演題番号 168 自宅退院後、引きこもりがちな生活から役割や

演題番号 168
自宅退院後、引きこもりがちな生活から役割や趣味の獲得で 活動量の向上と生活範囲の拡大に
繋がった症例
〇 花岡 瑞枝 1) 1) 相澤病院訪問リハビリテーションセンター
【はじめに】
自宅退院後、生活範囲の制限と再発による身体機能低下から活動に対して意欲低下があり、 引
きこもりがちな生活をしていた症例に対して、段階的に役割と趣味の獲得を図り、生活範囲が 拡
大した経過を振り返り報告する。
【症例紹介】
70 歳代。男性。X-1 年 11 月右中大脳動脈領域アテローム血栓性脳梗塞発症。X 年 2 月再発。
注 意機能低下、軽度左片麻痺残存。X 年 7 月右被殻・尾状核~放線冠梗塞発症。左不全片麻
痺、 注意障害、左半側空間無視あり約 1 か月入院し自宅退院。病前は日中妻と過ごしマレットゴ
ルフ や買い物をする機会が多かった。今回、注意機能改善と「妻と自転車でマレットゴルフに行き
た い」と希望があり訪問リハビリテーション開始となる。
【経過】
〈介入時〉「妻と自転車でマレットゴルフに行きたい」と聞かれたが注意障害が残存、主治医より 屋
外歩行は見守り、自転車は運転禁止と指示あり。また、再発で「前より指が動かないからやる 気が
しない」と身体機能の低下から活動に対し意欲低下があり更に家に引きこもりがちになっ た。
〈1 期:‘妻と’に気づき役割を獲得〉屋内は自立していた為、まず家庭内の活動にアプローチを 開
始。初め活動に消極的だったが、「妻の掃除を手伝った」など妻と行う活動には積極的である 事に
気づき妻と行える家事を提案。適宜作業療法士がフィードバックを行い家庭内の役割の獲 得に努
めた。出来る事が増えると自信に繋がり、2 人で家事や外出機会が増えた。〈2 期:屋外歩行自立の
獲得〉外出機会が増え、「1 人で歩いてみたい」と活動に目が向き始めた。 その為「家周りを 1 人で
歩ける」次に「公民館、公園まで歩ける」と行動範囲に段階を付け目標を 設定。注意障害に有効と
されている、注意事項を言語化した代償的アプローチの反復訓練を実 施。訪問リハ以外で妻と散
歩の際も同様に実施した。結果、行動範囲の制限内で屋外歩行自立 を獲得、町内の会合に参加
できる様になった。 〈3 期:三輪車運転の獲得〉屋外歩行が自立し「妻と自転車でマレットゴルフに
参加したい」と当 初の目標が聞かれた。注意機能検査で改善が見られた為、自転車は二輪より均
衡が取り易い 三輪車を提案、屋外歩行同様、行動範囲の段階付けと注意障害に代償的アプロー
チを開始。結 果、三輪車が自立し活動範囲が更に広がりゴミ捨等自発的に家事手伝いをし、妻と
マレットゴル フに定期的に行け訪問リハ終了となった。
【考察】
本症例の意欲低下に対し、目標を段階付けし達成し易くした事で、自信が付き活動や参加面へ 目
を向けられる様になった。また、役割や趣味を持つことの重要性は先行研究で報告されている が、
ただ役割を得る・趣味を獲得するのでなく‘妻’の為に‘妻’と一緒にという事に気づき、病前 より行
っていた活動をヒントに妻と行える事を提案した事が更に本人の意欲を向上させ家事や屋 外活動
へ繋がったと思われる。