2012 年度数学 IA 演習第 7 回 理 I 29 ∼ 34 組 10 月 9 日 清野和彦 問題 1. 次の広義積分が収束することを示し、値を計算せよ。 ∫ ∞ ∫ 1 1 x tan−1 x √ √ (1) dx (2) dx x x2 − 1 1 − x2 1 −1 ∫ 3 (3) √ 0 ∫ ∞ (5) 1 ∫ ∞ 問題 2. 広義積分 0 ∫ 1 |x(x − 2)| log x dx xn dx ∞ (4) 0 1 dx 1 + x3 (n = 2, 3, . . .) sin x dx は収束するが、広義積分 x ∫ ことを証明せよ。 問題 3. a > 0 とし、 ∫ 2 Ia = 1 1 dx (x2 − 1)a とする。Ia は積分範囲の下側において広義積分である。 (1) a < 1 では Ia は収束することを証明せよ。 (2) a ≥ 1 では Ia は発散することを証明せよ。 問題 4. b > 0 とし、 ∫ ∞ Jb = 1 (x2 1 dx + 1)b とする。 (1) b > 1 2 では Jb は収束することを証明せよ。 (2) b ≤ 1 2 では Jb は発散することを証明せよ。 ∞ 0 | sin x| dx は発散する x 問題 5. 次の広義積分が収束するか発散するか判定せよ。(収束する場合でも、値 は求めなくてよい。) ∫ ∞ ∫ ∞ 1 1 (1) sin dx (2) sin 2 dx x x 1 1 ∫ (3) 0 ∞ ∫ 1 − cos x dx x2 ∞ (4) 2 1 dx log x 問題 6. 次の広義積分が収束することを示し、値を求めよ。 ∫ ∞ ∫ −ax (1) e sin bxdx (a > 0, b > 0) (2) π 2 log(sin x)dx 0 0 問題 7. x > 0 に対し広義積分 ∫ Γ(x) = ∞ e−t tx−1 dt 0 が収束することを示し、 Γ(1) = 1 と Γ(x + 1) = xΓ(x) が成り立つことを証明せよ。 (x > 0 を定義域とする 1 変数関数 Γ(x) をガンマ関数と言います。) 問題 8. x > 0 と y > 0 に対し広義(かもしれない)積分 ∫ 1 B(x, y) = tx−1 (1 − t)y−1 dt 0 が収束することを示し、 ∫ B(x, y) = B(y, x) と B(x, y) = 2 π 2 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ 0 が成り立つことを証明せよ。 (x > 0 かつ y > 0 を定義域とする 2 変数関数 B(x, y) をベータ関数と言います。) 2012 年度数学 IA 演習第 7 回解答 理 I 29 ∼ 34 組 10 月 9 日 清野和彦 目次 1 広義積分とは:積分範囲の極限 なぜこんな当たり前っぽいものにわざわざ「広義積分」なんていう名前が付いてい 1.1 るのか . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 広義積分の定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1.2.1 問題 1 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 4 広義可積分性の判定法 2.1 コーシーの収束条件 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2.2 広義積分における「絶対収束」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 7 9 2.2.1 問題 2 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 絶対収束の判定法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 11 2.3.1 2.3.2 2.3.3 問題 3 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 問題 5 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 14 15 2.3.4 問題 6 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 1.2 2 2.3 3 1 問題 4 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ガンマ関数とベータ関数 18 3.1 3.2 問題 7 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 問題 8 の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 19 3.3 ガンマ関数とベータ関数について後に学ぶこと . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20 広義積分とは:積分範囲の極限 1 なぜこんな当たり前っぽいものにわざわざ「広義積分」なんていう名前が付 いているのか 1.1 もしかすると高校のとき、例えば ∫ π 2 π 4 1 dθ = sin2 θ ∫ π 2 π 4 cos2 θ dθ = sin2 θ cos2 θ ∫ π 2 π 4 1 tan′ θdθ = tan2 θ ∫ ∞ 1 [ ]∞ 1 1 dx = − =1 x2 x 1 (1) なんていう計算を当たり前にやってきたかも知れません。この計算のうち置換する前の θ につい ての積分の部分は普通の定積分なのですが、置換したあとの x についての積分は定積分ではない のです。 何が問題なのかというと、「リーマン和の極限としての定積分」は、有限区間上の有界な関数に 対してしか定義されていないということが問題なのです。実際、積分区間は有限区間だが関数が有 界でない場合、第 6 回その 1 の解説 14 ページの定理 3 で 2 第 7 回解答 [a, b] で定義された関数 f が有界でないなら、つまり、どんなに大きな M をとっても |f (x)| > M を満たす x が [a, b] に存在するなら、f は可積分でない ということを証明していますし、また、積分区間が無限区間の場合、例えば [0, ∞) におけるリー マン和を考えようとしても、リーマン和というものが積分区間の有限個の小区間への分割によって 定義されている以上、どう分割しても [b, ∞) という無限の幅を持つ「小区間」が残ってしまって、 それを底辺とする長方形の面積が考えられず、リーマン和そのものを定義することができなくなっ てしまうわけです。 「そんな細かいこと気にすることないじゃん。(1) の計算に問題があるとはとても思えないし。」 というのが自然な感想だと思いますが、定義していないものを使うわけにはいきません。