熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
GLP-1のマクロファージ活性化に対する作用の解析
Author(s)
白石, 大偉輔
Citation
Issue date
2015-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/32244
Right
白石大偉輔氏の学位論文審査の要旨
論文題目
GLP-1 のマクロファージ活性化に対する作用の解析
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マクロファージ (Mo) の活性化は炎症性疾患や腫蕩など多疾患に関わっており、 Moの活性化過
程には古典的活性化 (M1)経路およびオルタナティブ活性化 (M2) 経路が存在する o M1Moは炎
症促進性、腫場増殖抑制性に働き、 M2Moは抗炎症性あるいは腫蕩増殖促進性に働くと考えられて
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1(GLP-1)は、小腸の L細胞から分泌されるホルモンであり、グルコー
ス恒常性を調節することが知られている o また、 GLP-1受容体作動薬の投与が、動脈硬化の進展を
抑制することや、動脈壁への Moの集積と炎症反応を抑制することが報告されているが、 Mo活性化
における GLP-1/ GLP-1受容体シグナル伝達の重要性を解析した研究は少ない。本研究は、隠島細
胞以外における GLP-1の役割を解明する目的で、 GLP-1の Moの活性化に対する作用、特に M2Mo
への分化に対する作用を検討したものである o
申請者は Humanmonocyte-derivedmacrophage(HMDM)ならびに、 siRNAで GLP-1受容体をノ
ックダウンした HMDMを GLP-1で刺激し、転写因子 STAT3の活性化を評価した
O
また、 GLP-1
で刺激した際に HMDMから分泌されるサイト力インの量、および細胞表面の M2マーカーである
CD163と CD204の発現を解析した o さらに、 GLP-1で活性化された Moが脂肪細胞機能へ及ぼす
効果を観察する巨的で、 GLPイで刺激したマウス由来 Moの RAW264.7細胞と 3T3-L1a
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を共培養し、アディポネクチンの分泌を定量した。その結果、 GLP-1は Mo の M2活性化に重要な
STAT3を活性化させ、 M2マーカーである l
し10の分泌ならびに CD163と CD204の発現を増加さ
せた o一方、これらの作用は siRNAによる GLP-1受容体のノックダウンにより抑制された さらに、
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無刺激の RAW264.7細胞と 3T与 L1a
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eとの共培養により、 3T3-L1a
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eからのアディ
ポネクチンの分泌が抑制されたが、 GLPイ刺激をした RAW264.7細胞との共培養ではアディポネク
チンの分泌が回復した
O
以上の結果より、 GLP-1は Moにおいて GLP-1受容体を介して STAT3を活性化し、 Moの活性化
状態を抗炎症性の M2Moにシフトすることで、抗炎症作用に寄与している可能性が示された。
審査の過程において、糖尿病患者におけるインクレチン分泌障害の有無、 GLP-1の DPP-4による
分解速度、使用した GLP-1受容体作動薬濃度の妥当性、 Moにおける GLP-1受容体評価方法の妥当
性
、 STAT3活性化以外の GLP-1受容体シグナル活性化の評価、 Mo活性化の定義、 M2Mo におけ
る CD163や CD204の機能、目旨肪組織における Moの由来と生理的役割、肥満における脂肪組織の
M1/M2Moの集積度とその意義、アディポネクチン分泌の主要経路、組織特異的 GLP-1受容体ノッ
クアウトマウスの有無とその表現型、 GLP-1受容体作動薬使用糖尿病患者のアディポネクチン濃度
の変化、などについて質疑応答がなされ、申請者からは概ね適切な回答や考察がなされた。
本研究は、 GLP-1が Moの M2Moへの分化に関与し、その結果抗炎症的に作用する可能性を示し
代謝内科学担当教授
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審査委員長
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た点で、学位に値すると評価された。