数学 B 第 7 回 担当: 田中 冬彦1 複素積分を利用した定積分の計算 7 一般に 1 x2 +1 ∫ ∞ の積分は arctan x を用いて計算できる。しかし, シーの積分定理を応用することでも計算可能になる. −∞ 1 dx の場合はコー x2 + 1 ジョルダンの補助定理 CR を原点を中心とする半径 R(> 0) の円周の上半分とする. f (z) が |z| = R → ∞ で 1/R2 のオーダーならば ∫ eiaz f (z)dz → 0, R → ∞ CR は容易に示せる. もっと遅い場合は次の結果 (ジョルダンの補助定理) を用いる. 上半面 0 ≤ arg z ≤ π で z → ∞ の時, f (z) が一様に 0 に収束するとき, 任意の a > 0 で, ∫ IR := eiaz f (z)dz → 0, R → ∞ CR が成立. 円周を扇型に制限した (0 ≤)θ1 ≤ arg z ≤ θ2 (≤ π) の範囲で考えてもよい. 問 162. 複素積分 ∫ JR := CR eiaz dz (z − i)2 を考える. ただし, CR は原点を中心, 半径 R(> 1) の円周の上半分, a は実定数とする, 以 下の問に答えなさい. (a) z = Reiθ = R(cos θ + i sin θ), 0 ≤ θ ≤ π とおくとき, |z − i| ≥ |R − 1| が常に成立する ことを示しなさい. (b) 以下の不等式を示しなさい. ∫ π |JR | ≤ 0 e−aR sin θ R dθ (R − 1)2 (c) a ≥ 0 の時 lim JR を求めなさい. また, a < 0 の時はどうなるか. R→∞ 1 たなか ふゆひこ, 基礎工学部 J 棟 J612 号室, [email protected] 1 問 163. f (z) は |z| > R0 > 0 で正則であり, さらに |f (z)| ≤ この時, 以下を示しなさい. A が成立しているとする. |z|2 ∫ eiaz f (z)dz → 0, R → ∞ IR := CR ただし, a > 0, CR は原点を中心, 半径 R(> R0 ) の円周の上半分とする. 問 164 (オーダー評価). α ̸= 0 を任意の複素定数, m を正の整数として f (z) = おく. z → ∞ での振る舞いについて以下の問に答えなさい. 1 (z−α)m と (a) R0 = |α|(> 0) とおく. |z| > R0 のとき, 以下の不等式を示しなさい. ( ) 1 , |z − α| ≥ |z| 1 − R0 (b) ある正の定数 A が存在して, |z| > R0 のとき, 以下の不等式が成立することを示しな さい. 1 A ≤ |z − α| |z| を示せ. (A は具体的に求めてもよい.) (c) ある正の定数 B が存在して, |z| > R0 のとき, 以下の不等式が成立することを示しな さい. B |f (z)| ≤ m |z| 問 165. Qn (z) を z の n 次多項式とする (n ≥ 1). (a) R を十分大きい正の定数とする. このとき, 適当な正の定数 A > 0 が存在して, |z| ≥ R ⇒ 1 A ≤ n |Qn (z)| R のように上からおさえられることを示しなさい. (これは Qn (z)−1 = O(R−n ) を示して いる. ) ∫ eiaz dz について lim JR (b) n ≥ 2 とする. a ≥ 0 を実定数とする. この時, JR := R→∞ CR Qn (z) を求めなさい. ただし, CR は原点を中心, 半径 R の円周の上半分とする, ∫ ∞ g(x) dx のタイプは, 分母の多項式 Qn (x) が実軸上に零点を −∞ Qn (x) もたない場合, かつ, |x| → ∞ で十分早く g(x)/Qn (x) が 0 に収束する場合は留数計算から 求めることもできる. 実数関数の広義積分 2 問 166. m 次多項式 Pm (x), n 次多項式 Qn (x), n − 2 ≥ m ≥ 1 について定積分 ∫ ∞ Pm (x) dx −∞ Qn (x) を考える. ただし, Qn (x) は実数解をもたないと仮定する. このとき, 以下の問に答えな さい. ∫ Pm (z) (a) lim dz = 0 を示しなさい. ただし, CR は原点を中心, 半径 R の円周の上半 R→∞ C Qn (z) R 分とする. (b) 適当な経路での複素積分を考えることにより, ∫ ∞ −∞ k ∑ Pm (x) Pm (z) dx = 2πi Resz=αj Qn (x) Qn (z) j=1 を示しなさい. ただし, ここで α1 , . . . , αk は Imz > 0 における異なる k 個の極である. 問 167. 以下の定積分を複素積分を利用して計算しなさい. ∫ ∞ 1 (a) dx. 2 −∞ x + 1 ∫ ∞ x2 (b) dx. 2 2 −∞ (x + 1)(x + 3) 問 168. 以下の問に答えなさい. ただし, a > 0. (a) z = ai を含む単純閉曲線 C (反時計回り)について以下を示しなさい. I 1 dz 1 = 2 2 2ai C z + a 2πi ∫ ∞ (b) −∞ x2 1 π dx = を示しなさい. 