序 皮膚科を専門としない医家のための皮膚科書を世に問うについて,皮膚科専門医の育成を本分と する身として,はたしてどんなものかという疑義が浮かばなかったわけではない。 ただ,近年臨床各分野においては,こぞって専門的知識の開発や,新技術の導入が図られる一方, 一部においては,primary care や家庭医の重要性もまた,声を大にして叫ばれている。 そうした背景もあるし,また何よりもわが国において皮膚疾患の診療は,それを専門とする医家 以外に,その数倍のそれを専門としない方々によって,なされている現実を,直視しないわけには いかない。 そこで,そうした方々に対して,皮膚疾患の本態をより正確に把握していただき,さらに正しく, 適切な診断や治療をしていただくことは大切なことで,そのためには,その人達に適したより使い やすい医書が必要となってくる。その手助けをするのもまた我々の努めではないかと考える。 さて,その医書であるが,医学生や皮膚科専門医向けのものは,既に選択に窮するほどおびただ しい数にのぼる。しかし,対象を皮膚科を専門としない一般臨床医にしぼるとなるとはたしてどう であろうか。 本書はこうした想点から生まれた幼小児の皮膚疾患を対象としたものである。診療中,身近に置 いていただき,診断に治療に活用していただくことを狙っている。しかしまた,ある時には,皮膚 病診療には“経験を積んだ並々ならぬ専門家としての目”の必要性を痛感されることであろう。そう した際には遠慮なく専門医の意見をお聞きいただきたい。非専門家としての限界をお感じにいただ くことも,また本書の別の狙いでもある。良き診療の一助になれば幸いである。 1988 年4月 石橋康正 改訂3版 序 「鑑別と治療マニュアル」シリーズの一環として,「幼小児によくみられる皮膚疾患」を,初めて 世に問うたのは,1988 年4月のことであった。当時,本書上梓に際してのコンセプトは,その対象 を,皮膚科を専門とする方々よりも,むしろそれを専門としない一般の臨床医に置き,或いは場合 によっては,看護師,薬剤師といった人々にも使って頂けるような,日常卑近に遭遇する皮膚疾患 について,平易で分かり易く,また正確な知識を提供できる解説書に,ということであった。 その後,10 年を経た 1999 年5月に,第一回の改訂版として,部分的手直しをしたものを再上梓 した。さらに,初版から数えて約 16 年が経ち,再び新しい時代に合った内容に改める必要性が問わ れ,2年ほど前,再々改訂を行うことに踏み切った。ただ,作業は諸般の事情もあって延び延びと なり,今日ようやく完成に漕ぎつけたところである。 改訂のポイントは,既に死語に等しい存在になった疾患の削除,また新たに解説の対象となる疾 患や項目の追加,解説内容や記載方法,或いは分類方法に関する若干の手直し,更に新しい治療法, 薬剤等の紹介と解説が主体である。 出来上がった新しい本書を見ると,面目を一新し,時代に合った体裁と内容を備えた新解説書に 変貌を遂げた,との思いを深くする。或いはこれは編集者の独りよがりの自負であろうか。 日常診療の身近に置いて頂き,折りに触れ手に取ってご活用願えれば幸いである。 2006 年2月 石橋康正
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