A case of pneumatosis cystoides intestinalis attributed to the α-glucosidase inhibitor 【はじめに】 【症例】 70歳代 女性 腸管嚢胞様気腫症(PCI)は、腸管壁の粘膜下 あるいは漿膜下にガスで満たされた嚢胞(気 腫)が多発性に形成される稀な病態である。今 回、α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)が原因と 考えられるPCIの一例を経験したので報告する。 既往歴: 右変形性膝関節症、自己免疫性貧血(ステロイド剤内服) 糖尿病、狭心症 現病歴: X年8月 前胸部痛により下壁梗塞疑いにて入院し、保存的加 療。 経過中にヘモグロビン6.3と急速な貧血進行あり、自己免疫 性貧血と診断、加療された。 X年10月 入院経過中、右膝痛出現し歩行困難となった。 右下肢腫脹著明、筋層内ガス像あり、CRP24.6よりガス壊 疽と診断され、右大腿切断術施行。その後右大腿断端形成 術施行。 X年+1年1月 リハビリ目的にて当院転院。 【経過】 19 Day PCI発症 PCI軽快 30 40 50 経口血糖降下薬 グリメピリド2mg シタグリプチン50mg グリメピリド1mg シタグリプチン50mg ピオグリタゾン30mg 内服 中止 ボグリボース0.9mg ピオグリタゾン30mg 輸液内インスリン量 21単位 インスリン 持続型インスリン 8単位/日 中止 持続型インスリン 4単位/日 18 速効型インスリン(単位/日) 血糖値の推移 10 10 6 8 150~350 12 16 150~250 6 14 180~400 150~300 【PCIの診断と治療】 治療 開始 10日間 経口糖尿病薬の中止、O2投与、維持輸液、GFO(グルタミン・ファイバー・オリゴ糖)療法 発症時(Day30) 発症時(Day37) ・便秘(+)→(-) (不消化便あり) ・下腹部の違和感(+) ・腸蠕動運動 微弱 ・腹部膨満(+) ・嘔吐(+) ・炎症所見(-) ・腸管壁内 free air (+) ・便秘(±) ・下腹部の違和感(±) ・腸蠕動運動 微弱~良 ・腹部膨満(±) ・嘔吐(-) ・炎症所見(-) 【考察】 経過よりα-GIの投与開始から中止に沿ってPCIの発 症、軽快が見られたこと、検査データのCRP上昇や 変動が見られないことより、今回のPCIの発症はαGIの関与が有力と考える。 治療 終了 発症時(Day40) ・腸管壁内 free air (-) ・便秘(±) ・下腹部の違和感(-) ・腸蠕動運動 良 ・腹部膨満(-) ・嘔吐(-) ・炎症所見(-) 【まとめ】 本症例は、糖尿病治療薬であるα-GIが原因であることを示唆す るものである。その機序は、糖尿病に伴う自律神経障害により腸 蠕動運動が低下した状態に、α-GIが加わることで腸管内圧が上 昇することや、吸収が抑えられた糖類が大腸内の細菌により分解 されガス発生が増えることが考えられている。 今回の症例より、消化器症状を有し、炎症反応なく、画像検査 からPCIが疑われる場合には、α-GIによることを念頭に治療を行 うことが推奨される。
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