PDFファイル - 青空学園数学科

確率の基本
青空学園数学科
2015 年 10 月 5 日
近年,確率の苦手な人が増えた.確率の問題を,正しいのか間違っているのかよくわからないま
まに解いているところがある.すべての事象の確率の和が 1 ということ以外には,解答を検算する
方法がなく,答えに確信が持てない人も多い.確率は,高校数学の中では現実との接点をもつ数少
ない分野で,問題文を読んで,試行の意味を読み取る力が必要である.
高校の確率は,2015 年の現在,数学 A と数学 B に分かれている.数学 A の確率を考えるとき
も,数学 B の確率をふまえる方がわかりやすいのだが,数学 B の方は入試範囲からは外れること
が多く,学ぶ機会も少ない.そのため,双方の基本を理解してはじめて簡明に理解できることが,
なしえない.
これは教科内容の割り振りの問題で,旧課程の時代から少しも改善されていない.教育課程と教
科書の責任も大きい.これではいつまでたっても「確率が苦手」を克服することができない.
確率論は数学の理論として明確である.理想化した試行のモデルにこの理論を適用する.そし
て,この理想化が適切であるかどうかは,統計学が判断する.
高校教科書は,これを踏まえたものでなければならない.しかし,実際には感覚的で直感的な記
述に終始している.そのために,自分で考える高校生には,かえって曖昧でわかりにくいものと
なっている.
だが,教科書の様々の不備を,自分の力で乗り越えることこそ,高校生のほんとうの勉強だ.そ
れで,その一助にと,学校での確率を少しは習ったことを前提に,数学 A とか B とかの壁を取り
払い,確率論の骨格がつかめるように,ごく基本をまとめた.
なお,■∼■の部分は教科書範囲をやや越えるところであり,最初は飛ばしてもよいが,順次理
解してほしい.
1
目次
1
確率論の始まり
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
3
4
確率の基礎
2.1 言葉の定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
6
2.2
2.3
確率とは何か . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
余事象,和事象 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
9
2.4
根元事象の確率が等しいとき . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
1.1
1.2
2
3
4
5
同様に確からしい . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
確率は賭け事の理論
確率分布
12
3.1
3.2
3.3
確率変数と確率分布
分配問題を解く . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
12
13
3.4
和の期待値
14
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
期待値の定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
条件付確率
16
4.1
4.2
条件付確率
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
16
18
4.3
確率変数の独立 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
18
事象の独立
教科書との関係
19
独立な試行
19
23
5.1
5.2
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
反復試行の確率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
連続な確率
24
7
解答
27
7.1
7.2
確認問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
演習問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
27
31
確率論の始まり
1
同様に確からしい
1.1
確率とは何か.その基本が分からなければいつまでも苦手である.また,確率問題では,事象の
確率をどのように定めるのか,あるいは「何が同様に確からしいのか」を定めるのか,それが指示
されず,そこを常識の範囲で考えなければならないこともあり,そこにも難しさがある.次の例を
考えよう.
例1
区別のつかない硬貨を 2 枚同時に投げる.2 枚の表裏が一致する確率を求めよ.
解答 硬貨が区別されないので試行の結果は (表,表),(表,裏),(裏,裏) の 3 通りある.このう
2
ち 2 枚の表裏が一致する場合は 2 通り.よって求める確率は .
3
この解答は正しくない.では,なぜ正しくないのか,指摘できるだろうか.
上の例の計算では,該当する出方の総数を,すべての出方の場合の数で割っている.つまり,
「区
別がないのだから (表,表),(表,裏),(裏,裏) の 3 通りは起こる確率は等しい」と勝手にして
いる.
1
である.よって 1 枚目の硬貨が
2
表裏か,2 枚目の硬貨が表裏かを区別しなければならない.(1 枚目,2 枚目) の出方は
1 枚の硬貨が表であるか裏であるかが同様に確かで,各確率は
(表,表),(表,裏),(裏,表),(裏,裏)
の 4 通りある.これらが同様に確かとなる.このうち 2 枚の表裏が一致する場合は 2 通り.よって
2
求める確率は としなければならない.
4
(表,表),(表,裏),(裏,表),(裏,裏) の 4 通りが同様に確かである根拠は何か.それは
(i) 1 枚の硬貨を投げたときに,表がでるか裏がでるかが同様に確からしい.
(ii) 2 枚の硬貨を投げる試行で,各々の硬貨についての事象は互いに影響しない.
1
.1 枚目
2
が表であれ,裏であれ,2 枚目が表になるか裏になるかは,同様に確かである.すると 2 枚の硬貨
を投げるなら,それぞれの硬貨の表裏の組合せ,
「(表,表),(表,裏),(裏,表),(裏,裏)」の 4 通
1
りが同様に確からしい.事象の総数が 4 であるから,各確率はそれぞれ である.ここまで考え
4
れば,納得がいく.
この方面で間違いやすい問題を紹介する.次の問題の (4) を注意して解いてみよう.
ということである.つまり 1 枚の硬貨について表が出る確率,裏が出る確率がそれぞれ
問題 1
[2000 年長崎総合科学大学] 解答 1
12 人の人がボールを 1 個ずつ持っていて,順番に A,B,C の箱のいずれかに入れていくもの
とする.このとき,次の各問いに答えよ.ただし,同名の人はなく,空の箱があってもよいものと
する.
(1) ボールに自分の名前を書いて箱に入れていく場合,ボールの入り方は何通りあるか.
(2) ボールに自分の名前を書いて箱に入れていく場合,A にちょうど 8 個のボールが入る入り方
は何通りあるか.
3
(3) ボールに名前を書かずに箱に入れていく場合,A,B,C の箱に入ったボールの個数の組み
合わせは何通りあるか.
(4) ボールに名前を書かずに箱に入れていく場合,8 個以上のボールが入る箱がある確率を求めよ.
確率は賭け事の理論
1.2
このような問題をその根拠から考えるために,改めて,確率について,基本から考えよう.
「同様に確からしい」ということを考えたのは,もともとは賭け事にはじまる.人間は昔から賭
け事が大好きだ.サイコロは,紀元前 3500 年頃,エジプトの第一王朝の時代の遺跡から発掘され
ている.そのころは動物のかかとの骨で作ったもので,1,3,4,6 のものが使われていた.壁画
にも残っている.もともと賭は占いと一体で,このサイコロは賭け事にも占いにも使われていたら
しい.
長い間,賭は勘と経験で行われてきた.最初に「確率」を考えたのはイタリアのカルダノ(Hi-
eronimo Cardano,1501∼1576)だ.この人はルネサンス期の人で,3 次方程式,4 次方程式の解の
公式を最初に発見したことで知られているが,本職は賭博師ではなかったかといわれている.
『サ
イコロ遊びについて』などいくつかの書物があるが,ようするにサイコロ賭博の手引き書だった.
彼は「確からしさ (favourable)」という考え方をつかんでいた.
サイコロを 2 つ投げて,その目の和に賭けるとすれば,いくつに賭けるのがいちばん有利か,と
いった問題に解答を出している.彼は
目の和が 2 であるのは
(1, 1)
の 1 通り
目の和が 3 であるのは
(1, 2) (2, 1)
(1, 3) (2, 2) (3, 1)
(1, 4) (2, 3) (3, 2) (4, 1)
の 2 通り
(1, 5) (2, 4) (3, 3) (4, 2) (5, 1)
(1, 6) (2, 5) (3, 4) (4, 3) (5, 2) (6, 1)
の 5 通り
(2, 6) (3, 5) (4, 4) (5, 3) (6, 2)
(3, 6) (4, 5) (5, 4) (6, 3)
(4, 6) (5, 5) (6, 4)
の 5 通り
(5, 6) (6, 5)
(6, 6)
の 2 通り
目の和が 4 であるのは
目の和が 5 であるのは
目の和が 6 であるのは
目の和が 7 であるのは
目の和が 8 であるのは
目の和が 9 であるのは
目の和が 10 であるのは
目の和が 11 であるのは
目の和が 12 であるのは
の 3 通り
の 4 通り
の 6 通り
の 4 通り
の 3 通り
の 1 通り
とすべての場合を書きあげ,7 に賭けるのがいちばん有利だと結論を出してる.
次に登場するのはあのガリレオ(Galileo Galelei,1564∼1642)だ.彼はあるとき親しい賭博師
から相談を受けた.科学者とか数学者は賭博の相談役だったのだ.
3 つのサイコロを同時に投げ,その目の和に賭けるとき,目の和が 9 になるのは
(1, 2, 6) (1, 3, 5) (1, 4, 4) (2, 2, 5) (2, 3, 4) (3, 3, 3)
の 6 通りだ.目の和が 10 になるのも
(1, 3, 6) (1, 4, 5) (2, 2, 6) (2, 3, 5) (2, 4, 4) (3, 3, 4)
の 6 通りだ.しかし多くの勝負をしてきた経験からするとどうも 10 に賭けるほうが,
ほんの少しだが有利なようだ.これはなぜなのか.
4
硬貨の場合と同様に,
(i) 一つ一つのサイコロでどの目が出るかは同様に確からしい.
(ii) また,3 つのサイコロの結果は互いに影響しあわない.
とする.すると硬貨の場合と同様に,3 つのサイコロを区別して考えなければならず,すべての目
の出方は 63 = 216 通りとなり,この一つ一つが同様に確からしい.このとき,3 つの目が (1, 3, 6)
となるのは,この並べ方だけあり,6 通り.3 つの目が (2, 2, 5) となるのは,この並べ方だけあり,
6
3
3 通り.だからそれぞれの目の組合せが起きる確率は
と
になる.つまり,これらは同様
216
216
に確からしくはない.目の和が 9 になる確率は
6+6+3+3+6+1
25
=
216
216
であり,それに対して目の和が 10 になる確率は
27
6+6+3+6+3+3
=
216
216
である.
組合せも順列もない時代,やはりガリレオはあらゆる場合を書き出してこのことを説明してい
る.これを経験から見抜いた賭博師も偉い!
しかしこれを説明したガリレオはもっと偉い.
確率論はさらに,パスカル(Blaise Pascal,1623∼1662)とフェルマ(Pierre de Fermat,1601∼
1665)で発展する.この 2 人の往復書簡には,高校生が勉強する確率のほとんどすべてが出てくる.
例2
今,A と B が互いに 32 円ずつ出して勝負している.互いの実力は同じである.1 回勝つ
と 1 点もらえて,先に 3 点獲得した方が優勝し賭金 64 円をもらう.A が 2 点獲得し B が 1 点獲得
しているときに,やむを得ない事情で勝負を中止しなければならなくなった.64 円をどのように
分配すべきか.
これは「分配の問題」といわれる.ここで「期待値」の考え方がふくらんでいる.後でこの解答
も考えよう.
パスカルはこれらの研究を完全な論文にまとめようとする意図をもっていたらしい.後にパリ科
学アカデミーとなる機関にあてた 1654 年の書簡の中で,次のように述べている.
正当に競い合っている演技者双方に,不確定な未来がつねに正確に配当されるよう
にするための,理にかなった計算は,うまくできませんでした.