そこをお ろそかにしないことが数学の良心であり倫理なのですから。 それでは、リーマン和による定義を作り替えて、有界でない関数や有界でない積分区間にも適用 できるようにがんばってみようか、という元気な人もいるかも知れません。しかし、普通はそうは 考えないのではないでしょうか。そんな難しげなことをしなくても、もっと安直にいけるのではな いだろうか、だって、(1) の計算っていかにも自然で指摘されなければまずいことがあることに気 づきさえしなかったかも知れないし、という感じではないでしょうか。なぜそこまで (1) の計算を 自然だと感じるのでしょうか? その理由を明らかにできれば、それを使って無限区間上の積分や有 界でない関数の積分を上手く定義できるかも知れません。それが我々の広義積分です。 それでは節をかえて「自然な感じ」の源と、それを使った広義積分の定義を説明しましょう。 1.2 広義積分の定義 前節の最初にあげた (1) の計算において、θ を x に置換したあとの操作を詳しく書くと、 ∫ R 1 −1 lim dx = lim +1=1 R→+∞ 1 x2 R→+∞ R というように積分区間について極限をとる操作をしていることがわかります。置換する前の定積分 ではそんなことをしていないのに、置換したあとの積分でそんな極限操作をしたら場合によっては 値が違ってしまうのではないだろうかと心配になってしまう人もいるかもしれません。つまり、 ∫ R ∫ tan−1 R ∫ π2 1 1 1 dx = lim 1 = lim 2 dθ = π 2 dθ R→+∞ 1 x2 R→+∞ π sin θ sin θ 4 4 という計算において、最後の等号が必ず成り立つのかどうかが気になるということです。 実は、積分される関数がどのようなものであってもこの等号は成り立ちます。前節で何度も言っ た「自然な感じ」の根拠がまさにこれなのです。そして、このことは不定積分の連続性によって保 証されています。 定理 1 (第 6 回その 1 解説の定理 24(35 ページ)参照). [a, b] で定義された関数 f が可積分 ∫ x なら、f は [a, b] に含まれる任意の閉区間上で可積分であって、F (x) = f (t)dt とすると、 a F (x) は連続、特に lim F (x) = F (b) (2) x→b が成り立つ。 ∫b というやつです。式 (2) があるので、直接 a f (x)dx が定義できなくても、左辺の極限 lim F (x) x→b 3 第 7 回解答 が存在するときにはそれを「積分」として採用してしまえば置換積分ともうまく合うし自然でもあ る、というわけです。 そこで、次のように定義します。 定義 1. b を実数または +∞ とする。[a, b) に含まれる任意の有界閉区間上で可積分な関数 f に対し、もし ∫ r f (x)dx lim r→b−0 a が存在するならば、f は [a, b) で(広義)可積分である、あるいは(広義)積分は収束すると いい、誤解のおそれのないときには極限の記号を使わずに ∫ b f (x)dx a と書いてしまう。 (a, b] で定義された関数についても同様に ∫ ∫ b b f (x)dx = lim r→a+0 a f (x)dx r と定義し、(a, b) で定義された関数については、任意の c ∈ (a, b) をとって ∫ ∫ b f (x)dx + lim r→a+0 a ∫ c f (x)dx = lim s→b−0 r s f (x)dx c と定義します。この場合注意しなければならないことは ∫ b−ε lim ε→+0 f (x)dx a−ε のように、両端の極限の取り方を関連づけたときの極限が存在しても広義可積分とは限らないこと です。例えば、 ∫ R→+∞ ) 1( 2 R − (−R)2 = 0 R→+∞ 2 R lim xdx = lim −R ですが、もちろん ∫ lim R→+∞ ∫ 0 S xdx + lim −R S→+∞ xdx 0 は確定しませんので広義可積分ではありません。 面倒なので、以下では具体例を除いて [a, b), (b ∈ R または b = +∞)の場合しか書きません が、(a, b], (a ∈ R または a = −∞)の場合にも対応することが成り立ちます。また、(a, b) の場 合には a と b の間に任意に c をとって (a, c] と [c, b) に積分区間を分けて考えてください。 例をやっておきましょう。当たり前みたいな例ですが、広義可積分かどうかの一般的な判定方法 はこの関数との比較しかありません。 例 1. α を実数とする。 1 が [a, b) で広義可積分なための必要十分条件は µ < 1 (b − x)µ 1 (2) λ が [1, +∞) で広義可積分なための必要十分条件は λ > 1 x (1) 4 第 7 回解答 である。 証明. (1) ∫ r ( 1 1−µ 1 1 − µ−1 (b − a) (b − r)µ−1 ) µ ̸= 1 1 dx = (b − x)µ log(b − a) − log(b − r) a µ=1 ですので、広義可積分、つまり r → b で収束するための必要十分条件は µ < 1 です。 (2) ∫ R 1 ( ) 1 1 1 − λ Rλ−1 − 1 1 dx = xλ log R λ ̸= 1 λ=1 ですので、広義可積分、つまり R → ∞ で収束するための必要十分条件は λ > 1 です。 □ 問題 1 の解答 1.2.1 答は (1) π 2 (2) (√ ) 2−1 π ( √ ) (3) π + log 2 + 3 2π (4) √ 3 3 (5) 1 (n − 1)2 です。 すべて不定積分を計算できるものばかりです。ということは、例 1 のように、値を計算すること が同時に広義積分の収束を示すことにもなっています。なお、広義積分は定積分の極限ですので、 置換した変数を元に戻す必要はありません。高校で学んだ定積分の計算と同様に、勝手においたあ なたの変数のまま計算すれば O.K. です。 (1) t = 1 x と置換しましょう。 ∫ ∞ 1 1 dx = x x2 − 1 ∫ √ 0 1 t 1 √ ( 1 1 t2 −1 − 1 t2 ) ∫ 1 dt = 0 √ 1 dt 1 − t2 となります。ここで、さらに t = sin θ と置換しましょう。すると、 ∫ 0 1 √ 1 dt = 1 − t2 となります。((sin−1 t)′ = ( √ )′ (2) まず、 − 1 − x2 = ∫ 1 −1 π 2 √ 0 √ 1 1−t2 √ x 1−x2 1 ′ 1 − sin θ 2 ∫ sin θdθ = 0 π 2 1 cos θdθ = cos θ ∫ π 2 1dθ = 0 π 2 を覚えているなら、もちろんそれを使って結構です。) □ であることを利用して部分積分しましょう。 )) d ( √ − 1 − x2 tan−1 xdx dx −1 ∫ 1 √ ∫ 1( √ [ √ ]1 ) d 1 − x2 −1 −1 2 2 tan xdx = dx = − 1 − x tan x − − 1−x 2 dx −1 −1 1 + x −1 x tan−1 x √ dx = 1 − x2 ∫ 1 ( ∫ 5 第 7 回解答 となります。ここで、x = sin θ と置換しましょう。すると、 ∫ 1 √ ∫ π2 ∫ π2 √ 1 − x2 1 − sin2 θ cos2 θ ′ sin θdθ = dθ dx = 2 2 1 + sin θ 1 + sin2 θ −1 1 + x −π −π 2 2 となります。さらに tan θ = t、すなわち θ = tan−1 t と置換すると、 ∫ π 2 −π 2 ∫ cos2 θ dθ = 1 + sin2 θ π 2 ∫ 1 π 2 1 dθ (1 + tan θ) + tan2 θ + −π 2 ∫ ∞ 1 d 1 −1 tan tdt = dt 2 )(1 + t2 ) 1 + 2t2 dt (1 + 2t −∞ 1 cos2 θ −π 2 ∞ ∫ = −∞ sin2 θ cos2 θ dθ = 2 となります。積分される関数が有理関数になったので、あとは部分分数分解すれば計算できます。 ) ∫ ∞ ∫ ∞( ∫ ∞ ∫ ∞ 1 2 1 1 1 dt = − dt = 2 dt − dt 2 )(1 + t2 ) 2 2 2 (1 + 2t 1 + 2t 1 + t 1 + 2t 1 + t2 −∞ −∞ −∞ −∞ となります。右辺の第 2 項は、t = tan θ によって変数を元に戻すことで、 ∫ ∞ −∞ 1 dt = 1 + t2 ∫ π 2 ∫ 1 d tan θdθ = 1 + tan2 θ dθ −π 2 π 2 1dθ = π −π 2 1 と計算できます。 ((tan−1 t)′ = 1+t )第 1 項 2 を覚えているなら、もちろんそれを使って結構です。 √ は、 2t = tan φ と置換することで、 ∫ ∞ −∞ 1 dt = 1 + 2t2 ∫ −π 2 と計算できます。((tan−1 s)′ = す。)以上より、 ∫ 1 −1 π 2 1 1 d 1 √ tan φdφ = √ 1 + tan2 φ 2 dφ 2 1 1+s2 ∫ π 2 −π 2 を覚えているなら、もちろん s = π 1dφ = √ 2 √ 2t という置換で結構で (√ ) x tan−1 x π √ dx = 2 √ − π = 2−1 π 2 1 − x2 となります。 □ (3) 積分される関数は x = 0 だけでなく x = 2 を定義域に含みませんので、(0, 2) での広義積分 と (2, 3] での広義積分に分けて計算しなければならないことに注意してください。 まず (0, 2) で積分しましょう。 ∫ 2 0 ∫ 1 √ dx = |x(x − 2)| 2 0 1 √ dx = 2x − x2 ∫ 2 0 1 √ dx 1 − (x − 1)2 となりますので、x − 1 = sin θ と置換しましょう。すると、 ∫ 0 2 √ ∫ 1 1 − (x − 1)2 π 2 dx = −π 2 1 d √ (sin θ + 1)dθ = 2 dθ 1 − sin θ ∫ π 2 −π 2 1 cos θdθ = cos θ となります。最後の積分は広義積分ではなく普通の定積分です。 次に (2, 3] で積分しましょう。 ∫ 2 3 1 √ dx = |x(x − 2)| ∫ 2 3 1 √ dx = 2 x − 2x ∫ 2 3 1 √ dx (x − 1)2 − 1 ∫ π 2 1dθ = π −π 2 6 第 7 回解答 となりますので、x − 1 = cosh t = et +e−t 2 と置換しましょう。すると、 √ et = x − 1 ± (x − 1)2 − 1 ですので、たとえば復号で + を選ぶと、t についての積分範囲は 0 < t ≤ log(2 + √ 3) となりま す。この範囲で sinh t > 0 です。よって、 ∫ 3 ∫ log(2+√3) ∫ log(2+√3) 1 1 d 1 √ √ dx = cosh tdt = sinh tdt 2 2 dt sinh t (x − 1) − 1 2 0 0 cosh t − 1 ∫ log(2+√3) ( √ ) = 1dt = log 2 + 3 0 となります。最後の積分は普通の定積分です。 この二つを足して、 ∫ 3 √ 0 1 |x(x − 2)| ( √ ) dx = π + log 2 + 3 となります。 □ (4) 有理関数の積分なので、部分分数分解をしましょう。 1 2 1 1 1 3 3 − 3x = = + 1 + x3 (1 + x)(1 − x + x2 ) 1 + x 1 − x + x2 1 1 1 1 − x 1 1 1 (1 − x + x2 )′ 2 2 = 3 + 6 3 2+ = − + 2 2 1+x 1−x+x 1−x+x 31+x 6 1−x+x 3 ∫ となります。 ( 1+ 1 2x−1 √ 3 )2 1 dx = log |1 + x| 1+x です。また、t = 1 − x + x2 と置換すると、 ∫ ∫ (1 − x + x2 )′ 1 dx = dt = log |t| = log(1 − x + x2 ) 1 − x + x2 t です。さらに、s = 2x−1 √ 3 ∫ ( 1+ と置換すると、 1 2x−1 √ 3 ∫ )2 dx = となります。((tan−1 s)′ = り、不定積分が ∫ 1 1+s2 √ √ √ 1 3 3 3 2x − 1 −1 ds = tan s = tan−1 √ 1 + s2 2 2 2 3 を覚えていなくても、s = tan θ と置換すれば導けます。)以上よ 1 1 1 2x − 1 1 dx = log |1 + x| − log(1 − x + x2 ) + √ tan−1 √ 3 1+x 3 6 3 3 1 1 + 2x + x2 1 2x − 1 = log + √ tan−1 √ 6 1 − x + x2 3 3 と計算できます。よって、 ( ( )) ( ) ∫ ∞ 1 1 + 2x + x2 1 2x − 1 1 1 1 1 −1 −1 √ dx = lim log + √ tan − log 1 − √ tan −√ x→∞ 6 1 + x3 1 − x + x2 6 3 3 3 3 0 π π 2π =0+ √ −0+ √ = √ 2 3 6 3 3 3 7 第 7 回解答 となります。 □ (5) 部分積分によって積分される関数から log x を消し去りましょう。 [ ]∞ ∫ ∞ ∫ ∞ ∫ ∞ log x 1 −1 1 −1 1 1 dx dx = log xdx = log x − n n n−1 n−1 x x n−1x n−1x x 1 1 1 1 [ ]∞ ∫ ∞ 1 1 1 −1 1 1 = = dx = n − 1 1 xn n − 1 n − 1 xn−1 1 (n − 1)2 となります。ただし、任意の正実数 a に対し log x =0 x→∞ xa lim となることを使いました。