互いに尊敬し合い、協力し合える学級づくりをめざして ~アドラー心理学の概念を採り入れて~ 北里小学校 篠原 亜寿香 ア ド ラ ー 心 理 学 の 子 育 て は 「 勇 気 づ け 」 を 第 1 と し て い る 。「 勇 気 づ け 」 と は 「 わ た し は能力がある 人々は仲間だ、と相手が感じるように働きかけること」と野田俊作先生は 定義づけている。これは学校教育でも必要なことだと思い、これを学級経営に生かすこと を決心した。この研究を通して、一人ひとりが自信を持ち、安心して過ごせる教室に近づ くことができたと感じる。 互いに尊敬し合い、協力し合える学級づくりをめざして ~アドラー心理学の概念を採り入れて~ 北里小学校 1 篠原 亜寿香 主題設定の理由 私は、育児休暇中に我が子との関係がうまくいかないことに悩み、「パセージ」を受け た。パセージとは「アドラー心理学のグループ体験にもとづく育児学習コース」である。 こ の 学 習 コ ー ス で は 子 育 て の 目 標 と し て「 行 動 面 」と 「心 理 面 」で 以 下 の 視 点 を 挙 げ て い た 。 <行動面> 1)自立する <心理面> 1)私は能力がある 2)社会と調和して暮らせる 2)人々は私の仲間だ という信念を持つ そして、研修後に「これを学級経営に生かしたい」と考えた。 本学級には活発な児童が多く、担任に積極的に話しかけてくる児童も少なくない。しか し、児童同士のつながりは弱く、児童同士で注意し合うときもみんなで責めて泣かせるよ うなことが多かった。また、年度当初に行ったY-Pアセスメントでは低自己評価群の児 童がおり、これは上記の「『私は能力がある』という心理面の成熟が不十分なのではない か」ととらえた。そこで、今年度の個人研究テーマを「互いに尊敬し合い、協力し合える 学級づくりをめざして」として、アドラー心理学の概念を採り入れたさまざまな実践に取 り組んでいこうと決心した。 2 研究仮説 アドラー心理学の概念に基づいた学級経営を行えば、低自己評価群の児童も自己肯 定感を高めることができる。また、児童相互の関わり合いに重点を置いた手立てを計 画的に実施していくことで、児童たちの互いを認め合う態度や考えを深め、全員がク ラスに所属意識を持った学級経営ができる。 3 研究の方法 対象:小学2年生(24人) <アドラー心理学に基づいて児童と接するときに心がけること> ① 尊敬し合える関係づくりを心がける 本当の意味で「仲間だ」と感じるために、児童と教師のタテの関係だけではなく、ヨコ 1 の関係を築き、相互に信頼し合った関係づくりを心がける。 ② 不適切な行動に負の注目を与えない 怒りや不安のような負の注目は相手の勇気をくじくことになることが多い。そこで不適 切な行動への負の注目はせず、適切な行動をしたときに正の注目をする。 ③ ほめるのではなく、勇気づけの言葉かけをする 「えらいね。」とか「よくやった。」という言葉は上から下へのことばである。「あり がとう」「○○してくれてうれしく思うよ。」など、「私は能力がある」「先生は私の仲 間だ」と感じられる言葉がけをする。 ④ 感情的にならない マイナスの感情を使って相手を支配すると、指示に従うかもしれないが、関係が悪くな っ て し ま う 。受 容 的 な 態 度 で 相 手 を て い ね い に 受 け 止 め 、物 事 は「 や さ し く 、き っ ぱ り と 」 伝える。 <具体的な手立て> ① 日常の学校生活で児童と常に寄り添う。 ② 学級活動や道徳の時間に人間関係づくりの 手だてを計画的に実践する。 ③ クラスで困ったことが起こった場合はクラ ス会議を開き、日常的に想いを聴き合う。 ④ 学級通信を発行し、児童のよいところに気 4 1月:第2回Y-Pアセスメント 1月~3月:G・W・Tの実践 づき合う機会を増やす。 ⑤ <研究計画> 4月: 題材の厳選 5月: 第1回Y-Pアセスメント 6月: 第1回教育相談 5月~11月:G・W・T、 クラス会議の実践 11月:第2回教育相談 Y ーP ア セ ス メ ン ト ・ 教 育 相 談 で 児 童 の 自 己 肯 定 感 ・ 所 属 意 識 を さ ぐ る 。 研究の実際と考察 ( 1 ) 日常の学校生活 本当は毎朝、教室で児童を出迎えたい が、家庭の事情でどうしてもできないの で、黒板に「朝のメッセージ」を書いて いる。これを書くのはいつも前日の帰り である。そこには、いつもその日にある ことの中で、児童が楽しみにしているで <黒板のメッセージ> 2 あろうことを記したり、前日の児童のよかった点を認めたりして、勇気づけに心がけた。 