確かに,偶然の推理を探究すればするほど,調べてわかることはほんのちょっぴりし
かありません.あいまいさ,例えばくじ引きという事象は,必然性よりむしろ全く偶然
性に左右されることが自然なのでして,それによって報酬が分配されるのであります.
それゆえ,いままではそのような事柄は不確かなものだとしてきました.しかし,い
ま経験にさからってまでも偶然を支配している論拠をはっきりとさせたいと存じます.
もち論,そのようなことを幾何学的方法(数学的方法ということ)によって学問的
な保証をとりつけ,確実性がこの種の偶然性にも関係している事実を大胆に打ち出そ
うと思っています.
そして,数学が不確実な事象をひき起こすサイコロと結びついていることを示し,加
えて偶然と確実の相矛盾したものを統一的にとらえ,統一されたものは偶然とも確実
5
とも指名できないものでありますから,
“ サイコロの幾何学”という表題の本を手にとっ
た人はきっとびっくりするに違いないと思います.
この計画は実現せず,パスカルは 1662 年に 39 歳の若さで亡くなる.だが,この確信に満ちた文
章は確率論の宣言といってよいほどのものである.ここに確率論は誕生した.
確率の基礎
2
2.1
言葉の定義
教科書の「確率」の章は,いろんな言葉 (「試行」,「事象」,「根元事象」等々) の定義からはじ
まっている.しかしそれはあまり重視されない.教科書の書き方もていねいではない.また数学 A
と B に分かれているため中途半端である.しかしこれらの概念は,賭け事の仕組みなどを長い時
間をかけて考えることで得られた,確率的な現象を捉えるための考え方の枠組みだ.いちどじっく
りと考え確認したい.わからなければ先生に質問することを勧めたい.
これらの言葉をここでも改めて定義しよう.数学 A と B にある内容を総合してまとめると次の
ようになる.
試行
同じ条件のもとで繰りかえしおこなうことができ,その結果が確定する,実験や観測の
ような行為.
何度も,硬貨を投げる試行を繰りかえすと,統計的に,縁を下に硬貨が立って止まることはない
ことや,それぞれの硬貨の表がでる回数と裏がでる回数とは,だんだん等しくなっていくこと,等
がわかる.硬貨は動き続け,表になるか裏になるか決まらない,というようなことは,起こらない.
この経験から逆に,試行の結果は表か裏のいずれかになり,しかも表が上になるか裏が上になる
かは同様に確からしいものとする,と確率を考える前提が生まれる.
サイコロでは均質に作ってあればどの目が出るのもほぼ同じ割合になる.どの目が出るのも同様
に確からしいとする.
そして試行とは,100 円硬貨と 10 円硬貨を同時に投げるような行為のこと.その結果は「100 円
硬貨が表で 10 円硬貨が表」のように確定し記述される.
サイコロを 1 個投げる行為では,結果として 1 から 6 のうちのいずれかの目が定まるからこれも
試行である.
このように,何が同様に確かであるかを確定して,はじめて数学の問題になる.数学の問題とし
ては,その試行で何が同様に確からしいのかが明記されなければ解けない.ただこの部分が常識に
任されるときもあるので,その場合は現実にどうなるかを自分で考えなければならない.
標本空間
試行によって確定する,起こりうる結果全体の集合.
例えば上の 100 円硬貨と 10 円硬貨を投げる試行では,
「100 円硬貨表で 10 円硬貨表」を簡単の
ために (表,表) のように表すことにすると,集合 {(表,表),(表,裏),(裏,表),(裏,裏)} が標本
空間である.
事象
試行から生じる結果によって定まる事柄.事象は,そのことがらを満たす標本空間の要
素の部分集合として表される.
6
例えば 100 円硬貨と 10 円硬貨を投げる試行で,100 円硬貨が表であるという事象は,(表,表)
という結果と (表,裏) という結果の集合である.つまり,100 円硬貨が表であるという事象は集合
{(表,表),(表,裏)} と表される.
事象は標本空間の部分集合,これをしっかりとおさえること.
根元事象
試行で確定する結果の 1 つによって表される事象.つまりその事象に該当する結果
の集合がただ1つの要素からなるもの.
それは言いかえると,その試行ではより小さい集合の和集合に分割できないような事象である.
試行の結果を事象という観点から集合としてとらえたものが根元事象である.
例えば,100 円硬貨と 10 円硬貨の 2 枚の硬貨を投げる試行で,硬貨の裏表に注目した結果は,そ
れぞれの硬貨が裏か表かということである.これはこれ以上分けることができない.よって 2 枚の
硬貨を投げて起こりうる結果は (表,表),(表,裏),(裏,表),(裏,裏) の 4 つあり,それらを要
素とする 4 つの集合 {(表,表)},{(表,裏)},{(裏,表)},{(裏,裏)} が根元事象である.
それに対して 100 円硬貨が表であるという事象は,{(表,表)} ∪ {(表,裏)} と 2 つの集合の和
集合で表されたので,根元事象ではない.
全事象
試行によって確定する結果全体の集合,つまり標本空間自体によって定まる事象.
根元事象全体にわたる和集合なので全事象と言う.全事象は「全ての結果」として定まる事象で
あって,
「全ての事象」という意味ではない.
「全ての事象」は標本空間の全ての部分集合である.こ
れは「つねに起こる」という事象である.
空事象
空集合によって定まる事象.
これは「起こらない」という事象である.
以上の定義に,確率そのものはまだ現われていない.
2.2
確率とは何か
定義 1 (確率の定義)
U を試行の結果の集合,つまり標本空間とする.U の部分集合全体の
集合を B とする.これは事象の集合である.
B の要素 (つまりは 1 つの事象) に対して実数値を対応させる関数 p が次の性質を持つとき,関
数 p を確率と呼ぶ.
A, B ∈ B とする.
(1) p(A) >
=0
(2) p(U ) = 1
(3) A ∩ B = ∅ のとき p(A ∪ B) = p(A) + p(B)
これを確率の公理という.このとき標本空間 U に確率 p が定義されているという.そして,標
本空間と確率 p の組 (U, p) を確率空間という.
7
例3
サイコロを振る試行を考える.サイコロを振った結果は 1 の目から 6 の目なので
U = {1, 2, 3, 4, 5, 6}
となる.これらの部分集合の全体が B なので,
B = {{1, 2, 3, 4, 5, 6}, {1, 2, 3, 4, 5, }, · · · , {6}, ∅}
これらの総数は,6 つの結果を選ぶか選ばないかで決まるので 26 個ある.
確率の定義の (2) と (3) より
1 = p({1, 2, 3, 4, 5, 6}) = p({1}) + · · · + p({6})
だから根元事象の確率が全て等しければ
p({1}) = · · · = p({6}) =
1
6
となる.また,目が奇数になる確率は
p({1, 3, 5}) = p({1}) + p({3}) + p({5}) =
1 1 1
1
+ + =
6 6 6
2
である.
1
1
で他の目が出る確率が各々
ということ
2
10
もあり得る.この場合は標本空間は同じだが確率が違う.この場合の確率を q とすると
サイコロに細工がしてあって,1 の目が出る確率が
q({1, 3, 5}) = q({1}) + q({3}) + q({5}) =
1
1
1
7
+
+
=
2 10 10
10
となる.
このように (U, p) となるか (U, q) となるかは現実の問題であって,いずれであるかは,入試問
題などでは本来問題文の中で与えられねばならない.
■
B は U の部分集合全体である必要はなく,
(1) ∅ ∈ B .
(2) A ∈ B なら A ∈ B .
(3) A, B ∈ B なら A ∪ B ∈ B .
をみたすものであればよい.第 2 の条件から,U ∈ B ,A, B ∈ B なら A ∩ B ∈ B も成り立つこと
に注意しよう.
このような性質を持つ U の部分集合の集合を有限加法集合族という.確率空間はこれを指示し
て U (B, p) と書く.
例4
ジョーカーを除く 52 枚のトランプから 1 枚引く試行では,標本空間 U は 52 個の要素から
なる.ここでトランプの番号のみを問題とする場合は,B として,A の 4 枚,2 の 4 枚,…,K の
4 枚の集合をもとにして,これから条件にしたがって作られる部分集合の集合とすることができる.
この場合も,B を U とそのすべての部分集合とし,A である事象,など番号を事象で考えても
よい.高校数学の確率ではこれで十分である.そこで,以下の記述では,B は U の部分集合全体
とする.■
8
2.3
余事象,和事象
余事象,和事象は,集合論からの概念である.確率の定義からそれらの確率の公式も出てくる.
余事象
標本空間 U の事象 A に対して,A の補集合で定まる事象を A と書き,余事象という.
和事象
2 つの事象 A と B に対して,その和集合によって定まる事象を和事象といい,A ∪ B
と書く.
2 つの事象 A と B に対して,その積集合によって定まる事象を積事象といい,A ∩ B
積事象
と書く.
定理 1
p(A)
=
p(U ) − p(A) = 1 − p(A)
p(A ∪ B)
=
p(A) + p(B) − p(A ∩ B)
が成り立つ.
証明
A ∪ A = U で A ∩ A = ∅ なので確率の定義 (3) から
p(U ) = p(A) + p(A) = 1
∴
p(A) = 1 − p(A)
次に
A∪B
= A ∪ (A ∩ B)
= {A ∩ (B ∪ B)} ∪ (A ∩ B)
= (A ∩ B) ∪ (A ∩ B) ∪ (A ∩ B)
A =
(A ∩ B) ∪ (A ∩ B)
B
(A ∩ B) ∪ (A ∩ B)
=
とそれぞれ共通部分のない事象の和に分割できる.ゆえに
p(A ∪ B) =
p(A ∩ B) + p(A ∩ B) + p(A ∩ B)
p(A) =
p(A ∩ B) + p(A ∩ B)
p(B) =
p(A ∩ B) + p(A ∩ B)
これから
p(A ∪ B) = p(A) + p(B) − p(A ∩ B)
である.
注意 1
□
ほとんどの教科書は,集合の要素の個数の公式
n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B)
から導いているが,これは根元事象が同様に確かなときしか当てはまらない.
さらに教科書は,この公式から
A ∩ B = ∅ のとき p(A ∪ B) = p(A) + p(B)
を導いているが,これは論の立て方がまったく逆である.
9
A ∩ B = ∅ のとき,事象 A と事象 B は互いに排反であるという.確率の公理から
事象 A と事象 B が互いに排反のとき p(A ∪ B) = p(A) + p(B)
である.
■
確率を全ての事象に確率値を対応させる関数として定義した.事象はすべて根元事象の和集
合になるので,根元事象の確率が定まっていれば,一般の事象の確率はそれを構成する根元事象の
確率の和になるのではないか.
根元事象が有限個の場合はその通りなのだ.また無限個あっても 1, 2, 3, · · · と数えられるよう
な可算無限の場合も含めて,事象 A の確率 p(A) は
∑
p(A) =
p(u)
u∈A
でよい.
ところが連続的な確率の場合にはこれでは定義にならない.これについては,最後の「連続的確
率」を参照してほしい.
以下,
「連続的確率」までは標本空間が有限集合であるものとする.■
2.4
根元事象の確率が等しいとき
定理 2
標本空間が有限集合で,根元事象の確率がすべて等しいとき,事象 A の確率は
p(A) =
で与えられる.ただし n(
証明
n(A)
n(U )
) は集合の要素の個数を表す.
