(様式1-3) 受理年月日 受理番号 帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究報告書 平成27年 採択番号 26共同-5 感染免疫研究部門 研究部門 研究課題名 5月28日 原虫病研究センター 内共同研究担当教員 白藤 梨可 マダニ防除を目指した繁殖学的基礎研究 (ふりがな) 氏 名 所属部局等・職名 研究代表者 マツオ トモヒデ 松尾 智英 白藤 梨可 鹿児島大学共同獣医学部・准教授 研究分担者 研究期間 目的・趣旨 研究経過の 概要 帯広畜産大学原虫病研究センター・助教 平成26年 4月 1日 ~ 平成27年 3月31日 マダニ類はその突出した媒介能により多様な病原体伝播に関わることで獣医 学 お よ び 医 学 上 重 要 と 考 え ら れ て い る 。そ の う ち 、フ タ ト ゲ チ マ ダ ニ は 我 が 国 の 牧 野 に お け る 最 優 占 種 で あ り 、牛 お よ び 犬 の ピ ロ プ ラ ズ マ 原 虫 を は じ め 、日 本 紅 斑 熱 や ロ シ ア 春 夏 脳 炎 な ど の 媒 介 種 と し て よ く 知 ら れ て い る 。ま た 、生 物 に と っ て 繁 殖 行 動 は 種 の 保 存 の た め の 最 重 要 事 項 で あ り 、生 物 の 防 除 を 考 え る 上 で も 繁 殖 シ ス テ ム の 解 明 と 、そ れ に よ る 制 圧 法 の 開 発 は 有 効 な 手 段 と な り う る。しかしながら、マダニ類の繁殖プロセスは不明な点も多く残されている。 フタトゲチマダニ両性生殖系を用いたマダニの繁殖学に関する基礎的研究 に携わった経験がある申請者と発生工学に関して豊富な知識や経験を持つ原 虫病研究センターのゲノム機能学分野および感染免疫研究部門との共同研究 に よ っ て 、マ ダ ニ 繁 殖 学 の 進 展 と そ れ を 利 用 し た マ ダ ニ 防 除 法 の 開 発 に 貢 献 す ることを目指す。 単為生殖系統および両性生殖系統の雌ダニにおける卵母細胞成熟過程 マダニの繁殖に重要な吸血および産卵に伴う両系統の卵母細胞の成熟過程 を 光 顕・電 顕 レ ベ ル で 比 較 検 証 す る 。ま た 、卵 母 細 胞 の 成 熟 に は 卵 黄 タ ン パ ク 質 前 駆 体 ( ビ テ ロ ジ ェ ニ ン ; Vg) が 必 須 で あ る が 、 卵 母 細 胞 の ど の 成 熟 段 階 に お い て 、 Vg 合 成 ま た は 血 体 腔 ( ヘ モ リ ン フ ) か ら の Vg 取 り 込 み が 活 発 に な る の か 不 明 で あ る 。共 同 研 究 担 当 教 員 の 保 有 す る 抗 Vg ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い て 細 胞 内 Vg を 検 出 し 、 卵 母 細 胞 の 成 熟 過 程 に お け る Vg の 動 態 を 、 両 系統の雌ダニについて明らかにする。 両性生殖系統における受精メカニズム 未だ不明な受精のタイミングを解明するために、交尾後の飽血雌ダニの卵 巣・卵 管 に お け る 精 子 の 動 態 を よ り 詳 細 に 光 顕・電 顕 レ ベ ル で 検 証 す る こ と に よって、マダニの受精のメカニズムを解明する。 (様式1-3) 受理年月日 受理番号 本研究では、原虫病研究センター内で共同研究担当教員が継代飼育してい る、フタトゲチマダニの単為生殖系統ならびに両性生殖系統を材料とし、 マダニの繁殖機構を理解するための研究を進めている。 これまでに 単為生殖系:未吸血期、緩慢吸血期、急速吸血期、飽血期、産卵準備期、 産卵開始期の雌ダニ由来の卵巣 両性生殖系:交尾直後と飽血時の雌ダニ由来の卵巣 をそれぞれ組織切片で卵母細胞発達過程を観察した。 研究成果の 概要 研究成果の 発表 マ ダ ニ の 卵 母 細 胞 の 発 達 の 過 程 に お い て は Vg の 取 り 込 み が 伴 い 、 一 方 で本種に媒介されるバベシア原虫は卵母細胞へ移行(介卵伝播)すること から、卵母細胞発達過程を詳細に観察することによって、病原体媒介機構 のメカニズムを解明するための基礎的な知見をも得られると期待される。 さらに、これまでにも交尾以降、経時・経日的な精子の動態は観察され ており、卵巣腔において精子の上走は確認されているものの、明らかな受 精を証明する結果は得られておらず、未だ受精の場およびタイミングは解 明されていない。その理由の一つとして、哺乳類の生殖系とはもちろん、 同じ節足動物で卵殻が形成される昆虫と比較しても、受精のための卵門が 確認されていないことなど、大きな違いが存在するからであろう。そのた め、卵母細胞の成熟過程を基に、雌ダニ卵巣・卵管内の精子の動態をより 詳細に光顕・電顕レベルで検証することでマダニの受精のメカニズム解明 を目指す。これらの成果は将来的にトランスジェニックマダニ作出へ応用 可能な研究手法の開発にも繋がると考えられ、本共同研究の成果はマダニ 防除を目指す意義だけでなく、将来的な科学技術の発展へも寄与できるも のと考える。
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