また、放課には必ず外に出て、児童たちと過ごすことを心がけた。「私は、ドッジボー ルをやりたいんだけど、一緒にやりたい人いる?」「次の放課、鬼ごっこする人?」と、 はじめのうちは教師側から声をかけていた。しかし、しだいに「先生、次の放課は鬼ごっ こできる?」「ボール投げしよう。」などと誘う児童も出てきた。ときには、「私は、一 輪車を練習したいから。」と断ることもあった。また、夏の暑い日は放課の後、体が冷め るまでなかなか授業に入れないこともあった。このようなことの積み重ねにより、児童の 感覚に近づき、児童との心理的距離が縮まったのではないかと考えている。 また、「○○しなさい。」「○○はよくない。」という言葉遣いは極力さけ、「○○し て く れ る と 助 か る ん だ け ど ・・」 と い う お 願 い 言 葉 に し た り 、 「 私 は ○ ○ だ と 思 う よ 。 」 と 「Iメッセージ」にしたりして児童とのヨコの関係を築くように意識した。これを続ける うちに、児童間での命令口調は減り、好ましい言葉がけが増えてきた。 児童と私がヨコの関係になったと感じた瞬間があった。それは、3学期の生活科「ひろ がれわたし」の単元で「自分が生まれてから今までのことを授業参観で発表するよ」と話 したときである。「先生は?先生も発表するの?」と児童からとてもうれしそうな笑顔で 聞かれたのである。私も児童たちの仲間に入り、つながりが生まれていることを感じた。 (2) 計画的な人間関係づくりの実践 回 実践日 題材 目的 1 5/8 「 す ご ろ く ト ー キ ン グ( 4 月 編 )」 聴 き 合 う 2 5/27 「色鉛筆忘れちゃった」 伝え合い、聴き合う 3 5/31 「人間カラーコピー」 力を合わせる 4 6/28 「もじもじゲーム」 力を合わせる 5 7/4 「もじもじゲーム2」 力を合わせる 6 9/20 「ムシムシ教室の席がえ」 伝え合い、聴き合う 7 10/18 「あなたはステキ」 友人から見た自分を知る 8 11/29 「動物園の案内マップを作ろう」 伝え合い、聴き合う 9 1/27 「フレンドウェブ」 リレーションづくり 10 3/14 「ほめほめジャンケン」 友人から見た自分を知る 第 1 回 は 、は じ め て 同 じ ク ラ ス に な っ た 児 童 も い る の で 、お 互 い の こ と を 知 り 合い 、打 ち解 ける 目 的で「す ごろ くト ー キング 」を実 施し た 。は じめ のう ちはき 3 ち ん と 自 分 の コ マ が 止 ま っ た マ ス の テ ー マ に 沿 っ て ス ピ ー チ し て い た が 、だ ん だ んと話すことよりもすごろくを進めることに集中してしまっていた。 第 2 回 は 1 年 生 で も 行 っ た 題 材 に し た 。同 じ 題 材 で も 、ク ラ ス 替 え を し て 友 だ ち が 変 わ っ た こ と で 感 じ る こ と が 変 わ っ た り 、2 年 生 に な っ た 成 長 を 感 じ や す か っ た り す る の で は と 思 っ た か ら で あ る 。ま た 、 情 報 紙 を つ か っ た ワ ー ク な ら 、話 す こ と が 苦 手 な 児 童 で も 話 さ な け れ ば な ら な い 状 況 に な る の で 、最 初 <笑顔で話す> の 題 材 に ふ さ わ し い と 考 え た 。児 童 の ふ り 返 り は 以 下 の 通 り で あ る 。1 年 生 の と き よ り み んな成長を感じたようである。 ・ み ん な 1 年 生 の と き み た い だ と 思 っ た け ど 、み ん な で よ く 話 し 合 っ て す ご い と 思 いました。 ・ 1 年 生 の と き は か ん せ い し な か っ た け ど 、2 年 生 は で き ま し た 。何 で か と い う と 、 みんなできょうりょくしたからです。 ・ みんなが聞いてくれたから、時間内にできるようになった。 ・ 1 年 生 の と き は 女 の 子 の 話 を あ ん ま り 聞 け な か っ た け ど 、2 年 生 に な っ て ち ゃ ん 第3回はみんなで話し合いながら、協力して 課題を完成させることを目標にして行った。中 には課題が完成できなかった班もあったが、 「は んできょうりょくできてたのしかった」とふり 返りをしていた。 