標本空間 U が N 個の要素からなるとし,
U = {u1 , u2 , · · · , uN }
とする.またその確率を p とする.
1
=
p(U ) = p({u1 , u2 , · · · , uN })
= p(u1 ) + p(u2 ) + · · · + p(uN )
そして p(u1 ) = p(u2 ) = · · · = p(uN ) であるから結局
p(u1 ) = p(u2 ) = · · · = p(uN ) =
1
N
となる.A = {u′1 , u′2 , · · · , u′r } をある事象とすると
p(A)
=
p({u′1 , u′2 , · · · , u′r })
= p(u′1 ) + p(u′2 ) + · · · + p(u′r )
1
1
1
r
=
+
+ ··· +
=
N
N
N
N
である.
□
多くの場合,このように,根元事象の確率が等しく,標本空間の要素の個数と,該当も事象を構
成する要素の個数の比が求める確率となる問題が,大半である.
その場合の注意点は何か.まず,次の問題に対する解答は正しいだろうか.
10
例5
正六角形の頂点に 1 から 6 まで番号を打つ.サイコロ 3 個を投げて出た目に印をつけ,そ
れらの点を結ぶとき,正三角形が出来る確率を求めよ.
解答
試行の結果は 63 通り.正三角形は 2 個ある.よって求める確率は
2
1
=
.
63
108
正しくない.なぜなら,試行の結果の総数を 63 としたということは,サイコロを区別している.
2 · 3!
1
だから,同じ {1, 3, 5} から出来ている正三角形でも,目の出方は 3! 通りある.正解は 3 =
6
18
である.
このように確率の問題でのまちがいの一つは,全体の個数を数えるときの区別の仕方と,該当の
結果が何通りあるかを数えるときの区別の仕方を,変えてしまっているときに起こる.逆に,全体
の個数を数えるときの区別の仕方と,該当の結果が何通りあるかを数えるときの区別の仕方が統一
されていれば,確率を求める方法は違っても,同じ結果を得ることが出来る.
例6
n 本のくじの中に 5 本の当たりくじがある. 8 人の人が一本ずつ引く.その中に 3 本の当
たりが出る事象を A とする.確率 P (A) を求めよ.
解答
(1) くじも人も区別する場合:
n 本のくじから 8 枚を選び,8 人にわたす.n(U ) = n P8 .該当事象は,誰が当たるかを決め,
そこに当たりくじを,残る 5 人に外れくじをわたす場合の数だけある.
P (A) =
8 C3
· 5 P3 · n−5 P5
n P8
(2) くじは区別し,人は区別しない場合:
n 本のくじから 8 枚を選ぶ.n(U ) = n C8 .該当事象は,当たりから 3 本,外れから 5 本を選
ぶ場合の数だけある.
P (A) =
5 C3
· n−5 C5
n C8
(3) くじは区別せず,当たりか外れかのみを区別する場合:
すべてのくじを並べ,端から 8 本とる.n 本のどこに当たりがあるか,すべての当たりの配
置を U とする.n(U ) = n C5 .該当事象は,端の 8 本のうち 3 本当たり,残る n − 8 本中に
2 本当たりがある配置の数だけある.
P (A) =
8 C3
· n−8 C2
n C5
よって求める確率は次のようになる.
P (A) =
3360(n − 8)(n − 9)
n(n − 1)(n − 2)(n − 3)(n − 4)
途中の式はこのように当然異なるが,最後の確率は一致している.
確率では,このような問題をあいまいにせず,徹底して考えておくことが重要である.
11
確率分布
3
3.1
確率変数と確率分布
確率空間 (U, p) があるとする.U の要素である試行の結果に対して実数値が定まるとき,その
実数を定める規則を確率変数という.
同じことになるが,根元事象に実数値を定める規則,といってもよい.
U の要素 u に対して実数 X(u) が定まる,つまり U から実数への写像が確率変数である.数 a
に対し X = a である確率とは,数の値が a となるような結果の集合で定まる事象の確率のことに
なる.
A = {u | X(u) = a, u ∈ U }
とすると
P (X = a) = p(A)
である.これはまた
∑
P (X = a) =
p(u)
u:X(u)=a
とも表せる.P (X = a) で確率変数 X が値 a をとる確率を表す.
確率変数 X のとる値の全体が x1 , x2 , · · · , xn であるとすると,X は値 x1 , x2 , · · · , xn に対し
て確率 p1 = P (X = x1 ), p2 = P (X = x2 ), · · · , pn = P (X = xn ) を対応させる.この対応を X
の確率分布と言う.
確率分布という概念は,連続的な確率においてたいへん基本的であり,かつ重要である.
例7
確率変数 X を,サイコロを振って 3 の倍数が出れば 2 点,その他の目では 1 点とする.す
ると確率変数 X のとる値は 1 か 2 で,確率分布は
P (X = 1) =
2
1
, P (X = 2) =
3
3
となる.
3.2
定義 2
期待値の定義
確率変数 X が n 個の値 xi (i = 1, 2, · · · , n) を取り,その確率がそれぞれ qi (i =
1, 2, · · · , n) であるとする.このとき
E(X) =
n
∑
x i qi
i=1
を確率変数 X の期待値という.
次の定義と同値である.
(U, p) を確率空間とし,u1 , u2 , , uN を U の全ての要素,つまりあらゆる試行の結果とする.
期待値 E(X) は
E(X) =
∑
uj ∈U
12
p(uj )X(uj )
である.
証明
∑
qi =
p(ul )
l:X(ul )=xi
なので
E(X)
=
n
∑

xi 
i=1
=
∑

p(ul )
l:X(ul )=xi
n
∑
∑
xi p(ul )
i=1 l:X(ul )=xi
=
n
∑
∑
X(ul )p(ul ) =
i=1 l:X(ul )=xi
∑
X(u)p(u)
u∈U
となる.
□
同じ値をとるものをまとめて考えるのが最初の定義であり,これは,まとめないままで U 全体
にわたって和をとることと同じになる.
3.3
分配問題を解く
はじめに紹介したパスカルとフェルマの往復書簡中で議論されている問題を考えよう.2 人は,
ド・メレという人から出された「分配問題」を議論し,いろんな方法で考えている.一般的な解法
はパスカルが出している.例 2 を一般化しよう.
例8
今,A と B が互いに c 円ずつ出して勝負している.A が勝つ確率は p で B が勝つ確率は
q であるとする.p + q = 1 である.1 回勝つと 1 点もらえて,先に N 点獲得した方が優勝し賭金
2c 円をもらう.A が a 点獲得し B が b 点獲得しているときに,やむを得ない事情で勝負を中止し
なければならなくなった.2c 円をどのように分配すべきか.
A が勝つためにはあと N − a 点,B が勝つためにはあと N − b 点必要.これをもとに,この後
引き続いて勝負をしたとして,A の勝つ確率,B の勝つ確率を計算し,その比に応じて分配するし
かない.
つまり,この時点で A のもらえる期待値,B のもらえる期待値を計算するということになる.
r = N − a, s = N − b とおいて計算する.最大 r + s − 1 回勝負すればいずれかの勝ちが決まる.
そこで n = r + s − 1 とする.A が r 回勝つまでに B が k 回勝つとすると,その事象は,r − 1 + k
回中 k 回 B が勝ち,r + k 回目に A が勝つ事象なので,その確率は
r−1 k
q p
r−1+k Ck p
である.よって A が勝つ確率は
p
r
(s−1
∑
)
r−1+k Ck q
k=0
となる
13
k
例 2 では r = 1, s = 2, p = q =
1
なので,A が勝つ確率は
2
(
)
1
1
3
1+
=
2
2
4
A と B がもらえる期待値は
A :
B
:
3
+0×
4
3
0 × + 64 ×
4
64 ×
1
= 48 (円)
4
1
= 16 (円)
4
であり,この金額を分配すればよい.
パスカルはこの計算をするのにいわゆる「パスカルの三角形」を使っている.パスカルの三角形
は確率の計算で使われはじめたのだ.
確認問題 1
解答 1
袋の中に赤玉 4 個と白玉 5 個が入っている.この中から,元に戻さずに 1 個ずつ球を取りだして
いく.この試行に最初から 1 番,2 番と番号をつける.確率変数 X を,最初に赤玉が出る試行の
番号と定める.X の確率分布と期待値を求めよ.
3.4
和の期待値
確率変数 X が x1 , x2 , · · · , xn の値を取り,その確率が p1 , p2 , · · · , pn であるとする.つまり
P (X = xi ) = pi (i = 1, 2, · · · , n) であるとする.
確率変数 Y は y1 , y2 , · · · , ym の値を取り,その確率が q1 , q2 , · · · , qm であるとする.つまり
P (Y = yi ) = qi (i = 1, 2, · · · , m) であるとする.
値 xi + yj を確率 P (X = xi , Y = yj ) でとる確率変数を,確率変数 X と Y の和といい,X + Y
と書く.
定理 3
確率変数 X + Y の期待値 E(X + Y ) は E(X) + E(Y ) と一致する.
証明
n
∑
i=1
m
∑
P (X = xi , Y = yj ) =
P (Y = yj ) = qj
P (X = xi , Y = yj ) =
P (X = xi ) = pi
j=1
なので
E(X + Y )
=
n ∑
m
∑
(xi + yj )P (X = xi , Y = yj )
i=1 j=1
=
=
n ∑
m
∑
xi P (X = xi , Y = yj ) +
i=1 j=1
n
∑
m
∑
i=1
j=1
xi pi +
n ∑
m
∑
i=1 j=1
yj qj
= E(X) + E(Y )
14
yj P (X = xi , Y = yj )
である.
注意 2
□
P (X = xi , Y = yj ) は X = xi かつ Y = yj となる確率を表す.和の期待値の定理は,2
つの確率変数が独立である必要はない.
注意 3
本定理は,n 個の確率変数,X1 , X2 , · · · , Xn に関する等式,
( n
)
n
∑
∑
E
Xk =
E(Xk
k=1
k=1
に一般化される.証明は,数学的帰納法による.
■
期待値は根元事象の全体にわたる和であるという観点から E(X + Y ) = E(X) + E(Y ) を示す
こともできる.X の値が xi であり,Y の値が yj であるような事象を Ai,j とおく.すると標本空
間 U は互いに排反な事象 Ai,j の和になる.そして
∑
P (X = xi , Y = yj ) = p(Aij ) =
p(u)
u∈Ai,j
である.u ∈ Aij に対して
xi + yj = X(u) + Y (u)
なので
(xi + yj )P (X = xi , Y = yj ) = (xi + yj )
∑
=

 ∑

u∈Ai,j


p(u)

(X(u) + Y (u)) p(u)
u∈Ai,j
したがって
E(X + Y ) =
n ∑
m
∑
(xi + yj )P (X = xi , Y = yj )
i=1 j=1
=
n ∑
m
∑
∑
(X(u) + Y (u)) p(u)
i=1 j=1 u∈Ai,j
=
∑
(X(u) + Y (u)) p(u)
u∈U
=
∑
X(u)p(u) +
u∈U
∑
Y (u)p(u) = E(X) + E(Y )
u∈U
■
確認問題 2
解答 2
10 円硬貨 3 枚,50 円硬貨 5 枚を同時に投げる.確率変数 X を表の出た硬貨の金額の和とする.