(このことは x = et と置換してみればわかります。) □ 広義可積分性の判定法 2 2.1 コーシーの収束条件 不定積分が具体的に計算できてしまう関数については、広義積分が可能かどうかは単に関数の値 の極限の問題ですが、不定積分の計算できる関数は限られてしまいますので、積分される関数だけ を見て広義可積分かどうかを判定できないと不便です。 さて、「広義可積分」とは「ある種の極限が存在する」ことですが、その極限値が先に分かって いるということはあまりありません。それは数列が収束するかどうかを調べるときにも経験してい ることです。そういうとき、つまり 収束先は分からなくてもいいから収束するかどうかだけ知りたい という場合には、例によって、実数の連続性に基づいたコーシーの収束条件が顔を出します。 定理 2. [a, b) を定義域とし任意の c ∈ [a, b) に対して [a, c] 上可積分な関数 f に対し、f が [a, b) で広義可積分なことと、 任意の正実数 ε に対して c ∈ [a, b) を ∫ c < r < s < b =⇒ r s f (x)dx < ε が成り立つように取れる こととは同値である。 証明. まず広義可積分だとしましょう。つまり ∫ lim c→b−0 c f (x)dx a が存在するとします。この値を S とすると、lim の定義から、任意の正実数 ε に対してある正実 数 δ があって ∫ t ε 0 < b − t < δ =⇒ S − f (x)dx < 2 a 8 第 7 回解答 が成り立ちます。よって、r と s が 0 < b − r < δ, 0 < b − s < δ を満たすならば ∫ s ∫ s ∫ s ∫ r ∫ r ε ε f (x)dx = f (x)dx − f (x)dx ≤ f (x)dx − S + S − f (x)dx < + = ε 2 2 r a a a a となってコーシーの収束条件が満たされています。 ∫ c < r < s < b =⇒ 逆に s r f (x)dx < ε が成り立っているとしましょう。数列 {an } を 1 n an = b − とし、an ≥ a となる n に対し Sn を ∫ an Sn = f (x)dx a とすることによって数列 {Sn } を作ります。 (an は単調増加数列なので、ある n0 で an0 ≥ a を満 たせば、n0 より大きなすべての n で an ≥ a を満たします。数列 {Sn } は n ≥ n0 でのみ定義され た数列だとしても結構ですし、n < n0 では例えばすべて Sn = 0 であるなどとしても結構です。) ∫ an |Sn − Sm | = f (x)dx am ですので、 N1 < b − c となる N を一つ取ると、N より大きい任意の二つの自然数 n, m に対して |Sn − Sm | < ε を満たすことになります。よって、Sn はコーシー列です。コーシー列は収束するのですから極限 値があります。 S = lim Sn n→∞ とおきましょう。任意の正実数 ε を取ると、n が十分大きければ ∫ an ε f (x)dx − S < 2 a となり、仮定から、r も十分 b に近ければ ∫ r ε < f (x)dx 2 an ですので、 ∫ a r ∫ f (x)dx − S ≤ r an が成り立ち、f は広義可積分です。 □ ∫ f (x)dx + a an ε ε f (x)dx − S < + = ε 2 2 9 第 7 回解答 2.2 広義積分における「絶対収束」 いつもこのコーシーの収束条件を直接適用して広義積分できるかどうかを判定するのは結構骨で す。そこで、このコーシーの収束条件を満たすための十分条件でもいいから確かめやすい条件が欲 しくなります。しかし、積分される関数が 0 を中心にはげしく振動し最終的には打ち消しあって広 義積分が確定するという状況はいかにも複雑で、一般的に利用可能な条件を作ることは難しそうで す。そこで、そういう場合を排除して考えるために、広義積分に絶対収束という概念を導入して、 コーシーの収束条件から「広義積分が絶対収束するための十分条件」を引き出すことで満足するこ とにしましょう。 定理 3. [a, b) を定義域とし任意の r ∈ [a, b) に対して [a, c] 上可積分な関数 f は、|f | が [a, b) 上広義可積分ならば f 自身も [a, b) 上広義可積分である。 証明. ∫ s r ∫ f (x)dx ≤ r s |f (x)|dx ですので、|f | がコーシーの収束条件を満たせば f もコーシーの収束条件を満たすことになりま す。よって、|f | が広義可積分なら f も広義可積分です。 □ 定義 2. |f | が [a, b) で広義可積分なとき、f は絶対広義可積分1 である、あるいは(広義)積 分は絶対収束すると言う。 絶対広義可積分ならば広義可積分であることの証明は上のもので何の疑問もないとは思います が、「絶対広義可積分」な関数は扱いやすいのにそうでない関数は扱いにくい理由をもう少し詳し く見ておきましょう。 そのために、まず 絶対広義可積分でないが広義可積分な関数 の例を問題にしておきました。 2.2.1 問題 2 の解答 x → +0 のとき sinx x も | sinx x| も 1 に収束するので、どちらの広義積分も被積分関数は x = 0 ま で連続に拡張されます。よって、どちらの場合も積分範囲の下端 0 では広義積分ではありません。 ∫∞ まず 0 sinx x dx が収束することを示しましょう。部分積分により任意の二つの正実数 s < t に 対して ∫ t ∫ t ∫ t | cos x| cos x | cos t| | cos s| sin x [ cos x ]t dx = − dx ≤ + + dx − 2 x x x t s x2 s s s s ∫ t 1 1 1 1 1 1 2 1 ≤ + + dx = + − + = 2 t s t s t s s s x 1 こちらの言い方はこのプリントだけの用語です、たぶん。 10 第 7 回解答 が得られます。よって、与えられた正実数 ε に対し c を 2 ε より大きくとれば、c < s < t を満た す任意の二つの実数 s, t に対して ∫ s t sin x 2 dx ≤ < ε x s が成り立つことがわかります。このようにコーシーの収束条件の条件を満たすことが確かめられた ので、この広義積分は収束します。 ∫ ∞ | sin x| 次に 0 x dx が発散することを示しましょう。任意の(大きな)正実数 R に対して R ≥ N π となる自然数 N を一つとります。すると、 ∫ ∫ N ∫ nπ N ∫ π ∑ ∑ | sin x| | sin x| sin x dx = dx = dx x x x + (n − 1)π 0 0 n=1 (n−1)π n=1 0 N ∫ π N N ∫ N ∫ ∑ 2∑1 2∑ 11 2∑ 1 1 sin x > dx = = dt > dt nπ π n=1 n π n=1 0 n π n=1 0 n + t n=1 0 ∫ ]N 2 N 1 2[ 2 = dt = log t = log N π 1 t π π 1 ∫ R | sin x| となります。