Kodama (Yanai) - San Francisco State University

ノダの意味機能再考―日本語教育への応用を模索してー
San Jose State University
Yasue Kodama Yanai
1.
はじめに
従来、ノダに関しては、数多くの研究がなされ、二重判断説、説明説、客体化説、規定命題説、内実
背後の事情説、関連付け説、多機能説などの多くの説が唱えられた。しかし、いずれも、その本質的意
味機能の完全解明には至ってはおらず、日本語教育の現場におけるノダの説明も、「説明」「強調」といっ
た個別的で具体的な説明に終始するか、説明を十分にせずに進み、学習者の誤用を誘発させる結果にな
っている。本研究は、従来の説、初級教科書におけるノダの扱い方、ノダの教授法に関する提案を比較
検討し、どのようにノダを教えればいいのか、その説明導入の仕方、提出順序、練習の仕方を模索する。
2.
調査方法
本研究では、日本語教育の現場への応用を視野に 1)理論的な研究における従来のノダの意味機能
に関する説明 2)現在の初級教科書のノダの導入及び練習 3)ノダの教授法について考察した論文の
教え方を比較分析して、その問題点を考え、どのような教え方が適切であるかを検討した。
3.
分析結果
従来の説におけるノダの機能の説明には、大きく 1)「既定」や「関連性」など術語が曖昧である
という定義の問題 2)使用の動機や構文的特徴と機能の論理的関係が不明瞭という論理の問題 3)すべてのノダを説明できない、ノダ以外にも当てはまるなど、説明の汎用性の問題 4)理論的な説
明は学習者には難しすぎるという問題があることがわかった。
初級教科書には、上記のような問題に加えて、ノダ文と非ノダ文の違いの非明示、学習者の過剰一般
化を招きかねない用例や練習、説明された用法と実際の会話に出てくる用法の齟齬などの問題があった。
また、ノダの教授法に関して述べられた研究では、ノダの用法のうちどれを初級で教えるか、そして、
その提出順については、研究者の見解が一致していないことがわかった。
4.
考察と結論
以上のことから、本研究では学習者に「ノダは、聞き手(あるいは客体化された話し手)との間に、
命題に対する幻想的な共有感覚を形成して、話し手がそれを理解しよう、あるいは、聞き手にそれを理
解してほしい、と積極的に働きかけるマーカーである」と説明し、「非理由のYes-No疑問文、Wh疑問
文」「理由のYes-No疑問文、Wh疑問文」「前置き」という順番で、学習者が過剰一般化することなく、
ノダ/非ノダの違いに気づくように、意味機能や認知プロセスを図式化して説明をすることを提案する。
参考文献
佐治圭三(1993)「『の』の本質」‐「こと」「もの」との対比から‐『日本語学』12(11):4-14.
名嶋(2003)ノダの教授法に関する試論-例文とその提出順序の観点から-『日本語教育論集』第12号 PP33-40.
名嶋(2007)ノダの意味・機能-関連性理論の観点から くろしお出版.
用語リスト
過剰一般化:ここでは、用例に基づき「ノダにはノダで答える」のような誤ったルールを学習者が作ることを指す。