山地拠点都市構想(後編)第1章「山の魅力」 第2節「北又谷の強烈なインプレッション( 全国初の完全遡行)」 黒部渓谷の支流北又谷の完全遡行は二度目に成功した。二回とも松尾稔君(名古屋大学 元総長)と一緒だったかと思う。北又谷には物凄い絶壁からなる瀞(とろ)があって、一 回目はそこをどうしても通過できず、雨のため退却。二回目にアップザイレンが連続して できるところを捜し出して、何とかそこを通過することが出来た。誠に残念なことには、 後輩が我々の記録をみてそのルートに入り、遭難死したが、そういう難所をやっとの思い で通過して見た「魚止めの滝」の景観は今でも目に焼き付いている。滝の高さは60∼7 0mもあったろうか。滝の上は岩が削られて丸い窓のようになっている。その「丸窓」か らほとばしる激流。どこまでも深い滝壺の色。回りに絶壁のいよいよ神秘的なその佇ま い。忘れられない景観だ。 北又谷には物凄い絶壁からなる北又谷の瀞(とろ) 何度も「へつり」を試みたがダメであった。 「へつり」をあきらめて岸壁の上にであるルート見つけて登る。 岸壁の上からはアップザイレンで降りる。二度のアップザイレン。 降りたところは緩やかな流れの渓谷。 それでも「魚止めの滝」まではこういうところもある。 やっと「魚止めの滝」に到着。 夜は楽しいキャンプ。 火を見ているとお心も休まる。 翌日の沢登りは 「へつり」や迂回を繰り返しながら ぐんぐん登っていく。 上流に到着する直前の風景。 上流端はカールになっている。 後は、朝日岳の頂上から降りるだけだ。ほとんど苦労はしなかったように思う。この山行 で一番大変だったのはもちろん最初の瀞(とろ)を越えるときだが、私の記憶としては、 スズメバチの巣に出くわしたことで、見張りのハチを刺激せずそっと 回して事なきを得 たことだ。山ではマムシやカラスヘビも恐いがスズメバチも恐い。いずれにしても君子危 うきに近寄らず。相手を驚かさないことだ。
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