微生物代謝産物からの NADH・フマル酸還元酵素阻害剤の探索 感染

微生物代謝産物からの NADH
・フマル酸還元酵素阻害剤の探索
感 染制御科学専攻・細胞機能制御科学
Dト12002 海 淵 覚
【背景・目的】
現在、日本における嬬虫症擢患率は 1%以下であり日常生活で嬬虫を目にすることは
稀となった。しかし、世界では回虫のみに限定しでも約 14億人の感染者が試算され
ており、日本でも蔓延地域からの輸入寄生虫症や近年の健康志向による有機農業野菜
の重用等 を原因に新規擢患者が増加傾向にある。一方、嬬虫症の治療薬である駆虫薬
に目 を向けると、その種類は抗菌薬に比べ驚くほど少ない。そしていくつかの薬剤に
はすでに耐性嬬虫が報告され、畜産業において問題が表在化しつつある。したがって、
新規抗寄生虫薬の開発は急務である。そこ で本研究では微生物代謝産物から新規駆虫
薬開発を目指して宿主体内に寄生する多くの嬬虫にとって必須な嫌気呼吸の鍵酵素で
ーフマル酸還元酵素 (N
ADH-fumarater
e
d
u
c
t
a
s
e
:NFRD) の阻害化合物を
ある NADH
探索した。またこれまでのスクリーニングにおいて Talaromyces属から高頻度で単離
k
u
l
actone類に着目し、その属内分類と u
k
u
l
a
c
t
o
n
e類の生
された NFRD限害化合物 u
産性の関係を明らかにするとともに、新規類縁化合物を単離した。さらに NFRD阻害
化合物として見出された呼吸鎖複合体 H選択的阻害剤 a
t
p
e
n
i
n類のより詳細な構造活
t
p
e
n
i
n類縁化合物の取得を行
性相関を明らかにするため、生産菌 FO-125株から新規 a
った。
[方法・結果1
1
. 微生物培養液からの NA
DH-ブマル酸還元酵素 (NFRD)阻害化合物の探索
1
・
1
.NFRD 阻害活性を示す微生物培養液のス クリ ーニ ング
825 サンプノレ、放線菌培養液 7,
792サンプルから NFRD 阻害活性
糸状菌培養液 7,
を示すサンプルをスクリーニングした。 NFRD の限害活性測定はブタ回虫 (
A
s
c
a
r
i
s
suum) の体壁筋から調製した粗 ミトコ ンドリア画分を用いて測定した。さらにウシ心
筋から調製 した同画分を用 いて NADH-oxidase(NO) 阻害活性を測定することで嫌気
的呼吸鎖酵素に対する選択性を調べた。その結果、糸状菌培養液 52 サンプル、放線
菌培養液 3 サンプルに NFRD選択的な阻害活性を見出した。
ト2
.Neosartoryaf
i
s
c
h
e
r
iFO
・
5897が生産する NFRD阻害化合物の構造 と活性
1
・
1 で培養抽出物に NFRD 選択的な阻害活性が認 められた Neosartoryaf
i
s
c
h
e
r
i
FO
・
5897 株をコ メ 培
RO
ダ'
O
S
a
r
t
o
r
y
p
y
r
o
n
e0R=H
はo
r
y
p
y
r
o
n
eAR=Ac
Sa
i
RO' 叶
。
A
s
z
o
n
a
p
y
r
o
n
eAR=Ac
A
s
z
o
n
a
p
y
r
o
n
eBR=H
F
i
g
u
r
e1
.FO
・5
897株が生産する NFRD阻害化合物の構造
地で静置培養し、メ タ
ノール、酢酸エチルで、
抽出した。抽出物を各
種カラムクロマト グラ
フィーで精製し、 NFRD 阻害化合物として saパorypyroneA とその脱アセチル体で、あ
る新規化合物 sartorypyroneD,sa巾 ypyroneの環化体である aszonapyroneAおよび B
の 4成分を単離した (
Figure1) 0 SartorypyroneA およ び D の NFRDに対する IC50
はそれぞれ 0.6I
J
Mおよ び 1
.
