平成26年度学長裁量経費研究推進支援プロジェクト研究成果報告書 1.研究の概要 プロジェクト 名 障害児・者の情動把握における生理学的評価の活用に関する研究 プロジェクト 期間 平成26年度 申請代表者 (所属講座等) 深澤美華恵 共同研究者 (特別支援教育講座) (所属講座等) 本研究では対象者の情動を生理学的指標を用いて客観的・定量的に評価し、重症心身障害者 を対象とした療育活動における活用を検討することを目的として、唾液中の生体物質である 唾液バイオマーカーに観察される生体変化を調査した。 調査では、療育活動のスケジュールにしたがい、活動中の生体情報の収集を行った。収集 した生体情報は、唾液アミラーゼ活性値と、アミラーゼ活性値測定時の心拍数および酸素飽 取組方法・取 和度であった。これらの 3 つの生体情報を計 3 回の療育活動にて収集し、活動内容と経時的 組実績の概要 変化および活動内容や活動時の対象者の様子との関連を検討した。 今回測定対象とした療育活動は重症心身障害の方の余暇の充実を目的として行っているた め、それぞれの活動ごとに主たる内容は異なる。したがって、それぞれの活動の中で対象者 がどのような生体変化をしたのかを明らかにし、対象者の表出からは把握が困難な情動等の 心理的な情報を生体変化より解釈することで、活動の反省として活用することを検討した。 研究成果の 概要 本研究では、重症心身障害児の療育活動に際して、活動のスケジュールにしたがい生体情報 を収集し、生体情報と療育活動中の対象者の様子や活動内容などの質的な情報とを照らし合わ せ、生体情報の解釈を行った。本研究では収集した唾液バイオマーカーは、唾液に含まれる消 化酵素である唾液アミラーゼ活性値である。唾液アミラーゼはその酵素活性を交感神経系の制 御を受けるとされるため、唾液アミラーゼ活性値には交感神経系の活動が反映される。さらに、 心拍数及び酸素飽和度も同時に測定し、それらの療育活動中の経時的な変化を明らかにした。 その結果、唾液アミラーゼ活性値の変動は、心拍数や酸素飽和度よりも大きいことが明らか になった。特に療育活動の中核的な内容を行うときに唾液アミラーゼ活性値の変動は大きく、 心拍数や酸素飽和度に比べて指標としての鋭敏性が高いことが推測された。 また、唾液アミラーゼ活性値が上昇を示した活動では、対象者が表出した行動(笑顔や発声) の多さや筋緊張の高さがみとめられ、唾液アミラーゼ活性値は対象者の覚醒の高さを反映して いたとの解釈が妥当であることが推測された。その一方で、活動前に支援者が対象者の覚醒が 低いと判断していた時点でも唾液アミラーゼ活性値は上昇傾向を示していた。このことから、 情動や言語の表出等に困難がある、もしくは行動等に現れる以前の情動変化について唾液アミ ラーゼ活性値は鋭敏に反映した可能性が考えられる。これらの結果から、支援や指導の実践応 用においては、行動表出からはとらえられないような支援者や指導者の働きかけの効果を唾液 アミラーゼ活性値を用いて評価しうる可能性が示唆された。 今後は活動に際する支援者の働きかけや対象者の様子について、より詳細な情報を収集し、 その分析および生体情報との関連を明らかにすることで、唾液アミラーゼ活性値に観察される 変化の妥当な解釈を模索することが課題として挙げられる。 外部資金獲得申請及び研究成果の公表方法等について〔□(該当事項)にチェック方願います。 〕 ■科学研究費補助金 外部資金獲得 □受託研究費 申請(予定) □その他 ( ) 研究成果の ■学会( 国内 ・ 国外 ) : 公表方法 □新聞・図書・雑誌論文等: (予定) □その他:
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