酸素濃度測定によるスクリーニング

酸素濃度測定によるスクリーニング
Leiden - Haarlem - Amsterdam 地区
Informatiebrochure Japanese version 2 13-02-2015
酸素濃度測定によるスクリーニング
オランダで一年間に生まれる18万人の子供のうち、約1300人が先天性心疾患(生まれ
つきの心臓病)を持って生まれます。幸い大半の先天性心疾患は治療することができますが、
多くの場合、心臓手術が必要となります。
すべての心疾患が早期発見されるわけではありません。
オランダではすべての妊婦に妊娠20週の時点でエコー検査が実施されます。この検査によ
って、半数の先天性心疾患が検出されますが、残念ながら、残りの半数は見つけられません。
出生直後の新生児には、まだ心疾患を疑わせるようなはっきりした症状が現れないことが多
いため、病気の発見が遅れてしまったり、発見されないままになったりしてしまうことがあ
ります。
心疾患の検出(早期発見)
心疾患のある場合、血液中の酸素濃度が低下することがありますが、これは出生直後の新生
児の様子からははっきりしないことが殆どです。しかし、血中の酸素濃度を測ることでこれ
を検出することができます。測定には酸素濃度測定器を用います。オランダ周辺の国ではす
でに先天性心疾患の早期発見を目的にこの検査が病院で導入されています。オランダの新生
児の大半は出生後、同日中に自宅に(戻って)います。この点は周辺国と異なります。この
スクリーニング検査を我が国の医療事情の下で行った場合にも、周辺国でみられるのと同様
の信頼性と対費用効果が得られるか。これを調査することが本研究の目的です。その一環と
して1年間、ライデン、ハーレムおよびアムステルダム地区においてスクリーニング検査を
実施します。
図 1:
酸素濃度測定器
図 2: 新生児の足に取り付けられた測定センサー
他の疾患または異常の検出について
先天性心疾患の他にも血中酸素濃度の低下する病気があります。たとえば、感染症にかかっ
ている場合や肺に問題がある場合です。血中酸素濃度測定を行うことで、このような異常も
早期に発見することができます。
血中酸素測定器とは
血中酸素測定器とはその名の通り、血液中に含まれる酸素の濃度を測ることのできる器具で
す。新生児の手首、足首に測定バンドを巻いて測定器を取り付けます。細い血管内の酸素濃
度の測定には測定器から出る光線が用いられます。そのため、この検査によって痛みが生じ
ることはありません。
スクリーニング検査の実施される地域
このスクリーニング検査はアムステルダム、ハーレム、ライデン地区で実施されます。スク
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リーニングはライデン大学医療センター(LUMC)、アカデミック医療センター(AMC)及びフ
ライエ大学医療センター(VUmC)により運営されます。このスクリーニングに共同参加する
病院および助産婦センターの一覧は www.polarstudie.nl のサイトにてご確認頂けます。この
スクリーニング検査は政府から提供される乳児のスクリーニングプログラム(聴力検査及び
血液検査による先天性疾患スクリーニング)とは別のものです。
スクリーニング検査の実施者
病院で出産された場合、測定は病院の医師、看護婦あるいは助産婦が行います。自宅出産さ
れた場合は助産婦が測定します。共同参加する助産婦は酸素濃度測定器を所有しています。
病院にはこの測定器が常備されています。
スクリーニングの実施方法
出産約一時間後に新生児の右手首および左右どちらかの足首で血中酸素濃度を測定します。
大半の結果は正常であることが予想されますが、その場合にも、念のため、生後2日目・3
日目に再度測定を行います。測定値が低すぎる場合は異常と判断されます。
結果が異常と判断された場合
検査結果が異常と判断されたからと言って、必ずしもお子様に心臓の病気またはほかの健康
問題があるとは限りません。というのは、測定ミスあるいは他の何らかの原因で酸素濃度の
測定結果が低く出る可能性もあるからです。いずれにしても、検査で異常値が出た新生児は
全員、二次検査を受けることとなります。まず病院で小児科医の健診を受け、再度、酸素濃
度測定をします。改めて異常値が出た場合には、循環器専門医(心臓病領域の専門家)と相談
し、心臓エコー検査の予定を組みます。また、酸素濃度低下の引き金となりうる他の原因に
ついても検査を行います。心臓エコー検査にて心臓疾患が確認された場合は、引き続き、小
児循環器科医の治療を受けることとなります。
通常の経緯と異なる点
通常、助産婦は新生児に異常がないかどうかを調べます。このスクリーニング検査ではこれ
に加えて酸素濃度測定が行われます。現在すでに、医療サービスの一環として全ての新生児
でこの検査が行われている病院や助産婦センターもあります。
安全性
酸素濃度測定検査は安全な検査です。この検査は何年も前から、病院で入院中の新生児の状
態管理のために一般的に採用されていますが、健康に害を与えるような要因は報告されてい
ません。
スクリーニング検査の利点・欠点
利点:
-出生直後、心疾患による症状ははっきりしないことがよくあります。このため、先天性心
疾患の発見が遅れることがあります。酸素濃度測定によって一部の心疾患、またはそれ以外
の危機的な健康問題がより早期に発見されます。さらに、これが早期対応を可能にし、新生
児が重症になることを予防することができます。
- 測定によって、心疾患以外の酸素濃度低下をもたらす原因となる健康問題も早期に発見さ
れます。例えば、肺の問題や感染症ですが、これらが早期に発見されることで、重症化する
前に治療することが可能になります。
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問題点:
- 僅かながら、心疾患のない新生児で酸素濃度測定値が異常値を示す可能性があります。こ
れによって、新生児の両親および助産婦が不要に心配をさせられる場合があり得ます。
スクリーニング検査は自由参加
保護者が検査を希望しない意思表示をした新生児を除き、基本的に全ての新生児において酸
素濃度測定が行われます。お子様にこの検査を受けさせる義務はありませんので、自由参加
です。また、スクリーニング検査への参加の有無はかかっていらっしゃる助産婦・医師との
関係に何ら影響を与えるものではありません。
プライバシー
お子様の個人情報は慎重に取り扱われます。個人情報を参照できるのは研究チームのみです。
この情報は匿名コード化後、保存され内密に扱われます。集約された情報は科学的研究発表
に利用されることはありますが、この場合にも匿名でありお子様個人が特定されることはあ
りません。
スクリーニング検査結果は100%の確実性を持つかどうかについて。
お子様の血中酸素濃度が異常値を示したにもかかわらず、二次検査の結果、心疾患が見つか
らないこともあり得ます。また、可能性は僅かですが、先天性心疾患があるにもかかわらず、
酸素濃度が正常値を示すこともあり得ます。つまり、検査結果が正常であったからと言って
100%確実に心臓に問題がないとは言いきれません。もし、お子様の健康について心配な点
がありましたら、いつでも、掛かりつけの家庭医にご相談ください。
医学研究倫理委員会の承認
この研究はライデン医学研究倫理委員会の承認を得ています。
より詳しい情報
より詳しく知りたい方はウェブサイトwww.polarstudie.nlをご参照ください。
この説明文書及びウェブサイトをお読みになった上で、なお、不明な点がありましたら、ご
遠慮なく掛かりつけの助産婦にお尋ねください。
研究実践者:
Ilona Narayen, arts-onderzoeker
Leids Universitair Medisch Centrum
Afdeling Neonatologie
Telefoonnummer: 071-5298862
監督医師:
Dr. R.S.G.M. Witlox, neonatoloog
Leids Universitair Medisch Centrum
Afdeling Neonatologie
Telefoonnummer: 071-5264987
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