X の期待値を求めよ.
問題 2
[04 北大前期理系]
解答 2
ある人がサイコロを振る試行によって,部屋 A,B を移動する. サイコロの目の数が 1,3 のと
きに限り部屋を移る.また各試行の結果,部屋 A に居る場合はその人の持ち点に 1 点を加え,部
15
屋 B に居る場合は 1 点を減らす.持ち点は負になることもあるとする.第 n 試行の結果,部屋 A,
B に居る確率をそれぞれ PA (n), PB (n) と表す.最初にその人は部屋 A に居るものとし (つまり,
PA (0) = 1, PB (0) = 0 とする),持ち点は 1 とする.
(1) PA (1), PA (2), PA (3) および PB (1), PB (2), PB (3) を求めよ.また,第 3 試行の結果,その
人が得る持ち点の期待値 E(3) を求めよ.
(2) PA (n + 1), PB (n + 1) を PA (n), PB (n) を用いて表せ.
(3) PA (n), PB (n) を n を用いて表せ.
(4) 第 n 試行の結果,その人が得る持ち点の期待値 E(n) を求めよ.
条件付確率
4
条件付確率
4.1
確率空間 (U, p) と 2 つの事象 A と B があるとする.実数 pA (B) を
pA (B) =
p(A ∩ B)
p(A)
で定める.定義から,pA (A) = 1 である.
これを,事象 A が起こったという条件のもとで B が起こる確率という意味で, 条件付き確率と
いう.
■
条件付き確率 pA は,集合 A を標本空間とす
U
る確率になっている.
A
つまり,(A, pA ) が集合 A を新たな標本空間とす
る新たな確率空間となる.
A∩B
B
それを確認する.確率の定義の条件をみたせばよい.B ⊂ A に対しては A ∩ B = B で
(1) pA (B) =
p(A ∩ B)
>0
p(A) =
(2) pA (A) =
p(A ∩ A)
p(A)
=
=1
p(A)
p(A)
(3) B, C ⊂ A で B ∩ C = ∅ のとき
pA (B ∪ C) =
p(B) + p(C)
p(B ∪ C)
=
= pA (B) + pA (C)
p(A)
p(A)
B や C が A の部分集合でなくても (A ∩ B) ∩ (A ∩ C) = ∅ なら A ∩ (B ∪ C) = (A ∩ B) ∪ (A ∩ C)
なので上の B ,C の代わりに A ∩ B, A ∩ C を用いることで,同様に示される.
なお,根元事象が同様に確からしく,集合の要素の個数で確率が決まるときは,
pA (B) =
=
p(A ∩ B)
=
p(A)
n(A ∩ B)
n(A)
16
n(A ∩ B)
n(U )
n(A)
n(U )
これを見れば A 自身を標本空間とする確率であることは明らかだ.■
確認問題 3
解答 3
白玉 5 個と赤玉 3 個が入っている袋から,1 個ずつ順に 3 個の球を取りだした.1 番目の玉が赤
であるとき,3 番目の玉が白である確率を求めよ.
問題 3
[2002 年センター試験追試数学
・B 改題]
解答 3
5 枚の赤いカードに,2,3,4,5,6 という数がそれぞれ一つずつ書いてあり,5 枚の青いカー
ドにも,7,8,9,10,11 という数がそれぞれ一つずつ書いてある.赤いカードのうちから 1 枚,
青いカードのうちから 1 枚引いて,書かれてある数をそれぞれ X, Y として確率変数 X, Y を定
め,Z = 2X + Y として確率変数 Z を定める.
(1) X と Z が素数になる確率を求めよ.
(2) Z が素数になるという条件のもとで,X が素数になる条件つき確率と,Y が素数になる条
件つき確率を求めよ.
(3) X が素数になるという事象と Z が素数になるという事象,および,Y が素数になるという
事象と Z が素数になるという事象は,それぞれ独立か独立でないか,理由をつけて答えよ.
(4) X と Z の平均 (期待値) を求めよ.
問題 4
[2004 センター試験・本試験,数学
・B 改題]
解答 4
二つのさいころ A と B があり,各面に 1, 2, 3, 4, 5, 6 という目が書かれている.これらのさ
いころについて,A のさいころの各面には 1, 3, 4, 5, 6, 8 のシールを貼り,B のさいころの各面
には 1, 2, 2, 3, 3, 4 の目のシールを貼った.
はじめに硬貨を投げ,次に A と B のさいころを同時に投げる次の試行を行う.
• 硬貨を投げて表が出れば,両方のさいころのシールをすべてはがして二つのさいころを同時
に投げる.
• 硬貨を投げて裏が出れば,両方ともシールをはがさずに二つのさいころを同時に投げる.
この試行について次の問いに答えよ.ただし,シールの有無にかかわらず,さいころの各面の出方
は同様に確からしいとする.
(1) 目の和が 3 の倍数であるという条件のもとで,二つのさいころの目の差が 2 以下である条件
つき確率求めよ.
(2) この試行における二つのさいころの目の和を表す確率変数を X とする.硬貨を投げて表が
出たとき,同時に投げた二つのさいころの目の和の期待値,およびこの試行における X の
期待値を求めよ.
問題 5
[03 千葉大]
解答 5
k を整数とし q を実数とする.A,B の 2 人が次のようなゲームを行う.まず A が 3 枚の硬貨を
投げ,表の出た枚数を X とする.X > k なら A の勝ち,X < k なら B の勝ちとする.X = k の
ときは当たる確率が q のくじを A が引き,当たれば A の勝ち,そうでなければ B の勝ちとする.
A,B とも,勝った場合には X + 1 円の賞金がもらえ,負けた場合には何ももらえない (0 円もら
う) とする.ここで k および q の値は,A と B のもらう賞金の期待値が等しくなるように定める.
17
(1) k と q の値を求めよ.
(2) 上のゲームを 2 回行ったとき,B の賞金総額が 3 円であった.このとき,A の賞金総額も 3
円である条件付き確率を求めよ.
4.2
定義 3
事象の独立
確率空間 (U, p) の 2 つの事象 A と B に対して
pA (B) = p(B)
が成り立つとき,事象 A と B は互いに独立という.
言うまでもなく,この等式は
p(A ∩ B) = p(A)p(B)
と同値である.これを「独立」の定義としてもよい.
根元事象が同様に確からしく,集合の要素の個数で確
率が決まるときは,図のように
B
A
n(A ∩ B)
n(B)
=
n(A)
n(U )
U
となるということである.
確認問題 4
解答 4
いずれの目が出る確率も同様に確かなサイコロがある.このサイコロの 1 の目から m の目まで
の面を赤く塗り,m + 1 の目から 6 の目までの面を青く塗る.ただし 1 <
=m<
= 5 とする.このサ
イコロを投げるとき,赤の面が出るという事象を A,偶数の面が出るという事象を B とする.事
象 A と事象 B が独立となるような m の値を求めよ.
4.3
確率変数の独立
確率変数 X, Y が互いに独立であるとは,X のとる任意の値 a と Y のとる任意の値 b について
P (X = a, Y = b) = P (X = a)P (Y = b)
が成り立つことを言う.確率変数 X と Y が互いに独立であるときは,確率変数 XY の期待値は
E(XY ) = E(X)E(Y )
が成り立つ.実際,
E(XY ) =
=
n ∑
m
∑
i=1 j=1
n ∑
m
∑
(xi yj )P (X = xi , Y = yj )
(xi yj )P (X = xi )P (Y = yj )
i=1 j=1
18
=
n
∑
xi P (X = xi )
i=1
{
=
n
∑

m
∑

xi P (X = xi )
i=1


yj P (Y = yj )
j=1
} m
∑


yj P (Y = yj )
j=1



= E(X)E(Y )
積についても,期待値は根元事象の全体にわたる和であるという観点から E(XY ) = E(X)E(Y )
を示せないか.それはできない.事象の独立性が基本なのだが,根元事象は互いに独立ではないの
で,根元事象に帰着させることは出来ない.
問題 6
[90 京大前期理系]
解答 6
正 N 角形の頂点に 0, 1, · · · , N − 1 と時計回りに番号がつけてある.頂点 0 を出発点とし,サ
イコロを投げて出た目の数だけ頂点を時計まわりに移動し,着いた頂点の番号を X とする.次に
もう一度サイコロを投げて出た目の数だけ,頂点 X から時計まわりに移動し,着いた頂点の番号
を Y とする.このようにして定めた確率変数 X, Y について
(1) N = 5, 6 のそれぞれの場合について,X と Y は互いに独立か.
(2) X と Y が互いに独立となる N (N >
= 3) をすべて求めよ.
ただし,確率変数 X, Y が互いに独立であるとは,X = i となる確率 P (X = i) と,X = i, Y = j
となる確率 P (X = i, Y = j) との間に,次の等式が任意の i, j (0 <
= i, j <
= N − 1) について成り
立つことである.
(∗)
P (X = i, Y = j) = P (X = i)P (Y = j)
教科書との関係
5
以上が,高校確率の基礎部分である.これだけをしっかりつかめばよい.
それに対して現行の数学 A の教科書には,
「独立な試行の確率」と「反復試行の確率」がそれぞ
れ 1 つの小節を割り当てて,書かれている.しかし,教科書に書かれている内容であれば,これら
は必要ない.
数学 A の確率には条件付き確率が入るが,期待値や事象の独立は数学 B である.このような構
成は,まったく混乱を招くだけである.
「独立な試行の確率」と「反復試行の確率」を除き,代わり
に事象の独立と期待値を数学 A の範囲にすべきである.
しかしまた,現実に教科書にある以上,以上の高校確率の基礎をふまえて,そこに書かれている
ことをどのように取り扱うべきであるのか,考えておきたい.
5.1
独立な試行
この問題は教育現場に混乱をもたらしている.
ある教科書は「同じ状態のもとでくりかえすことができる」ことを試行の条件として書く.その
うえで「2 つの試行が互いに他方の結果に影響しないとき,これらの試行は独立である」と書く.
19
そして,独立でない試行の例として,くじを 1 回目に引く試行を S,2 回目に引く試行を T とし
たうえで,
「引いたくじをもとに戻さない場合」をあげる.
しかしこの場合,1 回目に当たりを引くか外れを引くかで,2 回目にくじを引く条件が異なる.2
回目の T は「同じ状態のもとでくりかえすことができる」という条件に反するので,試行とは言
えないのではないか.このような疑問が寄せられた.これは当然である.
また,この教科書は
2 つの独立な試行 S ,T を行うとき,S で A が起こり,T で B が起こる事象を C と
すると,事象 C の確率は
P (C) = P (A)P (B)
と書く.事象の独立は,積事象の確率が確率の積になることとして定義された.ところが,この記
述では,何の論証もなしに,この等式が提示される.いったいこの等式は「2 つの試行 S ,T が独
立である」ことの定義なのか,あるいは結論として出てくるものなのか不明である.