7I
J
Mであったが晴乳類の NOに対しても IC50値 1
.
3 ドM
および 3.
9ドM で阻害 した (
Table1
)。一 方、aszonapyroneA および B は sa巾 ypyrones
に比べ NFRD 阻害活性は弱かったが、晴乳類の NO阻害活性との聞に選択性が若干み
られた。 そ して お zonapyrones、sa同orypyrones ともにアセチル体で、やや阻害活性が
強い傾向が見 られた。 Sartorypyronesと aszonapyronesは NFRD阻害活性を有する新
たな骨格であり、構造的に安定で培養細胞に対し低毒性 (
Panc-1に対し CC5
.
IM)
o>50J
であるため新しい抗嬬虫薬のリ ード化合物として有望である。
Table1
.Sartorypyrone類
、 aszonapyrone類の NFRDおよび NO 阻害活性
化合物名
I
C
μM)
50(
NFRD
NO
8
1*
S
a
r
t
o
r
y
p
y
r
o
n
eA
0.
6
1.
3
2.
1
8
a
r
t
o
r
y
p
y
r
o
n
e0
1.
7
3
.
0
1
.
8
AszonapyroneA
8.
7
87
10.
0
AszonapyroneB
7
2
.
5
2
4
1
3
.
3
*
S
e
l
e
c
t
i
v
i
t
yIndex(NO/NFRD)
NFRD阻害化合物 ukulactoneA,
prugoseneA1,wortmannilactoneF
はいずれも ポ リエ ン鎖でピロ ン環と
T
al
a
r
o
myces節
オキサピ シク ロ環が繋がれた特異な
構造を持ち、 なかで もペンタ エ ン鎖
を持つ ukulactone類が強力な NFRD
He
l
i
c
i節
限害活性を示した(lC5o=2.
4 nM) 。
これら ukulactone類縁ポリエン化合
物の生産菌は全て Ta
伯r
omyces属
糸状菌で、あった。 Talaromyces属糸
7
干
'
ac
l
!
ysper
mi節
状菌は形態的特徴および分子系統解
析などにより現在 7節に分類されて
いる (
Figure2) 0 Ukulactone類縁
ポリエン化合物生産菌を分子系統解
析した結果、いずれも I
s
l
a
n
d
i
c
i節 に
分類された。
Figure2.
Talaromyces属の属内分類群
以 上 の結果より Talaromyces属
の中でも I
s
l
a
n
d
i
c
i節あるいはその類縁の節に分類される菌株から探索研究を行えば、
NFRD 阻害活性を持つ u
k
u
l
a
c
t
o
n
e類縁化合物を効率よ く見出すことが出来るのでは
ないかと考え、 Ta
伯romyces属内の分類群と u
kulactone類ポリエン化合物との関連に
ついて調べた。
保有している Talaromyces属菌から 24株を選び、塩基配列に基づく系統解析を行
い既報の分類群へ分類したところ 5節に分類された。それぞれをコメ培地で 14 日間
静置培養し、培養物のメタノールで抽出物を、 LC-UV で分析することにより、
u
k
u
l
a
c
t
o
n
e類縁ポリエン化合物の生産を調べた。
その結果、 24株中 7株が ukulactone類縁ポリエン化合物を生産していた。 7 株の
s
l
a
n
d
i
c
i節に属し、残り 4株は B
a
c
i
l
l
i
s
p
o
r
i節に属
うち 3株は上述の生産株と同じく I
する菌株であった。本結果から I
s
l
a
n
d
i
c
i節と B
a
c
i
l
l
i
s
p
o
r
i節に属する菌株は ukulactone
類縁ポリエン化合物生産能を有することが明らかになった。 さらに、 B
a
c
i
l
l
i
s
p
o
r
i節に
ト6713株の培養物から u
k
u
l
a
c
t
o
n
eA のオキサピシクロ環の 3位のケトン基
属する FK
が還元された新規類縁体 ukulactoneC を見出すこと ができた (
F
i
g
u
r
e3
)0UkulactoneC
の NFRD阻害活性は IC
o=62nMと u
k
u
l
a
c
t
o
n
eA には及ばないものの強力に NFRDを
s
阻害した (
F
i
g
u
r
e2
) 。生産菌の属内分類に着目することでこれまで、報告例の少なかっ
k
u
l
a
c
t
o
n
e類縁ポリエン化合物の探索研究が容易になり、新規類縁体を見出すこと
たu
ト
ゐ
もできた。
U
k
u
l
a
c
t
o
n
eA
NFRDIC却 =2
.
