越水 重臣 - 公立大学法人首都大学東京 産学公連携センター

005 機械・製造技術
越水 重臣
産業技術大学院大学 産業技術研究科 創造技術専攻
http://aiit.ac.jp/master_program/ide/professor/s_koshimizu.html
「着座認証」、新たな生体認証システム
研究テーマ
【キーワード】 精密機械、精密加工、品質工学、信頼性・安全性
個人の着座データからマハラノビス距離を算出
研究概要
世の中に対して新しい価値や
イノベーティブなモノを提案
専門は機械工学である。企業勤務時代は高速文
書スキャナやデジタルカメラの開発、設計をして
いた。その後、前職の静岡理工科大学でナノメー
トルの分解能を実現する超精密位置決め技術の研
究や同技術を工作機械に搭載しての超精密切削技
術の研究で学位を得た。
本学へ赴任後は、世の中に対して新しい価値や
イノベーティブなモノを提案することを意識しな
がら、本学の特徴であるプロジェクト・ベースド・
ラーニング(PBL)教育を学生へ提供する中で、個
別具体的な研究テーマを設定しており、対象分野
も機械工学分野を超えて幅広く対応している。
その一つ、
「着座認証システム」をここでは紹介
したい。2014 年に「個人認証装置および個人認
証システム」
(特許 5610439)として登録されて
いる。きっかけは4年前、利用者にストレスをか
けない新たな生体認証技術の開発を PBL のテーマ
に掲げたことだ。生体的特徴に基づく認証は指紋、
静脈、光彩、顔などを使った技術が知られている
が、お尻を使った認証技術は前例が無く、発表す
ると社会的な注目を浴びた。自動車の運転席に活
用すれば、本人認証の手段に使え、盗難防止など
様々な機能を提供できる。
今後の展望
認証の方法を簡単に言えば、人の体型や癖に
よって生ずる着座面の状態の違いを利用したもの
だ。まず座面に設置したシート状の圧力センサ(セ
ンサ素子数=18×20 個)を使って、人が着座する
際にかかる圧力を計測し、圧力の強弱、その分布
や平均値、圧力がかかる部分の面積等、39 種類の
特徴量を計測する。次にそれら計測値の相関関係
を考慮した多次元空間の距離である「マハラノビ
ス距離」という特殊な数値に置き換えて記憶装置
に登録させる。二回目以降の着座時に新たなマハ
ラノビス距離を算出し、その値が一定のしきい値
内に入るか否かで本人か他人かを識別する。
実際に実験すると、一定の割合で本人拒否をす
る場合や他人を本人と間違って受け入れてしまう
場合が生ずる。そこで、特徴量の抽出やしきい値
の設定を工夫することで、最終的には、本人排斥
率は完璧になり、他人受入率はわずかだが残り、
認証成功率は約 99%を達成した。
当研究室ではこの他、人間の脳から発せられる
α波(リラックス状態)とβ波(集中状態)の関係
がどういう音楽の種類を聞いた時に、どう変化す
るのかを研究した結果、個人個々の脳波や気分に
最もマッチした音楽を選択もしくはレコメンドで
きるシステムを開発。これは「感性選曲プロジェ
クト」として産学連携により商用化への動きが始
まっている。
こし みず
しげ おみ
越水 重臣 教授
1987 年慶応義塾大学理工学
部機械工学科卒、1989 年慶
応義塾大学大学院理工学研
究科修士課程修了、1989 年
イーストマン・コダック(ジャ
パ ン)
(株)入 社、1994 年 静
岡理工科大学機械工学科助
手、2001 年 講 師、2003 年 助
教授、2008 年産業技術大学
院大学准教授、2014 年教授、
現在に至る。博士(工学)
。
産学公連携は積極的に対応したい
現在、道路舗装を行う企業と共同で、スマートフォンに内蔵
された加速度センサを利用して、道路を車両で走行した際の揺
れ状態を簡易計測し、得られたデータを解析することで、快適
な道路、不快な道路を分類し、快適な走行コースをレコメンド
するシステムの開発を行っている。今後も産学公連携は積極的
に対応して行きたい。
産業界や自治体の課題
のうちで、適用可能な例
圧力センサ付き椅子を使った実験風景(左)と
圧力センサによる着座面の二次元データ画像
自動車やオフィスなどでの着座による本人確認、認証サービス、セキュリティーシステム、等
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