N → ∞ のとき log N → ∞ ですので、R → ∞ とすると 0 x dx → ∞ となり ∫∞ ます。つまり、広義積分 0 | sin x|xdx は発散します。 1 (図 1 の三角形の面積 2n−1 の和と比較することによっても示せます。) □ R | sin x| dx ≥ x Nπ 高さ (n − 1)π 図 1: | sin x| x 2 (2n − 1)π nπ 2n − 1 π 2 のグラフより面積の小さい三角形 注意. なおこの広義積分の値の計算は「積分と微分の入れ替え」を利用して行いますので、それを学んでか ら紹介します。★ この例を念頭に置きながら、広義積分が収束する場合と発散する場合について考えてみましょう。 まず、関数 f から二つの関数 f+ と f− を f+ (x) = |f (x)| + f (x) 2 f− (x) = |f (x)| − f (x) 2 として作ります。つまり、f+ の方は f (x) の値が正のところでは f (x) のまま、負のところでは 0 としたもの、f− の方は f (x) の値が正のところでは 0 とし、負のところでは −f (x) としたもので す。だから、f+ , f− とも値は常に 0 以上であり、 f+ (x) + f− (x) = |f (x)| f+ (x) − f− (x) = f (x) 11 第 7 回解答 が成り立ちます。よって、積分や広義積分についてもこの分解が成り立ち、例えば [0, ∞) での広 義積分について ∫ ∞ ∫ 0 ∫ ∞ f+ (x)dx + ∫ ∞ ∫ ∞ |f (x)|dx = 0 f (x)dx = 0 ∞ f− (x)dx ∫ 0 f+ (x)dx − 0 ∞ f− (x)dx 0 ∫∞ となります。ここで、f+ や f− の定義から、 0 f+ (x)dx は f のグラフの x 軸より上側の部分の ∫∞ 面積、 0 f− (x)dx は x 軸より下側の部分の面積(「負」で考えない普通の正の面積)です。 だから、絶対広義可積分ということは x 軸より上側の面積も下側の面積も有限 ということを意味します。この場合、f の広義積分は有限な値(x 軸より上側の面積)から有限な 値(x 軸より下側の面積)を引いたものとして確定するというわけで、「有限−有限」ですから大 変扱いやすいのです。 もし、f+ の広義積分と f− の広義積分の片方が収束し片方が発散しているなら、二つの和も差 も発散してしまうので広義積分も絶対広義積分も発散です。つまり、例えば x 軸より下側の面積 は有限なのに上側の面積が無限大に発散してしまっているなら、両方の面積を合わせたものも差し 引きしたものも無限大だというわけです。 最後に残るのが f+ も f− も無限大に発散している場合です。この場合は和は当然発散してしま いますので絶対広義積分は不可能です。しかし、差の方は「無限大−無限大」が上手いこと釣り 合って有限の値になってしまうことがあります。その一つの例が上に挙げた例 sin x x です。もちろ ん「無限大−無限大」は正の無限大になる場合も負の無限大になる場合もあるのですから、これ が有限の値になるというのはとても微妙な危ういバランスの成り立っている場合に限ります。そし て、その場合こそが「絶対広義積分不可能なのに広義積分は可能」という場合なのですから、扱い が難しいのも当然だというわけです。 2.3 絶対収束の判定法 さて、絶対広義可積分性の判定法の話に移りましょう。まずは、 「絶対広義積分判定法の一般論」 にあたる優関数の方法から。 定理 4. [a, b) を定義域とし任意の c ∈ [a, b) に対して [a, c] 上可積分な二つの関数 f, g が |f (x)| ≤ g(x) ∀x ∈ [a, b) を満たすとき、g が [a, b) 上広義可積分なら f は [a, b) 上絶対広義可積分である。 証明. g は広義可積分なのですから、コーシーの収束条件の条件を満たします。つまり、任意の正 実数 ε に対して実数 c を上手くとると、 ∫ c < ∀r < ∀s =⇒ s r g(x)dx < ε が成り立っています。一方、[a, b) において |f (x)| ≤ g(x) が成り立っていると仮定しているので、 ∫ r ∫ r ≤ |f (x)|dx g(x)dx s s 12 第 7 回解答 が成り立ちます。この二つから |f (x)| もコーシーの収束条件の条件を満たすことがわかるので O.K. です。 □ 証明はこれでよいとして、定理の言っていることをもっとイメージ的に説明すると、 0 ≤ f (x) ≤ g(x) が成り立っているとき、x 軸と f (x) に挟まれた部分の面積は x 軸と g(x) に挟まれた部分の面積以下なのだから、x 軸と g(x) に挟まれた部分の面積がちゃ んと(有限の値に)確定するなら x 軸と f (x) に挟まれた部分の面積も確定する ということに過ぎません。広義積分の場合、「x 軸と f (x) に挟まれた部分」が(とっても細くな りながらも)無限にのびているので「面積」という言い方はアブナイかも知れませんが、優関数と いうもののイメージはこのように持っておくのがよいと思います。 注意. もしも |f (x)| ≥ g(x) ≥ 0 を満たす関数 g で広義積分の発散するものがあるなら、f は絶対広義積分 不可能です。なぜなら、もし f が絶対広義可積分、つまり |f | が広義可積分なら、上の定理で |f | と g の役 割を入れ替えることで g が広義可積分なことが結論されてしまい仮定に反するからです。だから、上の定理 は絶対広義積分が発散するための条件も教えてくれていることになります。ただし、 sinx x の例で見たように、 絶対広義積分が発散しても広義積分は発散するとは限りませんので、この「発散条件」にはあまりあらわに は触れないことが多いようです。とは言っても、後述の問題 3 や 4 の (2) の解答を見てもらえばわかるよう に、この方法で広義積分の発散を示すことはよくあります(と言うか普通こうやります)。★ このような関数 g のことを f に対する優関数と言います。この方法はあくまで一般論なので、 具体的な f が与えられたとき、それの優関数 g をどのようにとればよいかは全く教えてくれませ ん。だから、この一般的な方法を上手く使うためには優関数 g の「見つけ方」が欲しいところで す。ところで、広義可積分な具体的な関数といえば例 1 の関数ですので、これを利用しましょう。 定理 5. f を、[a, b) を定義域とし任意の c ∈ [a, +∞) に対して [a, c] 上可積分な関数とする とき、 (1) b が実数のとき、µ < 1 を満たすある実数 µ に対して f (x)(b − x)µ が [a, b) 上有界なら [a, b) 上絶対広義可積分である。 (2) b が +∞ のとき、λ > 1 を満たすある実数 λ に対して f (x)xλ が [a, +∞) 上有界なら [a, +∞) 上絶対広義可積分である。 証明. (1). f (x)(b − x)µ が有界、つまり |f (x)(b − x)µ | < M を満たす M があるので、 |f (x)| < M |b − x|µ が成り立ちます。例 1(1) よりこの不等式の右辺の関数は [a, b) で広義可積分です。よって、それは f の優関数になっています。従って、定理 4 により f は [a, b) で広義可積分です。 (2). f (x)xλ が有界、つまり |f (x)xλ | < M を満たす M があるので、 |f (x)| < M |x|λ が成り立ちます。例 1(2) よりこの不等式の右辺の関数は [a, +∞) で広義可積分です。よって、そ れは f の優関数になっています。従って、定理 4 により f は [a, +∞) で広義可積分です。 □ 13 第 7 回解答 これでかなり使いやすくなりました。とは言ってもこのような µ や λ をどうやって見つければ よいのか、という疑問は残るでしょう。残念ながらそれは case by case です。ただし、テイラー展 開を考えると上手く見つけられる場合がよくあります。例えば、 1 ex = 1 + x + x2 + · · · 2 から 2 1 ex = 1 + x2 + x4 + · · · 2 なので、 e−x = 2 1 1 1 = < 2 x ex2 1 + x2 + 12 x4 + · · · となって、 x12 が e−x の優関数であるとわかるというわけです。(定理 5 の形にしたいなら、両辺 2 に x2 を掛けて e−x x2 < 1 2 とすればよいわけです。) 後述する今回の問題の解答も、この方法で µ や λ を見つけています。例えば、問題 3 の (1) で は積分範囲の端が 1 のところでの収束を示したいので、(x − 1)µ と比較したいわけですから、問 題の関数とこのような形の関数を結びつけたいわけです。だから x = 1 を中心としたテイラー展 開を考えてみるべきです。実際、 x2 − 1 = 0 + 2(x − 1) + (x − 1)2 という展開から 1 1 1 1 = ≤ ≤ x2 − 1 0 + 2(x − 1) + (x − 1)2 2(x − 1) x−1 が得られます。これと同じことをあらわにはテイラー展開を見せずやったのが後述の解答です。問 題 4 の (1) も同様です。 2.3.1 問題 3 の解答 (1) 1 < x において x2 − 1 = (x + 1)(x − 1) > x − 1 > 0 が成り立っていますので、逆数を取っても不等号の向きは変わらず、 0< x2 1 1 < −1 x−1 です。a > 0 ですから全体を a 乗してもやはり不等号の向きは変わらず、 0< (x2 1 1 < a − 1) (x − 1)a (3) となります。a < 1 では右辺の関数の (1, 2] における広義積分は収束します。すなわち問題の関数 の優関数になっています。これで a < 1 では広義積分 Ia は収束することが示せました。 □ 注意. 問題では a > 0 という条件を付けておきましたが、a ≤ 0 のときは被積分関数は x = 1 まで連続な関 数ですので、積分 Ia は広義積分ではなく普通の積分です。しかも連続関数はすべて可積分ですので、この場 合も可積分です。★ 14 第 7 回解答 (2) a = 1 のとき、0 < ε < 1 を満たす任意の実数 ε に対して、 ∫ 2 1+ε 1 dx = x2 − 1 ∫ 2 ( 1 2 ) 1 2 − [ dx = 1 1 log |x − 1| − log |x + 1| 2 2 x−1 x+1 1 1 1 1 ε→0 = log 1 − log 3 − log ε + log(2 + ε) −−−→ +∞ 2 2 2 2 1+ε ]2 1+ε となって、広義積分 I1 は発散します。 √ a > 1 とします。1 < x ≤ 2 では 0 < x2 − 1 ≤ 1 なので、 (x2 − 1)a < x2 − 1 ですから、逆数を取ると 1 1 ≥ 2 (x2 − 1)a x −1 となります。よって、 ∫ √ 2 1+ε 1 dx ≥ 2 (x − 1)a √ 2 ∫ 1+ε x2 1 ε→0 dx −−−→ +∞ −1 √ 2] での広義積分は発散します。広義積分の収束発散の定義より、(1, 2] での広義積 分 Ia も発散ということになります。 □ となって (1, 2.3.2 問題 4 の解答 (1) 任意の x について x2 + 1 > x2 > 0 が成り立っていますので、逆数を取って 0< が得られます。b > 1 2 1 1 < 2 x2 + 1 x > 0 ですから全体を b 乗しても不等号の向きは変わらず、 0< (x2 1 1 < 2b b + 1) x (4) となります。2b > 1 のとき右辺の [1, ∞) における広義積分は収束します。つまり、b > 右辺の関数は問題の関数の優関数になっています。これで b > 1 2 (2) x > 0 のとき、 x2 + 1 < x2 + 2x + 1 = (x + 1)2 √ x2 + 1 < x + 1 です。逆数を取って、 √ 1 x2 +1 > 1 x+1 のとき では広義積分 Jb は収束すること が示せました。 □ なので、 1 2 15 第 7 回解答 が得られます。これを [1, R] で積分すると、 ∫ 1 R √ ∫ 1 x2 +1 R dx > 1 1 dx x+1 という不等式が得られますが、 ∫ R 1 1 R→+∞ dx = log(R + 1) − log 2 −−−−−→ +∞ x+1 と右辺は発散しますので、左辺も発散します。これで J 1 は発散することが示せました。 2 b< 1 2 としましょう。すると、 (x2 + 1)b < となりますので、 ∫ 1 R 1 dx > 2 (x + 1)b √ x2 + 1 ∫ R √ 1 1 x2 +1 dx となります。ところが、右辺で R → +∞ としたもの、つまり J 1 が発散することを既に示しまし たので、左辺も R → +∞ のとき発散します。これで b < 2 1 2 のときにも Jb が発散することが示せ ました。 □ 注意. 問題では b > 0 という条件を付けておきましたが、b ≤ 0 のときは被積分関数は x → ∞ で無限大に 発散する関数ですので、広義積分 Jb も当然発散します。★ 2.3.3 問題 5 の解答 答は (1) と (4) が発散で (2) と (3) は収束です。 (1) 積分範囲の下側では普通の定積分ですので、上側だけが問題です。平均値の定理を [0, t] に対 して使うと、 sin t = (cos θt)t となる θ が (0, 1) にあることがわかります。これに t = sin 1 x を代入すると、 cos xθ 1 = x x が得られます。