(様式1-3) 受理年月日 受理番号 帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究報告書 平成27年5月20日 採択番号26-共同-6 感染免疫研究部門 研究部門 原虫病研究センター 内共同研究担当教員 組 換 えフェリチンを用 いた抗 マダニワクチンの開 発 研究課題名 (ふりがな) 研究代表者 白藤梨可 氏 (た な か て つ 田 仲 所属部局等・職名 名 哲 や) 也 (れ み る り ん ぐ が と ん が ら い ) 鹿児島大学 山口大学 共同獣医学部・准教授 大学院連合獣医学研究科・4 年 Remil Linggatong Galay 研究分担者 研究期間 平成26年4月1日 ~ 平成27年度3月31日 マダニ体内は吸血する際に血液に含まれる大量の鉄分子に暴露されること が 予 想 さ れ る 。鉄 分 子 は マ ダ ニ の 生 命 恒 常 維 持 に お い て 不 可 欠 で あ る が 、時 に は 鉄 分 子 の 過 剰 摂 取 は マ ダ ニ に と っ て 有 毒 に な る こ と も 考 え ら れ る 。研 究 代 表 者らはフタトゲチマダニが 2 種類の鉄結合性タンパク質である細胞内型フェ 目的・趣旨 リ チ ン 1 と 分 泌 型 フ ェ リ チ ン 2 を 持 ち 、こ れ ら が 吸 血 や 産 卵 、鉄 分 子 由 来 の 酸 化 ス ト レ ス に 対 し て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と を 見 出 し た 。そ こ で 研 究 代 表 者 ら は 、大 腸 菌 で 発 現 さ せ た 組 換 え フ ェ リ チ ン を ウ サ ギ に 免 疫 す る こ と に よ っ て 、マ ダ ニ フ ェ リ チ ン を 標 的 と し た 抗 マ ダ ニ ワ ク チ ン と し て の 可 能 性 を 検 討 す ることを本共同研究の主要目的とした。 マ ダ ニ は 病 原 微 生 物 を 媒 介 す る 吸 血 性 の 外 部 寄 生 虫 で あ り 、マ ダ ニ 体 内 は 吸 血 す る 際 に 血 液 に 含 ま れ る 大 量 の 鉄 分 子 に 暴 露 さ れ る こ と が 予 想 さ れ る 。鉄 分 子 は マ ダ ニ の 生 命 恒 常 維 持 に お い て 不 可 欠 で あ る が 、時 に は 鉄 分 子 の 過 剰 摂 取 は マ ダ ニ に と っ て 有 毒 に な る こ と も 考 え ら れ る 。し か し 、マ ダ ニ 体 内 に お け る 鉄 代 謝 の メ カ ニ ズ ム に つ い て は 完 全 に 明 ら か に な っ て い な い 。そ こ で 、研 究 代 研究経過の 概要 表者らはフタトゲチマダニを用いて鉄代謝を制御することが予想される分泌 型 フ ェ リ チ ン 2 を 新 規 に 同 定 し 、す で に 同 定 さ れ て い る 細 胞 内 型 フ ェ リ チ ン 1 と そ れ ら の 特 性 に つ い て 比 較 し 、フ ェ リ チ ン の 鉄 代 謝 に お け る 役 割 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。そ の 結 果 、マ ダ ニ の 鉄 代 謝 に と っ て 、フ ェ リ チ ン が マ ダ ニ の 生 命 恒 常 維 持 に お い て 不 可 欠 な 分 子 で あ る こ と が 示 さ れ た た め 、フ ェ リ チ ン を 抗 マ ダニワクチンの標的抗原の候補とした。 (様式1-3) 受理年月日 受理番号 抗 マ ダ ニ ワ ク チ ン 実 験 で は 、大 腸 菌 で 発 現 し た 組 換 え フ ェ リ チ ン が 高 い 免 疫 原 性 を 示 し た 。そ こ で フ ェ リ チ ン 免 疫 群 に マ ダ ニ を 吸 血 さ せ た と こ ろ 、マ ダ ニ の 飽 血 体 重 が 顕 著 に 減 少 し 、産 卵 数 と 幼 ダ ニ の 孵 化 率 が 低 下 し た 。特 に 分 泌 型 フ ェ リ チ ン 2 免 疫 群 が 顕 著 で あ っ た 。ま た 、組 換 え フ ェ リ チ ン 2 免 疫 群 を 吸 血 さ せ た マ ダ ニ の 卵 で は 形 態 の 異 常 が 観 察 さ れ た 。こ れ ら の 現 象 は 、組 換 え フ ェ リチン免疫群を吸血させたマダニの卵と幼ダニでは過酸化脂質とタンパク質 酸 化 の 酸 化 ス ト レ ス が 起 こ り 、こ れ は 抗 体 が フ ェ リ チ ン 2 の 機 能 を 阻 害 し た こ 研究成果の 概要 と に よ っ て 生 じ た 現 象 と 思 わ れ る 。以 上 の 結 果 か ら 、分 泌 型 フ ェ リ チ ン 2 が フ タトゲチマダニの抗マダニワクチンの候補抗原として有用であることが示さ れ た (Galay et al., Parasit. Vectors, 2014) 。 