平成27年11月 1日発行 第82号 編集・発行:事務局 11 月号 二次性副甲状腺機能亢進症について 看護師長 佐藤智士 皆さんは毎月の血液検査で「PTH-intact」という項目を目にされると思います。透析 患者さんの基準値は 60~240pg/mL です。「PTH って何・・・?」と思われたことは ないですか?今回はこの PTH(副甲状腺ホルモン)についてお話します。 1. 副甲状腺とは 副甲状腺は、蝶々のような形をした甲状腺の裏側にある 米粒大のごく小さな臓器で、甲状腺の左右両葉の上下に 2 対、合計 4 個あります。 「副」甲状腺と言いますが、甲状腺とはまったく別の臓器 であり、「上皮小体」とも呼ばれています。 副甲状腺は副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌して、骨や腎臓、 小腸などに作用して、血液中のカルシウム濃度を調節して います。 ※(甲状腺もホルモンを分泌していますが、副甲状腺ホルモン とはまったくの別ものです。) 2. 二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症とは 透析患者さんでは腎臓の働きが低下しているため、尿中への P(リン)の排泄が低下し、 体内に P が蓄積されます【高リン血症】。また、腎臓で Ca(カルシウム)を再吸収する ことが出来なくなります。 食事で摂取された Ca は主に腸管から吸収されますが、その際に活性化されたビタミ ン D3 の手助けが必要です。食事などで体内に取り込まれたビタミン D は、肝臓と腎 臓により体内で使用できるかたち(活性化されたビタミン D3)へと変換されます。透析 患者さんではこのビタミン D が活性化されないために腸管からの Ca の吸収が出来ず、 血液中の Ca 濃度を一定に保つことが出来なくなってしまいます【低 Ca 血症】。これ らの結果、高リン血症と低 Ca 血症を改善しようと副甲状腺から副甲状腺ホルモン (PTH)が過剰に分泌されることになります。これが、二次性副甲状腺機能亢進症です。 なお、この状態が長く続くと、副甲状腺が過形成され、PTH が過剰に分泌されたまま となります。 3. 二次性副甲状腺機能亢進症になると 血液中の足りない Ca を補うため、副甲状腺ホル モン(PTH)が過剰に分泌され、骨から Ca が溶け出し ます。その結果、線維性骨炎(高回転骨病変)となり、 骨がもろくなって骨折しやすくなります。 骨から溶け出した Ca と P により、異所性石灰化を 起こし、関節の痛みが起きたり、皮膚のかゆみや、 イライラ感が出現することもあります。また、溶け出 した Ca と P が血管へ沈着することで動脈硬化を起こ し、心筋梗塞の原因となり、生命予後に悪影響を及ぼし ます。 4. 二次性副甲状腺機能亢進症の予防と治療 まず、透析をしっかりとやりましょう。そして、日頃 の食事管理と内服薬の服薬管理、注射による薬物治療な どにより、P(リン)と Ca(カルシウム)、PTH(副甲状腺ホ ルモン)のバランスを整えることが大切です。 透析治療をしっかりとやることで、リンの除去とカルシ ウム濃度の調整を行いましょう。 食事管理を行い、リンを多く含む食品の摂り過ぎに注意 しましょう。 リンは食事によって体内に取り込まれます。小魚や乳製品 を食べ過ぎてはいませんか?スナック菓子や加工食品(食品 添加物を含んでいる)などにもリンが多く含まれています。 食べる前にチェックしましょう。また、透析患者さん用の 低リン食もありますので、栄養相談日などに相談してみて はいかがでしょうか。 服薬管理を行い、処方された薬をきちんと正しく服用することが大切です。 リンは体内でゆっくり移動しているため、リンを取り除くためには十分な時間をかけて 透析をすることが大切ですが、透析でも取りきれないリンについては、内服治療を行い ます。また、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰な分泌を抑えるための薬の服薬や注射によ る治療を行います。 ① リン吸着薬・・・ フォスブロック、カルタレチン、キックリン、レナジェル、リオナなど これらの内服薬は、腸の中で食物中のリンとくっ付いて、リンが体内へ吸収されるの を防ぎます。薬剤とくっ付いたリンは便とともに排泄されます。 薬剤の効果を十分に発揮させるためには、薬と食物が胃の中でよく混ざることが重要 です。したがって、食直前や、食直後など指示通りに服用しなければ意味がありませ ん。 ② Ca(カルシウム)受容体作動薬・・・レグパラ レグパラは副甲状腺に直接作用し、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制します。ま た、リンの値も下げてくれます。 ③ 活性型ビタミン D 製剤(注射薬、経口薬)・・・ オキサロール、ロカルトロール、アルファロール(経口薬) これらのお薬は、腸管からのカルシウムの吸収を助け、副甲状腺ホルモン(PTH)の過 剰な合成、分泌を抑制します。 また、血清 Ca 値が低い方へのロカルトロールの投与も行います。 学会・研修会に出席しました 10/15 (木) 岡山中央病院:教育プログラム 2015 (岡山) 『高齢心不全患者さんへのケア』 出席者:櫻本副院長 インフルエンザ予防接種のお知らせ これからの季節、空気が乾燥してインフルエ ンザの流行する時期になりました。 ☆咳が出る時は、マスクで予防! ☆外出後は手洗・うがいの励行! ☆熱がある時は、病院に行く前に連絡! ☆流行する前に予防接種! ※詳しくはスタッフにご相談してください。 ながけクリニック 東岡山ながけクリニック 2015年11月 日 1 月 火 3 2 血液検査 水 平成27年 木 金 土 4 5 6 7 11 12 13 14 18 19 20 21 25 26 27 28 2 3 4 5 血液検査 栄養相談 8 9 レントゲン 10 レントゲン 栄養相談 15 16 血液検査 栄養相談 17 血液検査 栄養相談 22 23 栄養相談 24 レントゲン レントゲン 栄養相談 29 30 栄養相談 1 ゴルフコンペ 清陽会 栄養相談 編集後記 “秋の味覚狩り” 先月の中旬に 千寿農園(介護施設の裏)にて、入居者の みなさんとスタッフでサツマイモの収穫に挑戦!! 掘り出すたびにサツマイモを持ち上げて歓喜がわいた。 小さな種や苗から大地が育ててくれて、大きく育った植物 今の私たちは、家族や母親が強く、たくましい大地の役割で (編集部F.H) あったことに、感謝、感謝。 事務局: ホームページ: ながけクリニック 東岡山ながけクリニック http://www.k3.dion.ne.jp/~nagake-c/ 岡山市中区中井 454-1 086-207-6788 岡山市中区土田 805-1 086-278-0122
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