積分範囲は x > 1 ですので、0 < θ < 1 と合わせてこの範囲で 0 < θ x <1< π 2 と なっています。よって、x > 1 において cos θ > cos 1 > 0 x であり、 1 cos 1 > x x が成り立ちます。右辺の関数の [1, ∞) における広義積分は発散しますので、問題の広義積分も発 sin 散します。 □ (2) これも積分範囲の下側では普通の定積分ですので、上側だけが問題です。テイラーの定理を 0 を中心にして 2 次で使うと、 cos θt 3 t sin t = t − 3! 16 第 7 回解答 1 x2 となる θ が (0, 1) にあることがわかります。これに t = sin を代入すると、 cos xθ2 1 1 = − x2 x2 3!x6 が得られます。今、x > 1 かつ 0 < θ < 1 なので、0 < θ x2 <1< π 2 ですから、cos xθ2 は正です。 よって、 1 1 < 2 2 x x が得られます。右辺の関数の [1, ∞) における広義積分は収束しますので、問題の広義積分も収束 します。 □ 0 < sin (3) これは一見積分範囲の下側でも広義積分であるように見えます。しかし、テイラーの定理に より x2 R(x) cos x = 1 − + R(x) lim =0 x→0 x2 2 が成り立っていますので、 ( ) 2 1 − 1 − x2 + R(x) 1 − cos x 1 lim = lim = 2 2 x→0 x→0 x x 2 というように収束しています。よって、積分される関数は x = 0 まで連続に拡張可能であり、積 分範囲の下側では広義積分ではありません。 上側の広義積分が収束することは、 1 − cos x ≤ 2 x2 x2 であって、右辺の関数はたとえば [1, ∞) で広義可積分であることから従います。 □ (4) テイラーの定理により、 ex = 1 + x + eθx 2 x 2 (0 < θ < 1) となる θ があります。よって、x > 0 のとき ex > x が成り立ちます。両辺の対数を取ると、 x > log x が得られます。x > 1 とすると、両辺とも正ですので 1 1 < x log x となります。左辺の広義積分は ∫ ∞ 2 [ ]∞ 1 dx = log x =∞ x 2 となって発散しますので、右辺の広義積分も発散します。 □ 17 第 7 回解答 2.3.4 問題 6 の解答 この問題は、原始関数は計算できないが、広義積分が収束していると仮定すると広義積分の値が 計算できる、という例です。だから、広義積分が収束することとその値を計算することを別々にや らなければなりません。 これと似たようなことを、漸化式で定義された数列の極限値の計算などで高校のときにも経験し たことのある人も多いでしょう。例えば、 an+1 = an 2 + 1 2 という漸化式を満たす数列 {an }∞ n=1 は、その極限値を a∞ とすると、 a∞ = a∞ 2 + 1 2 すなわち、 a∞ 2 − 2a∞ + 1 = 0 を満たすので、a∞ = 1 です。しかし、例えば a1 > 1 だとこの数列は収束しません。無限大に発 散してしまいます。だから a∞ = 1 であることを示すには、a∞ が存在することを別に示しておか なければなりません。 この問題は、これと同じようなことが広義積分にもあるということを見てもらう問題です。 (1) まず、この広義積分が収束していることを示しましょう。任意の x について | sin bx| ≤ 1 です ので、|e−ax sin bx| ≤ e−ax が成り立っています。一方、a > 0 ですので、 [ ]∞ ( ) ∫ ∞ 1 1 1 e−ax dx = − e−ax =0− − = a a a 0 0 となって収束しています。すなわち、e−ax は e−ax sin bx の優関数です。よって、問題の広義積分 も収束します。 次に、広義積分の値を計算しましょう。 ∫ I= ∞ e−ax sin bxdx 0 ( )′ とおきます。 − a1 e−ax = e−ax ですので、部分積分により [ ]∞ ∫ ∞ ( ) ∫ 1 −ax d 1 −ax b ∞ −ax − e I= − e sin bx − sin bxdx = e cos bxdx a a dx a 0 0 0 となります。同様にしてもう一度部分積分をすると、 ) [ ]∞ ∫ ( d b 1 1 b ∞ I= − e−ax cos bx − e−ax cos bxdx − a a a a dx 0 0 ∫ b1 b b ∞ −ax b b2 = − e sin bxdx = 2 − 2 I aa aa 0 a a が得られます。よって、 I= です。 □ b 1 b = 2 a2 1 + ab22 a + b2 18 第 7 回解答 (2) まず、 ( log(sin x) = log sin x x ) − log x と分解しましょう。右辺の第 1 項は x → 0 のとき log 1 = 0 に収束するので x = 0 まで連続関数 として拡張されます。よって、問題の広義積分が可能であることと log x の広義積分が可能である ことは同値です。log x の広義積分を実際に計算してみると、 ∫ π2 [ ] π2 π π π log xdx = x log x − x = log − − lim x log x 2 2 2 x→+0 0 0 となりますが、x = e−t と置換すれば、 lim x log x = lim t→+∞ x→+0 −t =0 et となることがわかるので、この広義積分は収束します。これで問題の広義積分の収束が示せました。 次に値を求めましょう。求める値を I とおくことにします。x = π − y と置換することにより、 ∫ π2 ∫ π2 ∫ π I= log(sin x)dx = log(sin(π − y))(−1)dy = log(sin y)dy 0 および、x = π 2 π 2 π − z と置換することにより、 ∫ I= ∫ π 2 0 log(sin x)dx = π 2 0 ∫ π2 ( (π )) log sin − z (−1)dz = log(cos z)dz 2 0 となります。以上を使うと、 ) (∫ π ∫ π ∫ ∫ π 2 1 π 1 1 2 I= log(sin x)dx + log(sin x)dx = log(sin 2t)2dt log(sin x)dx = π 2 2 0 2 0 0 2 ∫ π2 ∫ π2 ∫ π2 ∫ π2 π = log(2 sin t cos t)dt = log 2dt + log(sin t)dt + log(cos t)dt = log 2 + I + I 2 0 0 0 0 となります。(三番目の等号で x = 2t と置換しました。)よって、 I=− π log 2 2 です。 □ ガンマ関数とベータ関数 3 広義積分を使って定義される重要な関数に、ガンマ関数とベータ関数があります。