以 上 を ま と め る と 、細 胞 内 型 フ ェ リ チ ン 1 と 分 泌 型 フ ェ リ チ ン 2 が フ タ ト ゲ チ マ ダ ニ の 吸 血 中 の 酸 化 ス ト レ ス を 防 ぎ 、鉄 運 搬 に お い て 必 須 の 分 子 で あ る こ と が 分 か っ た 。す な わ ち 、細 胞 内 型 フ ェ リ チ ン 1 は 抗 酸 化 分 子 と し て 鉄 分 子 を 保 持 す る 機 構 で 細 胞 を 保 護 し 、一 方 で 分 泌 型 フ ェ リ チ ン 2 は マ ダ ニ 体 内 で 鉄 分 子 輸 送 と 抗 酸 化 分 子 と し て 作 用 す る こ と が 示 唆 さ れ た (Galay et al., Parasit. Int., 2015)。 (学 会 発 表 ) ガ ラ イ レ ミ ル リ ン グ ガ ト ン , 宮 田 健 , 白 藤 (梅 宮 )梨 可 , 前 田 大 輝 , 草 木 迫 浩 大, 望月雅美, 藤崎幸蔵, 田仲哲也 , 組換えフェリチンのフタトゲチマダニに 対 す る 抗 マ ダ ニ ワ ク チ ン と し て の 可 能 性 , 第 83 回 日 本 寄 生 虫 学 会 大 会 , 2014 年 3 月 (愛 媛 ). Galay Remil Linggatong, Umemiya-Shirafuji Rika, Maeda Hiroki, Kusakisako Kodai, Mochizuki Masami, Fujisaki Kozo, Tanaka Tetsuya , The iron-storage and antioxidant functions of two types of ferritin are critical to successful blood feeding and reproduction of the ixodid tick Haemaphysalis longicornis, The XIIIth International Congress of Parasitology, 2014 年 8 月 (メ キ シ コ ). 研究成果の 発表 Remil Linggatong Galay, Takeshi Miyata, Rika Umemiya-Shirafuji, Hiroki Maeda, Kodai Kusakisako, Masami Mochizuki, Kozo Fujisaki, Tetsuya Tanaka , The potential of recombinant ferritin 1 and ferritin 2 as anti-tick vaccine against Haemaphysalis longicornis, TTP8: Ticks and Tick-Borne Pathogens, 2014 年 8 月 (南 ア フ リ カ 共 和 国 ). Galay Remil Linggatong, 白 藤 (梅 宮 )梨 可 , 宮 田 健 , 草 木 迫 浩 大 , 前 田 大 輝 , 望 月 雅 美 , 藤 崎 幸 蔵 , 田 仲 哲 也 , The critical functions of ferritins in Haemaphysalis longicornis and their potential as target molecules for tick control, 第 157 回 日 本 獣 医 学 会 学 術 集 会 , 2014 年 9 月 (北 海 道 ). (論 文 ) Galay, R. L., Miyata, T., Umemiya-Shirafuji, R., Maeda, H., Kusakisako, K., Tsuji, N., Mochizuki, M., Fujisaki, K. and Tanaka, T ., Evaluation and comparison of the potential of two ferritins as anti-tick vaccines against Haemaphysalis longicornis, Parasit. Vectors, 7 (1), 482 (2014). Galay, R. L., Umemiya-Shirafuji, R., Mochizuki, M., Fujisaki, K. and Tanaka, T ., Iron metabolism in hard ticks (Acari: Ixodidae): The antidote to their toxic diet, Parasit. Int., 64 (2), 182-189 (2015). (様式1-3) 受理年月日 受理番号
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