ではどのように考えるべきなのか.2 つの方法を示そう.
事象の独立を基礎にする
2 回引くのなら,2 回引いた結果の全体が標本空間であり,1 回目が当
たり,2 回目外れなどは,それで定まる確率空間の事象なのである.1 回目の試行と 2 回目の試行
が独立かどうかという問題の立て方が正しくない.1 回目に関する事象と 2 回目に関する事象が独
立であるか否かと,問題を立てなければならない.
試行とは,手順「戻して n 回引く」とか,
「戻さずに n 回引く」などの規則にもとづく一連の行為
全体を意味し,それによって定まる確率空間を基礎とする,というのが本来の確率論の立場である.
n 回くじを引くとき,その結果は(⃝××⃝…)のような n 個の⃝と×の順列の全体である.戻
すときも戻さないときも,その確率は計算できる.そのなかで 1 回目当たりという事象は (⃝△
△…)(△はどちらでもよい)の形をした部分集合であり,その確率も計算できる.2 回目当たりと
いう事象は (△⃝△…) の形をした部分集合,1,2 回目当たりという事象は (⃝⃝△…) の形をした
部分集合である.その確率も計算できる.
これが任意の k 回目と l 回目で計算でき,その事象が独立か否かが定まる.k 回目の事象と l 回
目の事象が,各 k と l で独立なとき,その試行を「独立試行」という.それぞれの回の確率的行為
が独立という意味ではない.n 回くじを引くという試行の性質なのである.
実際,かつては教科書もそのようになっていた.手元にある 1969 年の実教出版の教科書では,
「独立試行」の「独立」はこの手順の性質としてつけられた形容詞であって,1 回 1 回の確率的行
為が独立という意味ではない.
このように,独立試行という概念は,事象の独立のなかに含むことができ,またそうしてこそ,
確率論の記述となる.
標本空間の積
もう一つの方法は標本空間の積を考えることである.
これはすでに 100 円硬貨と 10 円硬貨を投げる試行でおこなっている.100 円硬貨を投げる試行
の標本空間は,要素は 2 個,表と裏.10 円硬貨を投げる試行の標本空間も,要素は 2 個,表と裏.
それを x 軸と y 軸にとるように (表,裏) の組で考えた.
これを少し一般化しよう.
2 つの確率空間 (U1 , p1 ) と (U2 , p2 ) があり,p1 と p2 はそれぞれ U1 と U2 の事象だけで定まり,
たがいに U2 と U1 の事象とは無関係であるとする.つまり,U1 の u が起こったとき,U2 ではそ
20
の何れもが,p2 で定まる確率で起こりうる,U2 ,U1 でも同様ということである.
U1
= {u1 , u2 , · · · , us }
U2
= {v1 , v2 , · · · , vt }
とする.u = u1 , u2 , · · · , us と v = v1 , v2 , · · · , vt に対して確率 p1 (u) と p2 (v) が定まっている.
新たな標本空間 U を
U = {(u, v) | u ∈ U1 , v ∈ U2 }
で定め,この標本空間に確率 q を
q{(u, v)} = p1 (u) · p2 (v)
で定める.これが U の確率になっていることはすぐに検証できる.集合 U を (U1 , U2 ) のように
書こう.同様に U1 , U2 のそれぞれの部分集合 A, B に対して,U = (U1 , U2 ) の部分集合
{(u, v) | u ∈ A, v ∈ B}
を (A, B) のように書こう.この U のなかで部分集合
(A, U2 ) = {(u, v) | u ∈ A, v ∈ U2 }
を考える.p1 と p2 はそれぞれ U1 と U2 の事象だけで定まり,たがいに U2 と U1 の事象とは無
関係であるとの仮定から,A に対してすべての v ∈ U2 に対して,(A, v) ∈ U である.つまり,
(A, U2 ) ⊂ U である.この結果,もとの試行 U1 の事象 A を U に埋め込むことができる.同様に
U2 の事象 B に対して (U1 , B) で,B を U に埋め込む.
p1 と p2 はそれぞれ U1 と U2 の事象だけで定まり,たがいに U2 と U1 の事象とは無関係である
との仮定が,埋め込みができることと同値である.
任意の U1 の事象 A と U2 の事象 B に対して,このようにして埋め込まれた U の事象 (A, U2 )
と (U1 , B) は互いに独立である.
証明
(A, U2 ) ∩ (U1 , B) = (A, B)
なので
∑
q{(A, U2 )} =
p1 (u)p2 (v) =
u∈A, v∈U2
{
=
∑
}{
p1 (u)
u∈A
=
∑
p1 (u)
u∈A
∑
p2 (v)
}{
p1 (u)
u∈U1
∑
{
p1 (u)
}
p2 (v)
∑
u∈A, v∈B
21
∑
v∈B
= p2 (B)
v∈B
q{(A, U2 ) ∩ (U1 , B)} = q{(A, B)} =
}
p2 (v)
= p1 (A)
u∈U1
∑
∑
v∈U2
}
p1 (u)p2 (v) =
u∈U1 , v∈B
{
{
v∈U2
∑
q{(U1 , B)} =
∑
p1 (u)p2 (v)
}
p2 (v)
=
∑
{
p1 (u)
u∈A
{
=
∑
}
p2 (v)
v∈B
∑
}
=
∑
p1 (u)p2 (B)
u∈A
p1 (u) p2 (B) = p1 (A)p2 (B)
u∈A
より
q{(A, U2 ) ∩ (U1 , B)} = q{(A, U2 )}q{(U1 , B)}
が任意の A と B について成立する.つまり,U の事象 (A, U2 ) と (U1 , B) は互いに独立である.
これによって
(1) p1 と p2 はそれぞれ U1 と U2 の事象だけで定る.
(2) 埋め込みが可能である.
(3) A と B の埋め込まれた事象が独立である.
が順次成り立った.また,先の教科書の記述は,2 つの試行による 2 つの標本空間の積において,
埋め込まれたそれぞれの事象が独立であることを示している,と解釈できる.
注意 4
標本空間 U での確率を
q{(u, v)} = p1 (A) · p2 (B)
で定め,その後で U の性質を調べた.しかし,これは根元事象の確率が必ずしも等しくない場合
を含めて考えるためである.
U1 の根元事象の確率が相等しく,U2 の根元事象の確率も相等しく,かつ,2 つの標本空間 U1 と
U2 の積集合に,事象 A や B が (A, U2 ),(U1 , B) の形で埋め込めることができるとする.
n(A)
n(B)
それぞれの事象の U1 ,U2 での確率は,
,
である.そして,
n(U1 ) n(U2 )
n(A, B) = n(A)n(B), n(U ) = n(U1 )n(U2 )
なので,
n(A, B)
n(A) n(B)
=
·
n(U )
n(U1 ) n(U2 )
が成り立つ.
よって標本空間 U での事象 (A, B) の確率は
p1 (A)p2 (B)
となり,また A と B を U に埋め込んだ事象が互いに独立であることも,自明である.
逆にいうと,先の U の確率 q の定義は自然なものである.
標本空間 2 個の積は,n 個の積にそのまま一般化される.
22
5.2
反復試行の確率
同様の問題が「反復試行の確率」にある.反復試行とは何か.先の教科書は
同じ条件のもとで同じ試行を繰り返し行うとき各回の試行は独立である.このよう
な試行を反復試行という.
という.しかしあいかわらず,
「同じ条件のもとで同じ試行を繰り返し行うとき各回の試行は独立で
ある.
」の根拠は示されない.反復試行は,二項分布でとらえてはじめてその意味がわかる.
二項分布
1 回の試行であることが起こる確率が p であるとする.あることが起こるか起こらない
かのみ考える.1 回の試行の結果は,それ以前の試行に影響されず,また以後の試行に影響しない
とする.この条件の下で,繰り返し行うことを「試行を反復する」という.
そこで,新たな試行を,この試行を n 回反復することと定め,この試行の結果の確率を,各回の
試行の結果の確率の積で定める.
この標本空間は,先の,標本空間の積と同様に,1 回の試行で定まる標本空間の n 個の積である.
この新たな試行で定まる確率空間では,各 k と l に対して,k 回目にそのことが起こる事象と,l
回目にそのことが起こる事象は互いに独立である.
標本空間は
(× , × , · · · , × )
(○, × , · · · , × ), (× , ○, · · · , × ), · · ·
···
(○, ○, · · · , ○)
と,n 回の結果を並べたもの全体である.ただし,○はあることが起こったこと,×は起こらな
かったことを意味する.
このとき,n 回中にそのことが起こる回数という確率変数を X とする.この確率変数は,0 <
=k<
=n
の範囲の整数 k に対して
P (X = k) = n Ck pk (1 − p)n−k
であり,k < 0, n < k に対しては P (X = k) = 0 となる.この確率分布を,二項分布という.
実際,その独立性により,k 回起こる各々の確率が pk q n−k で,それが n Ck 通りあるから,X = k
となる確率は n Ck pk q n−k である.
この確率分布は,二項定理
(p + q)n =
n
∑
k n−k
n Ck p q
k=0
の p について k 次の項が k 回起こる場合の確率を与えるので二項分布という.このとき,起こる
回数の期待値 E は
E=
n
∑
k n Ck pk (1 − p)n−k = np
k=1
となる.これを示すために二項定理は p と q の恒等式なので,これを p で微分して
n(p + q)n−1 =
n
∑
k n Ck pk−1 q n−k
k=1
この係数比較から
k n Ck = nn−1 Ck−1
23
を得る.これを用いる.
∴
E
=
=
n
∑
k=1
n
∑
k n Ck pk (1 − p)n−k
nn−1 Ck−1 pk (1 − p)n−k
k=1
= np
n
∑
k−1
(1
n−1 Ck−1 p
− p)n−k
k=1
= np{p + (1 − p)}n−1 = np
このように,反復試行の確率は,二項分布という分布を与えるモデルとしてとらえたとき,はじ
めてその発展的な意味がつかめる.ここで,二項分布に係わる問題を紹介しよう.
問題 7
[85 京大理系]
解答 7
2 枚の硬貨があり,1 枚ずつ投げたとき表の出る確率をそれぞれ a,b とする.2 枚同時に投げた
とき,表の出た硬貨の枚数を X とする.従って,確率変数 X は値 0,1,2 をとり,その確率分
布は a,b により定まる.逆に X の分布を指定したとき,その分布を与えるような a,b の値が存
在するかどうか,また存在する場合には,どれだけあるか,次の 2 つの場合について答えよ.
(i) X は 2 項分布,すなわち P (X = k) = 2 Ck pk (1 − p)2−k (k = 0, 1, 2)
ただし,p (0 < p < 1) はあらかじめ指定した定数である.
(ii) X は一様分布,すなわち P (X = k) =
問題 8
[04 九大前期文理系]
1
(k = 0,1,2)
3
解答 8
n を 3 以上の自然数とする.スイッチを入れると等確率で赤色または青色に輝く電球が横一列に
n 個並んでいる.これらの n 個の電球のスイッチを同時に入れたあと,左から電球の色を見てい
き,色の変化の回数を調べる.
