在宅での心疾患症例に対するアプローチ方法について -簡便に得られる評価法を用いたリスク管理の一考察- 相澤病院訪問リハビリテーションセンター 理学療法士 荻原峻平 【はじめに】心疾患を有する症例の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は、心機能に関 する情報が不十分であり、適切な運動負荷量や生活指導が困難との報告を散見する。今回、ガイ ドラインを基に介入した結果、運動耐容能改善に至った症例を経験した。十分な医学管理が難し い訪問リハ現場におけるリスク管理について考察を踏まえ報告する。本発表は事例に同意を得て おり、倫理的配慮を行った。 【症例紹介】80 歳代、男性。平成 10 年に心筋梗塞を発症しステント治療、平成 17 年に 3 枝病変 に対して冠動脈バイパス術を施行。平成 24 年 3 月からは、在宅酸素も導入。趣味である農作業に 取り組んでいたが、心不全症状が出現後より徐々に活動量が低下し臥床傾向。日常生活等に介助 が必要な状態となり、家族の支援方法と運動耐容能改善を目的に、平成 26 年 8 月より訪問リハが 介入。 【経過および結果】介入時、屋内の移動で息切れが顕著にみられ、血圧低下、心拍数上昇などを 認めていた。心機能に関する詳細な情報が得られなかったが、訪問リハは主治医の了解を得て、 ガイドラインに準じ、運動負荷時の自覚症状とバイタルサイン、家族に依頼したモニタリング(血 圧や脈拍、体重、尿量等)情報を基に運動時の循環動態の管理を行いながら、運動耐容能の改善 を目的とした運動療法と生活指導を開始した。運動療法では、身体機能を考慮し低強度の運動負 荷から開始し、ガイドラインの運動処方、中止基準に準じて運動強度を設定した。安全に実施可 能な運動を本人・家族に対して指導した。生活指導では、モニタリングに対するフィードバック や家族に訪問リハ同席を促し運動負荷による身体所見の変化等を一緒に確認してもらい、ガイド ラインに準じ本人・家族に対して指導を行った。結果、歩行後のバイタルサインに著変なく、安 楽に行えるようになり、食後の離床時間の延長などといった生活を獲得。患者・家族の病状理解 も進み、モニタリング情報から活動量等のセルフコントロールが可能となった。 【考察】本症例は、長期臥床に伴う骨格筋機能低下、運動耐容能低下を認めているため、容易に 過度な運動強度に達する危険性があった。ガイドラインを用いて運動処方を行い、安全な運動強 度で運動療法を実施したことや、介入後のモニタリングの結果を基に段階的に運動強度を増加し た事が骨格筋機能改善に至った要因であると考える。また、ガイドラインでは、週 3 回以上等の 介入で最も安定した効果が得られるとの報告があるが、訪問リハビリは週 1 回の介入のため、家 族に対して運動時の注意点等を指導し、安全に運動が毎日継続出来たことが運動耐容能改善に繋 がったと考える。医学的管理下で訪問リハを実施するのは難しい状況にあるが、在宅でも簡便に 得られる指標から循環動態について分析し、ガイドラインに沿ったアプローチを展開することは リスク管理の指標になると考えられた。
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