台湾人日本語学習者によるイ形容詞およびナ形容詞の習得過程 長栄大学応用日本語学科 助理教授 蘇雅玲 要旨 本研究は台湾人中国語話者が日本語を習得する際に産出する中間言語を分析し、その誤 用の原因を探って日本語教育へ応用することを目的としている。 形容詞は多くの教科書で初級の早い段階で導入されるにもかかわらず、上級レベルに到 達しても、日本語教育現場で様々な誤用が観察された。日本語学習者は形容詞をどのレベ ルで、どの活用形をどの程度使用し、またどのような誤用をおかす傾向があるのかを判明 する必要があると考えられ、本研究では学習者の形容詞における言語使用について調査・ 考察を行う。 蘇 (2013) では、56 名の学習者を対象に形容詞の過去形に関する習得調査を行った。調 査結果によって、 (1) イ形容詞とナ形容詞の過去形の混同という現象は、複雑な活用体系を単純化しよう とする過剰一般化による可能性がある。 (2) 形容詞の過去形標識の脱落という現象は、母語の言語転移による可能性がある。 ということが明らかになった。しかし、日本語レベルによって学習者の習得状況を観察 することができないのである。したがって、本研究は調査対象を広げ、データを蓄積して 学習者による文法的誤用例を日本語能力レベル別に収集して分析する。その分析を通じて、 知識獲得のモデルとしての文法習得過程のモデルはどういうものか、を構築していきたい と考えている。 【キーワード】 中間言語 母語転移 過剰一般化 化石化 言語内・言語間エラー
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