(1) 赤青…青,赤赤青…青,……のように左端が赤色で色の変化がちようど 1 回起きる確率を求
めよ.
(2) 色の変化が少なくとも 2 回起きる確率を求めよ.
(3) 色の変化がちょうど m 回 (0 <
=m<
= n − 1) 起きる確率を求めよ.
(4) 色の変化の回数の期待値を求めよ.
6
連続な確率
例えば,ある人が 6 時から 7 時のいずれかの時刻に駅に着く.6 時から 7 時のいずれかの時刻に
着く確率も等しい.
この場合,試行の結果は,着く時刻の全体である.6 時 5 分から 10 分の間に着く確率は何か.
1
5
=
である.
これは
60
12
このことは理解しやすい.しかし根元事象の確率,ちょうど 6 時 3 分に着く確率は 0 である.こ
こに違いがある.
24
いずれにせよ,確率空間が,実数の区間,平面領域,あるいは空間領域となり,その何れが起こ
るかが同様に確からしいとする.
そして,その一部が該当する事象に対応するばあい,その事象の確率が,長さの比や面積,体積
の比になることは,理解しやすい.
連続的な確率もときに入試問題として出題されるが,その場合は何をもって確率とするのかが指
示される.
一般的には,和に変えて積分が必要になる.確率の考え方が理解できているときには,積分の意
味を理解すれば,これを連続的な確率の場合に一般化すること自体は難しくない.
以下は,数学 III の微積分が必要である.
確認問題 5
解答 5
次の確率を求めよ.
(1) 1 本の線分を無作為に 2ヵ所で切断し,三つの線分を得る.こうして得られた 3 本の線分が
三角形を作る確率.
(2) 同じ長さの 3 本の線分を無作為に切断し,一方の側を取り出す.こうして得られた 3 本の新
たな線分が三角形を作る確率.
(3) 1 本の線分を無作為に 2ヵ所で切断し,三つの線分を得る.こうして得られた 3 本の線分が
鋭角三角形を作る確率.
(4) 同じ長さの 3 本の線分を無作為に切断し,一方の側を取り出す.こうして得られた 3 本の新
たな線分が鋭角三角形を作る確率.
連続的な確率で,もっとも有名であり重要なものはビュッホンの針と言われる問題である.
例9
平面上に互いの距離が 2a である多くの平行線が引かれている.この平面上に長さが 2a の
細い針を落とす.このとき針が一つの直線と交わる確率を求めよ.
解答
θ
x
2a
長さが 2a の針の中点が一つの直線から x の距離のところに落ちるとする.針と,直線と直交す
る方向のなす角を θ とする.対称性を考慮し
0<
=a,
=x<
π
0<
= 2
=θ<
としてよい.
このときこのとき針がこの直線と交わるのは
a cos θ >
=x
25
のときである. xθ 平面の領域
S1 = {(x, θ) | 0 <
=x<
=a,
π
0<
=θ<
= 2}
のなかで領域
S2 = {(x, θ) | (x, θ) ∈ S1 , a cos θ >
= x}
の占める面積は
∫
π
2
a cos θ dθ = a
0
ゆえに求める確率は S1 の面積が
aπ
であるから
2
a
aπ
2
=
2
π
となる.
問題 9
[01 東大後期理科]
解答 9
(1) 図 1 のように,等間隔 h で格子状に互いに直交する 2 組の無数
の平行線が引いてある平面が与えられている.その上に半径 1
の円 C を無作為に落とすとき,この円がちょうど 2 本の線と
交わる確率 p を求めよ.
(2) 図 2 のように, 半径
√
2 + 1 の円が重複なく,かつ隣り合う円と
接して無数に敷き詰められた平面がある.この上に半径 1 の円
C を無作為に落とすとき,その円 C が平面上のちょうど 3 つ
の円と交わる確率 q を求めよ.
ただし解答にあたり次のことを用いてよい.
平面上に共に原点 O を始点とする一次独立な 2 つのベクトル a,b を考え, 点 O と a,b,a+b
の 3 つのぺクトルの終点の 4 点を頂点とする平行四辺形を E とする. E の領域 F に対して, F
を a と b の整数係数の一次結合 ma+ nb によって平行移動したもの全体の和集合を D とする.即
ち記号で書くと
D = {x + ma + nb | x ∈ F, m ∈ Z, n ∈ Z}
とおく.ここで Z は整数全体を表す.
このとき平面に 1 点 P を無作為に落とすとき,その点が D 内に落ちる確率は,F の面積の平
行四辺形 E の面積に対する比になっている.
26
解答
7
7.1
確認問題
解答 1
問題 1
X のとりうる値の範囲は 1 から 6 である.X = k となる事象は,白玉が k − 1 回続いた後,赤
玉が出る事象である.
P (X = 1)
=
P (X = 2) =
P (X = 3) =
P (X = 4) =
P (X = 5) =
P (X = 6) =
∴
解答 2
E =1·
4
9
5
9
5
9
5
9
5
9
5
9
·
·
·
·
·
4
8
4
8
4
8
4
8
4
8
=
4
7
3
·
7
3
·
7
3
·
7
·
5
18
=
4
6
2
·
6
2
·
6
·
10
63
=
4
5
1
·
5
·
5
63
=
·
2
63
4
1
=
4
126
4
5
10
5
2
1
+2·
+3·
+4·
+5·
+6·
=2
9
18
63
63
63
126
問題 2
10 円硬貨のうち表が出た硬貨の金額の合計を X1 ,50 円硬貨のうち表が出た硬貨の金額の合計
を X2 とする.
確率変数 X1 ,X2 の確率分布はそれぞれ次のようになる.
X1
確率
X2
確率
10
( )5
1
5 C1
2
10
( )3
1
C
3 1
2
20
( )3
1
C
3 2
2
30
( )3
1
C
3 3
2
20
( )5
1
5 C2
2
30
( )5
1
5 C3
2
40
( )5
1
5 C4
2
50
( )5
1
5 C5
2
ゆえに
E(X1 ) =
=
E(X2 ) =
=
( )3
( )3
( )3
1
1
1
+ 20 · 3 C2
+ 30 · 3 C3
10 · 3 C1
2
2
2
30 + 60 + 30
= 15
8
( )5
( )5
( )5
( )5
( )5
1
1
1
1
1
10 · 5 C1
+ 20 · 5 C2
+ 30 · 5 C3
+ 40 · 5 C4
+ 50 · 5 C5
2
2
2
2
2
50(5 + 20 + 30 + 20 + 5)
= 125
32
∴
E(X) = E(X1 ) + E(X2 ) = 15 + 125 = 140
27
解答 3
問題 3
1 番の玉が赤である事象を A,3 番の玉が白である事象を B とする.
P (A)
=
P (A ∩ B)
=
∴
解答 4
3
8
(
)
3
2 5 5 4
×
· + ·
8
7 6 7 6
PA (B) =
P (A ∩ B)
5
=
P (A)
7
問題 4
事象 A と事象 B が独立となるということは
P (A) · P (B) = P (A ∩ B)
となればよい.
P (A) =
[
である.ここで
m
1
, P (B) =
6
2
]
m
m
m−1
で,m が偶数なら
を m が奇数なら
を表すことにすると
2
2
2
[ ]
m
2
P (A ∩ B) =
6
である.したがって,
[
P (A) · P (B) = P (A ∩ B)
⇐⇒
]
m
m
=
2
2
である.つまり事象 A と事象 B が独立となるような m の値は 2 か 4 である.
解答 5
問題 5
(1) 線分の長さを 1 にして一般性を失わない.長さ x (> 0), y (> 0) と 1 − x − y (> 0) に切断
したとする.こうして得られた 3 本の線分が三角形を作る条件は
x + y > 1 − (x + y), x + 1 − (x + y) > y, 1 − (x + y) + y > x
である.
従って求める確率は領域
D1 = {(x, y) | x > 0, y > 0, 1 > x + y}
の面積に対する,領域
D2 = {(x, y)|(x, y) ∈ D1 , 2(x + y) > 1, 1 > 2x, 1 > 2y}
の面積の比である.(図 1)
従って求める確率は
1
4
28
(2) 3 本の線分の長さを 1 にしてよい.取り出された各線分の長さを 0 < x, y, z < 1 とする.こ
うして得られた 3 本の新たな線分が三角形を作る条件は
x + y > z, y + z > x, z + x > y
従って求める確率は立方体
T1 = {(x, y, z) | 1 > x > 0, 1 > y > 0, 1 > z > 0}
の体積に対する,立体
T2 = {(x, y, z)|(x, y, z) ∈ T1 , x + y > z, y + z > x, z + x > y}
の体積の比である.
T2 の体積を求める. z = t での切断面は図 2 のようになりその面積は
{
}
3
1
1 2
2
1−
t + 2 · (1 − t) = − t2 + 2t
2
2
2
よって T2 の体積は
∫
1
0
(
)
[
]1
3 2
1 3
1
2
− t + 2t dt = − t + t
=
2
2
2
0
従って求める確率は
1
2
(3) (1) のもとで得られた 3 本の線分が鋭角三角形を作る条件は D2 の条件に加えて
x2 + y 2 > {1 − (x + y)}2 , x2 + {1 − (x + y)}2 > y 2 , {1 − (x + y)}2 + y 2 > x2
である.その領域を D3 とする.この条件は
y >1−
1
1
1
, y < −x +
, x < −y +
2 − 2x
2 − 2x
2 − 2y
と書き表される.
D3 の面積 (境界を含む) は, D2 の面積から,図 3 の領域 (イ) 一つ,と領域 (ロ) を二つ分
を減じたものである.
(イ) の面積は
∫
1
2
{
1−
0
1
−
2 − 2x
(
)}
)
∫ 21 (
1
1
1
−x
dx =
+x−
dx
2
2
2 − 2x
0
となりこれは (ロ) の面積に等しい.この値を求める.
)
[
] 12
∫ 21 (
1
1
1
1
1
3 1
+x−
dx =
x + x2 + log(1 − x) = − log 2
2
2
−
2x
2
2
2
8 2
0
0
ゆえに D3 の面積は
1
2
( )2
{
}
1
3 1
3
−3·
− log 2 = log 2 − 1
2
8 2
2
従って 3 本の線分が鋭角三角形を作る確率は
3 log 2 − 2
29
(4) (2) のもとで得られた 3 本の線分が鋭角三角形を作る条件は T2 の条件に加えて
x2 + y 2 > z 2 , x2 + z 2 > y 2 , z 2 + y 2 > x2
である.この立体を T3 とする.
T3 の体積 (境界を含む) をもとめる. z = t での切断面において, T2 の切断面から,図 4 の
領域 (ハ) 一つ,と領域 (ニ) を二つ分を減じたものである.
(ハ) の面積は
1 2 1 2
πt − t
4
2
したがって 0 <
=t<
= 1 を動かすときその体積は
)
[
]1
∫ 1(
1 2 1 2
1 3 1 3
1
1
πt − t
dt =
πt − t
=
π−
4
2
12
6
12
6
0
0
(ニ) のの部分から定まる体積は条件の対称性から (ハ) の部分から定まる体積に等しい.