第 4 回 、 第 5 回 は 「 言 葉 を 使 わ な い 」 「相 手 <身を乗り出して、聴き合う> の気持ちを考える」を目標にしてワークを実施 した。これは、友だちが欲しそうなカードは黙って渡して、文字カードを組み合わせてテ ーマにあった単語をグループでできるだけたくさん作るというゲームである。第4回は自 分のことで精一杯で友だちに気を配ることができなかったが、第5回では友だちにカード を 渡 せ る 児 童 が 増 え 、ふ り 返 り に も「 こ ん ど や る と き は も っ と み ん な に カ ー ド を わ た し て 、 お友だちが多くできているといいなと思います。」と書く児童がいた。少しずつ児童同士 4 のつながりが感じられるようになってきた。 第7回は国語「友だちのこと知りたいな」とも関連づけて行った。自分のよいところを 互いに聴き合い、話してもらった児童の照れながらもうれしそうな表情が印象的だった。 これらの実践を通して、児童同士の理解も深まり、クラスの雰囲気もよくなってきたよ うに感じた。しかし、しばらく間をあけて第8回を行うと、聴き合う姿勢が薄れ、自分の 意見を人の意見にかぶせて話してしまう姿が見られた。「みんなは、自分の考えを聞いて く れ た か 。 」 の 項 目 で 、 4 点 中 2 点 を つ け る 児 童 が 24 人 中 5 人 も い た 。 そ の と き の 児 童 のふり返りは以下のようである。 ・ けんかはしないようにしたいです。 ・ 人が話しているときにしゃべらない方が聞きやすいと思います。 ・ みんながたくさん話したけど、話しているさいちゅうにしゃべる人がいるから、 それをなおした方がいいと思います。 ・ 話をきいてくれなかったから、ちゃんと人の話をきいた方がいいと思います。 課題解決型のワークでは、どうしても解決に意識 が向いてしまうので、3 学期からは個人同士のつな が り を 意 識 し た ワ ー ク を 取 り 入 れ た 。第 9 回 の「 フ レンドウェブ」は友だちとのつながりをさがすワー クだが、はじめのうちは同性同士で質問し合うこと が多かった。しかし、時間がたつにつれて男女間で も質問し合い、たくさんの友だちとつながりを見つ <男女のつながりも深まってきた> けることができた。 < <児童ワークシート> 5 (3)クラス会議 回 実践日 議題 1 6/ 21 雨の日にあばれる人がいるので、ほうかのすごし方をどうするか 2 12/ 16 どうしたら、ボール、フリスビーをなかよくびょうどうにつかえるか どちらのクラス会議も「クラスをふり返って」のアン ケートを書いてもらい、その中の「クラスのこまったこ と」から議題を決めた。アンケートにはどちらもよかっ <アンケート項目> ① 今週でよかったこと ② こまったこと たことの方が多く書かれており、児童がクラスを肯定的 にとらえていることが感じられた。 なおしたほうがいいこと ③ 改善方法 クラス会議を開く前に、次のルールを示した。 1 思いついたことはどんなこともどしどし発言する。 2 他の人の発言はよく聞く。 3 他の人の意見を批判してはいけない。もし、反対なら、「それは違う」と言わな いで、代わりの案を出して「私はこう思う」と言う。 4 結論を先に言い、理由は後で言う。「私はこう考えます。なぜなら」と言う。 「 ク ラ ス は よ み が え る 」p 187~ 189 よ り 引 用 第1回クラス会議は教師が司会となって進行した。第2回は児童に司会を任せたが、会 を取り仕切るにはまだ指導と練習が足らず、手助けが多く必要だった。話し合った結果は 以下の通りである。 回 実践日 1 6/ 21 結果 雨の日はクラスみんなで遊べることをする。 (班でクラスのリーダーシップをとる) 2 12/ 16 あそぶものは、ひとつの遊び仲間で1種類にする。 雨の日はクラスでハンカチ落としをしたり、い す取りゲームをしたりと当番になった班の児童が 工夫をしてみんなを楽しませていた。2学期から は児童の意見から「お楽しみ係」ができ、係の児 童がリーダーシップをとってレクリエーションを していた。 <クラスでハンカチ落とし> 6 ボール、フリスビーはだい ぶいろいろな児童が使えるよ うになってきたが、まだ女子 児童が使いたくても使えない という声こえてきた。 < 第 2回 ク ラ ス 会 議 > (4)学級通信 <学級通信例> → 発行:週1回程度 児童が読みやすいよう 対象:小学2年生児童 に、イラストを入れたり、 文字を大きくしたりし 内容:わたしから た。 