4 nM
000nM
NOIC田 =9,
o HO:
U
k
u
l
a
c
t
o
n
eB
NFRDI
C血 =470nM
,
000nM
NOIC曲 =16
。
。
A
.
.
.
.
_
、
内
』
、
斗)
b
l
HO ~
U
k
u
l
OH
NFRDIC阻 =62nM
NOIC.
.=10,
0001
1
M
F
i
g
u
r
e3
.Ukulactone類の構造と NFRD およ び NO 阻害活性
t
p
e
n
i
n類の構造決定
3
. 構造未決定で、あった a
呼吸鎖複合体 Hの選択的阻害剤である a
t
p
e
n
i
n類のうち A1・A3の 3 成分は構造未決
e
n
i
c
i
l
l
i
u
moxalicumFO-125株を ジャ ー培養し、目的の 3 成
定であった。そこで生産菌 P
t
p
e
n
i
nA1は側鎖末端にオ レフィンを持つ既報
分を単離した。各種機器分析の結果、 a
F
i
g
u
r
e4
) 0A
t
p
e
n
i
nA2は NMR測定の結果、平面構造
の NBRI23477B と同定した (
が A1 と同一であり、 A1 とA2の比旋光度の符号はどちらも負で、あったことから、 A1
のエピマーであると考えられる。また、 a
t
p
e
n
i
nA3は A1およ び A2の末端オレフ ィン
i
g
u
r
e
の位置が一つ移動した平面構造を持つ新規化合物で、あるとわかった。各構造は F
4に示した。
三成分に加え側鎖ケト ンの α位にヒドロキシ基とメチル基が結合した新規 a
t
p
e
n
i
n
類縁体 a
t
p
e
n
i
nC を得た (
F
i
g
u
r
e4
) 。得られた 4 種類の a
t
p
e
n
i
n類縁体の NFRD阻
t
p
e
n
i
nA3が最も強力に NFRDを阻害した。また、 A1 と
害活性を評価したと ころ 、a
A2は同一平面構造を有するにもかかわらず、その NFRD阻害活性には 16 倍の差が見
t
p
e
n
i
n類の NFRD阻害活性は側鎖の立体配置に大きく影響を受
られた。 この結果は a
けることを示唆した。
:。なケゃ :
o
d
ケγべ
A
t
p
e
n
i
nA1
(NBRI23477B)
0.77μM
必おー
A
t
p
e
n
i
nC
6.3μM
QH Q
。
¥
λN
0
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二
I
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O
.
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IIYγγ
At
p
e
n
i
nA3
0.38μM
A
t
p
e
n
i
nA2
12.5μM
OH 0
OH 0
O、 A
・
A
t
p
e
n
i
nB
0.36μM
Cl
/O Y,久~、入~CI
'0 人 N~叩
.
A
t
p
e
n
i
nA5
0
.
01
4
μM
OH 0
CI
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a
r
z
i
n
a
n
o
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r
i
d
o
n
e
1.6μM
'oJ
lNよOHi
i
A
t
p
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n
i
nA4
0.11μM
F
i
g
u
r
e4
.Atpenin類の構造と NFRD阻害活性 (
I
C
s
o
)
以上、本研究では 1.2.3の方策によって微生物代謝産物から新規 5 化合物を含む新
たな NFRD阻害化合物として 9 化合物を見出す ことができた。今後これら化合物をリ
ードと した新規抗嬬虫薬の開発が期待される。