1
ゆえに T3 の面積は T2 の体積が であったので,
2
{
}
1
1
1
1
−3·
π−
=1− π
2
12
6
4
従って 3 本の線分が鋭角三角形を作る確率は
1
1− π
4
y
y
1
1
t
1
2
O
1
2
1
x
O
t
1
x
図2
図1
y
y
(ニ)
(ロ)
1
1
(イ)
O
(ハ)
t
1
2
1
2
1
x
O
図3
t
図4
30
1
x
7.2
演習問題
解答 1
問題 1
(1) 12 人はそれぞれ 3 通りずつの入れ方がある.
312 = 531441 (通り)
(2) 12 人のうちどの 8 人が A の箱にボールを入れるかが 12 C8 = 12 C4 = 495 通りあり,残る 4
人が B,C の箱に入れる入れ方が 24 = 16 通りあるから,求める入れ方は
495 × 16 = 7920 (通り)
(3) A,B,C の各箱に入るボールの個数を x, y, z とすると
x + y + z = 12, x >
= 0, y >
= 0, z >
=0
···⃝
1
⃝
1 の解 {x, y, z} の個数が求めるものである.これは 3 種類のものから重複を許して 12 個
とる方法の数であるから
3 H12
= 3+12−1 C12 = 14 C2 = 91
(4) 「一つ一つのボールを A,B,C の箱のいずれかに入れる」がこれ以上分解でき ない「根元
事象」で,それが同様に確からしい.それらの事象の総数は 312 ある.そのなかで A の箱
にちょうど k 個入るのは (2) と同様に
12 Ck
× 212−k (通り)
したがって A の箱に 8 個以上入るのは
12
∑
12 Ck
× 212−k (通り)
k=8
これを計算すると 9969(通り) である.
(求める確率) =
注意
· 9969
3323
=
312
59049
3 C1
(4) で次の解答は誤りである.
4 個のボールを A,B,C の箱に分けて入れる方法の数は (3) と同じように
3 H4
= 3+4−1 C4 = 6 C2 = 15
通りある.
残る 8 個のボールを一緒にして A,B,C のどれかに入れる方法は 3 通りあるから
(求める確率) =
45
15 × 3
=
91
91
本問では何が「同様に確からしい」のか.これは「順番に A,B,C の箱のいずれかに入れてい
く行爲」が無作為になされ,その結果「一つ一つのボールが A,B,C の箱のいずれに入るかが同
様に確からしい」としなければならない.
したがって次の三つの事象は同様に確からしい.
31
(i) 太郎君がボールを A に入れ,次郎君がボールを B に入れ,他の人が C に入れた事象
(ii) 太郎君がボールを B に入れ,次郎君がボールを A に入れ,他の人が C に入れた事象
(iii) 太郎君がボールを A に入れ,次郎君もボールを A に入れ,他の人が C に入れた事象
どの 2 人でも同じことであるから,10 個が C にはいる事象の中で,A,B に 1 個ずつ入る事象の
方が,A に 2 個入る事象の 2 倍起こりやすい.ところがこの解では問題の (1) と (2) の事象が同一
視されて,10 個が C にはいる事象の中で,A,B に 1 個ずつ入る事象と A に 2 個入る事象の確率
が等しいとされてしまうので,間違いである.
解答 2
問題 2
1
2
(1) 部屋を移る確率は ,移らない確率は である.したがって
3
3
2
PA (n) +
3
1
PB (n + 1) = PA (n) +
3
PA (n + 1) =
1
PB (n)
3
2
PB (n)
3
···⃝
1
ただし PA (n) + PB (n) = 1 である.これから
2
PA (0) +
3
2
PA (2) = PA (1) +
3
2
PA (3) = PA (2) +
3
PA (1) =
1
PB (0) =
3
1
PB (1) =
3
1
PB (2) =
3
2
,
3
5
,
9
14
,
27
1
3
4
PB (2) = 1 − PA (2) =
9
13
PB (3) = 1 − PA (3) =
27
PB (1) = 1 − PA (1) =
また,3 回で起こりうる持ち点は 4, 2, 0, −2 で
持ち点
部屋
確率
4
AAA
( )3
2
3
2
AAB, ABA, BAA
( )2 ( )
( ) ( )2
2
1
2
1
+2
3
3
3
3
E(3) = 4 ·
−2
BBB
( ) ( )2
1
2
3
3
8
8
4
40
+2·
+ (−2)
=
27
27
27
27
(2) (1) に解答あり.
(3) ⃝
1 から
1
{PA (n) − PB (n)}
3
( )n
( )n
1
1
PA (n) − PB (n) =
{PA (0) − PB (0)} =
3
3
PA (n + 1) − PB (n + 1) =
∴
PA (n) + PB (n) = 1 とあわせて
{
( )n }
1
1
1+
2
3
{
( )n }
1
1
1−
2
3
PA (n) =
PB (n) =
32
(4) k 回目の試行による持ち点の増減量を Xk とする.
E(n) = 1 + E(X1 + X2 + · · · + Xn ) = 1 +
n
∑
E(Xk )
k=1
ここで
E(Xk ) = 1 · PA (k) + (−1) · PB (k) =
∴
E(n)
=
n
∑
1+
E(Xk ) = 1 +
k=1
1−
=
[注] n = 3 のとき計算すると,
3
2
{
( )k
1
3
n ( )k
∑
1
k=1
3
( )n+1
1
{
( )n+1 }
1
3
3
1−
=
1
2
3
1−
3
( )4 }
1
3 80
40
1−
= ·
=
3
2 81
27
(1) ではそれぞれの持ち点に対する確率を計算したが,(4) の方法の方が簡明である.
解答 3
問題 3
(1) 確率変数 X が素数になるという事象を x のように小文字で表す.以下,その他の文字につい
ても同様である.
赤いカードの素数は 2, 3, 5 なので
P (x) =
3
5
X と Y のそれぞれの値に対して Z のとる値は次のようになる.
Y \X
2
3
4
5
6
7
11 13
15 17
19
8
12 14
16 18
20
9
13 15
17 19
21
10
14 16
18 20
22
11
15 17
19 21
23
このうち Z が素数になるのは,10 通り.
P (z) =
10
2
=
25
5
(2) Z が素数になるという条件のもとで X が素数になる条件つき確率を Pz (x) と表す.その他
も同様とする.
(1) の表から z が素数で x が素数なのは 6 通りある.
P (x ∩ z) =
33
6
25
∴
Pz (x) =
6
2
3
÷ =
25 5
5
同様に (1) の表から z が素数で y が素数なのは 7 通りある.
P (y ∩ z) =
∴
Pz (y) =
7
25
2
7
7
÷ =
25 5
10
3
3
かつ Pz (x) = なので X が素数になるという事象と Z が素数になるという事象
5
5
は独立である.
2
7
P (y) = かつ Pz (y) =
なので Y が素数になるという事象と Z が素数になるという事象
5
10
は独立でない.
(3) P (x) =
(4)
∴
解答 4
E(X)
=
E(Y )
=
1
(2 + 3 + 4 + 5 + 6) = 4
5
1
(7 + 8 + 9 + 10 + 11) = 9
5
E(Z) = E(2X + Y ) = 2E(X) + E(Y ) = 17
問題 4
(1) A,B とも 1, 2, 3, 4, 5, 6 の場合,ここから 2 つを選んで目の和が 3 の倍数になるのは
(1, 2) (1, 5) (3, 6) (6, 6)
(2, 1) (2, 4) (4, 5)
(3, 3) (5, 4)
(4, 2) (6, 3)
(5, 1)
で,その確率は
12
1
=
36
3
次に A が 1, 3, 4, 5, 6, 8 で,B が 1, 2, 2, 3, 3, 4 の場合,目の和が 3 の倍数になるのは,
重なりをそれぞれ書きあげると
(1, 2) (3, 3) (5, 4) (8, 4)
(1, 2) (3, 3) (6, 3)
(4, 2)
(4, 2)
(5, 1)
で,その確率は
1
12
= である.
36
3
34
(6, 3)
(8, 1)
1 1 1 1
1
· + · = である.
2 3 2 3
3
このうち二つのさいころの目の差が 2 以下である事象は,第 1 の場合は 8 通りあり確率は
8
2
7
= である.第 2 の場合は 7 通りあり確率は
である.
36
9
36
ゆえに求める条件つき確率は
(
)
1 2 1 7
1
5
· + ·
÷ =
2 9 2 36
3
8
したがってこの試行で目の和が 3 の倍数であるという確率は
(2) 面が 1, 2, 3, 4, 5, 6 であるサイコロ 1 個を投げたときの目の期待値を X1 ,
面が 1, 3, 4, 5, 6, 8 であるサイコロ 1 個を投げたときの目の期待値を X2 ,
面が 1, 2, 2, 3, 3, 4 であるサイコロ 1 個を投げたときの目の期待値を X3 とする.
硬貨を投げて表が出たとき同時に投げた二つのさいころの目の和の期待値を Y とすると,
Y = X1 + X1 なので
E(Y ) = E(X1 + X1 ) = 2E(X1 ) = 2 ·
E(X)
=
=
解答 5
1+2+3+4+5+6
=7
6
1
1
E(Y ) + E(X2 + X3 )
2
2
(
)
1
1+3+4+5+6+8 1+2+2+3+3+4
7+
+
=7
2
6
6
問題 5
(1) 表の出た枚数が X のとき A か B のいずれかが X + 1 をもらう.
A がもらう賞金の期待値を EA ,B がもらう賞金の期待値を EB とする.もらえる賞金は 1
円から 4 円である.
( )3
( )3
( )3
( )3
1
1
1
1
EA + EB = 1 · 3 C0
+ 2 · 3 C1
+ 3 · 3 C2
+ 4 · 3 C3
2
2
2
2
5
=
2
5
5
でなければならない.EA か EB のいずれかが
4
4
となるような k と q の値を求めればよい.
したがって EA = EB なら,EA = EB =
k<
= k なら EA = 0 である.ゆえに k = 0, 1, 2 が必要である.
= −1 なら EB = 0,3 <
(i) k = 0 のとき.B が勝ちうるのは X = 0 のとき.このとき B が勝つ確率は
( )3
1
× (1 − q)
3 C0
2
で,賞金は 1 点. ゆえに
5
= EB より
4
5
= 3 C0
4
( )3
1
× (1 − q)
2
0<
= 1 の q でこれを満たすものはない.
=q<
35
(ii) k = 1 のとき.B が勝ちうるのは X = 0, 1 のとき.
X = 0 で B が勝つ確率は
( )3
1
3 C0
2
で,賞金は 1 点.
X = 1 で B が勝つ確率は
( )3
1
× (1 − q)
3 C1
2
で,賞金は 2 点.
5
ゆえに = EB より
4
5
= 3 C0
4
( )3
( )3
1
1
+ 2 · 3 C1
× (1 − q)
2
2
0<
=q<
= 1 の q でこれを満たすものはない.
(iii) k = 2 のとき.A が勝ちうるのは X = 2, 3 のとき.
X = 2 で A が勝つ確率は
3 C2
( )3
1
×q
2
で,賞金は 3 点.
X = 3 で A が勝つ確率は
3 C3
( )3
1
2
で,賞金は 4 点.
