 という数の世界はこの「いかにも収束しそうな数列」が実際に収束する世界だ、というのが実数の 連続性の意味です。ということは、「いかにも収束しそうな数列」ということを数列に単調性を仮 定せずに言い表せればよさそうです。 「いかにも収束しそうな数列」という言葉を数学としてはっきりさせるために、 「本当に収束して いる実数列」の定義から極限値の情報を取り去ると何が残るか考えてみましょう。実数列 (an )n∈N が a に収束しているとは、どんなに小さな「幅」ε が与えられても、ほとんど(つまり、有限個 を除いてすべて)の an が a を中心とした幅 2ε の中に収まってしまうということでした。この定 義から安直に「a を中心とした」という部分を取り去り、ε が任意であることから 2ε の 2 を取り 去って ε にしてしまえば、 どんなに小さな幅 ε が与えられても、ほとんどの an が幅 ε の中に収まってしまう。 となります。 とりあえず、この文が「いかにも収束しそう」という言葉の内容だと信じることにしましょう。 とすると、残っていることは「幅 ε の中に収まっている」ということを、幅の中心の情報を使わ ずにどうやって式で表現するかという問題です。「ほとんどの」というのが考えるのに邪魔になる ので、とりあえず「すべての an が幅 ε の中に収まっている」ということを式で表現する方法を考 えてみましょう。すべてが幅 ε の中に収まっているのだから、a1 と他のすべての an との差は ε より小さいことになります。つまり、 ∀n [|a1 − an | < ε] です。これだけでよいでしょうか? いや、これは「a1 を中心にして幅 2ε の中に収まっている」と いうことであって、目指していることとピッタリ同じではありません。大体、a1 だけ特別扱いす る理由はどこにもないのに a1 を持ち出してくるからピントがずれるのではないでしょうか? a1 と 18 第 1 回解答 an の差が ε より小さいように、a2 と an の差も、a3 と an の差もすべて ε より小さいわけです から。こう考えると、「両方とも特定しない」というのがよさそうに思えます。つまり、すべての am と an との差が ε より小さい、式で書くと ∀m, n [|am − an | < ε] となります。あとは「すべての」としていたところを「ほとんどの」つまり「有限個を除いて」に 直してやればよいだけです。これで次の定義にたどり着けました。なお、このような実数列のこと を「いかにも収束しそうな列」と名付けてもよいかも知れませんが、初めて考えついた人の名にち なんでコーシー列と呼ぶことになっています。 定義 1. 実数列 (an )n∈N は、任意の正実数 ε に対して十分大きな自然数 N を取ると N より 大きい任意の二つの自然数 n, m に対して |an − am | < ε を満たすとき、つまり、 ∀ε ∃N ∀n∀m [n > N, m > N =⇒ |an − am | < ε] を満たすときコーシー列という。 どこを中心にばらついているかを問題にしていないところが、収束の定義とは違うところです (図 7)。 そして、実数という数の世界は「いかにも収束しそうな数列は本当に収束する」、すな 幅ε 1 2 3 4 図 7: ある n から先の an は幅 ε の帯の中に収まっている。帯の中心は極限値でなくてよい。 わち コーシー列は収束する ということが成り立つ世界なのです。 なお、|an − am | < ε を |an − an−1 | < ε や |a2n − an | < ε と誤解してしまうことが結構ありま す。n と m は(どちらも N より大きいという以外)何の関連もないというところがミソですの で、くれぐれもご注意下さい。
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