2 +a a (c) z = ai を含む単純閉曲線 C (反時計回り)について以下を求めなさい. (難) I dz 1 (2(n − 1))! 1 = (2a)−2n+2 , n = 1, 2, . . . 2 2 n 2 2ai ((n − 1)!) C (z + a ) 2πi ∫ ∞ (d) −∞ (x2 1 dx, n = 1, 2, . . . を求めなさい. + a2 )n 問 169. 以下の定積分を複素積分を利用して計算しなさい. ∫ ∞ ∫ ∞ x sin ax cos ax (a) dx, dx, a > 0. 2 x +1 x2 + 1 0 0 3 ∫ ∞ ∫ ∞ x sin ax dx, a > 0. x4 + 1 0 0 ∫ ∞ 1 問 170. 複素積分を利用して dx を求めなさい.(難) 1 + x6 0 ∫ ∞ 1 問 171. 複素積分を利用して dx, a, b, c は正定数で b2 > ac を満た 4 2+c ax + 2bx 0 す.(難) (b) cos x dx, x4 + 1 ∫ ∞ sin x dx などは極 x = 0 を上側に迂回する経 x 0 路をとることで, 1/z の半周分の寄与が積分値に出てくる. 分母が実軸に極をもつ場合, たとえば 問 172. 定積分 ∫ 0 ∞ sin x dx x を複素積分を利用して求めなさい. xa (a > 0), log x は複素平面上で多価関数になるため一周しても値が一致しない. たと えば a が整数でないとき, 閉曲線 z = Reiθ , 0 ≤ θ ≤ 2π 上で z a の値は z a = Ra → (Rei2π )a = Ra ei2πa のように変化する. このことを利用して積分を計算することもある. 問 173. 定積分 ∫ ∞ 0 x−a dx, 0 < a < 1 1+x を複素積分を利用して求めなさい. 0 ≤ θ ≤ 2π での三角関数の積分は z(θ) := eiθ , 0 ≤ θ ≤ 2π とおくことにより cos θ = (z + 1/z)/2, sin θ = (z − 1/z)/2i と変換して複素積分に帰着できる. (|z| = 1 の下では z̄ = 1/z のように書きなおせることに注意する.) 問 174. 以下の定積分を複素積分を利用して求めなさい. ただし, a > 0 は定数. ∫ 2π 1 (a) dθ. 1 − 2a cos θ + a2 0 ∫ 2π sin2 θ (b) dθ. 1 − 2a cos θ + a2 0 4 ∫ 2π (c) 0 sin2 θ dθ. 1 + a cos θ 問 175. 以下の定積分を複素積分を利用して証明しなさい. ∫ 2π 1 2π (a) dθ = √ , 0 < a < 1. 1 + a cos θ 1 − a2 0 ∫ 2π 1 2π (b) dθ = √ , 0 < a < 1. 2 (1 + a cos θ) ( 1 − a2 )3 0 複素積分とは直接, 関係ないがガウス積分はよく出てくる. 統計では正規分布(ガウス 分布)として高校の時点で出てくるため基本的な積分計算を紹介しておく. 問 176 (ガウス分布のモーメント公式). ガウス分布に関して以下の問に答えなさい. } ∫ ∞ {∫ 2π ∫ ∞ −x2 ∫ ∞ −y2 2 −r2 re dθ dr を示しなさい. (a) I = −∞ e dx = −∞ e dy について, I = 0 0 √ 2 (b) 任意の a > 0 について等式 −∞ e−ax /2 dx = 2πa−1/2 を示しなさい. ∫∞ (c) (b) の式の両辺を a で微分して a = 1 と置くことで ∫ ∞ 1 2 √ x2m e−x /2 dx, m = 0, 1, 2, . . . 2π −∞ を m の式であらわしなさい. (微分と積分の順序交換は証明なしで用いてよい.) 問 177 (ガウス分布の積分). ガウス分布に関して以下の積分を計算しなさい. ただし a, b, c, は実定数. ∫ ∞ 1 2 (a) √ e−(ax +2bx+c)/2 dx, a > 0. 2π −∞ ∫ ∞ 1 2 (b) √ cosh x e−x /2 dx. 2π −∞ ∫ ∞ x2 問 178 (ガウス分布の積分). ガウス分布の積分 I = e− 2 dx に関して以下の問に答え −∞ なさい. ∫ ∞+it (a) 実定数 t を固定する. 積分路を it だけ上にずらして J = z2 e− 2 dz という複素積 −∞+it 分を考える. 複素平面上で −R1 , R2 , R2 + it, −R1 + it を結ぶ長方形の経路を考えるこ ∫ t とにより, R1 , R2 → ∞ で J = I を示せ. (ヒント: たとえば K(R) := とおいて, R → ∞ で K(R) → 0 を示してみよ.) ∫ ∞ 1 2 (b) √ eitx · e−x /2 dx (t ∈ R) を求めよ. 2π −∞ ∫ ∞ 1 2 (c) √ cos x e−x /2 dx を求めよ. 2π −∞ 5 0 e− 2 (R+iy) idy 1 2
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