5
ゆえに = EA より
4
5
= 3 · 3 C2
4
q=
( )3
( )3
1
1
× q + 4 · 3 C3
2
2
2
である.
3
(iv) k = 3 のとき.A が勝ちうるのは X = 3 のとき.A が勝つ確率は
( )3
1
q
3 C3
2
で,賞金は 4 点.
5
ゆえに = EA より
4
5
= 4 · 3 C3
4
( )3
1
×q
2
0<
= 1 の q でこれを満たすものはない.
=q<
∴
k = 2, q =
36
2
3
(2) X = 0, 1, 2, 3 のそれぞれと,X = 2 のときはさらにくじの当たりはずれで場合に分ける
と,A と B の賞金額が確定する.
A の賞金
0
1
8
0
1
3
8
0
2 ではずれ
3 1
1
· =
8 3
8
0
2 で当り
3 2
2
· =
8 3
8
3
3
1
8
4
B の賞金
1
2
3
0
0
X
確率
上のゲームを 2 回行ったとき,B の賞金総額が 3 円であるのは,0 円と 3 円か,1 円と 2 円
場合なので,2 回のうちいずれの回にどちらが起こるかを考えると,その確率は
{ (
)
}
1
2 1
1 3
3
2×
·
+
+ ·
=
8
8 8
8 8
16
このとき,A の賞金総額も 3 円であるのは.2 ではずれと 2 で当りが 1 度ずつ起こるときな
ので,
2×
1 2
1
· =
8 8
16
求める条件付き確率は
1
3
1
÷
=
16 16
3
である.
解答 6
問題 6
(1) N = 5 のとき.X = 0, Y = 0 となるのは,5 の目が連続する場合なので
P (X = 0, Y = 0) =
1 1
1
· =
6 6
36
一方 Y = 0 となるのは,2 つの目の出方が
(1, 4), (2, 3), (3, 2), (4, 1), (6, 4), (4, 6), (5, 5)
となる場合なので 7 通りある.
∴
P (X = 0)P (Y = 0) =
1 7
1
·
̸=
6 36
36
つまり 2 つの確率変数 X と Y は独立ではない.
N = 6 のとき.X を i に固定する.このとき 2 回目に出る目を x とすれば Y = j となるのは
i + x = j + (6 の倍数)
のとき.この x は x = j − i + (6 の倍数) より j − i を 6 で割った余りなのでただ一つである.
∴
P (X = i, Y = j) =
37
1 1
1
· =
6 6
36
一方 Y = j となるのは,1 回目の結果が X = i (i = 0, 1, 2, · · · , 5) のいずれに対しても,2
回目に出るべき目は j − i を 6 で割った余りなのでただ一つである.
∴
=
P (X = i)P (Y = j)
( )2
1
1
1
· 6 C1
=
6
6
36
つまり 2 つの確率変数 X と Y は独立である.
(2) N = 3 のとき.X を i に固定する.このとき 2 回目に出る目を x とすれば Y = j となるのは
i + x = j + (3 の倍数)
のとき.この x は,x = j − i + (3 の倍数) より j − i を 3 で割った余りなので 2 つある.
∴
P (X = i, Y = j) =
2 2
1
· =
6 6
9
一方 Y = j となるのは,X が i = 1, 2, 3 のいずれに対しても,2 回目の目は j − i を 3 で
割った余りなので 2 つある.
∴
P (X = i)P (Y = j)
( )2
2
2
1
=
· 3 C1
=
6
6
9
つまり 2 つの確率変数 X と Y は独立である.
N = 4 のとき.X = 0, Y = 0 となるのは,4 の目が連続する場合なので
P (X = 0, Y = 0) =
1 1
1
· =
6 6
36
一方 Y = 0 となるのは,2 つの目の出方が
(1, 3), (2, 2), (3, 1), (6, 2), (5, 3), (4, 4), (3, 5), (2, 4), (6, 6)
となる場合なので 9 通りある.
∴
P (X = 0)P (Y = 0) =
1 9
1
·
̸=
6 36
36
2 つの確率変数 X と Y は独立ではない.
N>
= 7 のとき.X = 6 のとき,Y = 6 となることはない.
∴
P (X = 6, Y = 6) = 0
一方 Y = 6 となるのは,2 つの目の出方が
(1, 5), · · ·
といくつかあり,P (X = 6) =
1
なので
6
P (X = 6)P (Y = 6) ̸= 0
つまり 2 つの確率変数 X と Y は独立ではない.
38
解答 7
問題 7
(i)
P (X = 0)
= (1 − a)(1 − b)
P (X = 1)
= a(1 − b) + (1 − a)b
P (X = 2) = ab
であるから
(1 − a)(1 − b) = (1 − p)2
a(1 − b) + (1 − a)b =
ab =
2p(1 − p)
p2
となる a, b が存在するかどうかが問題である.
この第 2,第 3 式を加えることで,a + b = 2p.a + b = 2p, ab = p2 は第 1 式も満たす.
よって,a と b は
t2 − 2pt + p2 = 0
の 2 解となる.これから」a = b = p.p は 0 < p < 1 なので,0 < a, b < 1 も満たされて
いる.
任意の p (0 < p < 1) に対して,条件を満たす a と b が存在する.
(ii) 同様に考え
(1 − a)(1 − b) =
a(1 − b) + (1 − a)b
=
ab =
1
3
1
3
1
3
とならねばならない.これから a + b = 1 が必要である.a と b は
t2 − t +
1
=0
3
の 2 解となるが,これは実数解をもたない.よって条件を満たす a と b は存在しない.
解答 8
問題 8
(1) 色の変化が起こる場所 (電球と電球の間と考えればよい) は n − 1 通りある.1 つの場所で色
が変化する確率は青赤か赤青なので
1
1 1 1 1
· + · =
2 2 2 2
2
ゆえに 1 回だけ色が変化する確率は
n−1 C1
39
( )n−1
1
2
左端が赤色の場合と青の場合が
1
ずつなので,求める確率は
2
n−1
2n
1
である.ゆえに n − 1 カ所で色が変化しない確率は
2
(2) 1 つの場所で色が変化しない確率も
1
2n−1
である.
また 1 回変化する確率は
n−1 C1
2n−1
である.
したがって色の変化が少なくとも 2 回起きる確率は,
(
)
n−1
1
n
1−
+
= 1 − n−1
2n−1
2n−1
2
(3) 同様に考え
n−1 Cm
2n−1
(4) 色の変化の回数を X とおく.
E(X)
=
n−1
∑
m=1
=
=
=
n−1 Cm
m n−1
2
1
2n−1
1
2n−1
n−1
∑
m=1
n−1
∑
m
=
1
2n−1
n−1
∑
mn−1 Cm
m=1
n−1
1 ∑
(n − 1)!
(n − 1)(n − 2)!
= n−1
(n − 1 − m)!m!
2
{n
−
2
− (m − 1)}!(m − 1)!
m=1
(n − 1)n−2 Cm−1 =
m=1
n−2
n−1 ∑
n−2 Ck
2n−1
k=0
n − 1 n−2
n−1
2
=
2n−1
2
[注意]二項整数の性質
k n Ck = nn−1 Ck−1
(1 <
=k<
= n − 1)
を用いている.上のように直接計算 (これが方法 1) してもよいが次のようにも示せる.
方法 2
二項定理より
(1 + x)n =
n
∑
k
n Ck x
k=0
この両辺を x で微分する.
n(1 + x)n−1 =
n
∑
k n Ck xk−1
k=1
両辺の xk−1 の係数を比較して
nn−1 Ck−1 = k n Ck
40
(1 <
= n − 1)
=k<
方法 3
n 人から k 人の委員とその中の委員長を選ぶ選び方を考える.
n 人から k 人の委員をまず選び, k 人の中から委員長 1 人を選ぶ,とすると,n Ck × k
通りの選び方がある.
n 人から委員長を先に選び,その後 n − 1 人から残る k − 1 人の委員を選ぶ,とする
と,n × n−1 Ck−1 通りの選び方がある.
∴
k n Ck = nn−1 Ck−1
(1 <
=k<
= n − 1)
[(4) の別解]
確率変数 Xk を
{
Xk =
1
0
(k 番目の場所で変化する)
(k 番目の場所で変化しない)
で定める.
X = X1 + X1 + X2 + · · · + Xn−1
である.また
E(Xk ) = 0 ·
1
1
1
+1· =·
2
2
2
である.
∴
E(X) =
n−1
∑
E(Xk ) =
k=1
解答 9
n−1
2
問題 9
(1) ただし書きより,題意を満たす円 C の中心が存在する領域の一つの正方形内部にある部分
が,正方形に対して占める比が,求める確率である.図 3 のように
(i) h > 2 のときは正方形の 1 つの頂点に対して,1 辺 1 の正方形の内部が中心の存在しう
る範囲.
4
∴ p= 2
h
(ii) 2 >
=h>
= 1 のときは,円が他の頂点を通る直線と共有点をもたない範囲なので正方形の
1 つの頂点に対して,1 辺 h − 1 の正方形の内部.
∴
p=
(iii) h > 1 のときは明らかに p = 0
1
図1
h−1
41
4(h − 1)2
h2
(2) 同様の理由で,半径
√
2 + 1 の円の中心を結ぶ正三角形の内部に占める,円 C の存在領域の
比が求める確率である.
A
Q
B
θ
図2
O1
√
√
2+2 2 2+2
O
図3
図 2 で AB の長さを求める.
√
√ √
√
3−1
AB = 2 3( 2 + 1) − 2( 2 + 1) = 2 · √
>1
2−1
したがって円 C が 4 つの円と交わることはない.
√
点 P を中心とする半径 2 + 1 の円と円 C が共有点をもつのは,C の中心が P を中心とす
√
√
る半径 2 の円の外部,半径 2 + 2 の円の内部にあればよい.
したがって C が 3 円と交わるのは,図 3 の斜線の領域に C の中心が来るときである.この
面積を求める.
領域上の境界の点 Q を座標を入れて
√
√
Q(( 2 + 2) cos θ, ( 2 + 2) sin θ)
とおく. QO1 も
√
2 + 2 なので
√
√
√
√
( 2 + 2)2 = {( 2 + 2) cos θ( 2 2 + 2)}2 + {( 2 + 2) sin θ}2
1
π
これを解いて cos θ = √ .ゆえに θ =
.
4
2
したがって,求める領域を原点から見る角度は
π
である.
6
領域の Q など各頂点を結ぶ正三角形の 1 辺の長さを x とおく.△QOO1 についての余弦定
理より
√
√
√
π
x = 2( 2 + 2)2 − 2( 2 + 2)2 cos = 2( 2 + 2)2
6
2
(
√ )
3
1−
2
正三角形の外にある爪形の面積 s は
s=
√
1
π √
1 π √
· ( 2 + 2)2 − · sin ( 2 + 2)2 = ( 2 + 1)2
2 6
2
6
(
ゆえに求める面積 S は
√
(
)
√
1
3 2
π √
S= ·
x + 3s = ( 2 + 1)2
+ 3−3
2 2
2
42
π 1
−
6
2
)
∴
S
√
q=
=
√
1
3
2
·
{2( 2 + 1)}
2 2
43
√
√
3π
+1− 3
6