「ありがとう」 成長したこと・ がんばったこと 人間関係づくりワークのふり返りや アンケート結果の紹介 配るだけでは読まないので、朝の会や学活の時間に取り 上げて紹介した。時々、写真を入れることで興味を持つよ うになってきた。通信に名前を出すことはしなかったが、自分の意見や行動が紹介されて いると児童はとてもうれしそうにしていた。 (5)Y-Pアセスメント・教育相談 「学校生活に関するアンケート」調査を実施。アンケートは、「自分自身に関すること ( A 項 目 10 問 ) 」 「 自 分 の 学 校 生 活 に 関 す る こ と ( B 項 目 12 問 ) 」 「 学 級 で の 居 心 地 感 に 関 す る こ と( C 項 目 4 問 )」の 合 計 26 問 に 、児 童 が 5 段 階 で 自 己 評 価 す る 形 式 を と っ て い る 。そ れ を も と に「 Y - P ア セ ス メ ン ト 」フ ァ イ ル に 入 力 す る と 、学 級 分 布 図 が「 マ イ ペ ー ス 群 」 「 高 自 己 評 価 群 」 「 低 自 己 評 価 群 」 「対 人 過 敏 群 」 に 分 か れ て 作 ら れ る 。 高自己評価群 友だちや先生から評価され、自己評価が高いと思われる群。学級のリ ーダーやそのグループ等はこの群にいる場合が多い。 対人過敏群 友だちや先生の評価が気になるタイプの群。本当の自分が表出できて いない可能性がある。 マイペース群 仲間づくりが苦手な群。自分のペースで物事を行うので、周囲からは 7 個性が強すぎると見られる場合も多い。他の児童たちからわがままだと 攻撃されることもある。攻撃されると低自己評価群に陥るため、このタ イプの児童たちの位置の変動は学級の寛容性のバロメーターになる。 低自己評価群 自己評価が低い群。成績不振で悩んだり人間関係が築けず孤立したり する児童である可能性が高いため、支援を必要とする児童たちである。 HP「Y-Pアセスメントワークシート」より そこで、「低自己評価」の児童が複数いることがわかった。 ま た 、教 育 相 談 で は 上 記 と は 別 の「 生 活 ア ン ケ ー ト 」を と り 、そ れ を も と に 、困 っ た 事 、 悩 み 事 が あ れ ば 相 談 に の っ た 。 そ の 後 、 「満 足 で き る 理 想 の 自 分 」を 1 0 点 満 点 と し て 、 児 童自身に点数をつけさせた。さらに、「その点数をもう1点上げるために自分はどうした いか」を尋ね、「あなたなら、きっとできる」と勇気づけた。 5 研究の成果 アドラー心理学の概念に基づき、今まで特に「ありがとう。」「助かったよ。」などの 声かけを心がけて、尊敬し合えるような関係づくりができるように児童と接してきた。係 の仕事がきちんとできていたら、「きちんとしてくれたおかげで、助かったよ。ありがと う。」、教室全体が静かになったら「話を聞く姿勢になってくれてありがとう。」という ようにである。児童間でも互いに同じような言葉かけが聞かれるようになり、学級全体が とてもあたたかい雰囲気になってきた。同僚の教師からも「児童たちのとてもあたたかい 関係ができあがっているね。」と言われることが多くなった。自分でもまだ不十分だが、 目指してきた学級づくりができているように感じる。 その結果、Y―Pアセスメントでは右のような結果 を得ることができた。 低自己評価群の人数は変わらないが、5月に著しく 自己評価が低かった児童が1月には高自己評価群に入 っていた。また、1月に低自己評価群に入っている児 5月 1月 低自己評価群 3人 3人 対人過敏群 4人 0人 マイペース群 4人 4人 高自己評価群 13人 16人 童も中心から大きく外れてはいない。5月にマイペー ス群に入っていた4人のうち、1人は転出し、2人は高自己評価群に移行した。このこと から、これらの児童もクラスに受け入れられ、所属意識を持つことができたのではないか と考える。加えて1月のマイペース群の2人は低自己評価群と対人過敏群から移行してい る。これは、少しでも「私は能力がある」に近づいたのではないかと考える。 8 高自己評価群の児童が増えたことや、対人過敏群の児童が0になったことからも今回の 研究の成果はあったのではないかと考える。 実施月 合計(23人) 平均 教育相談でも研究の成果は見られた。児童がつけ 6月 170 7.3 た点数の全員分(転出、入生を除く)の合計と平均 11月 192 8.3 の変化は右表の通りである。 自己評価が上がった児童が多く、アドラー心理学で言う「わたしは能力がある」という 心理面の目標が達成しつつあることを実感した。