物理や工学な どで活躍するとても重要な関数ですので、定義と基本的な性質を少し紹介することにしました。そ れが問題 7 と問題 8 です。 3.1 問題 7 の解答 x < 1 のときには積分区間の下の端 0 も広義積分ですので、 ∫ 1 ∫ ∞ e−t tx−1 dt + e−t tx−1 dt 0 1 19 第 7 回解答 と分けて考えましょう。 第 2 項については、任意の a に対して ta =0 t→∞ et lim であることから、例えば K t2 が [1, ∞) で成り立つ K が存在します。よって、[1, ∞) における広義積分は任意の x について収 束します。 0 < x < 1 のときは 1 − x < 1 で、(0, 1] 上 0 < e−t tx−1 < 0 < e−t tx−1 < 1 t1−x が成り立ちます。よって、(0, 1] における広義積分も収束します。 x = 1 を代入すると ∫ ∞ Γ(1) = [ ]∞ e−t dt = −e−t =1 0 0 です。 また、部分積分により [ ] ∫ ∞ ∫ ∞ ∫ x ∞ ( −t ) tx 1 ∞ −t x+1−1 1 −t x−1 −t t Γ(x) = e t dt = e − −e dt = e t dt = Γ(x + 1) x x x x 0 0 0 0 となります。 □ Γ(x + 1) = xΓ(x) であることから、n を自然数とすると Γ(n) = (n − 1)Γ(n − 1) = (n − 1)(n − 2)Γ(n − 2) = · · · = (n − 1)(n − 2) · · · 2 · 1Γ(1) = (n − 1)! となることがわかります。すなわち、ガンマ関数は階乗という演算を正実数に拡張したものになっ ているのです。 3.2 問題 8 の解答 積分区間の両端とも広義積分になる可能性があるので、 ∫ ∫ 1 tx−1 (1 − t)y−1 dt = 0 1 2 ∫ tx−1 (1 − t)y−1 dt + 0 1 1 2 tx−1 (1 − t)y−1 dt と分けて考えましょう。 右辺の第 1 項は x < 1 のとき t = 0 で広義積分です。(0, 21 ] 内の任意の t に対して 0 < tx−1 (1 − t)y−1 < 1 t1−x が成り立っています。x > 0 なら 1 − x < 1 なので、(0, 21 ] における広義積分は収束します。 同様に、第 2 項についても 0 < y < 1 のとき、 0 < tx−1 (1 − t)y−1 < 1 (1 − t)1−y 20 第 7 回解答 が成り立っていることから収束します。 s = 1 − t と置換すると、 ∫ 1 ∫ 0 ∫ x−1 y−1 x−1 y−1 B(x, y) = t (1 − t) dt = (1 − s) s (−1)ds = 0 1 1 sy−1 (1 − s)x−1 ds = B(y, x) 0 となります。 また、t = sin2 θ と置換すると、 ∫ ∫ 1 π 2 tx−1 (1 − t)y−1 dt = B(x, y) = 0 ∫ =2 ( sin2 θ )x−1 ( 1 − sin2 θ )y−1 2 sin θ cos θdθ 0 π 2 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ 0 となります。 □ ガンマ関数とベータ関数について後に学ぶこと 3.3 「関数」という単語を聞くと、普通多項式や三角関数、指数関数など、およびそれらを足したり 掛けたり合成したりしたものを思い浮かべるでしょう。このような「式で書ける」関数のことを初 等関数と言います。実は、ガンマ関数とベータ関数は初等関数ではないことが知られています。つ まり、ガンマ関数とベータ関数は式で書くことができないわけです。初等関数でない以上、定義に 出てくる積分をはずすことができません。だから、ガンマ関数やベータ関数の性質は積分記号を背 負ったまま調べていかなければならないことになります。そのとき、(広義)積分と極限や微分の 順序交換をしなければならなくなりますが、それは二つ、あるいは三つの極限の順序を入れ替える ことに当たるので、無条件ではできません。ですので、これらの関数の連続性や微分可能性につい ては、積分と極限や微分の順序交換を学んでから調べることになります。 また、ガンマ関数の具体的な値として Γ ( ) √ 1 = π 2 が大変重要であり、さらに、ガンマ関数とベータ関数の間には B(x, y) = Γ(x)Γ(y) Γ(x + y) という関係がありますが、これらのことを証明するには 2 変数関数の重積分の変数変換公式を使う のが簡単ですので、それを学んでから証明を紹介することにします。 問題 8 で示したもらったように、ベータ関数はよく見かける形の三角関数の積分になっていま す。このことからベータ関数は物理や工学などのいろいろな場面で現れてきます。このことに上で 紹介したガンマ関数とベータ関数の関係を使うと、三角関数の積分が階乗と関連づけられることが わかります。例えば ∫ π 2 ∫ 2n sin π 2 2(n+ 12 )−1 2 12 −1 ( ) ( ) ( ) 1 1 1 1 Γ n + 21 Γ 12 θdθ = B n + , = 2 2 2 2 Γ (n + 1) θdθ = sin θ cos 0 ) ( ) ( ) ( ) n − 12 n − 32 · · · 12 Γ 12 Γ 12 (2n − 1)(2n − 3) · · · 3 · 1π (2n − 1)(2n − 3) · · · 3 · 1 = = π = n−1 2(n!) 2 2(n!) 2n(2n − 2) · · · 4 · 2 0 ( 21 第 7 回解答 および、 ∫ ∫ π 2 2n+1 sin π 2 θdθ = sin 0 2(n+1)−1 2 21 −1 θ cos 0 ( ) ( ) 1 1 1 Γ(n + 1)Γ 21 ( ) θdθ = B n + 1, = 2 2 2 Γ n + 32 ( ) n!Γ 12 2n (n!) 2n(2n − 2) · · · 4 · 2 ) ( ) ( ) = = = (2n + 1)(2n − 1) · · · 3 · 1 (2n + 1)(2n − 1) · · · 5 · 3 2 n + 12 n − 12 · · · 12 Γ 12 ( となります。より具体的には、 ∫ ∫ π 2 0 π 2 0 ∫ π 2 0 ∫ 0 などです。 sin3 θdθ = π 2 sin5 θdθ = 2 3 8 15 16 sin7 θdθ = 35 128 sin9 θdθ = 315 ∫ ∫ ∫ ∫ π 2 sin4 θdθ = 3 π 8 sin6 θdθ = 15 π 48 sin8 θdθ = 35 π 128 0 π 2 0 π 2 0 π 2 0 sin10 θdθ = 63 π 256
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