表紙解説 - 滋賀大学学術情報リポジトリ

Study Abroad Report
留学体験記
表紙解説
学部
滋賀大学教育
じん ぼ たみ か
卒業生 神保 民香
つづら
中井源左衛門家の『文書葛籠』
自分にしかできない留学を
私
右から2人目が
今回ご紹介するのは、蒲生郡日野町大窪を本拠とした近江商人・
中井源左衛門家に伝来した「文書葛籠」です。正面に「帳面入」
と朱
書きされていることから、
この葛籠は中井家で商用帳簿などを収め
るのに用いていたと考えられます。丸に小さい四角のマークは、中
やじるし
「今の時代、留学している人なんていっぱいいるよね∼。」
たし、
日本人としての自覚や責任を培うことができました。 ま
井家の京店の屋印です。さらに右側面には「上京廿九区御池通高
世間でよく聞くこの言葉。そんな中、私は留学をして何を得る
た、大学で新しく日本文化を紹介するクラブのようなものも
宮町」
と、京店の所在地(御池通間之町西入る)が記されています。
ことができるのだろうか、
と不安でいっぱいの留学前。そして、
作り、友達や日本に興味がある人たちと一緒に楽しく活動し
留学終了後の今、
この10カ月間が自分にとって大きな意味の
ました。短期間だったので計画などには非常に悩みました
あるものになったと自信を持って言うことができます。
が、楽しく日本を紹介することができたかと思います。
なので、葛籠の作成・使用年代を推測する手がかりとなります。
2010年の秋から、私はミシガン州のデトロイト市にあるウ
授 業 は 主 に 教 育 関 係 の も の を 取りまし た 。中 で も 、
葛籠の蓋には前に蝶番が、後ろに鍵が付いており、
この鍵で蓋を
エイン州立大学で1学年間(2セメスター)学びました。留学先
Multicultural Education in Urban America(アメリカ都市に
閉め切ることができました。
さらに葛籠の背面には背負うための紐
を知らされてまず始めに思ったことは、
「デトロイト!?」皆さ
おける多文化教育) という授業では、デトロイト市における多
んもご存知のように、デトロイトは自動車産業で有名な所で
文化教育の在り方等を社会的、経済的側面から考察し、知識
すが、困ったことに、犯罪率が高いことや、治安が悪いことで
と理解を深めるというもので、非常に興味深く、毎回授業に行
も有名な都市です。もちろん親や友達もそのような所に一人
くのが楽しみでした。それでもやはり英語力が原因で授業中
で留学に行くと聞いて心配しました。
しかし行ってみると、危
や課題をするにあたって困難なこともたくさんありましたが、
なそうな場所はあるけれど、キャンパス内には多くの警備も
先生方や友達、
クラスメイトのおかげで無事、課程を終えるこ
あり、
日が経つにつれて慣れることができました。
とができました。授業の一環で、デトロイト市の公立高校でボ
しかし、行って一番驚いたことは3万人余り学生がいる大学
ランティアをする機会もいただき、向こうでの教育の現状や
に日本人が誰もいないということです。デトロイトという地を
仕組みなどを自分の目で見られる良い機会でした。
恐れて日本からの留学生が来ないそうです。留学をしても、そ
年まで続いた店でした(店名前は日野屋源右衛門)。
ところで、上京
29区とは1872(明治5)年∼1879(明治12)年にかけて使われた表記
ちょうつがい
が付いていますから、いざという時には帳簿を葛籠ごと背負って避
難することも想定していたのでしょう。
青柳 周一(経済学部附属史料館教授)
『琵琶湖漁具図説』(附属図書館分館)
同一書名のものが1910(明治43)年と1924(大正13)年に出てい
ますが、ここに掲げたものは明治のものです。原本は洋装本、
280×190mm、本文76ページ。1910(明治43)年7月に大津市蔵橋
町(現浜大津二丁目)にあった近江水産組合から出版されています。
著者は滋賀県水産試験場の細谷齷三。同氏執筆の凡例に、琵琶湖
水産事業経営の確立と漁業取締上の参考にするために調査したと
の留学先で多くの日本人がいて英語上達に悩む、
ということ
ありますが、当時、琵琶湖で実際に見られた魚具について、網具、釣
具、雑漁具の三類に分け、網は小糸網、投げ網、四手網など運用漁
をよく聞きますが、行ってみると本当に誰もいなくて、それは
具19種、定設漁具4種、釣具3種、雑漁具としてタツベや
それで不便なことも多く、始めの頃は大変な日々を送りまし
えり
やな
、簗など8
種について、
スケッチ図をつけて説明しています。簡単な説明のも
た。大学では「日本人が来たぞ」
と珍しがられ、日本代表のよ
のもありますが、数ページにわたって網の部分ごとの名称やその
うな存在になってしまい、
日本のことがニュースなどで出るた
方言、
また使用法、漁期、対象となる魚介の種類、多く見られる場所
など、詳しく記したものもあります。
ここに掲げたのは、 の展開を
びに、すぐ私のもとに「これはどうなってるんだ!」
と聞いてく
図示したページです。
る学生が多かったです。始めはそれが非常にプレッシャーで
したが今となっては改めて日本をよく知る良い機会にもなっ
中井家の京店は幕末の1849 (嘉永2) 年に開店して、1938 (昭和13)
東日本大震災へのチャリティー活動
「ベイクドセール」
木全 清博(教育学部教授)
始めにも書きましたが、日本中で留学をしている人はたくさ
んいます。その中でどのような留学生活を送るのか、その留学
経験を今後どのように活かすのか、それは本当に自分次第な
のだと感じました。自分の思い通りにはなかなかいかないけれ
ど、目標を持って自分自身が動けば、きっと何かが見えてくるの
だということを実感しました。もし、
これから留学を考えている
日本文化クラブを開催
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感謝します。ありがとうございました。
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