中でも、6月に3点、4点だったのが8 点、9点と大きく上がった児童が4名いたことが成果といえる。これらの児童は、ふだん の生活でも笑顔が増えて活動的になり、自信を持って生活できるようになった。 教室内では、困っている児童を助けたり、係の仕事を助けたりする場面が多く見られる ようになった。行動が遅い児童に対しても、きつい言葉で注意をするのではなく、応援す るような声かけができるようになってきた。そしてそれにともなって、授業の雰囲気もよ くなり、発言も活発になってきた。 人間関係づくりのワークでは、徐々に互いを認め合 う 態 度 や 考 え 方 が 深 ま っ て い っ た 。3 月 に 行 っ た「 ほ め ほ め ジ ャ ン ケ ン 」で は 23 人 中 21 人 が ふ り 返 り で 自 分 の 気 持 ち をにこにこマークだと評価し、への字口マークに○をつけた 1人は「友だちにいろいろなことをいわれてちょっとはずかしかったです。」と照れてし まった様子だった。ワークシートを見ると、全員が男女関係なくクラスのほとんどの友だ ちと「ほめほめジャンケン」をしたことがわかった。これは、多くの人から自分のいいと ころを認めてもらえたことになる。このことからも、みんながクラスに所属意識を持つこ とができたと考える。 6 今後の課題 これまでの取り組みにより、教育相談で自己評価が上がった児童が多かったが、下がっ ている児童も4名いた。まだまだ勇気づけが足りない結果だと思う。Y-Pアセスメント では、全体的にはよい結果が得られたが、学級居心地感を表す「わたしはクラスの友だち と い っ し ょ に い る と 楽 し い 。」「 わ た し は ク ラ ス の 友 だ ち に 大 切 に さ れ て い ま す 。」「わ た しは今のクラスが気に入っています。」の欄で「1 全然そう思わない」に丸をつけてい る児童が1名いる。この児童も学級が居心地のよい場所だと思えるような学級作りをさら に進めていきたい。 9 また、5月には高自己評価群にいたのに、1月には低自己評価群に移行してしまった児 童もいる。この児童は普段おとなしく自分の意見をなかなか発言しない児童である。5月 では「それでも自分は大丈夫」ととらえていたのが、周囲の成長や考え方の変化から「こ のままではいけない」と考えるようになったのかもしれない。この児童が「自分は能力が ある」と思えるように勇気づけをしていく必要がある。 協力し合うためのスキルを定着させるためにも、人間関係づくりのワークは継続的に行 っていく必要があると考える。この児童たちを幸運にも3年生でも担任することができ、 新しいクラスでも実施している。すると、2年生の時にはなかったリーダーシップをとろ うとしてのトラブルやケンカが起きた。クラス替えがあってすぐだったので、私の題材選 択が間違っていたのかもしれないが、もう一度1から人間関係づくりを進めていく必要が あると感じた。 本校は「つながり、学び合い、高め合う」を教育目標の柱として、特に学び合う学びに 力を入れている。私自身が研究してきたテーマ「互いに尊敬し合い、協力し合える学級づ くり」はこの「学び合う学び」のベースでもある。今後は学び合う授業づくりの視点から も 、よ り 研 究 を 深 め て い き た い 。加 え て 、小 学 校 は ク ラ ス で 過 ご す 時 間 が 非 常 に 長 い 。「 学 校が楽しい」→「毎日が楽しい」になるためには、児童一人ひとりがクラスに居場所があ り、所属意識を感じることが欠かせない。私はこの先も児童全員がクラスに所属意識を持 つことのできる学級経営を進めていきたい。 <参考文献> 「 Passage」 「 Passage Plus」 ア ド ラ ー ギ ル ド 「クラスはよみがえる」 「勇気づけて躾ける」 創元社 一光社 「新しい社会と子育て」 野田俊作著 野田俊作・萩昌子著 ルドルフ・ドライカース あうん堂本舗 ビッキ・ソルツ著 野田俊作作 「学校グループワーク・トレーニング」遊戯社 横浜市学校GWT研究会著 「学校グループワーク・トレーニング」遊戯社 日本GWT研究会編著 「協力すれば何かが変わる」遊戯社 日本GWT研究会著 「エンカウンターで学級が変わる ショートエクササイズ集」 「エンカウンターで学級が変わる ショートエクササイズ集 HP「YPアセスメント 図書文化 Part2」 横浜市」「YPアセスメントワークシート」 10 監修國分康孝
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